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Coming Lifestyle
2023.06.23(Fri)
目次
CXとはどのような意味を持つ言葉なのでしょうか。まずは、CXの定義やよく似た用語との違いを解説します。
●CXの意味
CXとはCustomer Experience(カスタマーエクスペリエンス)の略です。日本語では「顧客体験」や「顧客体験価値」「顧客経験価値」と訳されます。顧客が商品やサービスと接する際の一連の体験を指します。
購入前から購入後までのさまざまな体験がCXに該当します。例えば、Webサイトの商品広告や店舗で受ける接客、店内の雰囲気、購入後の顧客対応などが含まれます。
●CXと似ている用語の違い・CS(顧客満足度)
CSとはCustomer Satisfaction(カスタマーサティスファクション)の略です。顧客が商品やサービスに対してどれくらい満足したかを測る指標となります。主に、顧客との接点におけるマイナス要因を解消する目的で用いられることが特徴です。
CXは顧客体験の全体に関する印象や満足度などに焦点を当てています。対して、CSは特定の取引や製品使用後の満足度に基づいて測られることが多い点が違いです。
・UX(ユーザー体験)1
UXとはUser Experience(ユーザーエクスペリエンス)の略です。顧客が商品やサービスを利用したことで得られる体験を指します。
UXは、あくまでも商品やサービス単体の利用時の体験となります。CXは購入プロセスの中で顧客が体験すること全般を指す点が異なります。UXはCXの一部に含まれるといえるでしょう。
1 https://www.braze.co.jp/resources/articles/cx-ux
https://www.brainpad.co.jp/rtoaster/blog/about_cx/
CXの向上は幅広いメリットをもたらします。こちらでは、CXが重視されるようになった背景や期待できる効果についてご紹介します。
●CXが重要視される理由
・顧客の購買行動がコト消費に変化
顧客の志向は、モノ自体よりもコト(=体験)を重視するよう変化しているといわれています。機能や品質だけでなく、商品やサービスを利用することで得られる感情的な価値が重視されるようになってきました。これは、社会の成熟により一定品質以上の製品・サービスが提供されるようになったためと考えられています。品質や性能などの合理的価値では差別化が難しくなった(コモディティ化)ため、購買に関する体験で差をつけることが求められます。
・生活スタイルや価値観の多様化
インターネットとスマートフォンの普及により、個人があらゆる情報を簡単に入手できるようになりました。画一的な価値観の押し付けが受け入れられなくなっており、CMや広告などの従来のアプローチでは購買につながらなくなっているとされています。このことも、CX向上が重視されることに寄与しているといえます。
・デジタルカスタマーエクスペリエンスの重要性の増大
デジタルカスタマーエクスペリエンスとは、オンラインにおけるCXのことです。ECサイト利用者が増加傾向にある中、企業はデジタルカスタマーエクスペリエンスにも注力することが重視されています。
・ファンマーケティングへの注目度の増大
ファンマーケティングとは、自社の商品やブランドなどに愛着を持つファンを増やすことで、安定した売上を目指す手法のことです。CXを向上させることはファンの獲得・増加につなげることができるでしょう。特に、熱狂的なファンのコミュニティーやそこから醸成される文化は「ファンダム」と呼ばれ、注目されています。SNSなどで熱狂的なファンがつながって経済圏を作り出し、消費者が生産側にも参加するようになると、さらなる消費の増大や新たなビジネス創出にもつながると考えられています。NFTなどのWeb3とも相性が良いため、今後も重要視されていくでしょう。
・デジタルマーケティング技術の発展
デジタルマーケティング技術が発展したことにより、オムニチャネルで顧客とのタッチポイントを増やせるようになりました。どのタッチポイントでも一貫して良質なCXを実現することで、顧客満足度をさらに高められると考えられます。
・サブスクリプション型サービスの普及
サブスクリプション型サービスの売上を安定させるためには、顧客が価値を感じ続けられるサービスを提供することが大切です。CXを重視したサービスを設計することも重視されます。
・SNSによる個人の情報発信力・影響力の増大
商品やサービスの口コミを、SNSによって個人が発信しやすくなりました。商品の質はもちろん、購入時の接客やアフターフォローなどの口コミも拡散させやすくなり、ポジティブな印象を与えるためのCXの重要性は増したと考えられます。
●CXの向上で期待できる主な効果
CXの向上施策を取り入れることにより、ブランドイメージの向上や商品・サービスの競合との差別化、新規顧客・リピーターの獲得などにつながるといわれています。既存顧客の口コミによる認知度の拡大により、顧客の購買意欲や購買量のアップにつながりやすいこともメリットです。ファンによって生み出される熱量が大きくなることでファンダムが生まれ、さらなる消費を促進できるでしょう。
2 https://www.brainpad.co.jp/rtoaster/blog/ux_cx/
https://coorum.jp/cxin/column/fanmarketing/
https://www.hitachi-solutions.co.jp/digitalmarketing/sp/column/dm_vol01/
3 https://www.liferay.co.jp/ja/w/blog/what-is-customer-experience#section-5
4 https://www.jukushin.com/archives/52931
https://reskill.nikkei.com/article/DGXZQOLM22ACQ0S2A620C2000000/?page=2
CX向上の取り組みを実施するには、どのような点に気をつける必要があるのでしょうか。以下では、CX向上のポイントをご紹介します。
●ビジネスモデルを変革する
そもそもCX向上へ向けて自社の顧客を分析するには、まず顧客のデータを収集できる体制を構築することが不可欠です。顧客と定常的に接点を持つために、既存事業をインターネット上で展開できる「XaaS(X as a Service=クラウドで提供されるサービス)」型のビジネスモデルへと変革させることが重視されています。
参考:https://it-trend.jp/paas/article/301-0017
●顧客データを収集し、顧客を理解してニーズを分析する
CX向上のためには多角的にデータを集めて顧客をセグメント化し、それぞれのニーズを分析して施策を展開することがポイントです。顧客を正しく理解するためにCX向上に役立つツールを利用し、データを一元化して収集・整理・分析すると良いでしょう。
顧客を深く理解できれば潜在的なニーズを把握しやすくなります。主なツールの例は、顧客管理を効率化する「CRM」、マーケティング業務を自動化する「MA」、サイト閲覧者を調査する「Web解析ツール」、SNSのユーザー投稿を調査する「ソーシャルリスニングツール」、サイト閲覧者に接客を提供する「Web接客ツール」、問い合わせを一元管理する「問い合わせ管理システム」、おすすめの商品・サービスを紹介する「レコメンドエンジン」、顧客データを分析する「CDP」などです。
●組織全体でCXに注力する
顧客体験の向上へ向けて、価値観や行動指針を示し、組織全体で共有することも大事な要素です。そのためには、特定の部署による取り組みにとどまらず、部署を横断したCXへの取り組みが求められます。例えば、既存の業務プロセスを見直して部署間の情報連携の仕組みを整備するなど、長期的視点で改善に取り組むと良いでしょう。
●顧客視点からのフィードバックを集め、検証と改善を繰り返す
顧客の声を受け止めてフィードバックを活かすことで、より良い体験を提供しやすくなります。検証は一度で終わらせず定期的に実施し、結果をもとに改善してPDCAを回すことも大切です。
●顧客と商品・サービスの接点を確認する
多様化している顧客接点を確認することで、効果的なCX向上戦略を打ち出しやすくなります。すべての接点におけるCXの向上を目指しましょう。
●ペルソナやカスタマージャーニーマップを作成する
顧客の属性や行動パターンなどを踏まえてペルソナを設定し、カスタマージャーニーマップを作成します。顧客が商品・サービスとどのように関わるかを理解でき、ニーズに合った施策を実行しやすくなります。
●One to Oneマーケティングを実施する
顧客ごとの購買履歴や行動履歴などを分析し、個別の施策を展開することで、顧客によってより価値ある体験を提供しやすくなります。顧客との関係性を深めることで、顧客ロイヤルティ向上にもつなげられるでしょう。
●カスタマーサクセスを取り入れる
顧客が商品やサービスを最大限に活用できるように支援することで、顧客の成功体験を創出できます。顧客の満足度が高まることで、長期的な信頼関係の構築に役立ちます。
5 https://www.liferay.co.jp/ja/w/blog/what-is-customer-experience#section-7
https://f-code.co.jp/blog/5cxusecase/#index_id8
https://emotion-tech.co.jp/column/2019/what_is_customer_experience_research_method_and_case_study/#CX-4
https://www.ntt-nexia.co.jp/column/0041.html
CX向上のための戦略を練るためには、具体的な事例を見て参考にすることもおすすめです。以下では、CXの成功事例をご紹介します。
●旅マエから旅アトまで最高の旅体験をサポートする「おきなわCompass」
「おきなわCompass」はモバイル型の観光ナビゲーションです。観光客の属性や嗜好、時間や天気などに基づき、旅行のプランニングや立ち寄りスポットを提案します。顧客体験を徹底的に分析、追求し、旅マエから旅ナカ、旅アトまでをトータルサポートしています。
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●自分に似合うメイクやコスメをAIが教えてくれる「Smart Powder Room」
「Smart Powder Room」は個室の中でAIによるメイクや化粧品の診断を受けられるサービスです。「コスメ売り場の店員に話しかけにくい」という顧客の潜在的なニーズをつかみ、コロナ禍によって店舗における顧客接点が減少した分を補いました。
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●没入感の高いアート体験を提供する「Hiroshi Nagai Exhibition TROPICAL MODERN VR」
「Hiroshi Nagai Exhibition TROPICAL MODERN VR」はVRで作品鑑賞できる展覧会です。顧客は従来とまったく違う鑑賞体験ができるほか、VR空間上のショップでグッズなどを購入できます。また、顧客の行動データを細かく収集・分析してさらなるビジネス創出に活かしています。
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●データ利活用による「POSAカード」のマーケティング施策
NTTコミュニケーションズとインコム・ジャパンは、dポイントクラブ会員を対象にしたPOSAカードのマーケティング施策を共同で企画しました。NTTドコモの豊富な会員データを活用してターゲットの細かい分析を行い、ペルソナに合わせた施策を展開。データ利活用による効果的なプロモーションを実現しました。
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データ利活用×マーケティングでわかった、潜在顧客の効果的な見つけ方
CXの基礎知識や重視される理由、向上のための方法やコツなどをご紹介しました。ビジネスシーンにおいて、CXの重要性は増しているといえます。CX向上のためには消費者ごとにパーソナライズされた体験を提供して、満足感を得られる仕組み作りが大切です。購入前から購入後までのすべてのプロセスにおいて、顧客に提供できる価値の向上を目指しましょう。
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