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Carbon Neutrality
2023.12.25(Mon)
目次
初めに、グリーントランスフォーメーションの用語の意味や、似ている用語との違いについて解説します。近年のビジネスシーンで必要な定義を押さえておきましょう。
●グリーントランスフォーメーションとは?
「グリーントランスフォーメーション」とは、脱炭素社会へ向けた取り組みのことです。「GX」と略されます。GXでは、脱炭素社会の実現へ向けて、化石燃料から再生可能なクリーンエネルギーへの転換を目指します。また、脱炭素社会に向けた取り組みを通して、経済社会システム全体の変革を目指すのもGXの特徴です。
●カーボンニュートラルや脱炭素との違い
GXとよく似た用語に「カーボンニュートラル」や「脱炭素」などが挙げられます。GXは、カーボンニュートラルを含めた取り組みを表します。
「カーボンニュートラル」とは、温室効果ガス排出量と吸収量を均衡させ、温室効果ガスがゼロになっている状態のことです。また、「脱炭素」とは、さまざまな温室効果ガスのうちでも、二酸化炭素排出量を実質ゼロにする取り組みを指します。国際社会では、国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)のパリ協定などを機に、多くの国がカーボンニュートラル実現を目標に掲げました。
参考:https://www.nec-solutioninnovators.co.jp/sp/contents/column/20230407_gx.html
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「カーボンニュートラルとは?気候変動に対する国や企業の取り組み事例」
●グリーントランスフォーメーションが注目される背景
・地球温暖化をはじめとする環境問題の影響*1
近年は地球温暖化が加速し、世界中で異常気象による自然災害が頻発し、深刻化しています。食料不足・資源不足・物流機能の遮断をはじめとして、社会や経済に大きく影響している状況です。温暖化対策は経済成長のためにも必要不可欠で、環境問題の解決が求められています。SDGs(持続可能な開発目標)にも、こうした地球環境の課題に関連する複数の目標が含まれています。
・国際的なカーボンニュートラルへの転換
2015年のパリ協定で、カーボンニュートラルの実現に関する長期目標が掲げられました。世界では120カ国以上が2050年時点でのカーボンニュートラルの実現に向けて具体的に取り組んでいます。日本では2020年に「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」が示されました。こうした動きに関連して、国内企業でもGXが注目されています。
・ESG投資市場の拡大
ESGとは「環境(Environment)」「社会(Social)」「ガバナンス(Governance)」の単語の略語です。ESG投資とは、企業の経営状況を示す財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンスの3つの要素を考慮して行う投資を指します。ESG投資においては、GXの取り組みの有無が判断材料となっており、世界的に投資家から注目度が高まっています。
合わせて読みたい:
「企業のGX担当者が今考えていること。市場リサーチから読み解く、GXの現在と未来」
・自国のエネルギーの安定供給*2
日本でGXが注目される理由の一つに、国内のエネルギー供給体制のぜい弱さが挙げられます。現状の日本は、エネルギー資源である化石燃料を海外からの輸入に頼っている状況です。将来的なエネルギー安定供給を図るために、日本政府は議論を重ね、GXの実現へ向けた基本方針を示しています。
●DXとの関係性
DXとは「デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)」の略称です。DXはデジタル技術の活用によって人々の生活をより良いものへと変革する取り組みを指します。GXの実現には、DXが大きく関係しています。たとえば、IoTやAIとの親和性の高い電気自動車の普及率が高まれば、結果として脱炭素の取り組みにつながるでしょう。また、DXの施策である紙資料のデジタル化(ペーパーレス化)は、GXにも貢献します。
*1 https://www.unicef.or.jp/kodomo/sdgs/about/
*2 https://www.enecho.meti.go.jp/about/whitepaper/2023/html/1-3-2.html
グリーントランスフォーメーションの実現にあたり、民間企業の参画が重要だと考えられています。企業がGXに取り組むメリット・デメリットをご紹介します。
●企業が取り組むメリット
GXへの取り組みは企業ブランディングの向上につながると期待されています。その理由は、環境に配慮した製品やサービスが社会全体で重視されているためです。環境に配慮した取り組みや企業姿勢を表明することが、取引先や消費者から信頼される評価項目の一つとなっています。それだけでなく、企業が温室効果ガス排出量削減に取り組むと、事業で発生するエネルギーコストの無駄を減らせます。オフィスや工場の水道光熱費といったインフラにかかる費用を抑えられるのもメリットです。
●企業が取り組むデメリット
企業がGXに取り組む際は、初期投資のコストが生じます。たとえば、クリーンエネルギーへの転換や省エネ設備の導入といった施策では、予算が多額になる可能性もあるでしょう。また、GXへの参画が従業員や顧客から賛同を得られないリスクも考えられます。成果をあげるには長期的な取り組みが必須で、短期間で推進すると社内の負担が増加するのが注意点です。綿密な計画を立て、十分な理解を得られるよう事前に丁寧に説明しましょう。
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「人新世のグリーントランスフォーメーション~GXで企業はどう変わるべきか~」
グリーントランスフォーメーションの実現へ向けて、国内ではどのような取り組みが始まっているのでしょうか。日本政府の取り組みをご紹介します。
●GX実行会議
GX実行会議は、日本のGXを推進、実行するために設置された会議です。内閣総理大臣が議長を務め、内閣官房長官、外務大臣や有識者で構成されています。会議の目的は、GXの基本戦略や政策、投資計画を策定することです。2023年2月には「GX実現に向けた基本方針」が閣議決定され、「今後10年を見据えたロードマップの全体像」が公表されました。
●GXリーグ*3
GXリーグは、GXの実現へ向けて積極的に取り組む企業が集い、社会経済システム全体の変革を実践する場です。経済産業省の主導のなか、国内のGX化でリーダーシップをとる企業群が、議論や新たな市場の創出へ挑戦します。賛同企業は産官学と連携しながら、温室効果ガスの排出量削減に貢献し、また企業努力を正当に評価する産業構造を作ります。
これまでの日本企業では、太陽光発電や燃料電池などの分野の技術開発が盛んで、国際的に重要な役割を担ってきました。その一方で、GXの観点から今後ますます国際取引が増加すると見込まれる水素技術の分野に関しては、成長が期待されている状況です。*4
企業同士の連携を強め、技術力を強化することが、GXの実現や海外企業に対する産業競争力の向上につながると期待されています。国内企業のGXに関する自主的な取り組みの一例としてNTTグループの事例をご紹介します。*5
NTTコミュニケーションズでは、2021年に新たな環境エネルギービジョンとなる「NTT Green Innovation toward 2040」を策定しました。GXの分野でリーダーシップを発揮すべきフラッグシップ企業として、2040年のカーボンニュートラル実現を掲げています。具体的には、ワークスタイルを変革しオフィスのCO2削減を実現する「フレキシブル・ハイブリッドワーク」や、温室効果ガスのデータを数値で可視化する「GHG排出可視化PoC」、データセンターを省エネ化する「データセンターのグリーン化」などの取り組みが挙げられます。
合わせて読みたい:
「カーボンニュートラル達成に向けて。NTT Comが取り組むGX」
*4 https://www.pwc.com/jp/ja/knowledge/thoughtleadership/green-transformation.html
*5 https://openhub.ntt.com/journal/3047.html
ここまで、グリーントランスフォーメーション(GX)の基礎知識から企業事例までご紹介しました。近年のビジネスシーンでは、環境に配慮した取り組みが企業を評価する重要な項目の一つとなっています。脱炭素社会の実現を目指して、自社にできる取り組みを見つけて、積極的に実行へ移しましょう。
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