Partnership with Robots

2023.05.31(Wed)

人とロボットの共存世界は目前に。
市場リサーチから読み解く、ロボティクスの現在と未来

#IoT #製造 #AI #ロボティクス
AIやIoTの進化・普及も相まって、オフィスや店舗、一般家庭など日常的な場面でも導入が進められているサービスロボット。接客や配送といった人の仕事を代替するロボットのみならず、人とのコミュニケーションやエンターテインメントを用途とするロボットも登場するなど、ロボティクス化が推進される領域は日増しに拡大しています。OPEN HUBは今回、サービスロボットの受容状況について市場調査を実施。ロボット導入へのリアルな反応と、そこから浮かび上がる人とロボットの共存社会への展望をレポートします。

目次


    OPEN HUBはインターネットモニターによるWebアンケートにて、従業員数1,000名以上の企業に勤めるビジネスパーソン400名に、サービスロボット(以下、ロボット)について調査を実施しました。

    調査概要
    対象者:従業員数1,000名以上の企業に勤めるビジネス従事者
    回答方法:インターネットモニターによるWebアンケート
    実査期間:2023年2月10日〜14日
    有効回答数:400人
    調査企画:NTTコミュニケーションズ
    調査実施:矢野経済研究所

    新たな仕事の担い手として普及するロボット

    人に代わって作業してくれるロボット。労働力不足解消への期待も高まるなか、接客や配送などで導入が進められており、ロボットの働く姿は街やオフィスでも散見されるようになりました。人々はそんなロボットの存在をどのように捉えているのでしょうか。

    はじめにロボットの必要性について調査すると、53.5%と半数以上の人が「必要な存在であり、歓迎する」と回答しました。「必要であるが、あまり歓迎しない」の21.8%を含めると、ロボットを「必要」と答えた割合は75.3%と全体の約3/4となり、その必要性はかなり高まっているといえそうです。

    業種別では、製造業や情報通信業といった業種で「必要な存在であり、歓迎する」回答が6割以上と全体平均を上回っていることもわかりました。業種によって、ロボットの必要性についての実感は異なるようです。

    また、勤務先におけるロボットの採用状況についての調査結果は、下記の通りになります。

    「複数の用途で採用している」が9.8%、「特定の用途で採用している」が29.3%という結果となり、全体の約4割程度の企業ですでにロボットの活用が進められていることがわかりました。業種別で見てみると、産業用ロボットが活用される製造業で「採用している」回答が過半数に上っており、サービスロボットの導入にも積極的な傾向がうかがえます。

    次に、自社でロボットを採用していると回答した人に対して、どのような役割で採用されているかを調査。もっとも多かったのは「ヒトの作業を代わりに行ってくれる」というもので、全体の64.1%が回答しています。

    次いで「人の作業をサポートしてくれる」の41.7%、「ヒトのできない作業を行ってくれる」の39.1%と続きます。人の代わりに作業をするだけでなく、人をサポートして協働したり、人にできない高度で付加価値の高い作業をしたりと、人とロボットの共存する環境はすでにさまざまなかたちで実現しているようです。

    さらに、約3/4の人がロボットを「必要な存在である」と回答していることを踏まえると、今後ロボットを採用する企業は増えていくことも予見されます。

    どのような仕事を任せたい? 具体化するロボットの稼働イメージ

    それでは、どんな業務をロボットに代替していけると良いのでしょうか。「ロボットに優先的に置き換えていくべき業務」を調査したところ、もっとも多かったのは「搬送・配送」の46.8%でした。次に多かったのは、「除菌・清掃」の42.3%で、「運ぶ」「掃除する」といった軽作業を優先的に代替していくべきと考える人が多いようです。

    また、「警備」「介護・支援」といった人手不足が問題となっている業務も3割程度の回答があり、こちらもロボットの需要が見込まれる領域といえそうです。

    一方、次の「生活者として普段の生活・仕事のどのようなことでも代替できるロボットが実現したら、もっともしてもらいたいことは何か?」という自由回答調査では、「掃除や調理」、「洗濯」などの家事をしてもらいたいという回答が半数以上を占めました。生活者目線においても、軽作業や、日常的に発生する煩雑な作業をロボットに代替したいという需要が高く見受けられます。

    総じて、日常の中でロボットに仕事を任せるイメージは、すでに具体的に醸成されてきていると考えられそうです。

    ロボットとの“共存”が日本を救う?

    最後に、「もし自分が経営者であったら」という仮定のもとに調査した3つの設問についてまとめます。

    「自分が経営者なら、ロボットを導入したいか」という設問では、40.0%の人が「導入したい」と回答。「導入したいと思わない」は15.3%であり、肯定派が否定派の倍以上の割合を占める結果になりました。ここでも、ロボットの導入に前向きな人が大勢になりつつある傾向がうかがえます。

    また、「ロボットを導入したい」と回答した人にその目的を調査すると、「人手不足解消」と「生産性の向上」の2つが大きく他を引き離す結果となりました。

    「人手不足解消」は71.3%、「生産性の向上」は70.0%と、回答割合は実に7割以上に達しています。労働力不足や生産性の低下があらゆる業界で深刻化する中、ロボットへの期待の顕著な表れと、ロボット需要の高まりが見て取れる結果といえるでしょう。

    一方で、「ロボットを導入したくない」と回答した人にその理由を調査した結果が、下記のグラフになります。もっとも多い回答は「導入すべき業務がない」と「ロボットでは対応できない」のそれぞれ34.4%となりました。

    ロボットは必要か否か、という「ロボットに対する考え」の観点からではなく、ロボットで代替できる業務がない、という意味合いでの回答が主流になっているようです。次いで多かった回答は「導入コストがかかる」「ロボットに関する知識不足」の各19.7%で、ロボット導入にハードルの高さを感じている様子がうかがえます。

    今回の調査で、多くの人がその必要性を実感していることが明らかになったロボット。コスト低減や知識の啓蒙といった側面にはまだ推進の余地があるものの、需要はすでに高まりを見せており、今後ロボットを導入する企業が増えてくることが予見されます。さらなる技術進歩とともに普及していけば、労働力不足や生産性の向上といった社会課題の解決にも貢献してくれることでしょう。人とロボットが共存する、豊かな未来世界の実現は着実に近づいてきているようです。