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vol. 07

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地球からのSOS、私たちはどう向き合うべきか?― 地球と人間の“正しさ“を問う書籍5選

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私たちの生活は、常にさまざまな課題や危険と隣り合わせです。環境問題もその課題の1つといえるでしょう。そこで今回は「地球環境と人との関係性を考える本」をテーマに、OPENHUBイベントや取材に参加した有識者5名が選ぶ、オススメの1冊を紹介。迫りくる危機に対して、一人ひとりができることは一体何なのか。
考えるきっかけを与えてくれる必読書です。

地球環境問題は決して外縁の問題ではないー推薦者 石井菜穂子

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私たちは、地球上の自然には限りがなく、それを使ってどこまでも豊かになれると信じてきました。しかし、人類の活動の爆発的な拡大によって増え続ける異常気象や生物種の大量絶滅、大気や海洋の異変など、地球環境は限界に近づき、私たちに重大な警告を発しているのです。

そうした、地球環境問題を客観的かつ網羅的に解説しているのが、プラネタリー・バウンダリー※を主導する科学者グループのリーダー、ロックストローム博士による著書『小さな地球の大きな世界—プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発』です。
※2015年に国連で採択された持続可能な開発目標(SDGs)の基礎となった概念のこと

『小さな地球の大きな世界—プラネタリー・バウンダリーと持続可能な開発』(著:J.ロックストローム M.クルム、翻訳:谷淳也、森秀行ほか /丸善出版)

本書の特徴は、1冊で地球環境問題の全体像を把握できるという分かりやすさにあります。これは、環境問題における危機的課題を解決すべく、今日まで尽力してきた科学者たちの苦難の歴史を体現しているといえるのかもしれません。というのも、本書執筆の背景には、※COP15でのコペンハーゲン合意の失敗を目の当たりにした著者らが、地球環境問題を狭い関係者の中にとどめていてはならないと深く決意したことにあります。
※国連気候変動枠組条約第15回締約国会議

人々が自分ごととして捉えない限り、エネルギー制度、都市制度、食料制度などの制度転換は起こらず、地球環境問題の根本的な解決はあり得ない。本書の分かりやすさの根源は、こうした「自分ごと化」にあるのかもしれません。そして、もう1つの特徴は、随所にちりばめられたクルム氏の印象深い写真です。人類と自然との共生や対立の様を映し出した美しくも痛ましい写真群は、いかに私たちの発展が豊かな地球環境によって支えられているかを教えてくれるとともに、それを未来世代に受け渡す責務が私たちにあることを気付かせてくれます。

腑に落ちた、とある社会の見方ー推薦者 江守正多

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近年、脱炭素を目指すこと自体や、再エネ主力電源化などについての異論は、以前に比べると唱えられなくなってきました。とはいえ、気候変動を考える上で再エネ100%を主張する人たちに対し、ゼロエミッション火力や原発再稼働を残すべきだという主張をする側といった、リベラルと保守の対立を避けられないのが現状です。

そうしたイデオロギーの対立がなぜ起きるのかということを、進化心理学や脳科学も結び付けた学際的なアプローチで、非常に詳しく解説しているのが『社会はなぜ左と右にわかれるのか—対立を超えるための道徳心理学』です。著者であるジョナサン・ハイトが構築した「道徳基盤理論」によって論考された本書は、私たちを人間社会の新しい理解へ導いてくれます。

『社会はなぜ左と右にわかれるのか—対立を超えるための道徳心理学』(著:ジョナサン・ハイト、翻訳:高橋 洋 /紀伊國屋書店)

そもそも、気候変動対策というものは、しばしばリベラル側のアジェンダだと見なされます。これに対する保守側の意見というのは、「電気代を安くするために、脱炭素はほどほどでいい」あるいは、「中国がやらなければ日本はやる必要がない」などといった主張ですが、リベラル側からすると当然、自分たちの主張が正しいのだから、保守側の意見というのは、古い考え方を持った人たちが邪魔をしていると捉えてしまうのです。

しかし、人間の進化的に発達した脳の仕組みとして、ある程度そうした意見が出てしまうのは避けられないのかもしれません。気候変動にまつわる科学の話をしていても、「温暖化はうそだ」という意見が必ず一定数あります。そうした言葉には、科学を理解していないという前提が根本にあるのかもしれませんが、どうしてもそう思いたくなってしまう人が存在する、それが、人間の脳の多様性ということなのです。

社会にはこうした「温暖化はうそだ」と思いたい人たちが一定数出てくることを理解しておくと、環境問題について議論するときの心積もりも大きく変わってくると同時に、そういう前提で議論を進めることができるのです。

直接的に地球環境に関係している内容ではありませんが、すべての事象に置き換えて捉えることができる1冊です。

※プロフィールは2022年4月1日現在

私が伝えたかった危機感は、今ビジネス界で漠然と共有されているような、甘っちょろいものではないー推薦者 斎藤幸平

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気候変動に対する大きな危機感を持って書かれており、残されたわずかな時間で脱炭素化を実現するための戦略を提唱しているのが、マルクス主義研究者であり、気候変動のアクティビスト、アンドレアス・マルム著『パイプライン爆破法 — 燃える地球でいかに闘うか』です。

私自身、著者マルムの暴力を巡る議論に賛同するわけではありません。けれども、ぜひこの本を読んで危機感を覚えてほしいのです。

『パイプライン爆破法 — 燃える地球でいかに闘うか』(著:アンドレアス・マルム、翻訳:箱田徹 /月曜社)

近年欧米では、グレタ・トゥーンベリらの「Fridays For Future」などを中心とした、若者たちの気候アクションが盛り上がりを見せています。しかし、そうした若者たちの非暴力の運動が、大企業や政治家たちを動かすことはできないと、マルムは結論付けます。相手から譲歩を引き出すためには、相手に脅威を与えなければなりません。しかし、子どもたちが学校を休んだり、デモをしたところで、大きな脅威は与えられないのです。

そこで、マルムはヨーロッパの婦人参政権運動やアメリカの公民権運動などを参照し、「暴力」がその役割を与えると唱えます。そこで、地球を守るためにも、化石燃料関連設備を破壊する必要があるのだとマルムは語るのです。その「暴力」こそ、タイトルにもある「パイプライン爆破」にほかなりません。

テロ行為だと、日本人はうろたえるでしょう。ですが、パイプラインはそもそも都市部にありません。代わりに、マルムが狙いを定めているのがSUVと呼ばれる大型高級自動車です。さらに、都市部で富裕層が乗っているSUVのタイヤの空気を抜いてしまえ、と扇動します。もちろん、こうした議論が日本で受け入れられるとは思いません。ですが、世界規模で見るとマルムは大きな影響力を持っており、SUVのタイヤをパンクさせる運動はすでに各地で発生しているのも事実なのです。

こうした議論が世界で共感を呼んでいる事実に思いをはせてみてください。そうすれば「SDGsは大衆のアヘンだ」が過激なんて、もはや言えなくなるはずですから。

※プロフィールは2022年4月1日現在

気候変動問題の教科書ー推薦者 境野 哲

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人々の生活が気候変動を引き起こすメカニズムと、気候変動がもたらす被害について、各テーマ1~2ページで平易な英語により簡潔に解説し、気候変動問題の全体像が短時間で体系的に学べるのが『CLIMATE ACTION ~The Future Is in Our Hands~』です。

『CLIMATE ACTION ~The Future Is in Our Hands~』(by Georgina Stevens & Katie Rewse/360 Degrees)

本書は、熱波と海洋汚染に見舞われた地球で、人々が「No Planet B」「Act Now」と書いたプラカードを掲げるイラストが表紙を飾る、衝撃的かつユニークなデザインな絵本です。気候変動の原因・影響・対策を子どもでも分かるようにカラフルなイラストで図解し、持続可能な社会の実現につながる具体的な行動変容を私たちに呼びかけます。

例えば、「What can we do?」のコーナーには、「ビーチでゴミを拾おう」「肉より野菜を食べよう」「バスタブではなくシャワーを使おう」「冷暖房を控えよう」「飛行機より電車に乗ろう」といった誰でもすぐ始められそうなアクションの具体例が紹介されています。また、気候変動対策に取り組む世界の若者たちの活動も紹介され、子どもだけでなく大人のための環境学習にも使える1冊になっています。

見た目は絵本ですが、まえがきに“This book will help you to understand what climate change means for us” “This book will show you some of the positive and effective actions to combat climate change”と書かれているように、気候変動を客観的データで科学的に理解し、地球生態系と人類を気候危機から救うために、私たち一人ひとりが何をすべきかを教えてくれます。

本書は、1人で読むだけでなく、子どもに読み聞かせたり、あるいは読んで学んだことを発表し意見を交換するなどといった活用もできます。さらには、環境問題に関する英語の語彙も増え、気候変動について世界の人たちと英語で意見交換できるようになるという副次効果も期待できるのではないでしょうか。

人間と地球環境の関係に新たな視点を与えてくれるはずー推薦者 松島倫明

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現代のテクノロジーが向かう情報化、非物質化への流れを踏まえ、テクノロジーもまた生命のように生態系を形成すると解釈することで、見えてくる新たな地平。人間や地球環境とも相互に結ばれているテクノロジーの活動空間を〈テクニウム〉と定義し、テクノロジーの「はじまり」から「これから」について読み解いていく1冊、ケヴィン・ケリー著『テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?』です。

『テクニウム――テクノロジーはどこへ向かうのか?』(著:ケヴィン・ケリー、翻訳:服部桂/みすず書房)

「テクノロジー」という言葉が学問となったのは産業革命以後のことですが、工芸やアートの体系的な秩序というのは当然、太古の昔から存在していました。言うならば、石器や鉄器、農具や建築物のように、私たちは常に、地球の資源を使ってモノをつくり、地球環境に働きかけ、絶えず改変しさまざまなテクノロジーを生み出してきたのです。

こうした技術の「発展」の歴史を改めて眺めてみると、1つの疑問が自然と浮かび上がってきます。「はたしてテクノロジーは単なる人間の道具(ツール)なのだろうか?」これに対して、著者ケヴィン・ケリーは、「情報の流れに根ざしている」という点で生命もテクノロジーも同じだと考える、と述べているのです。なぜなら、生物が進化を遂げてきたように、テクノロジーも総体的に見れば、生命樹のように次々と分岐し、相互に影響を与え合いながら、次世代を自律的に生成していくひとつのシステム(=テクニウム)だと捉えることができるからです。

AI(人工知能)やバイオテクノロジー、宇宙開発などといった、生物学的限界を超えるテクノロジーを手にしようとしているいま、テクニウムは単に「過剰なツール」として捉えられるものではなく、テクニウムそのものを、自己生成する創造システムだと捉える視座は、私たち人間と地球環境の関係に新たな視点を与えてくれるはずです。

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