カーボンニュートラル カーボンニュートラル

vol. 12

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カーボンニュートラル達成に向けて。NTT Comが取り組むGX

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CO2排出の実質ゼロを目指すカーボンニュートラル。その達成のためのテクノロジー変革「グリーントランスフォーメーション(GX)」の重要性が増しています。一方で「具体的に何をどうするか」のアクションを模索する企業が多いこともまた事実。そこで、カーボンニュートラル達成に向けて積極的な姿勢を打ち出すNTTグループおよびNTTコミュニケーションズ(以下 NTT Com)が取り組むGXについて、NTT Com ソリューションサービス部イノベーションオフィサーの熊谷彰斉が解説します。

2030年に80%削減、40年にはニュートラル達成を

――2021年にNTTグループはカーボンニュートラルを推進するための新しい指針を発表したそうですね。

はい。新たな環境エネルギービジョンとして「NTT Green Innovation toward 2040」を掲げ、そこでは2030年度にNTTグループの温室効果ガス排出量を2013年度比で80%削減し、2040年度にはNTTグループのカーボンニュートラルを実現すると発表しました。

現在、NTTグループが排出するCO2の95%以上が電力使用にともなうものです。年間で使用される電力量は、オフィスや通信設備、データセンターを通して87.4億kWhとされ、これは日本全体の発電量の1%にあたるほどの量です。

熊谷彰斉|NTTコミュニケーションズ株式会社ソリューションサービス部イノベーションオフィサー
NTTコミュニケーションズにて、業務アプリケーションのSE/PM業務、コンタクトセンター業界向けのSI業務およびクラウドサービスの企画、AI事業「COTOHA」の立ち上げ業務に従事。その後、LINEにて、 AI事業「LINE CLOVA」「LINE AiCall」のAI事業の立ち上げを実施。 現在はNTTコミュニケーションズにてGXおよびHR領域の新規事業の立ち上げに従事している。

メガトレンドとして環境問題、カーボンニュートラルへの取り組みは企業の社会的責任として外せないファクターです。また、CDP※1やSBT※2、RE100※3といった環境にまつわる取り組みを反映した国際的な格付けも重要度が増し、エシカル消費に高い関心を持つエンドユーザーの方々も増えています。あらゆるステークホルダーがカーボンニュートラルを中心とした環境経営への要請を日々、強めています。

――環境問題にコミットしていないと、取引先やお客さまから「選ばれない企業」になってしまう世界になりつつある。

そう思います。企業はすべからくカーボンニュートラルを目指したアクションを起こしていく必要があります。そんななか、NTTグループはフラッグシップ企業としてリーダーシップを発揮していくべきだと判断し、ビジョンを掲げて実現に取り組んでいます。
※1 CDP:英国の慈善団体が管理する非政府組織(NGO)。投資家、企業、国家、地域、都市が自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営している。
※2 SBT(Science Based Targets):パリ協定が求める水準と整合した、企業が中長期的に設定する温室効果ガス削減目標。
※3 RE100:電力源の100%を再生可能エネルギーへシフトする事に取り組んでいる企業が加盟している国際的な企業連合。

自社データセンターとオフィスを「グリーン化」

――NTT Comの具体的な取り組みを教えてください。

自社の取り組みとして3つをご紹介したいと思います。まずはワークスタイルを変革した「フレキシブル・ハイブリッドワーク」、次に「GHG(温室効果ガス)排出可視化PoC」、そして「再エネ・実質再エネの導入等により脱炭素を実現する、いわゆる”データセンターのグリーン化”」です。

「フレキシブル・ハイブリッドワーク」はワークスタイルの変革です。コロナ禍もあってフィジカルディスタンスをとるために、NTT Comはリモートワーク率を70%にまで上げ、従業員一人ひとりが場所や時間にとらわれずどこでも働けるようなインフラとルールを整備しています。狙いは新たなビジネス創出のための生産性向上ですが、同時にリモートワークの浸透により紙の使用量が57%削減を実現したことで用紙由来のCO2排出量の削減とオフィス電力も含めたCO2削減にもつながっています。」

――2つ目の「GHG(温室効果ガス)排出可視化PoC」とはどのような取り組みですか?」

企業は今、CO2をはじめとした温室効果ガスの削減を厳しく迫られています。しかし、具体的に業務の中でどのような行為によってどれほどの温室効果ガス削減がなされているか、非常に見えにくい課題があります。

――現状の把握から目標を設定して、PDCAをまわしていきたいのに、必要なデータを可視化しづらいわけですね。ESGが声高なスローガンだけに見えてしまう一因にもなっていそうです。

そう感じています。そこで、このPoCではオフィスや通信ビル、データセンターごとにどれくらいの温室効果ガスを排出しているかモニタリングして数値で表すことで、将来の排出量や削減必要量、算定ロジックを変更したときのシミュレーションをすることができます。

――カーボンニュートラル達成のために具体的にどれほどの数値目標を設定し、どれほどのスピード感で進めたら効果的かがわかりやすく、精度も高まりますね。

カーボンマネジメントには、分析したい目的に合わせて、データを収集(IoT/システム連携)し、加工・変換することが必要ですが、目的によって分析したい指標が異なり可視化のオーダーもさまざまです。それぞれの狙いや目標値にしたがって柔軟にカスタマイズできるように設計しており、それがこのシステムのストロングポイントになると感じています。

――すでに似たような可視化システムをローンチしている企業は数多ありますが違いはなんでしょうか?

そうですね、数多く存在します。そうした他社システムとの差別化として、利用者の要望をきちんとくみ取り、システムに実現できるコンサルティングが重要な要素だと考えています。私たちの持つコンサルティング力とシステム構築力をあわせて、より良いプラットフォームに発展させたいと考えています。

――3つめの「データセンターのグリーン化」はどのような取り組みなのでしょうか。

データセンターは企業にとって欠かせないビジネスのインフラであると同時に、電力を大量に消費します。

裏を返せば、データセンターのグリーン化は、カーボンニュートラルに果たす影響が極めて大きい。NTT Comは2030年までにデータセンターのカーボンニュートラル化を目指して「電力消費の効率化による省エネ」「再生可能エネルギーの利用促進」に取り組んでいます。

―「電力消費の効率化による省エネ」の具体的な取り組みはどういったものでしょうか。

データセンターが電力を大量に消費する理由は、サーバーの稼働による電力消費だけでなく、それにより発熱する機器を冷却するためです。そこでサーバー機器の効率的な冷却のため、いくつかの新しい仕組みを取り入れています。

多くのデータセンターでは、空調機からの冷気と機器からの排熱を完全に分離して効率的なエアフローを実現する「アイルキャッピング」を採用しました。また、2020年9月に新設した東京第11データセンターでは、外気条件に応じて最適な冷却モードに自動で切り替わることで従来より約60%も省エネになる「間接蒸発冷却式空調」を導入。専用のサーバーを直接冷却液に浸すことで、超高発熱であっても効率的に冷却できる先進の「液浸冷却方式」も利用可能です。これらの高効率な省エネ設計で電力消費量とCO2の削減に成功しています。

――「再生可能エネルギーの利用促進」ですが、データセンターを利用するお客さまにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。

対象となる5つのデータセンターではお客さまのご要望に応じて太陽光、地熱、バイオマスの発電といった再生可能エネルギーの種類が選択できるメニューを用意しています。

また、お客さまは経済産業省が発行する「非化石証書※4」に基づく「環境価値報告書」を受け取ることができます。大規模商用データセンターにおいてエンドのお客さまに非化石証書を提示する取り組みは日本初ではないかと考えます。
※4 非化石証書:CO2を出さない再生可能エネルギーで発電された電気に与えられる「環境価値」を証書化したもの。

――どんな狙いからメニュー化を行ったのでしょうか。

実際にお客さまの声をお聞きしていくと、一口に再生可能エネルギーの利用希望といっても「脱炭素が実現できるのであれば価格をできるだけ抑えたい」「再生可能エネルギーの種別にもこだわりたい」「再エネの証書を発行する実質的な再エネではなく、いわゆる生グリーン(オフサイトPPAなど)を活用したい」など、そのニーズには多種多様なものがありました。そうしたお客さまの期待に応えるべくマーケットイン的アプローチでメニュー化を行ないました。これは、グリーンエネルギーソリューション事業を展開するグループ企業のNTTアノードエナジーとの共創で実現しました。

消費者も巻き込む脱炭素の仕組づくり

――NTT Comでは、それ以外にもGXやESGのためのソリューションを提供・企画されているそうですね。

はい。「グリーンテクノロジー」と「グリーンプログラム」、そして「カーボンクレジット」の3つに大別しています。

一つ目の「グリーンテクノロジー」は先に述べたPoCで磨き上げている可視化システムを「GHG(温室効果ガス)排出量可視化プラットフォーム」として企業向けに提供し、環境経営実現に貢献するサービスです。

二つ目の「グリーンプログラム」は、企業の社員の方および企業の先にいらっしゃる消費者の方々の行動変容を促すのが狙いです。日本ではCO2排出量の約60%がライフスタイルに依存していると言われており、企業だけなく、個人ひとりひとりの活動が大切になってくるためです。

――どのように行動変容を実現するのでしょうか?

エシカル消費に前向きな方が増えているように、「自分もCO2排出量の削減に寄与したい」と考える消費者が増えています。そこで、「グリーンプログラム」は個人や社員の自分自身の電車・車などの日々の行動や、ショッピングや食べ物などの日々の購買行動によるCO2の排出量をビジュアル化し、自分の日々の活動がどのくらい環境に影響しているかを把握できるプログラムです。

また、社員や個人が自身でカーボンオフセットできるサービスも提供していく予定です。例えば、ポイント利用先の1つとして組み込めるように実装し、消費者が「ポイント分を森林保護に寄付してカーボンオフセットする」などを選ぶことができ、自らの環境貢献を行うことができるというような仕組みです。会員を持っている企業は「グリーンプログラム」を会員向けサービスとして追加することにより、消費者と共にサステナビリティ活動による社会貢献の実現し、同時に企業顧客間のより強固なロイヤリティ形成が行えます。

企業側としても、自分たちのお客さまが環境に対して、どんな志向性を持っているかデータから把握できることにより、自社の環境を配慮したサービスの改善を行うことができます。

また、企業として、自社の社員向けに導入することにより、環境に対する意識向上の教育施策および社員によるカーボンオフセットのプログラムとしてもご利用いただけます。

――エシカル消費が企業ブランドを大きく左右するようになっている今、エンドユーザーの方々の「環境への志向性」が可視化できるのは大きな意味がありますね。

はい。ブランディングやお客さまとのエンゲージメントを高めるうえでも貴重なデータになると考えています。

――最後に3つ目の「カーボンクレジット」について教えてください

例えばですが、作物を植えたら、植物であるそれらは発育の過程でCO2 を吸収してくれる。カーボンクレジットは、植物が吸収し、その除去・蓄積した分のCO2をクレジットとして流通できるようにしたものです。緑のグリーンカーボン、海のブルーカーボンなどがあります。カーボンクレジットは一般的に企業が目標のCO2削減量に対して、未達のCO2削減量分のカーボンクレジットを購入して相殺に活用するというイメージが強いのではないかと思います。

カーボンクレジット領域に関しては、SBTイニシアチブのネットゼロ達成に向けた「Neutralization(中和)」の部分、いわゆる、森林や農地、バイオ炭などを活用して、大気中からCO2を吸収する「実際のCO2の吸収・除去」に重きをおき、カーボンクレジット市場の活性化に取り組んで行きたいと考えています。

それによって実際の大気中のCO2の排出量削減の後押しになるだけではなく、例えば、日本にある28万ヘクタールの遊休農地などを有効活用していけば、農家の方の収入も増え、農業の活性化や人材不足の食い止め、また、地方創生にまでつながるかもしれません。

カーボンクレジット化にあたり根拠として大切な作物のCO2削減効果量測定はドローンやIoT、画像認識AI、5Gなどを組み合わせることで精緻に試算できるはずです。NTTグループがこの領域で果たせる役割は大きいと考えています。

――つまり環境問題にも高いレベルで寄与できると。

私はよく「100年後の未来をつくりましょう」と声をかけています。IPCCの報告書では、温暖化対策を取らなかった場合に今世紀末の平均気温は最大4.8度上昇すると予測されています。日本では環境省が発表していますが、2100年に東京の夏の最高気温は43.3度となり、沖縄より高くなっていると言われています。

私たちはその頃までは生きていない可能性が高い。けれど、子どもたち、孫たちの世代は生きている。彼らが住みやすい未来をつくるためには、私たちの今日、明日の行動が結果を左右する。まずは温暖化を食い止める。カーボンニュートラルを実現する。私たちが自社においてもお客さまに対してもできること、やるべきことまだまだ多いと感じています。

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