Co-Create the Future

2024.09.06(Fri)

カルチュア・コンビニエンス・クラブと考える
CX(顧客体験)の未来
~「好き」を軸に、IP、リアル店舗、デジタル技術の融合へ

#データ利活用 #事例 #小売・流通 #CX/顧客体験

#46

日本の小売業界を取り巻く環境は、顧客の消費行動が複雑化・多様化に伴い、EC・リアル店舗問わず、さらなるCX(顧客体験)の向上が求められています。このような状況のなか、「カルチュア・インフラを、つくっていくカンパニー。」をミッションとして常に時代を牽引する顧客体験を生み出してきた、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社(以下、CCC)は、2024年4月25日、旗艦店舗「SHIBUYA TSUTAYA」をリニューアルオープンしました。

新店舗のコンセプトとなった「さまざまなIPとのコラボレーションを軸とする新たなCX戦略」の狙いはどこにあるのでしょうか。CCC戦略店舗開発本部の楠部一樹氏、武藤史子氏をゲストに迎え、昨年10月にリニューアルに先立って行われたIP×XRイベント『V-Stage SHIBUYA TSUTAYA』を共催したNTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)第四BS部の古川敦・足立楽斗とともに、新たな顧客体験価値の創造について語らいました。

目次


    「好きなもので、世界をつくれ。」に込めた想い

    足立楽斗(以下、足立):先頃、リニューアルオープンしたSHIBUYA TSUTAYAをはじめ、これまでにもCCCはCD/DVDなどのレンタル及び販売をはじめ、蔦屋書店、蔦屋家電、SHARE LOUNGEなど、時代や地域に合わせて、つねに新しい顧客体験を創出してこられました。こうしたプラットフォームを通じた事業展開の根底にあるもの、顧客体験への想いについてお聞かせください。

    足立楽斗|NTT Com 第四ビジネスソリューション部 Chief Catalyst / Business Producer
    NTT Comに入社後、現在まで、ビジネスプロデューサーとして、主に小売業界お客様と、XR、IP、マーケティング領域の事業共創を手掛ける。大事にしていることは“顧客の目線で考えること”。法人企業やその先にいる利用者、様々な主体の目線で顧客体験とデジタル技術を組み合わせた体験のアップデートに取り組んでいる。

    楠部一樹氏(以下、楠部氏):足立さんがおっしゃるように、CCCというとTSUTAYAや蔦屋書店といったリアル店舗を運営している会社とイメージされる方が多いかもしれません。しかし、私たちが目指しているのは、企画会社として、変化する時代に合わせて、世の中に新しいライフスタイルを提案するカルチュア・インフラやプラットフォームを創っていくという考えが根底にあります。

    「顧客を一番知っている人間になる。」これはCCCの行動規範の最初に掲げられている言葉です。顧客体験という言葉が今ほど一般的でなかったころから、時代に合わせて消費者が何を必要としているのか、顧客目線で考えること、顧客に聞くことを創業から重ねてきた会社だと思います。

    楠部一樹│カルチュア・コンビニエンス・クラブ 戦略店舗開発本部 本部長補佐
    カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社入社後、社長室などを経て、2020年よりSHIBUYA TSUTAYA改装PJに参画。プロジェクトの中核メンバーとして市場調査から事業計画作成まで横断的に企画に携わる。現在は、戦略店舗の事業企画、マネジメントに従事している。

    足立:データ活用に関しても、かなり早くから取り組まれているとお聞きしています。

    楠部氏:おそらく小売業界でもいち早くスーパーコンピューターを導入した会社ではないでしょうか。創業間もない、直営店も数店舗しかなかった時代に、約一億円をかけて投資を行い、商品軸、顧客軸などでデータを分析し、活用していました。

    こうした取り組みからできたのがレンタル事業の発注代行という仕組みです。「このロケーションの店舗なら、こういう商品構成にすれば売り上げが達成できますよ」といったデータに基づいた提案ができるようになったことで、爆発的に店舗数が増えていきました。

    現在も、顧客の声をしっかり聞くマーケットインに加えて、定量的なデータを活用して魅力的な店舗をつくるプロダクトアウトの両輪を回すことで、顧客がどうしたら喜んでいただけるのかを探求しています。

    足立:リニューアルオープンしたSHIBUYA TSUTAYAが話題になっています。リニューアルの背景や狙い、店舗のコンセプト、来店者に届けたい価値について教えてください。

    楠部氏:SHIBUYA TSUTAYAでも、これまで同様にマーケットイン、プロダクトアウトの両輪でサービスを企画し提供をしていました。象徴的な例ですと、渋谷駅前を歩く方の声を徹底的に聞いたところ、圧倒的に多かったのが「渋谷にはカフェ、休憩できる場所が少ない」という声です。他の街でもリサーチしたのですが、その中でも渋谷は突出していました。そこで、マーケットインの観点から、座って、くつろげて、楽しめる場所をつくることが決まりました。

    プロダクトアウトの観点での軸が「IP」です。TSUTAYAが40年間、エンターテインメントのコンテンツを提供してきた背景から、いまの時代の流れや、世界の人々にリーチできる唯一無二の立地を活かして、漫画・アニメを中心としたIPコンテンツをリニューアルの軸にしました。

    他の街と比べて渋谷にはIPコンテンツの広告が断トツに多く、街との相性も良く、様々な企画検討のプロセスを経て4月25日、『好きなもので、世界をつくれ。』をテーマとしてSHIBUYA TSUTAYAはリニューアルオープンしました。

    ゆっくりくつろげて、IPをはじめとした顧客の「好き」の楽しみ方が広がる場所として、ここでしかできない体験を、リアル店舗もデジタル技術も活用して発信しています。一方的な押し付けではなく、来店者が自発的に周囲に「好き」を伝えて、共有できる場所になってくれるといいですね。

    古川敦(以下、古川):我々もリニューアル店舗に伺わせていただきましたが、IP書店、ポケモンカードラウンジ、そしてフィギュアを堪能できるシェアラウンジなど、とてもユニークで、“ここでしか味わえない体験”ができる場所になっていましたね。

    古川敦|NTT Com 第四BS部 営業部長 Catalyst / Business Producer
    NTT Com法人事業にSEとして15年間在籍し、金融や流通小売業界向けのPMとして顧客のICT化を支援。2013年より流通小売業界向け法人営業として顧客支援。現在はCatalystとして顧客共創やマーケティングコンサルに従事し、新たなビジネス創出をリードしている。

    足立:私たちNTT Comも、データ活用・XR技術・生成AIやデジタルヒューマンなどのさまざまなソリューションを掛け合わせて、ご提案先の法人のお客さまと、そのエンドユーザーである顧客も含めて、驚きと感動あふれる新たなCX体験をつくっていくことを標榜しています。SHIBUYA TSUTAYAの新たな取り組みに我々もワクワクした気持ちになりましたので、これからもぜひご一緒に新たな事業をつくっていきたいと考えています。

    リニューアルしたSHIBUYA TSUTAYA。IPコンテンツに囲まれたくつろげる空間となっている
    取材撮影は、OPEN HUB Park内の新しいCX体験スペース「CELL4」にて、SHIBUYA TSUTAYA店内の様子を投影しながら行われた

    NTTグループとの共創から生まれた
    新しいCXの可能性

    足立:リニューアルに先立ち、2023年10月には改装休業直前のSHIBUYA TSUTAYAで、NTTグループとのコラボレーションにより、VTuberコンテンツのXR体験型イベント『V-Stage SHIBUYA TSUTAYA』を開催させていただきました。まさにSHIBUYA TSUTAYAのリニューアル後を予見させる、「IPを活用した新しい顧客体験の創出」を形にできたのではと感じています。イベントの際にNTT Comに感じた率直な印象を教えていただけますか。

    武藤史子氏(以下、武藤氏):リニューアルに向けた企画段階で、NTT Comのさまざまなデジタル技術をご紹介いただいたことが、最初のSHIBUYA TSUTAYAとの接点でした。こういう技術がありますよというお話をいただいてきたなかで、技術の紹介を一方的に受けるだけではなく、消費者のみなさまがどのようにその技術を体験されるか? という顧客目線での検討を打診させていただきました。そこで、アイディエーションやワークショップを行うなど、しっかり向き合っていただけたことをきっかけに、アイデアだけではなく、実際にイベントをやってみたいという気持ちを強く持ちました。

    武藤史子│カルチュア・コンビニエンス・クラブ 戦略店舗開発本部 DX企画プロデューサー
    大学卒業後、エンタメ企業、IT企業、教育企業を経て、SHIBUYA TSUTAYA改装PJに参画。
    プロジェクトの中核メンバーとして、顧客体験を起点にしたDX推進及び、タッチポイントのデザインに従事。慶応義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科修了

    古川:SHIBUYA TSUTAYAはいつも店内に人が溢れている状況でしたので、あとはどうデジタルを掛け合わせて新たな顧客体験を創出するかでした。とはいえ、店舗ならではの良さは、デジタルで補完ができない領域もあります。そこで最初はリアルの良さを熟知するCCCのみなさんを、いろいろなテックの場所にお連れして、デジタル体験をしていただきました。その後、武藤さんからの問いを受けて、チーム内でアイディエーションさせていただきました。今回のプロジェクトでは弊社担当者を若いメンバーを中心にアサインしたのですが、「好き」を大前提に仕事をする状況は、メンバーたちにとっても楽しい経験だったと聞いています。

    足立:アイディエ―ションは、実際に店舗ができたら足を運ぶと思われる顧客目線を持つプロジェクトメンバーをペルソナに立て、インタビューしながら進めていきました。さらに地下から最上階フロアまで来店者がどんな風に歩いていくのかを参考にしながら、アイデアに深みを出していったのです。その裏付けのもとでデジタルな体験を組み合わせたことは、私たちにとってもチャレンジでしたが、それが、よい結果につながったと思っています。

    武藤氏:VTuberとのコラボレーションによる新スタイルの「推し活」体験を提供するイベントだったのですが、ご紹介いただいた技術を「点」として活用するだけではなく、ご一緒にワークショップの機会も持ちながら、このイベントが顧客を含むステークホルダーがどのような価値を感じられるか、そのためにはどのような体験を「面」として提供していくのかという検討のプロセス自体にも大きな意味がありました。

    ワークショップなどを通じて、「(イベント来場者が)来店前にどのような情報に触れて、来店中どのような体験をして、来店後に感動した気持ちをどのように発信していただくか」といった、顧客のカスタマージャーニーを考えながらイベントを組み立てられたことは、SHIBUYA TSUTAYAにとって大きな収穫になったと感じています。

    足立:いまのマーケットは売り手市場から顧客第一主義へと変わってきていますが、CCCはその第一人者だと思っています。これからは、私たちもエンドユーザーとしての顧客がどのように思っているのかを考えながらサービスをつくっていく必要がありますので、まさに今回の共創ではたくさんのことを学ばせていただきました。

    VTuberコンテンツのXR体験型イベントの様子。IPを活用し、リアルとデジタルを融合させた新しい顧客体験を提供。大きな盛り上がりを見せた

    リアルにデジタルを重ね合わせた新たな顧客体験へ

    足立: 昨秋のXRイベント、今回のSHIBUYA TSUTAYAリニューアルを通じて得た経験のもとで、これからの顧客体験の創出には、なにが重要になるとお考えでしょうか。

    武藤氏:現代は消費者のタッチポイントがリアル店舗のみならず、アプリ、Webといったデジタル領域に拡大しています。このようなタッチポイントを各々の点としてとらえるのではなく、線や面としてとらえることで、顧客の体験が自然に、スムーズにつながっていくことを意識しています。顧客が何をして、何を感じて、どの様に喜んでいただけるかを常に考えながら体験を設計することが重要だと思います。

    足立:消費者、利用者一人ひとりの驚くような新体験を積み重ねていくことが、新しい文化をつくることにつながってくるのだと思います。NTTグループでも、最先端技術を活かした幅広いデジタルの仕組みを提供していくだけでなく、消費者や利用者のみなさんの五感によるリアルな体験をデジタルに紐付けることを意識する必要があると感じました。

    武藤氏:私たちもリニューアルを経て、いままで以上に多くの来店者をお迎えすることができました。あらためて、リアルな場所に「好き」という気持ちを持って集まっていただく、お客様の熱量を目の当たりにしています。こうした、言葉や数値にはしづらい空気感のようなものを、今後デジタル技術などを活用することで、店舗にお越しいただいた方はもちろん、お越しいただけない方にも広くお届けしていきたいと思っています。

    古川:これまで、CCCとは、代官山T-SITEでのVRイベントや今回のSHIBUYA TSUTAYAでのイベントなど、NTTのデジタル技術を組み合わせた新しい顧客体験を創出してきました。とくに意識したのは、デジタルとリアルの融合です。

    昨今のSNSやインターネットの普及により、コンテンツビジネスがデジタルで完結することが少なくありません。しかし実際に店内イベントに参加したファンのみなさまは、デジタルのコンテンツであろうとも、それぞれの「推し」を持つ仲間たちと共にその空間や時間をリアルで楽しむことに、大きな満足度を感じている様子でした。

    これからも「デジタルとリアルの共存」、店舗展開に溶け込むデジタル体験を顧客目線で考えていくことを意識して、「お店に行ってみたら、これまでにない経験ができてワクワクした」「ネットでも楽しめるが、店舗に行くとより楽しめた」「その空間でこそ体験できるデジタル体験だった」と感じてもらえる、驚きと感動ある新たな顧客体験をつくっていきたいと思っています。

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