Carbon Neutrality

2023.06.14(Wed)

企業のGX担当者が今考えていること。
市場リサーチから読み解く、GXの現在と未来

#サステナブル #環境・エネルギー #サプライチェーン
政府による2020年10月の「2050年カーボンニュートラル」宣言以降、日本における温室効果ガス排出の大部分を占めてきた企業は、排出量ゼロに対応した活動体へと移行する最中にあります。OPEN HUBは今回、各企業のグリーントランスフォーメーション(以下GX)担当者に市場調査を実施。GXへの取り組みの現状とそこから得られた実感、今後の展望をレポートします。

OPEN HUBはインターネットモニターによるWebアンケートにて、従業員数1,000名以上の企業におけるカーボンニュートラル・GX担当のビジネスパーソン400名にGXの調査を実施しました。

調査概要
対象者:従業員数1,000名以上の企業に勤めるビジネス従事者
回答方法:インターネットモニターによるWebアンケート
実査期間:2023年2月13日~16日
有効回答数:400人
調査企画:NTTコミュニケーションズ
調査実施:矢野経済研究所

GX(グリーントランスフォーメーション)は、技術開発により環境問題を解決へと導き、社会や産業に変革をもたらす取り組みです。新技術によって持続可能な社会を実現するとともに、経済成長のチャンスが期待されています。

いまやロードマップ公開が多数派に。推進される日本のGX現在地

カーボンニュートラルの実現に向けて、消費・生産活動の世界的な脱炭素化が推進されている昨今。はじめに、勤務先において「GXにどの程度取り組んでいるか」について調査すると、半数以上の55.0%の人が「目標数値/ロードマップを公表して、積極的に取り組んでいる」と回答しました。

また、「公表はしていないが、目標数値/ロードマップを策定して取り組んでいる」も含めると全体の80%に上り、大半の企業で具体的な目標数値/ロードマップを設定しているという結果に。「検討もなく取り組んでいない」という回答はわずか2.3%であり、企業においてGXは着々と推進されていることがうかがえます。

また、勤務先で「GXに関して情報を収集しているか」についての調査では、61.3%の人が「積極的に収集している」、35.0%の人が「可能な範囲で収集している」と回答。両方を合わせると96.3%の人が情報収集を行っており、自社の取り組みだけでなく、社外の状況にも強い関心を持っていることがわかります。

「特に行っていない」という回答は、わずか3.8%と極めて少数であることもわかりました。「GXへの取り組み状況」も踏まえると、総じて企業やビジネスパーソンにおけるGXへの関心は非常に高まっているといえるでしょう。

また、2022年5月に経団連が発表した、CO2排出減に向けて日本が取り組むべき「7つの道筋」をもとに、7つの項目ごとにそれぞれ「取り組んでいるか否か」を調査した結果が下記のグラフになります。

「取り組んでいる」回答が最も多かったのは「ゼロエミッション電源の確保」であり、回答割合は半数以上の55.8%という結果となりました。ほかには、「電化の推進」、「生産プロセスの変革、革新的製品・サービスの開発・普及」、「材料におけるカーボンリサイクル、ケミカルリサイクルの推進」などにも比較的多く取り組まれているようです。

広がるサーキュラー型ビジネスモデル

企業における関心の高さが浮き彫りとなったGX。それでは、実際どのようにGXに取り組んでいるのでしょうか。次は企業にとって大きな関心ごとのひとつであると想定される、サーキュラーエコノミー「5つのビジネスモデル」への取り組みについて調査した結果が、下記のグラフになります。

もっとも高かったのが「回収とリサイクル」で、67.3%と7割近い人が回答しています。2番目に多かった「循環型サプライ」でも56.0%と半数以上の人が回答しており、材料選定や廃棄といった切り口から、サーキュラー型のビジネスモデルに取り組んでいる企業が多い傾向が現れてきました。

また、「シェアリング・プラットフォーム」「サービスとしての製品」といった、ビジネスモデルの抜本的な転換や、新規事業の構築を求められるケースの多そうな項目については、「回収とリサイクル」などと比較すると取り組みが少ないように見えます。

しかし一方で、「GXへの取り組みのフィードバックとして効果があったもの」という調査では、「新しいビジネスモデルの検討/確立」が半数近くの47.1%、さらに「新規事業の開発」も35.4%という結果に。今後はサーキュラー型の新しいサービスがさらに増加していくかもしれません。

「GXに取り組んで効果のあったこと」の回答では「企業イメージの向上」が51.0%ともっとも多く、「社内の炭素排出量の可視化ができた」の49.6%、「社員の意識が変わった」の46.6%など、いずれも半数前後の人がその効果を実感しています。

それでは、GXに取り組む上での課題はどのようなものなのでしょうか。もっとも多くの回答がされたのは「収益との両立」の59.3%でした。半数以上の企業が、GXに取り組みながら収益を確保することに難しさを感じているようです。

また、「GXに対応したビジネスモデルの変革・構築」、「GX推進人材の不足」についても、それぞれ半数近くの人が回答する結果に。GX推進における効果と難しさ、その両面が実感となって数値に現れています。

一方で、「政府の方針が不透明」や「取引先への配慮」といった回答は少数派でした。GXを推進する上での課題感としては、対外的・社会的な懸念や障壁は比較的少ないようです。

推進の波は社会全体へ。見えてきたGXの近未来

それでは、導入が議論されている炭素税についてはどうでしょうか。欧州などではすでに導入されており、日本は取り組みが遅れているとされる炭素税に対しての考えを聞いた結果が、下記のグラフになります。「積極的に採用を支持する」が57.8%となり、「消極的に支持する」の26.8%を合わせると、84.6%の人が支持する考えを示しました。

反対を示す回答はわずか8.5%となり、炭素税の導入に肯定的な回答が多くを占める結果となっています。

また、炭素税の導入と同様に、GX実現に向けて社会全体で取り組んでいこうとする動きのひとつに、GXの「取引先への条件化」があります。そこでGXへの取り組みについての条件化の意向を調査すると、「現時点で条件にしている」が34.5%、そしてもっとも多かった「将来的には条件にする可能性がある」が54.5%と、合わせて89.0%が条件化に肯定的であることがわかりました。

今後は多くの企業に対して、GXに対する取り組みが取引の条件にされる可能性が高まると思われます。そして炭素税への肯定的な回答割合の高さ、企業のGXへの関心や積極性の高さなども踏まえると、日本は今後より一層、GXが推進される社会となっていくことが予見されます。

回答する企業の大多数が、ロードマップを策定してGXに取り組みながら、情報収集を続けていることがわかった今回の市場調査。サーキュラー型事業モデルへの転換や新規事業の開発に効果を実感している企業も少なくなく、社会全体としてもよりGXを推進していこうとする流れが醸成されていることがわかりました。着々と推進される日本のGX。カーボンニュートラルの実現も、こうした企業の取り組みの先に見えてくるはずです。