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Carbon Neutrality
2022.03.18(Fri)
OPEN HUB Base 会員限定
OPEN HUB Base イベントレポート
――地球環境の危機的状況が今どのような局面にあるのか、そして有限な地球資源の臨界点がどこまで迫ってきているのか、皆さんの現状認識を伺えますか。
斎藤幸平氏(以下、斎藤氏):気候変動に代表される環境問題は、少しの技術のイノベーションや行動変容では到底解決できない深刻なステージに到達しています。そうしたなかで、今日のトークテーマであるグリーントランスフォーメーションを考える際に重要になるのが「人新世」という言葉です。つまり、人間が技術や生産力を発展させ続けることで、地球全体のあり方を変容するほどの力を持った地質時代が到来しているという意味ですね。しかし、私たちが技術で自然を自在に操って、いくらでも生産できる豊かな社会を実現したかといえば、むしろ逆。コロナ禍や気候危機のように、私たちがコントロールできないさまざまな事態を引き起こしています。
これから人類が何世紀もの間直面したことのないような、何十年、あるいは何千年にも影響を及ぼす危機が起こり得るでしょう。その危機を、この事態をつくり出した原因である「技術」のさらなる発展や、経済成長だけで突破できるのでしょうか。ポストコロナの時代へ突入する前に、もう一度、私たちのライフスタイルから考えなければいけません。
石井菜穂子氏(以下、石井氏):私が参加した昨年のCOP26(第26回 国連気候変動枠組条約締約国会議)で明らかになったのは、気候変動の問題は、地球のシステムと人間の経済システムとの衝突の問題なのだということでした。カーボンニュートラルだけでなくネイチャーポジティブに大きな注目が集まったことが大きな成果だと思います。安定的でレジリエントな地球環境、つまり「グローバルコモンズ」を守り、持続可能なものにするために必要な仕組みとは何か。
COP26では、さまざまな資源など私たちがタダだと思って多用していた自然資本を特定し、きちんと価値づけして経済取引に入れていくための重要ないくつかの合意がありました。それらの合意を非常に強い力で後押ししてきたのがビジネスであり、市民であり、金融です。こうした非国家主体の勢いが今、とても強いです。
栗山浩樹(以下、栗山):1972年、子どものころに読んだ「ローマクラブ」に関する記事を思い出しました。それは、100年以内に「成長の限界」が訪れるという予測です。私たちは「成長から均衡の社会へ」という警鐘でした。私たちはこのメッセージをちゃんと受け止めたのか。今度は失敗できないというのがお二人の主張されていることであり、私もそう思います。
産業革命により蒸気機関の発明などで生産(地)と消費(地)が分離・連携可能となり、大量生産、大量輸送、大量消費によって、便利な社会になりましたが、同時に、人間は自然を傷め、環境にネガティブな影響を与えている。そういった状況に対して、私たちの業界が情報通信やICT、あるいはデジタルによって地球との共生をサポートできることは多いはずです。これまでの消費文化や産業経済のシステムを変えていくために技術革新が力になりますし、社会の受容性・柔軟性を高めることに役立ちます。
――消費者のマインドや社会の仕組み、経済システムを変えるために、どうしたらよいと思いますか?
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Carbon Neutrality
脱炭素のために
デジタルでできること