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2025.03.06(Thu)
この記事の要約
花王は、DXを通じて業務効率化にとどまらず、新たな価値創出を目指している。
2018年にデータ活用を基盤とするDX戦略を本格化し、2024年には「データ知創戦略センター」を設立(2025年1月、データインテリジェンスセンターに改称)、データ利活用を推進している。
消費者の購買行動変化への対応として、双方向型デジタルプラットフォーム「My Kao」を展開し、顧客体験向上を図る一方、社内の縦割り構造を克服するため「データインテリジェンス・プロジェクト」を推進。シチズンデベロッパー育成や生成AIの活用などを通じて、全社員がデータを活用できる環境を整備している。
また、お客さまに強く支持されるシャープな価値提案をし、世界の中で唯一無二の存在となる「グローバル・シャープトップ企業」を目指している。このようなDXの取り組みは、企業変革にとどまらず、日本産業全体の新しいグローバル戦略にもつながる可能性を秘めている。
※この要約は生成AIをもとに作成しました。
林雅之(以下、林):浦本さんはもともと、グローバルIT企業の研究所でインターネット技術の標準化や自然言語処理を研究されていて、現在は花王のDX戦略を推進されています。具体的にどんなことをされているのでしょうか。
浦本直彦氏(以下、浦本氏):花王は2025年1月より、情報システム部門とDX戦略部門が統合され「デジタル戦略部門」となりました。その中で、私は「データインテリジェンスセンター」のセンター長として、データのインテリジェンス化、データ基盤の整備、データガバナンスを通じた花王グループにおけるデータ利活用の推進にあたっています。
林:データインテリジェンスセンターはどのような役割を担っているのでしょうか?
浦本氏:花王は創業以来、生活者に寄り添い、生活を豊かにする商品を提供してきました。その過程で、生活者に関するデータが昔からずっと蓄積されてきています。ただ私が見るに、その豊富なデータにもとづき業務上の意思決定をしたり、アクションを取ったり、ということが当たり前になっているかというと、まだ十分でないように感じています。
データを有効活用するためには、人間が経験から知恵(インテリジェンス)を生み出すように、データから新しい価値を創り出して、意思決定やアクションにつなげていくことが必要です。そのためにはどうしたらいいか、というテーマから「データ知創戦略」というセンター名を付け、DXの核となるデータの利活用領域やAI活用を担当しており、2025年1月には「データインテリジェンスセンター」に改称し、活動を拡大しています。
林:後ほどまた詳しくお伺いできればと思いますが、浦本さんが花王で手がけられている先進的なDX施策のひとつに、部門の壁を越えて自由に全社データにアクセスし価値創造していく「データインテリジェンス・プロジェクト」がありますよね。
私が現在NTT Comで推進している、大容量/低遅延/低消費電力を兼ね備えた次世代情報通信基盤「IOWN」においてのデータセントリックインフラストラクチャー(DCI:データマネジメントを支えるデータハブ・インフラ)領域や、クラウドのアーキテクチャー、ネットワークと連携するAI技術など、幅広いレイヤーでリンクする部分がありそうです。
浦本氏:なるほど。林さんとは、日本でクラウド・コンピューティングが知られるようになってきたころからの長い付き合いですが、今日もいろいろ参考になるお話が伺えそうです。
林:こちらこそ、企業DXの実践に関して浦本さんにいろいろ伺えればと思っています。早速ですが、花王のDX戦略の推進・実践はどのような経緯でスタートしたのでしょう?
浦本氏:まず、花王におけるDXの取り組みについては、現在の社長である長谷部佳宏が2018年に先端技術戦略室を立ち上げ、DX戦略やデータ利活用に向けた全社的な活動がスタートしました。
これと並行して起こっていたのが、消費者の購買行動の変化です。家庭用品もそうですが、特に化粧品は、実店舗よりもドラッグストアやECサイトで購入する、という方が増えてきました。また、Z世代の若者は価値観が我々と異なり、それが購買行動にもあらわれています。
そこで花王も、2022年に「My Kao」というデジタルプラットフォームを立ち上げました。
林:My Kaoとはどのようなものなのでしょうか。ECサイトとは違うのですか?
浦本氏:オウンドメディアとしてお客さまに情報発信しながら、花王の製品やアイデアを体験してもらったり、ともにアイデアを出し合って課題解決のためのソリューションを創ったりする双方向のコミュニケーションプラットフォームである点が、ECサイトとの大きな違いになります。また、そんな複合的で双方向のコミュニケーションをデジタル技術で実現・サポートしていくことは、花王DXの大きな柱にもなっています。
花王はかつて、生活者のもとにインタビューに行ったり、実際にご自宅に伺って日常生活の様子を見学させてもらったりして、潜在ニーズの発掘に勤しんでいました。しかし今は、コロナ禍なども経て対面タッチポイントでインサイトを発掘する機会は少なくなっています。多様で良質なデータを安定して得ていくためにも、時代に合った新しいやり方に対応しなければなりません。
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