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Partnership with Robots
2023.01.04(Wed)
目次
「ロボティクス」という言葉にはどういった意味があるのでしょうか。まずは、ロボティクスの意味や、ロボティクス化が加速している背景について解説します。
●ロボティクスの意味
ロボティクスとは、ロボットの制御や設計、製作に関する研究を行う学問分野のことです。ロボット工学とも呼ばれます。センサー技術、電気工学、構造力学、情報工学など、ロボットの運用に必要とされるさまざまな技術や知見について、総合的に研究を行います。
また、ロボットの導入によって人々が直面している課題を解決しようとする取り組みを「ロボティクス化」と呼んでおり、現在は幅広い業界でロボティクス化が進んでいます。
●ロボティクス化が加速している理由
・AI(人工知能)の発達
ロボティクス化が進む理由の一つがAIの実用化です。AIの進化により、すべての要素やデータを人間がプログラムしなくても、ロボットが自分で学習・判断することが可能になっています。これにより、ロボットの活躍シーンが広がりました。従来の工業用ロボットだけでなく、家庭用ロボット掃除機、ドローン、コミュニケーションロボットなど、より人々の生活に密着したロボットでもAIは利用されています。
・オートメーション化の需要の増大
ビジネスシーンにおけるオートメーション化の需要が増していることも、ロボティクス化の推進につながったと考えられています。先進国における少子化による人手不足や、新興国の人件費高騰などが主な理由です。特に単純作業の多い業務分野では、ロボットの導入による自動化・省人化が進められています。
物流業界や製造業界など、さまざまな業界でグローバルにロボティクス化が進行しています。こちらでは、ロボティクス化が進む主な業界や導入が必要な背景などをご紹介します。
●物流業界
作業工程が多く、人手不足が深刻化しているため、業務効率化を目的としてロボティクス化が進んでいます。代表例として、ピッキングロボット、無人搬送ロボット、自律走行ロボットなどの活用が挙げられます。単純作業をロボットに任せることで、従業員のリソースをコア業務に充てやすくなる点が魅力です。
●飲食業界
大手企業を中心に、配膳ロボットや調理ロボットなどが活用されています。人手不足も大きな理由の一つですが、新型コロナウイルス感染症の流行もロボットの導入を後押ししたと考えられます。感染症対策として、従業員と顧客の接触頻度を減らす対応が求められているためです。ロボットの導入によって、人件費の削減や業務効率の改善、顧客満足度の向上、接触頻度の低減などの効果を期待できます。
●介護業界
急激な高齢化の進行により、介護需要の増大が予測されています。国は不足する介護人材を補うための一つの方法として、介護業界におけるロボットやICTの活用を推進しています。
活躍しているロボットの例は移乗介助ロボット、見守りシステム、排泄支援ロボットなどです。ロボットの活用によって、介護者の身体的・心理的な負担の軽減や業務効率化、被介護者の心理的負担の軽減を見込めます。
●医療業界
少子高齢化の影響を受け、医療業界でも医師や看護師の不足が問題となっています。手術ロボットやリハビリロボットなどの導入により、人材不足解消につながることが期待されています。
たとえば、すでに複数の病院では内視鏡手術支援ロボットが導入されています。ロボットによる手術であれば、医師のスキルに左右されることなく、安定して精度の高い手術を提供できます。人の手で行う手術と比べて傷口が小さくなり、出血や痛みなどを軽減できるため、患者への負担が少なくなる点もメリットです。
●製造業界
ものづくりの現場では、垂直多関節ロボットや水平多関節ロボットなどが活躍しています。動きの自由度が高く、製品の塗装や溶接、組み立て、検査、運搬など、あらゆるシーンで自動化を実現できます。
また、製造業界では熟練技術者からの高度な技術を継承する人材が不足しているケースが見られます。複雑な動きが可能なAI搭載のロボットを導入することで、熟練の技術が必要な業務も補えると期待されています。
合わせて読みたい:
「製造現場の強み×AI、日本のものづくりを強化するためには?」
●農業界
農業における人手不足を解消するために注目されているのが、ICTやロボット技術を駆使したスマート農業です。農薬散布ロボットや自走式収穫ロボットなどにより省力化が実現し、少ない人数でも多くの農作物を栽培できるようになっています。指定した経路を自動走行できるロボットトラクターや自動運転田植え機なども導入されています。
*1-1 https://roboin-fa.com/2021/09/24/industry-specific-robot-automation/
*1-2 https://linkwiz.co.jp/topics/column/robotintroduction_20210701/
*1-3 https://minorasu.basf.co.jp/80017
*1-4 https://pitta-lab.com/posts/759657
*1-5 https://www.nikken-totalsourcing.jp/business/tsunagu/column/1178/
ロボティクス化は幅広い業界の課題を解決するソリューションとなり得ます。ただし、導入に際して注意しておきたいポイントもあるため、事前に確かめておきましょう。
●メリット
・従業員の安全確保につながる
高所での作業や高温・低温下での作業、危険物や重量物を取り扱う作業など、危険を伴う業務に対してロボットを有効活用することで、従業員の身体的な安全を確保できます。労働環境が改善されることで、従業員満足度(ES)の向上も見込めます。
・労働力不足を解消できる
ロボティクス化を推進することで業務に必要な人的リソースを減らすことができ、労働力不足の解消につながります。加えて、新しく人材を雇用する場合と比べてコストを削減でき、効率的に労働力を確保できる点もメリットです。
・生産性の向上に役立つ
ロボットは人間のように休憩時間を取らず、長時間にわたって作業を行うことができます。ロボティクス化によって従来よりも生産量を高めることが可能です。自動化による効率化で、さらなる生産性向上も狙えます。
・作業品質を安定化できる
人間が作業を行う場合、個人の力量によって作業品質にバラつきが生じます。同じ人が作業をする場合も、集中力の低下によってミスが起こってしまうことも。ロボットであれば、長時間の稼働でも作業品質の均一化を実現できることがメリットです。
・トレーサビリティの向上につながる
ロボティクス化によって、生産から消費に至るまでの品質管理を従来よりも容易に行えるようになります。不良品が発生したときは原因を特定しやすくなり、すみやかな回収につなげることも可能になるでしょう。
●課題
・導入コストがかかる
ロボットの導入には費用がかかります。本体はもちろん、周辺環境の整備や安全設備の導入、技術者の育成にもコストが必要です。事前に予算や目的を確認した上で導入を検討することが大切と言えます。導入するロボットの種類や目的によっては補助金を利用できる場合があるため、事前に詳細を調べておきましょう。
・技術者を確保する必要がある
ロボットを安定して運用するには、メンテナンスや故障時に対応する技術者の確保が必要です。一部のロボットでは、ティーチングや検査に資格が必要な場合があります。社内での技術者の育成が難しい場合は、外部委託する必要があり、コストがかかる点に留意しましょう。
・トラブルや不具合のリスクがある
ロボットは万能というわけではなく、故障などのトラブルが発生する場合があります。万が一の事態に備えて対策することが求められます。
・オペレーションの見直しが必要になる
ロボットを導入することで、これまでの業務内容が大きく変化することがあります。具体的なオペレーションを再検討し、従業員へ周知することが必要です。
*2-1 https://roboin-fa.com/2021/09/10/6/
*2-2 https://www.robot-befriend.com/introduction/merit/
*2-3 https://robokaru.jp/fundamental-knowledge/industrial-robot-merit/
*2-4 https://www.nikkan.co.jp/brand/irex/2019/arukikata/article/002/01/
*2-5 https://www.matsushima-m-tech.com/technical-information/solution_125.html
ロボティクスの意味やロボティクス化の進む主な業界、実現によるメリットや注意点などをお伝えしました。ロボットの導入によって各種課題を解決することができますが、運用に際しては複数の課題点を考慮する必要があります。メリット・デメリットを比較しながら自社に合うロボットの導入を検討しましょう。
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