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vol. 06

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製造と脱炭素とデジタルの今・未来を考える 「OPEN HUB Base」座談会レポート

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リアルとバーチャルの垣根を越えて、事業共創を促進するためのコミュニティー「OPEN HUB Base」では、領域ごとの専門的な知見を備えたカタリストやエバンジェリストを中心に、さまざまな企業がオープンに情報交換をし合い、Smart World実現のタネを探す機会を提供します。2022年1月から2月にかけてオンラインで開催したのは、欧州が構想を進めるデータ流通基盤「GAIA-X」に関する座談会です。業種を横断して7社が参加した様子をご紹介します。

脱炭素に向けて最前線では何が起こっているのか

NTTコミュニケーションズでは、「OPEN HUB Base」の取り組みの一環として1つのテーマを学び合うオンラインディスカッションを開催しています。今回は「脱炭素・資源循環・SDGsのためのサプライチェーン情報管理基盤の共創」がメインテーマでした。

参加企業は、IHI、アサヒグループホールディングス、オークマ、オムロン、中外製薬工業、デンソーウェーブ、日産自動車(以上、50音順)で、それぞれの個別テーマ毎の分科会に分かれて全3回開催しました。

冒頭では、NTTコミュニケーションズのエバンジェリスト、境野 哲(イノベーションセンター/スマートファクトリー推進室 兼務)より、欧州が構想を進めるデータ流通基盤「GAIA-X」の概要とその背景をレクチャーしました。

境野は「企業間を結ぶグローバルなデータ連携が必要である」と言います。背景に挙げたのが「これからの企業はSDGsや地球規模の問題に対応すべきだ」という、投資家や顧客からのプレッシャーです。

「世界各国が『炭素税』を導入しています。規制が進む欧州では、脱炭素化に遅れた企業の製品やサービスが売れなくなる恐れもある。自社だけでなく、調達先から、納品先、リサイクルされるまですべてのバリューチェーンでデータを開示する必要があるのです。製造業はもちろんのこと、小売業、流通業、銀行、商社、あらゆる業界に影響があるでしょう」(境野)

世界中にいるサプライヤーの情報を集めるのは時間もお金もかかるため、共通化したプラットフォームをつくればシステム構築コストを削減できる……そうした構想の先陣を切ったのが、2019年10月にドイツ政府が発表した「GAIA-X」でした。

安心安全なデータ交換に必要な情報を網羅的に統合する、欧州の社会インフラ。サプライチェーンの情報基盤を相互につなぐGAIA-Xの試みは「壮大な社会実験」だと境野は言います。

欧米の産業界における企業間データ連携の動きや、自動車メーカーが蓄電池の脱炭素・資源循環のためにデータを管理する義務がある「欧州バッテリー規制」も解説。終盤には、DSA(一般社団法人データ社会推進協議会)などがつくる予定の、日本の企業間データ連携基盤「DATA-EX」も紹介しました。

「OPEN HUB Baseの議論は、参加企業の皆さんが主役。お互いが未来の話をして化学反応を起こし、何が飛び出るのかを期待する場にしてもらいたいです」(境野)

ものづくり×脱炭素 最前線の取り組み

続いて、NTTコミュニケーションズが主導するGAIA-X接続トライアルへ参加いただいている企業さまを代表し、オムロン、オークマ、デンソーウェーブから自社の事業紹介とトライアルの模様、脱炭素やDXに関する取り組みを紹介しました。

オムロンは、宗田靖男氏(インダストリアルオートメーションビジネスカンパニー 商品事業本部コントローラ事業部 第1開発部 部長)がプレゼンテーション。社会のオートメーション化に貢献した創業者、故・立石一真氏の「機械にできることは機械にまかせ、人間はより創造的な分野での活動を楽しむべきである」という言葉に触れました。

「オムロンは、世界でも珍しい工業を構築するコンポーネントを1社で持っている企業。私たちが感じているのは、DXなどの変化に生産現場が対応しきれていないという課題です。コロナ禍は需要の急拡大も相まって、人に頼る現場のリスクがさらに深刻化しました。加えて、SDGsやESG経営など企業の公器性を求める国際的な動きが加速しています」(宗田氏)

デモ映像では、オムロンのオランダ工場と草津工場で、使用電力や消費燃料をもとにCO2排出量を自動更新、1分ごとのデータを比較する様子を紹介しました。

「CO2排出の計測デモは、見えにくいものを見える化する価値を示した一例です。GAIA-Xとどう結びつけると実際のビジネスになるか研究調査していますが、オムロン1社でやってもできないので、一緒に最先端に取り組むパートナーさんが欲しいですね」(宗田氏)

オムロンのNXシリーズコントローラと、NTTコミュニケーションズが開発したIDSを用いて構築したテストべッドを接続。接続国や企業の枠を超えたデータモデルの標準化や、GAIA-Xを念頭とした国際データ連携プラットフォームの実用性検証が完了した。

オークマの柴田知宏氏(FAシステム本部 FA開発部)は、NC工作機械やNC装置を手がけて創業124年になる同社の歩みと、近年の変化を紹介。2016年ごろから、切削加工だけなく積層加工をするスマートマシンが提供し始めたことに加え、近年はスマートファクトリーのソリューションを提供していると言います。

まずは、自社で産業機械・工場のCO2排出量算定データモデルの標準化に取り組み、製品ライフサイクルにおけるデータ流通ユースケースを構築。SDGs対応や労働力不足から自動ソリューションの提供が現場に求められているという話題は、オムロンと同じ課題意識でした。

「工作機械の制御装置にOPC UA(インダストリー4.0の標準通信として推奨されているオープン技術)を置き、NTTコミュニケーションズのテストベッドを通して日欧接続データスペースにデータを書き込んで成功したところまで確認しました。今後、デュッセルドルフの支社と実験をしていきます」(柴田氏)

NTTコミュニケーションズとオークマという異なる会社同士の接続では、社内接続しか経験のないIT技術担当者の「やってみないと何が問題になるか分からないことが理解できた」という声が印象的でした。

デンソーウェーブの犬飼利宏氏(執行役員)は、元ロボットの開発者で、現在はグループでIoT関連の技術統括に就いています。2001年にデンソーから分社した同社は、産業機器の巨大ユーザーであるとともに、自動認識、制御システム、産業用ロボットなどの事業を展開。グループ企業に製品を提供して「揉んで」から世の中に出す特徴があります。

「自社とグループのカーボンニュートラル化を果たして、その後、新ビジネスの創出につなげます。例えば今、デンソーグループで取り組んでいる『人工光合成システム』は、CO2をエネルギーに変えるとともに、回収した炭素からカーボンナノチューブを生成することを目指す事業構想です」(犬飼氏)

工場のIoTソリューションでは、1999年から世界130工場にある15万設備を高品質かつセキュアにつなごうとする取り組みを続けています。すでに同社の汎用IoTゲートウェイ「IoT Data Server」500台以上が工場に導入され、5,000台以上の機器が接続されているそうです。

IHIの笠原知諭氏(高度情報マネジメント統括本部 IoTプロジェクト部)は、こうしたサプライチェーン全体の取り組みに対する感想として「自分たちのチェーンの場合、小さな事業者さんがIoTでCO2の排出量をモニタリングして環境価値に変えていくという方策が、資金面でもなかなか厳しい。地道な努力を見える化して、『環境価値』にしていく仕組みを考えなくてはいけないと思う」と述べました。

犬飼氏は、グループ工場(工場IoT)以外にも、病院の手術室にあるすべての医療機器に応用した医療IoTや、栽培管理や果実収穫などに応用した農業IoTの話などを紹介し、他社の参加者が聞き入っていました。

異業種でつながることが課題解決のカギ

フリーディスカッションの時間は、プレゼンテーションを受けての質問だけでなく、自社の課題や現場の悩みを共有し、新たなビジネスの協創につなげようとするやり取りが見られました。NTTコミュニケーションズの境野は「実現するかはともかく、どうすればいいだろうという議論を進め、仲間を増やしていくのが大事」と語ります。

アサヒグループホールディングスでグループのDXを統括する近安理夫氏は、「パートナーが欲しい」と話したオムロンの宗田氏に対して、どんな企業を想定しているか、飲料や食品を手がける企業の立場から尋ねました。

「脱炭素でイメージしやすいのは、物流も一緒に課題解決していける自動車産業ですが、業種を超えて取り組むことで新しい発見・気付きがあるので、さまざまな業種と積極的に取り組む姿勢が大切。今、保険や金融業とも接点がありますが、共有データベース上の情報が盗まれたといったケースにどう対応するかという例を考えているからです。これまでつながりのなかった企業とも、どんどんつながりたいです」(宗田氏)

「物流だと、私たちのグループにはロジスティクスの会社があるものの、飲食店舗までの卸しや運送を担う協力会社にお願いしています。つまり、スコープ1(事業者自らのCO2排出)とスコープ2(エネルギーの使用に伴うCO2の間接排出)より、スコープ3(事業者の活動に関連するサプライチェーン全体のCO2排出)の影響が大きいビジネス。自動車からのエミッションを測る仕組みなどは、私たちもぜひ欲しいです」(近安氏)

IHIの星野輝男氏(高度情報マネジメント統括本部 IoTプロジェクト部)は、オークマの柴田氏に「重工業の私たちも素早く変化し続けたい。ただ、製品をつくるプロセスのCO2管理はこれから着手する段階。どれくらい現時点で実現できていますか?」と質問。「現状はラインを管理するレベル。製品1個単位で実現することが最終的な目標だ」(柴田氏)と答えました。

中外製薬工業の安藤久禄氏(デジタルエンジニアリング部 IT開発グループ)は、「米国FDAやその他の法規制の基準に適合するよう、データの信頼性を担保することの強化が必要になった」という医薬品業界の背景を解説。そのため、自社ではSAP社の ERPシステムを生産領域にも利用している。また、「環境データに関しては、10年ほど前から工場データからCO2排出量を算出するモジュールを調査中ながら、まだ採用していない」とも報告しました。

日産自動車の高田真吾氏(グローバルISデリバリー本部 生産&サプライチェーンマネジメントシステム部)は、今後のコネクティッドカーの普及に触れて、「これからは走行車のCO2排出量を計測しなくてはいけなくなる」という認識を述べました。そのうえで、自動車業界とNTTグループへの期待を告げます。

「日本の自動車会社は、コンペティターとして健全に競争しなくてはいけない部分がありながら、お互い『同じところで悩んでいたらもったいない』という課題は協力し、時間をかけずに解決することも必要。そういう活動をNTTグループにリードしてもらえれば、日本のものづくりを底上げできるんじゃないか」(高田氏)

さらに、GAIA-Xへの参加について「プラットフォームにデータを提供しないと、CO2の排出削減に対して非協力的だとみなされるのは避けるべきです。支配をされずに、フェアに競争ができる仕組みはどんなものか。GAIA-Xというハブを利用しながら、不都合があれば離れられるという自由度が欲しい」(高田氏)と問題提起しました。

「NTTグループとしても『1つの標準で通信しましょう』という考えはあまりなく、ヨーロッパ側にも日本側にもマルチインターフェイスのネットワーク基盤を用意して、なんでもつながる選択肢を示したいですね」(境野)

「そんなアプリケーションが日本から出るのを期待しています」(犬飼氏)

座談会を終えて

2時間のセッションを終えて聞かれたのは、こうした声でした。

「2030年に向けて、私たちのグループも情報システムを整備していきます。スコープ3が大きくなる会社なので、そこに対するソリューションをパートナーさん含めて見出していきたいです」
(アサヒグループホールディングス・近安氏)

「新たな出会いや気付きがあり、ワクワクする2時間でした。オープンな世界に向けて、自分たちが使いたいものを提案していくといいと分かりました。それが『良いものだ』と採用されれば、他社も同じインターフェイスを持ち始める。そんな夢の世界へ、NTTグループに引っ張ってもらいたい。参加した皆さんとは、ビジネスの観点でぜひ一緒に何かをやらせてほしいと思います」(オムロン・宗田氏)

「これから自分たちが取り組むべき課題が再認識できて、非常に勉強になりました。さらに、それらは1社だけで解決できないエコシステムでやるべきことだとも実感します。課題を解決した後も、さらに他の利用価値やビジネスモデルを考えていかなくてはならないので、こうした各社の事例を紹介し合う集まりをまた一緒にしたいです」
(オークマ・柴田氏)

「先進的な取り組みをしようとすると、海外製の設備やコンピューターシステム、製造管理や品質管理システムを使うことも多いですから、海外に目を向けていくことは重要だと感じています。製薬会社は欧州バッテリー規制に直接の関係はありませんが、似た制限も出ています。海外では偽薬への対応として、シリアルIDを振ったバーコードがついた薬でないと販売できない事例などです。今日の話は大変勉強になりました」(中外製薬工業・安藤氏)

「各社が抱えている課題に共通しているものを感じました。これまで産業別のサイロで強みを磨いてきましたが、社会課題が複雑化する中、新しい結合で価値を生み出していくのが大切だと思います。キーワードは『協創』。グループとして脱炭素社会の実現に向けて責任を果たしつつ、CO2の排出削減に努力されている、特に中小企業さんに対して技術で貢献していきたいです」(IHI・星野氏)

「CO2に関しては今、標準争いにあると思います。私たちは世界初の量産EV『リーフ』を発売するなど、常にリーディングカンパニーであろうとしていますが、充電設備1つ取っても自動車産業における標準争いは非常に厳しい。フィジカルだけでなく、今後はデジタル領域でも同じでしょう。機会があれば、私たちの取り組みや悩んでいることを共有させてもらいたいです。NTTグループにはソリューションプロバイダーの役目もありますが、ハブの役割も果たしてもらうことを期待しています」(日産自動車・高田氏)

「脱炭素はスピーディーに進めなければいけないテーマ。日本から産業向けデジタルデータ共有の仕組みをつくろう、と政府も話しています。生産現場やデジタル化の実情をよく分かっている皆さまも一緒に、『こういう仕組みがないと困る』と声を上げていきましょう。私たちのOPEN HUBという場を使って継続的に、さらにいろんな業界の企業とディスカッションすることで、新しいソリューションや未来をつくる取り組みを進め、情報発信していきたいですね」(NTTコミュニケーションズ・境野)

3回の開催を終え、さらに続きのディスカッションや、異なる業種のメンバーによる参加への期待をにじませ、大いに手応えを感じた「OPEN HUB Base」の座談会。オンラインでのセッションに加えて、東京・大手町のリアルなスペースでのイベント、さらにウェビナーの開催も行っていく予定です。ディスカッションの輪に加わりたいという企業の皆さまからのご連絡をお待ちしています。

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