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2024.10.02(Wed)
New Technologies
2025.01.31(Fri)
目次
データ利活用を行うことで、さまざまな効果を得られると期待できます。具体的なメリットを見ていきましょう。
●データドリブン経営を実現できる
データドリブン経営とは、蓄積されたデータを分析し、結果をもとに戦略立案や意思決定を行う経営手法です。従来のように担当者の経験や勘に頼るのではなく、客観的なデータを活用することで、より迅速かつ的確な判断が可能になります。市場のトレンドや顧客のニーズ、業務効率など、経営にかかわる多様な要素を詳細に分析できる点が特徴です。急速に変化するビジネス環境に対応するためにも、データの利活用は不可欠だといえます。
●新しい付加価値を創出できる
業界の最先端に立ち続けるためには、常に新しい価値を生み出し提供することが求められます。しかし、デジタル技術の発展により、企業の競争優位性の確立はいっそう難しくなっています。データ利活用によってリサーチの精度を高めることで、市場の変化を敏感に捉えられるようになり、顧客の期待に応える商品・サービスの実現につなげられるでしょう。
●新規市場の開拓が容易になる
顧客が本当に求めているものを理解するためには、統計・顧客情報・購買履歴などのさまざまなデータを詳しく分析する必要があります。データの利活用は、新規市場の開拓にも効果的です。顧客生涯価値(LTV)を高める施策の立案や、新たな事業の創出につながるでしょう。さらに、データ利活用によって収益減少を予測することも可能です。売上減少の兆しを早期に発見できれば、適切な対策を講じるとともに、事業の継続や撤退の判断を行いやすくなります。
データ利活用を行う際は、主に記述的分析・診断的分析・予測的分析・処方的分析の4つの分析手法が用いられます。基本的な記述的分析からスタートし、段階を踏んで処方的分析へと進みます。各プロセスの概要を確認してみましょう。
●記述的分析
記述的分析の目的は、データを見て「何が起こったのか」を明らかにすることです。大量のデータをもとに現在までの状況を見える化することが特徴です。たとえば、売上データを集計し、月ごとの売上推移を表やグラフなどで可視化します。
●診断的分析
記述的分析の結果を踏まえて「どうしてそれが起こったのか」を明確にするために診断的分析を行います。たとえば、売上が低下したことが判明した場合、顧客行動や市場動向などのデータを分析して理由を特定します。
●予測的分析
予測的分析は「これから何が起こるのか」を見極めるために行います。人の勘に頼るのではなく、蓄積されたデータにもとづいた高度な予測を立てることが可能です。製品需要や顧客行動の変化を予測する場面はもちろん、設備が故障する確率やメンテナンス時期の判断にも用いられます。
●処方的分析
これまでの分析をもとに、「どうすれば最適な結果を得られるか」を導き出すために実施されるのが処方的分析です。起こり得るリスクを想定して回避したり、売上向上の施策を打ち出したりする際に役立ちます。そのため、4種類の分析方法のなかでも、特に高度な分析が求められます。
データ利活用を成功に導くには、どのような点に気をつけたら良いのでしょうか。ポイントを押さえて自社の課題を改善し、成長をめざしましょう。
●データ利活用の対象となるデータを特定する
データ利活用を実施する前に、現状について整理したうえで課題を把握しておくことが重要です。解決すべき問題が明確になっていれば、収集・分析するデータの種類を絞り込めます。課題や悩みに応じて、適切なデータを集められるでしょう。加えて、課題解決に必要なツールを導入しやすくなるのも利点です。
●目的を明確にしてからデータを収集する
データ利活用の際には、まず、目的を明確化して、その達成に必要となるデータを絞り込むことが重要です。例えば目的が「売上の増加」である小売業の場合、必要になるデータは売上やキャンペーンの情報、過去の店舗別データなどになります。
目的を明確にしないと、必要ではないデータ収集を行うことになります。現場の課題を把握して、課題解決につながるツールを導入するようにしましょう。データ利活用自体はあくまで手段です。手段が目的化しないよう注意が必要です。
●人材の確保・育成を行う
経営上の問題を把握し、改善につなげるデータ分析を行うには、専門的な知識が求められます。「データサイエンティスト」「エンジニア」「アナリスト」のように、データ関連のスキルを持つ人材の確保・育成を行いましょう。
●経営層のデータリテラシーを高める
専門的な人材を獲得して社内に配置することも大切ですが、経営層のデータリテラシー向上にも取り組む必要があります。データ解析から得られた結果を経営に活かすためには、データサイエンスに対する一定の理解が求められるためです。理解が不足しているとデータの持つ意味や活用方法を適切に判断できず、明確な指示を出すことが難しくなるでしょう。
●データを全社的に有効活用できる社内環境を整える
部署や部門の垣根を越えてデータ利活用を行うことで、新たな成果の創出につながっていく可能性があります。データ利活用を全社的に実践できるような社内環境の整備を行いましょう。たとえば、データ共有しやすいシステムを構築するほか、必要に応じて組織編制の見直し・改革を行い、部署間の連動性を高めることが大切です。
データ利活用についての理解を深めたいときは、具体的な事例集を参考にしてみましょう。ここでは、データ利活用の主な事例をご紹介します。
●花王
花王はデータ利活用を基盤としたDX戦略を推進しています。データインテリジェンスセンターを創設し、部門横断型の「データインテリジェンス・プロジェクト」を開始しました。シチズンデベロッパーの育成や生成AIの活用を進め、全社員がデータを活用できる環境を整えています。
参考:「「単なるデジタル化」で終わらせない。花王に学ぶ、伝統を未来につなぐDXとは」
●JR西日本
JR西日本をはじめ、NTTコミュニケーションズや大手金融機関4社が連携し、データ活用を基盤とした総合インフラマネジメント事業「JCLaaS(ジェイクラース)」を立ち上げました。データ利活用により、社会インフラの最適化や持続的な管理モデル構築をめざしています。
参考:「日本が安心して暮らせる国であり続けるために。JR西日本×NTT Com「JCLaaS」が実現するインフラマネジメント改革」
●高知県宿毛市
高知県宿毛市は「宿毛ID」構想を推進し、マイナンバーカードを市民カードとして活用する取り組みを進めました。NTTコミュニケーションズと連携し、保育園の登降園管理や公共施設の利用カード化などを実施。初期の不安を乗り越え、3カ月で1,000人以上(市民全体の約5%以上)がID登録を行う結果となりました。
参考:「「使える」マイナンバーカードの未来とは。子どもから高齢者まで、市民行動を変えた地方創生DX(前編)」
参考:「「人と人をつなげるマイナンバーカード利活用」を実現。高知県・宿毛IDにみる、“優しいコミュニティー”のつくり方(後編)」
データ利活用のメリットや分析手法、成功のコツなどをお伝えしました。データ利活用を推進するためには目的を明確化し、適切なツールを活用しながら組織全体で取り組んでいくことが重要です。社内の課題を把握し、目的を明確にした上で、データを有効活用できる環境を整えましょう。必要に応じて専門家の支援を活用するのも有効な手段です。企業の競争力を高め、新規市場の開拓や付加価値の創出へつなげていくためにも、積極的なデータ利活用を実践していきましょう。
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