Carbon Neutrality

2023.12.25(Mon)

カーボンクレジットとは?
企業のメリット・デメリットと取り組み事例

#サステナブル #Smart World #環境・エネルギー
地球温暖化をはじめとした環境問題の解決を目指して、多くの企業がカーボンニュートラルの実現へ向けて対策に取り組んでいます。カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出量から吸収量・除去量を差し引き、全体で実質ゼロにすることです。その際は「カーボンクレジット」を用いることで、取り組みを実施しやすくなります。本記事では、カーボンニュートラルと関係の深いカーボンクレジットについて解説します。

目次


    企業におけるカーボンクレジットのメリット・デメリット

    企業がカーボンクレジットを用いると、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。初めに、カーボンクレジットに関して押さえておきたい基礎知識をお伝えします。

    合わせて読みたい:
    カーボンニュートラルとは?気候変動に対する国や企業の取り組み事例

    ●カーボンクレジットとは?
    カーボンクレジットとは、主に企業間で温室効果ガスの排出削減量を売買できる仕組みのことです。「炭素クレジット」とも呼ばれています。企業は環境活動によって生まれた温室効果ガスの削減量や吸収量を数値化し、クレジットとして認証された排出権を他の企業と取引します。これにより、努力をしてもどうしても削減できない温室効果ガスの排出量を、カーボンクレジットを購入することで埋め合わせできるようになるのです。なお、このように排出量を相殺すること自体を「カーボン・オフセット」と呼びます。

    ●企業から見たカーボンクレジットのメリットとデメリット
    ・カーボンクレジットのメリット
    カーボンクレジットを売却する企業は、利益を得られます。さらなる温室効果ガス削減のための設備投資ができるようになるのがメリットです。その一方で、CO2削減が困難な業界の企業は、カーボンクレジットの購入で排出削減に貢献できるようになります。カーボンクレジットを通じて、自社のCSR(企業の社会的責任)活動へつなげられます。

    ・カーボンクレジットのデメリット
    カーボンクレジットの取引には専門的な知識が求められるため、手間やコストがかかるのがデメリットです。また、カーボンクレジット市場は未成熟であり、クレジットの量や価格の設定が不透明な場合があるのが現状の課題となっています。適正価格や市場の動向がわかりにくい傾向にあるのが難点です。

    カーボンクレジットの2つの取引制度*1

    カーボンクレジットの取引制度には、主に「ベースライン&クレジット制度(削減量取引)」と「キャップ&トレード制度(排出権取引)」の2種類があります。ここでは、それぞれの排出量取引制度について解説します。

    ●ベースライン&クレジット制度
    ベースライン&クレジット制度とは、温出効果ガスの削減量を取引する制度です。自社の温室効果ガス排出量が削減によって見通しを下回った場合、削減量がクレジットとして認証され、市場で取引します。

    ●キャップ&トレード制度
    キャップ&トレード制度とは、温室効果ガスの排出権を取引する制度です。事業所ごとに割り当てられた排出枠に対して、排出量を削減して余った分の枠を、クレジットとして市場で取引します。

    *1-1 https://spaceshipearth.jp/carboncredit/
    *1-2 https://www.persefoni.com/ja/learn/carbon-credits

    カーボンクレジットの主な種類

    カーボンクレジットには、国際的な認証機関によるものと、国内の認証機関によるもの、民間の認証機関によるものがあります。それぞれの、カーボンクレジットの主な種類をご紹介します。

    ●国同士の国際的なカーボンクレジット
    ・CDM(クリーン開発メカニズム)
    クリーン開発メカニズムは「Clean Development Mechanism」を略した名称で、国連の主導により実施されています。CDMでは先進国が途上国での温室効果ガスの排出削減プロジェクトへ資金や技術を提供します。これにより、削減できた温室効果ガスの量を自国の削減量として計上できる仕組みです。先進国の排出量削減のコスト低減と、途上国における持続可能な開発の促進が目的となっています。

    ・JCM(二国間クレジット制度)
    二国間クレジット制度は「Joint Crediting Mechanism」を略した名称です。二国間の交渉により実施されます。途上国と協力して温室効果ガスの削減に取り組み、削減の成果を両国で分け合う仕組みです。途上国の脱炭素社会への移行を支援するとともに、支援国の温暖化対策にも貢献するのが目的となっています。

    ●日本国内の政府や自治体によるカーボンクレジット
    ・J-クレジット
    国が排出量削減や吸収量増加につながる取り組みをクレジット認証する制度です。取り組みの例として、省エネルギー設備の導入、適切な森林管理、再生可能エネルギーの利用などが挙げられます。

    ・地域版J-クレジット制度
    地方公共団体によるJ-クレジット制度です。全国の地方公共団体が、J-クレジット制度の制度文書に沿って制度を運営できるようになります。地域版J-クレジットは、国が認証する地域版J-クレジットと同様に、J-クレジット登録簿で管理されます。

    事例を見る:
    水田のメタン削減とJ-クレジット創出で、農業をサステナブルに(前編)
    生産者のパートナー・ヤンマーマルシェとNTT Comが共創プロジェクトに挑む

    水田のメタン削減とJ-クレジット創出で、農業をサステナブルに(後編)
    新潟の生産者とNTTグループが刻んだ希望の一歩

    ●民間主導のカーボンクレジット
    以下は、政府や自治体が主導する制度ではなく、民間企業やNGO団体などが自主的に発行するカーボンクレジットです。「ボランタリークレジット」と呼ばれます。

    ・VCS
    VCSは「Verified Carbon Standard」の略称で、国際的に広く使用されているボランタリークレジットの認証基準です。WBCSDやIETAなど国際的な団体によって基準が策定されています。世界で多くの分野や地域の温室効果ガス排出削減プロジェクトがVCSの承認を受けています。

    ・GS
    GSは「Gold Standard」の略称で、WWFなどの環境NGO団体が設立したボランタリークレジットの認証基準です。温室効果ガスの削減だけでなく、社会的・環境的な貢献を評価する基準を設けているという特徴があります。

    ・Jブルークレジット®
    ジャパンブルーエコノミー技術研究組合が、ブルーカーボンに限定して認証する制度です。ブルーカーボンとは、海洋生態系が吸収する炭素のこと。一方で、植物が吸収する炭素はグリーンカーボンと呼ばれます。ブルーカーボンを吸収する生態系として、水草・藻・マングローブなどが挙げられます。藻場や干潟などの再生活動を通じてクレジットが発行される仕組みです。

    合わせて読みたい:
    シリコンバレーから見る、カーボンオフセットビジネス最前線 後編

    カーボンクレジットを活用して社会の脱炭素化に貢献を!

    ここまで、カーボンクレジットの基礎知識から企業・団体の取り組みにおける活用事例までご紹介しました。業界や事業内容によっては、温室効果ガスの削減効果で大きなインパクトを残すのが難しい場合もあります。そんなときは、カーボンクレジットの活用によって脱炭素社会の実現に貢献するのも一つの手です。

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