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2024.11.20(Wed)

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「使える」マイナンバーカードの未来とは。
子どもから高齢者まで、市民行動を変えた地方創生DX(前編)

#スマートライフ #ヘルスケア #スマートシティ #データ利活用 #事例 #公共 #地方創生 #法規制

#55

高知県の最西端に位置する人口1万8,000人余りの街、宿毛市では、国の令和4年度第2次補正予算にて計上された「デジタル田園都市国家構想交付金 (デジタル実装タイプ マイナンバーカード利用横展開事例創出型/通称:TYPE-X)」の採択を受け、マイナンバーカードの利用シーン拡大に向けた取り組みに着手。マイナンバーカードの空き領域に自治体独自のIDシステム「宿毛ID」を格納することで、市民カードとして、市が提供する各種サービスを利用できる環境を構築し、さらなる市民サービスの向上や行政の効率化を試みています。

今回は、宿毛市副市長をはじめとする宿毛市役所の宿毛IDプロジェクトメンバーが、事業パートナーを務めたNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)の担当者とともに座談会を実施。取り組みを振り返りながら、これまでの手応えや今後の課題、デジタルの力を活用した地方の社会課題解決についての展望などを語っていただきました。

この記事の要約

宿毛市は「デジタル田園都市国家構想交付金」を活用し、「SUKUMO マイナンバーカード市民カード化『宿毛ID』構想」を実施。マイナンバーカードの普及と行政サービスへの活用を目指している。

事業パートナーのNTT Comは、技術面や制度運用の知見を活かし、子どもから高齢者まで利用できる具体的な提案を行った。

主な取り組みは、保育園の登降園管理、公共施設の利用カード化、健康増進のためのポイント付与サービスなど。これらは市民の行動変容を促し、行政のエビデンスにもとづく政策立案を支援する。

産官学が密に連携し、コストや納期の制約の中でも市民目線を重視。今回の前編では、そんなプロジェクトの発足から構想段階を振り返った。

※この要約は生成AIをもとに作成しました。


地域社会の持続性が向上する? マイナンバーカードを「持ち歩く」まちづくり

――まず、今回の「SUKUMO マイナンバーカード市民カード化『宿毛ID』構想」事業がスタートした経緯を教えてください。

上村秀生副市長(以下、上村氏):きっかけの1つは、地方創生DXの促進を目的とした「デジタル田園都市国家構想交付金」の、「マイナンバーカード利用横展開事例創出型(通称:TYPE-X)」という、補助率100%で3億円の支援が受けられる交付金が、令和4年度補正予算限りの時限措置で創設されたことでした。

――全国への横展開モデルとなるカード利用の先行事例を支援する、というものですね。

上村氏:そうです。そのため、「マイナンバーカードの申請率が7割以上」という申請要件があったのですが、当市ではこれまで数年にわたってカードの普及に努めてきたこともあり、2022年5月1日時点で全国市町村の6位となる71.7%の方が取得をされていました。

ただ一方で、「持ちはしたけれど、マイナンバーカードで一体何ができるの?」という声も根強く、市としてはぜひこの機会を活用して、「持つ」から「使う」へとフェーズを進め、マイナンバーカードによるDX推進を図りたいと考えました。

上村秀生│宿毛市 副市長
立ち上げ時は企画課長としてプロジェクトに従事。2024年1月に副市長に就任

――マイナンバーカードを「使う」ことで、どのような課題が解決できると考えられたのでしょうか。

上村氏:課題はいろいろとありましたが、具体的に解決すべきものを見据えて……という前に、そもそもマイナンバーカードを「持ち歩く」習慣がありません。まずは外に持ち歩いてもらえるように、マイナンバーカードを有効利用できるのはどのようなシーンか、子どもから高齢者まで、それぞれ考えるところからスタートしました。

例えば、保育園では、園児の登降園をマイナンバーカードで管理するアプリケーションを構想しました。ほとんどの業務をアナログで行っていた職員、また電話で登降園状況を確認していた保護者の方たちにとってもDXの効果を実感しやすく、小さなお子さんたちがマイナンバーカードに慣れ親しむ機会もできます。

市民全体へのアプローチとしても、すでに導入していた「書かない窓口システム」の利用率の向上や、市の提供するさまざまな施設の利用拡大につながるためのアイデアなどから考えていきました。

高齢者を中心とした、市民の健康増進といこいの場「すくもいきいきサロン」の入口に設置された、宿毛ID読み込みのためのIDリーダー
施設利用者は、入室時にマイナンバーカードをオレンジ部分にタッチすることでポイントが付与される
このポイントは、市民生活を豊かにする施策の実現支援などに利用可能。「自分のためだけでなく、ご家族やお孫さんが喜ぶまちづくりを支援できるのであれば、マイナンバーカードを持ち歩こうと思ってもらえるのでは」といった動機づけから設計された形で市民カード化を実現している

――ちなみに、こうした先進的な取り組みに対しては、もともと積極的な風土があったのでしょうか。

上村氏:そうですね。特にマイナンバーカードについては、全国の市町村に先駆けて普及振興を行っていました。ただ私たちのモチベーションとしては、地方の人口減少の問題は都市部より深刻で、今すぐに手をつけないと「近い将来、組織が回らなくなってしまう」という危機感を職員が持っていたところが大きいと思います。

つまずくところは皆同じ? 市民カード化事業に求められる、産学官のアセット連携

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