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vol. 10

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多様化する顧客接点をどう最適化するか。CX向上を実現するコンタクトセンターとは

  • CX/顧客体験

顧客接点は今、DXやコロナ禍の影響を受けて大きく変わりつつあります。今後の変化も見据えたとき、消費者と企業の「顧客接点」の核となるコンタクトセンターは、消費者が企業と関わった際の体験「CX(Customer Experience、カスタマーエクスペリエンス)」をどう設計するべきでしょうか。人手不足やAIといった最新テクノロジーの活用など、コンタクトセンターを取り巻く課題とソリューションについて、月刊コールセンタージャパン編集長の矢島竜児氏とNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部の石原瑛美、安田真太朗がそれぞれ解説します。

コンタクトセンターに求められる「変化」

コロナ禍による社会変化を受けて、コンタクトセンターを取り巻く環境はどのように変化したのでしょうか。矢島氏は、「オペレーション」と「雇用」の2つに大きな変化があったと説明します。

「顧客対応のオペレーションでは、DXの流れを受けてチャットボットやボイスボット、自動化とエフォートレス(*1)化の取り組みがかなり加速しました。コロナ禍で有人店舗が縮小すると同時に、コンタクトセンターも一時的に縮小せざるを得なかったという事情も加わり、Webサイトでのコミュニケーションを中心に、顧客接点のデジタルシフトは一気に加速しました」(矢島氏)

*1 エフォートレス:エンドユーザーが商品やサービスを利用するにあたり、ストレスを最小限にして快適に利用できること。

一方で浮き彫りになった課題も。それは「企業の対応は、本当にお客さまのためになっているのか」ということです。

「デジタル化して問題解決するまでの“流れ”が確立できていないのです。端的にそれが現れたのはチャットボットでしょう。編集部が実施している消費者サーベイの結果を見ると、チャットボットが問題解決の手段として最適かは疑問が残ります。解決できる内容は増えているものの、導線や検索効率など、使い勝手の観点からは顧客視点が不足しているように感じます。

また、データ連携も充分とはいえません。複数のチャネルを用意していても、データベースで情報が一元化されていないケースが多く、顧客はチャネルが変わるたびに同じことを聞かれるなど、チグハグな対応になってしまっているのが現状です」(矢島氏)

矢島竜児氏 | 月刊コールセンタージャパン編集長

では、このような課題を解決していくためには何が重要となるのでしょうか。矢島氏は、「顧客理解をさらに進めること」だと強調します。

「コンタクトセンターにおける活動の大きな柱の1つにVOC(Voice of Customer、顧客の声)活動がありますが、それをさらに進めなければなりません。VOCをベースにした、よりパーソナライズ化されたOne to Oneのコミュニケーションが実践できるはずです。

そこで必要になるのは、声だけではありません。お問い合わせの前後には、何らかの行動が伴うはずですので、そのアクティビティを把握し分析することが必要です。特にデジタル上の行動については把握できるはずですので、顧客がWebサイトのどこを目指していて、どこでスタックして、その結果としてどのようなコミュニケーション手段を選んだのかを理解するべきでしょう」(矢島氏)

矢島氏は、そのためにはITソリューションの導入だけでなく、デジタル人材の確保や教育も必要になると言います。

「データを通じてカスタマージャーニーを読み解くことができるデジタル人材が、コンタクトセンターなどの顧客接点の現場にも必要になってくると考えられます。コンタクトセンターでは、顧客対応が“解決案件”として完了したら、そこから何か改善素材を導き出す分析はあまりされません。

しかし、例えばウェブマーケティング部の担当者が見れば、『なぜこの電話がかかってきたのか』などの異なる観点も生まれ、それを改善できればエフォートレスにつながります。この役目はITの知識だけに長けた人材では難しいため、顧客に近い立場の人材がデジタル環境での行動を把握・分析できる素養を身に付けなければならないでしょう」(矢島氏)

「コンタクトセンター」のCXを高める課題解決法

これらの潮流は、コンタクトセンター向けソリューションやコンサルティングサービスを提供するNTT Comも肌で感じているそうで、担当の安田真太朗は次のように明かします。

安田真太朗 | NTT Com ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部

「お問い合わせのトレンドは、大きく3つに集約されます。1つ目はオムニチャネル(*2)で、解決のためにチャットボットやボイスボットといった自動化ツール導入が検討されています。だたし、チャネルが分断されてしまっては顧客体験を高められません。そこで、チャネルをまとめたいというニーズから、他のソリューションとの組み合わせなど、トータルでのチャネル設計や導入の相談も増えています。

2つ目はオペレーターの支援です。通話のテキスト化などAIの活用を含め、オペレーションの効率化をフォローする仕掛けについて相談が寄せられています。

3つ目は、トータルでCXを向上していくために、カスタマージャーニーや、顧客がコンタクトしてくる理由(コンタクトリーズン)をどのように分析すればいいのかなど、データ活用に関する相談が2022年に入ってから顕著に増えています」(安田)

*2 オムニチャネル:さまざまな応対チャネル(電話、Eメール、チャットなど)を提供し、各チャネルの応対データを統合することで、顧客へ一貫した体験を提供する方法。

こうしたニーズに応えるために、NTT Comでは、オムニチャネル実現に、チャットボットとボイスボットの各サービスとコンタクトセンター基盤を一元的に提供しています。またオペレーターを支援する音声認識サービスやデータ分析サービスも用意しています。そして、それらをより効果的に利用できるモデルとして、「CX向上デザインパターン」を準備しました。オムニチャネル、オペレーター支援、データ活用で真の価値を得るためには、単品のソリューションを導入するだけではなく、トータルでのデザインが求められます。

「コンサルティングサービスを提供する際に、CX向上のための全体像を定義してお客さまとディスカッションしたところ大変好評でしたので、システム構成のベストプラクティスをもとにした“たたき台”として利用できるパターンを作成しました。

NTT Comも自社のコンタクトセンターを運営しており、常によりよいCXを実現するために進化しています。それに伴ってデザインパターンもアップデートを続けていきます」(安田)

CX向上デザインパターンの全体イメージ図

デザインパターンはCX向上を進めていくための羅針盤として助けになるだけでなく、事前にシステム間の連携を検証しているため、システム導入のスピードアップや負担軽減にも貢献し、各企業特有の取り組みや機能の実現に注力できます。

デザインパターンにないソリューションをすでに導入済みの場合にも、「既存のソリューションを活かしながら、新たにデザインパターンを再定義することも可能です」と安田は説明します。

デザインパターンの作成で特に意識したことについて、NTT Comの石原瑛美は次のように説明します。

石原瑛美 | NTT Com ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部

「きちんと顧客の行動を可視化することが非常に重要だと考えており、そのためには各チャネルのデータを1カ所に集める必要があります。そこで、フロントのチャネル間連携はもちろん、裏側のデータベースも一元化することを念頭にデザインパターンを作成しました」(石原)

そのためコンタクトセンターを利用する顧客は、どのチャネルを利用しても一定水準以上の顧客体験を受けることができます。また企業は利便性が高いうえ、データを連携させることでITを最大限活用したエフォートレスな体験を提供できるのです。

顧客接点とコンタクトセンターの未来

顧客接点におけるCXを向上させて、エフォートレスなコンタクトセンターを築く取り組みは、まだ始まったばかりです。これから取り組む企業は、どのようなファーストアクションを取るべきでしょうか。矢島氏は、「コンタクトリーズン」の可視化だと話します。

「簡単なこと、当たり前のことだと思うかもしれませんが、顧客がコンタクトしてくる理由は、多くの会社では感覚的に理解しているだけで数値化できていません。まずはコンタクトリーズンをデータとして分類することが、重要なファーストアクションだと思います」

では、コンタクトリーズンの可視化などに取り組んだ将来、コンタクトセンターの姿はどうなっているのでしょうか。矢島氏は、オペレーターの役割が大きく変わっていくだろうと予想します。

「この先、数十年は人手不足を解消できないでしょうから、少数精鋭にならざるを得ません。お問い合わせの大半は、デジタルを中心としたエフォートレスな自己解決手段へとうまく“ナビゲート”するようになり、オペレーターはオペレーターにしかできない案件に集中するでしょう」(矢島氏)

そのためにはデジタル活用の高度化だけでなく、CX向上を目的とした横串の組織が必要だと矢島氏は説明します。例えばカスタマーサクセスとカスタマーサポートが、ノウハウなどを共有してエフォートレスな顧客対応を実践する。DXはその手段に過ぎません。手段と目的を混同しないためにも、DXではなくCX向上を全社的な目標としたほうがいいという考えです。

同時に、オペレーターの役割も変わっていきます。

「オペレーターがより高度な対応をすることになれば、業務知識やマナーだけのトレーニングは、あまり意味がなくなります。それよりもビジネススキルやコンサルティングスキルを身に付けることが求められます。営業やコンサルタント、あるいはカスタマーサクセスといった職種の人がオペレーターとして活躍することになるかもしれません」(矢島氏)

一方、ソリューションやコンサルティングサービスを提供するNTT Comは、未来のコンタクトセンターのために何を提供しようと考えているのでしょうか。

「データ分析や可視化については、業務を熟知するお客さまならではの切り口を見つけられるよう、サポートしています。また、オペレーター支援の観点では、例えばFAQのレコメンドが初心者でもハイパフォーマーに近づけるようなソリューションを提供できるよう、準備しているところです」(安田)

「もともと弊社は通信キャリアですので、音声領域は非常に得意としており、NTT研究所でも長年にわたって自動言語処理の研究と研究技術を活かしたサービスを数多く提供しています。そしてそれらをよりうまく活用いただけるような支援もさせていただいており、例えばボイスボットソリューション『COTOHA Voice DX』では、フリーダイヤルも含めたトータルの導線設計を一緒にさせていただくことで、高い完了率を誇っています。

また研究技術を活かしたさまざまなデータ活用ソリューションや分析サービスも展開を進めており、人間の手だと誤りや個人差の出るデータ分類をAIによって正しく自動的に行える『COTOHA Insight Detector』は多くのお客さまから興味をいただいております。今後も『ドコモビジネス』というブランドのもとで、コンタクトセンターのCX向上に向けたソリューションを準備していく予定です」(石原)

これを踏まえて、インタビューの最後に石原が強調したのは、提供価値は個々のソリューションが持つ強みだけではないということです。

「ソリューションやサービスを組み合わせて最適化し、カスタマージャーニー全体のエフォートレスを実現すること。それこそが真の目的であり、私たちが提供できる価値なのです」(石原)

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