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2025.04.30(Wed)
Carbon Neutrality
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#52
――今回「森かち」という新サービスがスタートしましたが、そもそも、なぜ住友林業とNTTコミュニケーションズという2社が協業したのでしょうか?そのきっかけを教えてください。
鈴木与一(以下、鈴木):もともとはNTT Com単体ではなく、NTTグループが住友林業さんと“それぞれのアセットで事業ができないか”ということを話し合う場があり、その場で脱炭素やカーボンクレジットというテーマが出たことがきっかけです。住友林業さんには森林のノウハウがありますが、NTT Comにとっては専門外の分野であるため、教えを請うような形でスタートしました。
曽根佑太氏(以下、曽根氏):住友林業では森林・林業のコンサルティングも行っており、そこで最先端のデジタル技術を林業の現場に導入したプラットフォームを作りたいという構想がありました。さまざまな森林の情報を重ね合わせたプラットフォームで、森林経営をより効率的に進めていきたいと考えていました。
私は、プロジェクトが始まった当初のメンバーではないのですがNTT Comさんとカーボンクレジットのプラットフォームの構想が合致して、そこで話が進んだと聞いています。
――2社が協業した経緯はわかりましたが、なぜ「森かち」というプラットフォームを生み出すことにしたのでしょうか?
曽根氏:「森林の価値とは何なのか?」という一般の人には目に見えないものを、見える化しようと何度も会議において議論を重ねました。
森林の価値は一言では表しづらいですが、実は我々の暮らしにさまざまな良い影響を与えています。その一つが水源涵養(かんよう、森林が水資源を蓄えること)です。水を蓄えることで、通常時の水資源を確保するだけでなく、豪雨などの災害時に下流域の増水を遅らせる効果もあります。また土砂災害を防止する機能もあるほか、生物多様性の保全にも大きな役割を果たしています。
こうした森林のさまざまな機能を、「多面的機能」と呼びます。しかしこの多面的機能に対する一般的な認知は、現状そこまで高くはありません。「森かち」では、この多面的機能を見える化し、そこにクレジットの購入者が価値を見いだすことをテーマとしています。
もちろん、ビジネスである以上、最終的にはマネタイズも考えないといけませんが、こうした森林の多面的機能に対する知見を市場に浸透させたうえで、収益化できるようにしたいと考えています。
――住友林業では、これまでにもカーボンニュートラルや森林由来J-クレジットなどにも取り組んでいたのでしょうか?
曽根氏:住友林業では「木」を軸に事業活動を展開しています。森林から木造建築の川上から川下までのバリューチェーンを「WOOD CYCLE」(ウッドサイクル)と表現し、このサイクルを回すことで森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、社会全体の脱炭素に貢献することを目指しています。
森林由来のクレジットに関しても、早い段階から取り組んでいます。現在の森林由来J-クレジット制度ができたのが2013年、それ以前は「国内クレジット制度」と「J-VER制度」という2つの制度が存在していましたが、J-VER制度における森林由来クレジットを生み出した民間第1号のプロジェクトは、当社によるものです。当社の宮崎県の事業区の所有林を対象に、およそ1万4000トンのクレジットを発行しました。
我々が「脱炭素」というキーワードを意識し始めたのは、恐らく1997年の京都議定書あたりからではないかと思います。そのあたりから「クレジット」という考え方が登場し、以降、当社でもバイオマス発電を始めとする脱炭素関連事業にも取り組み始めました。
ただ、これはあくまでも「脱炭素」という言葉に限った話です。脱炭素という概念が登場する前から、当社は創業以来ずっと事業活動を通じた炭素削減に関わってきたと考えています。
住友林業が軸にしている「木」には吸収した二酸化炭素を炭素として蓄える機能があります。木材を木造建築物の材料として活用することで炭素を長期間貯蔵することができます。木を切った分はまた植えて育てて循環させる。住友林業の事業活動自体が脱炭素に直結しているといえますよね。
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