PROJECT

沖縄ツーリスト株式会社
株式会社OTSサービス経営研究所
NTTコミュニケーションズ株式会社

旅マエから旅アトまで、最高の旅体験を。「おきなわCompass」が実現する新たな観光スタイル

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コロナ禍による渡航制限などが緩和され、徐々に人々の観光ニーズが高まってきました。そうしたなかで、2022年7月1日にローンチしたのが、モバイル型の観光ナビゲーション「おきなわCompass」です。これは観光客の属性や嗜好、時間や天気といったさまざまなデータにもとづいた観光情報や交通のレコメンド&ナビゲートを通じて、旅行のプランニングや旅ナカでの立ち寄りスポットのおすすめ、ホテルやレンタカーの予約など、トータルで旅体験をサポートするサービスです。

観光立県・沖縄が提案する「ICTを活用した新たな旅のスタイル」について、おきなわCompassの企画・導入に携わった沖縄ツーリスト株式会社の東良和氏、 株式会社OTSサービス経営研究所の山田真久氏、そしてNTTコミュニケーションズの田畑好崇、杉山知之に話を聞きました。

観光業復興の鍵は地域が自ら情報を発信する「地域主導型観光」

—コロナ禍で観光業は大きな打撃を受け、徐々に回復しているとはいえまだまだコロナ禍前の状態には程遠い状況です。現在、観光業者がどのような課題と向き合っているのか教えてください。

東良和氏(以下、東氏):観光立県である沖縄は、県内総生産の約2割を観光業が占めており、コロナ禍で大きな打撃を受けました。さらに、この2年間で観光業界から多くの人材が流出してしまったことも、大きな課題となっています。沖縄県は島しょ県なので、隣県からすぐに人材を調達できません。観光業が復活しつつある現在、人材確保に頭を悩ませている事業者も多くいます。

さらにコロナ禍以前からの観光業者共通の課題も多数あります。繁忙期と閑散期の差をどのように平準化していくか。人気スポットに観光客が集中し、シーズンや人気スポットの偏在でオーバーツーリズムになりかねない状況を解消していくことも大きな課題です。

東良和|沖縄ツーリスト株式会社 代表取締役 CEO
1960年那覇市生まれ。 早稲田大学社会科学部卒業後、日本航空(株)勤務を経て米国コーネル大学ホテルスクール大学院に留学(修士課程修了)。1990年に沖縄ツーリスト株式会社入社、2004年に代表取締役社長就任、2014年から現職。

—なるほど。課題を解消するためにどのような取り組みを行っているのでしょうか?

東氏:近年、観光地が体験型のオプショナルツアーを催行して観光客に楽しんでもらう着地型観光というスタイルが定着しました。最近では、ウェブサイトやSNSでの情報発信が進み「現地に着いてから」ではなく、「旅マエ」の地域情報が充実しています。

これをさらに進化させ、情報を伝えるだけではなく、実際に観光客を誘客し、飛行機や宿泊施設の予約、旅行中の移動経路や必要な移動手段の手配までをワンストップでシームレスに行うことができる「地域主導型観光」の実現を目指しています。

—地域主導型観光とはどういったものなのでしょうか。

東氏:単なる情報発信にとどまらず、地域主導で、企画から運営、誘客、移動手段まで、旅マエ/旅ナカ/旅アトの観光客のカスタマージャーニー全体を整え、旅の実現をサポートする仕組みです。

山田真久氏(以下、山田氏):実はコロナ禍前から自分たちで飛行機やレンタカーを予約する個人型観光が増えていたんです。一方で、そういう方々に対して私たちが提供していた観光スポットの情報にも偏りがありましたし、実際の行き方、交通機関やレンタカーの案内などが足りないこともありました。

こうした状況を解決するために観光MaaSの充実も含め、地域主導型観光を本格始動させたいと考え、今回NTT Comさんと共に「おきなわCompass」の事業企画に取り組んできました。

山田真久|株式会社OTSサービス経営研究所代表取締役脳科学者&CEO
1994年大阪大学大学院修了博士(理学)、1999年理化学研究所 脳科学総合研究センター研究員・ユニットリーダー、2011年 沖縄科学技術大学院大学研究統括、2020年株式会社OTSサービス経営研究所取締役副社長、2021年同社代表取締役に就任。マウスを用いた脳機能解析からヒトの嗜好解析へ。

旅マエのプランニングから予約までをワンストップで

—おきなわCompassとはどのようなサービスなのでしょうか。

杉山知之(以下、杉山):NTT Comが提供するSmart Cityサービス「FUN COMPASS®」を沖縄県全土に導入するかたちで、県内の魅力的な旅先情報を旅のシーンや状況に寄り添ってレコメンド&ナビゲートし、周遊回遊を促す沖縄観光DXプラットフォームです。

まずFUN COMPASS®についてですが、革新的なUXエンジンを通じて街やエリアの魅力を引き出す観光DXサービスです。都市・地域にいる利用者の年齢や嗜好性といった固定情報だけでなく、時間、位置情報、天気のような変動情報を活用し、シーンや状況にリアルタイムに寄り添って地域の店舗や施設などの観光リソースをレコメンド&ナビゲートします。それによって、いつでも、誰にでも最高の旅体験を提供することが可能です。これまでも名古屋市大須商店街をはじめ複数のエリアで、実証実験を重ねてきました。

FUN COMPASS®は2021年11月に沖縄県で開催された「ResorTech EXPO in Okinawa」でイノベーション部門のグランプリを獲得

これをベースに、おきなわCompassでは、沖縄県全体というこれまで以上に広範囲なエリアでの導入を目指し大幅なアップデートを施しました。沖縄ツーリストさんにご協力いただくことでイチからUXを見直し、UIを含めた機能を沖縄県の観光客の行動傾向や事業者側の課題を鑑みながら開発していったのです。

特にこだわったのが、顧客体験を徹底的に分析、追求したUI/UXデザインと、それにもとづいたサービス開発です。例えば旅マエでの情報提供については、単純に旅先スポットを並べるだけではなく、「そうだ、沖縄へ行こう!」と旅への繰り出しを促すようなストーリーを重視した旅体験記事を提供しています。このようななかばおしゃれな旅雑誌のようなコンテンツを提供するなど、観光客に使いたいと思ってもらえるようなUXをとことん追求しました。

主な機能としては、旅マエで旅先情報を効率的に収集できるライブラリ機能や、旅ナカでリアルタイムなシーンや状況に沿った旅先スポットを周辺検索できるマップ機能などがありますが、何よりもハイライトなのはマイプラン機能です。ライブラリで発見した好みの観光スポットを組み合わせて、各スポット間の移動経路もナビゲーションされることで自分だけの旅プランを手軽につくることができます。旅ナカではそれを旅のしおりとして利用し、旅ナカでの急な計画変更などにも対応することができます。こうしたすべての機能に、我々のUXエンジンによるレコメンド技術がいかされているのです。

杉山 知之 | NTTコミュニケーションズ株式会社 ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートシティ推進室 OPEN HUB for Smart World ビジネスプロデューサー チーフカタリスト
入社以降、大規模法人アカウントを所掌とするソリューション事業部に所属し、政府が主導するe-Japan構想の実現に向けた中央省庁や地方自治体へのソリューションビジネスに従事。その後、中国におけるC向けEコマース市場への新規参入や海外のIT Giantを主としたグローバルビジネスなどさまざまな新規ビジネス開拓を牽引し、現在は西日本エリアを中心としたスマートシティ事業の推進を担当。

東氏:情報媒体であり、かつそのまま予約もできるという、これまでありそうでなかったプラットフォームです。通常であれば飛行機や宿泊施設、レンタカーなどそれぞれバラバラなサイトで予約が必要でしたが、おきなわCompassでは情報収集から旅行プランの策定、予約までをワンストップで実現できます。

—確かにこれまでなかった仕組みですね。

田畑好崇(以下、田畑):地域の皆さんが自ら情報を発信し、それを見て旅行へのモチベーションが高まった人が実際に旅のプランを立て、そのまま実際に旅行に行くことができる。もちろん、旅の最中もさまざまなレコメンドでその方の旅におけるシーンや状況に寄り添った旅体験をサポートします。

田畑好崇|NTTコミュニケーションズ株式会社 九州支社ビジネスソリューション営業部門長
新規事業分野を担うグループ会社で広報、マーケティング、渉外などを経験し、2009年NTTコミュニケーションズ広報室に着任。その後、さまざまなパートナー企業とのB2B2X協業開拓の推進を経て、2018年 西日本営業本部 九州支店長着任。九州沖縄の企業や自治体のDXを推進。 日本広報学会会員、公益社団法人日本パブリックリレーションズ協会会員(PRSJ認定PRプランナー)

山田氏:レコメンド機能は地域の事業者側、観光客側の両者にとってメリットがあります。これまで地域の事業者は、自分たちに興味のある顧客を見つけ出し、アプローチすることに課題を持っていましたが、レコメンド機能により、最適な方に最適なものを届けることが可能となります。また観光客にとっては、ほしい情報が入手しやすくなり、旅へのワクワク感の創出につながります。このワクワクこそが旅の醍醐味なのです。

東氏:沖縄県は実は雨が多いので、予定していたアクティビティができないこともあり得ます。そうしたとき、雨の日ならではの別の楽しみ方をタイムリーに提案するなど、想定外の状況でも旅の可能性を広げることができます。

データの囲い込みを解放し共創を促す新たなプラットフォーム

—今回の取り組みに沖縄県のほかの観光事業者も加わっているのでしょうか。

東氏:リリース時は、まずは当社の宿泊施設の予約システムと連携するかたちですが、将来的にはほかのOTA(オンライントラベルエージェンシー)にも開放していく予定です。また、おきなわCompassに情報を登録する県内の店舗や観光施設数は現時点で約3,000件ですが、さらに増やしていきたいと考えています。

山田氏:各事業者や観光協会は、パンフレットやウェブで情報発信していますが、残念ながら各事業者がバラバラに情報を流している状態なので、おきなわCompassを介して観光客とつなげていく構想です。

杉山:店舗の登録には、沖縄県の自治体様や観光協会様がウェブやパンフレットで公開している店舗データを利活用したいのですが、多くの地域では「おきなわCompassへのデータ提供には店舗側にあらためて二次利用の許諾の取得が必要」ということで、私たちが店舗を1軒1軒回って許諾を取っているケースもあります。

山田氏:本来、そうしたデータはいろいろな事業者が活用して、自分たちのサービスのために役立てることが大切です。しかし今は、沖縄に限らず、データが囲い込まれてしまっていて、地域全体で利活用するという考えや手段がありません。日本の観光業の最大の課題ですね。

今回沖縄がその限界を突破して成功したら、観光や地方創生に関わっている方々に大きな示唆になると思います。そこまでやり切ることを目指しています。

東氏:おきなわCompassは、観光客にとっても便利で充実した情報ツールであることはもちろんですが、これまではライバル関係だった地域の事業者同士が、おきなわCompassを通じて、協働・共創できる環境をDXによって実現した点が画期的だと思います。

杉山:旅における顧客体験を考えた際に、観光客に向けて事業者ごとにバラバラなサービスを提供しても顧客体験は向上しません。むしろ、事業者同士が共創して、観光客にとって便利な環境を追求し築いていく必要があるのだと思います。

インバウンドで日本が世界に勝つ日まで

—今後の展開を教えてください。

杉山:FUN COMPASS®はこれからも進化を続けていきます。さまざまな事業者やOTA、航空会社の予約システムと連携することを想定し、オープン性を高くするための汎用APIによる連携I/Fを設計段階から取り入れているので、これからも事業者の誘致や機能拡張を積極的に展開していきます。

田畑:今回のプロジェクトは、FUN COMPASS®という汎用プラットフォームを使いつつ、観光ビジネスが盛んな沖縄県の皆さまからいただいたアイディアやアドバイスを反映しています。それができたのは、私たちが直接沖縄ツーリストさんや各事業者さんと話し、観光業について教えていただきながら、どうしたらもっと魅力を伝えられるのか、どんな体験を提供できるのか知恵を出し合い、沖縄県だけでなく全国の観光事業者の皆さんのために良い環境をつくりたいという思いで一致していたからだと思います。今まさにスタート段階で、これからの進化が楽しみです。

山田氏:本当に沖縄のことを考え、コンテンツの収集ひとつとってもお互いの役割の垣根を越えて、徹底した顧客視点にもとづいた沖縄の観光体験の向上というハードルの高い事業設計に挑戦していただきました。その信頼がなければ、ここまでできなかったと思います。

東氏:今後は海外からの誘客も期待できます。国際線をAPIでつなぐことで、外国人観光客が沖縄に到着してからの交通や移動といった旅の体験のすべてをおきなわCompassがサポートできるのです。今は、海外のOTAが優位ですが、今後はインバウンドの分野でも地域が主導的な役割を果たし、経済的にも精神的にも豊かになることが理想だと考えています。

 【ウェビナーアーカイブのお知らせ】「おきなわCompass」に関するウェビナーの模様を収録した動画は、こちらよりご視聴いただけます。
地域主導型観光を実現する観光MaaS~沖縄をShowcaseとして最高な旅を考える~
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