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Carbon Neutrality
2024.04.12(Fri)
OPEN HUB Base 会員限定
──改めて、お二人のキャリアと循環経済のかかわり方についてお聞かせください。
堀田康彦(以下、堀田):私はIGESにおいて、「持続可能な消費と生産領域」でプログラムディレクターを務めています。IGESはアジア太平洋地域の持続可能な開発・発展の実現に向けた政策提言や研究を行う国際的シンクタンクです。
私自身はこれまで、3R(リデュース・リユース・リサイクル)、循環経済に関してG7・G20が議論していくプロセスを支援したり、東南アジア諸国の循環経済への移行支援を担当してきました。
鈴木与一(以下、鈴木):私はNTT Comにおいてデジタル活用で事業を生み出す分野を担当してきました。近年は、環境にまつわる社会課題とデジタル領域からアプローチすべく、カーボンマネジメント、カーボンクレジット、サーキュラーエコノミーという3つのテーマでの事業検討と企業の支援をしています。
——循環経済が求められてきた背景と日本の現状についてはどのように見ていますか。特に日本の場合は、「もったいない」の文化が3Rと親和性が高く、浸透しているともいわれています。
堀田:持続可能な消費や生産に関する政策は、大きく3段階で発展してきています。第1段階は、大気や水などの環境汚染対策、日本で言えば公害対策のようなもの。それが第2段階では、これまで大量生産・消費されてきた製品の性能を上げるなど、環境問題にどう対処していくかが問題になってきました。たとえばエネルギー効率を上げる、省エネ製品の性能を上げて温暖化対策につなげるといった考え方や、廃棄物を極力出さない製品づくり、廃棄物のリサイクル、トレーサビリティから製品の生産を考えるといったことも第2段階です。
では、第3段階は何が求められるのか。2015年以降、SDGsへの合意、パリ協定における平均気温上昇1.5度以内の努力目標の合意など、長期的なビジョンをもった国際合意が形成されています。3Rで環境負荷を下げていくという考え方から一歩進み、ライフスタイルやビジネスモデル、都市のあり方を変えようとする動きがみられます。ビジネスモデルとしては、ゴミを出さないようにする、使用を終えた製品が製造者などサービス提供者側に戻り、管理・改善されて出てくることが重要。社会全体がこういった方向に進んでいくのが、循環経済の特徴です。
日本は3Rが根付いているという素晴らしい文化がある一方で、さまざまなビジネスモデルが早い段階で便利に提供されているので、そこから抜け出すのが難しくなっている面があるかもしれません。途上国は便利なサービスや商品がなかったがゆえ、循環経済に移行しやすいという土壌があります。
——NTT Comは早い段階から循環経済に向けたチャレンジを始めています。どういった背景から取り組みを始めたのでしょうか。
鈴木:製造業のサプライチェーン、バリューチェーンにおけるデータ活用という事業を検討していくなかで、「トレーサビリティ」がキーワードとして浮上してきました。ただ、トレーサビリティだけでは義務や規制の視点でデータを見るだけにとどまってしまいます。そこで資源をしっかり見て効率化していく、社会課題解決+αの事業を推進していくべきではと考えました。その中で、サーキュラーエコノミー(循環経済)という言葉に出会い、サーキュラーエコノミーを事業テーマとしたのです。また、同じ頃にカーボンニュートラル推進に悩む声を顧客企業から聞き、両方をミックスし、相互の関係性を考えていくという事業領域に進み始めています。
NTT Comの強みはIoT/AIなど、さまざまなデータを収集、蓄積、活用する技術を持っていることです。例えば、シェアバイクの活用データの取得や、EV車のバッテリーのモニタリングなどはもちろん、資源循環のために回収した資源を活用してどういった素材をどのぐらい混ぜることで製品として使えるかをシュミレーションするといったことも可能です。
堀田:トレーサビリティがきっかけというのは、すでに先に挙げた第2段階からスタートしているといえます。データ製品が廃棄物になる、もしくは製造段階で環境に配慮されているのかをデータとして蓄積していくこともこれからは重要になっていきますね。
環境問題において議論するときに頻出するのが、「データが存在しない」もしくは「データを取ることが難しい」という問題です。その意味でも多様なデータを持っているICT企業には、循環経済への積極的な取り組みを期待しています。
堀田 康彦氏
鈴木 与一氏
text by Nayu Kan / photographs by Yutaro Yamaguchi / edited by Kaori Saeki
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