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名古屋市・久屋大通公園から始まる、リアルとバーチャルを往還する未来のまちづくり

デジタル技術の活用やコミュニティーの再興など新たなまちづくりが模索されるなかで、「公園」の価値が再評価されつつあります。2020年9月に「Hisaya-odori Park」としてリニューアルを遂げた名古屋・久屋大通公園は、まさに新たな価値を提起する存在になるかもしれません。リアルとデジタルを融合させるこの場所は、いかに生まれ、どこに向かおうとしているのでしょうか。

これからの公園はどうあるべきか

今「公園」のあり方が変わろうとしています。2017年の都市公園法改正により民間事業者が公園の運営に携わる制度「Park-PFI(Park-Private Finance Initiative)」が導入されたことで、単なる憩いの場ではなくコミュニティーを創出し、地域をつなぐ場として再編されているのです。この制度を活用した事例は全国的に増えていますが、なかでも今、日本最大級の活用事例として注目されている公園の1つが愛知県・名古屋市の中心に広がる「久屋大通公園」でしょう。

同公園はPark-PFI制度によって三井不動産が再開発を主導し、2020年9月に「Hisaya-odori Park」として生まれ変わりました。併設された商業施設「RAYARD Hisaya-odori Park」を通じてこれまでにない賑わいを創出するとともに、NTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)との協業によりデジタル技術を活用したエリアマネジメントやリアル空間とバーチャル空間の融合にも取り組んでいます。

「コロナ禍でリモート化やオンライン化が進み、リアルな空間に求められるものも変わろうとしています。まちづくりに携わる企業としても、ハードだけではなくソフトの部分を意識し、新しいコミュニティーや豊かな顧客体験を生み出す場をつくらなければいけないと考えていたんです。公園についても今までの延長線で単に休憩の場を設けたり、商業施設を呼び込んだりするだけでなく、オンラインとオフラインを相互に行き来するような場をつくる必要があると思っていました」

そう語るのは、構想段階から本プロジェクトを牽引してきた三井不動産 商業施設本部の鈴木達也氏です。

(右から)本プロジェクトに携わった三井不動産の鈴木氏、関原氏、NTTコミュニケーションズの山澤。

鈴木氏によれば、本プロジェクトと東京・渋谷の「MIYASHITA PARK」は同時期に開発が進んだ、同社にとって初となる官民連携体制での本格的な公園事業。特に「Hisaya-odori Park」では、コロナ禍を経た新たな「リアル」のあり方を模索しながら計画が進んでいきました。

「これまでは木が生い茂っていて人が寄り付かない公園だったので、安心安全な環境を実現しながら、来園する多くの人がさまざまな使い方で楽しめる多様性をもった公園をつくろうと考えたんです」(鈴木氏)

デジタル技術で「賑わい」と「安心安全」の両立を実現

「もともと弊社は『Smart World』という世界観を実現するためにスマートシティに関する取り組みを進めていたのですが、再開発の事例においても協業を通じて新たな価値を生み出せるのではないかと考えていました。われわれは公園事業について決して精通していたわけではないですが、来園者の視点から課題を抽出し、仮説を提示することで徐々にプロジェクトが具体化していきました」

鈴木氏とともに本プロジェクトを進めてきたNTTコミュニケーションズOPEN HUBのカタリスト※、山澤雄はそう語り、コロナ禍以前から両社がディスカッションを重ねるなかでプロジェクトが進んでいったことを明かします。

公園の果たすべき役割や従来の久屋大通公園が抱えていた課題について両社が話し合うなかで「公園・エリア価値の向上」「管理・運営の効率化」「安心安全な生活」「販売促進・売上貢献」「顧客体験・満足度向上」「防災公園の機能向上」という6つのユースケースの方向性が定まり、共創は進んでいきました。具体的には、一体どんな取り組みが進められているのでしょうか? 同プロジェクトの運営に携わる三井不動産 商業施設本部の関原直也氏は、次のように語ります。

「データを活用したさまざまな取り組みを進めています。すでに進んでいるのはNTTドコモグループのサービス『Area Marketer』を使った人流分析のデータ活用です。これまで把握できなかった、どのエリアからどれくらいの人が公園を訪れているのかという来訪者データの見える化を通じて、さらに多くの方に公園を訪れてもらうための施策を検証しています。安心安全の実現においてはNTT Comの『Takumi Eyes』というAI映像分析エンジンを活用し、異常事態検知の自動化を実現しています」

南北約1kmにわたって広がる久屋大通公園は24時間どこからでも入れるため、人力のみでの警備には限界があります。維持管理や安心安全の観点から見れば入場制限をかければ効率的ですが、久屋大通公園は災害時の避難場所でもあり、柵で囲えば街を分断することになりかねません。公共的で開かれた空間に安心安全をもたらすためには、デジタル技術の活用が必要不可欠。今後は「Takumi Eyes」と警備ロボットを連携させて警備・運営の高度化に向けた実証実験の実施など、さまざまな取り組みを進めます。

さらに、コロナ禍でのライフスタイルの変化をふまえて実施しているのが、リモートで公園を楽しめるVRサイト「Hisaya Digital Park」です。サイトではCGや360度パノラマ写真によって構築された公園や公園内の店舗を自由に回遊でき、デジタル空間からリアル空間へ送客を促すことで新しい顧客体験と公園の価値を創出しています。こうしたデジタル技術の活用を通して、安心安全の提供と賑わいの創出をともに実現しているのです。

Hisaya Digital Park

「共創」が新たな挑戦を可能にする

大規模な公園の再開発や、商業施設を通じた賑わいの創出、デジタル技術の活用など、これらを併せ持った本プロジェクトの実践は、名古屋市にとっても三井不動産にとっても新たな取り組みとなっています。

「本プロジェクトは名古屋市との共同事業であり、目指す公園像やそれを実現するサービスのあり方についての共通認識は欠かせません。そうしたなかで、行政機関および自社においても、なぜわざわざ公園にデジタル技術やデータを活用するかを問われることも多く、データ管理の安全性や公園の将来像について山澤さんと一緒に何度も説明したことで、プロジェクトが生み出す価値について理解していただけたように思います。リアルな場のためにデジタル技術を活用するという弊社の考えをNTT Comに理解していただいたうえで密なコミュニケーションを重ね、共創のパートナーとして課題感やビジョンについてすり合わせられたこともプロジェクトが実現できた大きな要因です」(鈴木氏)

「ここ数年、データ利活用による新しいビジネスモデルやユースケースの創出に多くの企業や自治体が取り組んでいますが、十分に成果が出ていないことも事実です。とくに日本ではデータ活用に馴染みがなく、さらにウォーターフォール型でサービスやシステムを実装することに慣れてしまっているため、新しいアイディアが生まれても具現化するまでに時間がかかることも多い。しかし、今回は『まずはやってみよう!』という考え方を三井不動産のみなさんと共有して、アジャイル型にプロジェクトを推進する環境や体制を実現することで素早く仮説検証のPDCAサイクルを回せたことが成功につながったのではないでしょうか」(山澤)

鈴木氏や山澤によれば、すでに社内外から多くのポジティブな反響が届いているといいます。公園の再開発やオープンな空間でのデジタル技術の活用、リアルとバーチャルの融合など、これまでにない取り組みだったからこそ注目も高まったのでしょう。

「外から見ても何が行われているのかわかりやすく、『変わったね』と多くの方から言われますし、以前と比べて子どもや若者の数も増えました。今後もみなさんの意見を反映しながら、新たな公園のあり方を模索したいですね。これまでの『公園』の延長線上にあるものだけでなく、イベントの実施やデジタル技術の活用を通じて、新たな楽しみを提供していきたいです」(関原氏)

無限の可能性に開かれた公園

言うまでもなく、本プロジェクトは公園のリニューアルや商業施設の完成をもって完結するわけではありません。

「新しい顧客体験を創出することを重視しながら、さまざまなデータの活用を検討しています。いまはまだリアルとバーチャルが分断されていますが、今後はデジタル空間の『Hisaya Digital Park』の機能をアップデートしていき、さらにオフラインとオンラインを融合させる取り組みも進めていきます。具体的には『Hisaya Digital Park』に動画コマースのプラットフォームを実装して来訪者の皆さまに新しい購買体験を提供したり、XRの技術を活用して公園を訪れた人もバーチャル空間のイベントやコンテンツを体験できるようにしたりするなど、どちらの空間にいる人も楽しめる環境をつくれたらなと」(山澤)

「Hisaya-odori Park」にほど近い立地に「Hisaya-odori Park DESIGN CENTER」が構えられ、ここで議論が行われることも。

従来の「公園」をアップデートする「Hisaya-odori Park」は、久屋大通公園や名古屋市のみならず、あらゆる都市に影響を及ぼしうるものでしょう。このプロジェクトは新たなまちづくりの形を提起するものでもあるのです。

「公園にはまだまだ可能性があると思います。海外を見ても住宅やオフィスではなく公園を中心にコンパクトな都市をつくろうとする取り組みは増えていますが、日本ではまだ公園の使われ方が更新されていません。今回実施した人流データの分析や安心安全のためのソリューションは非常に汎用性が高く、ほかの場所でも活用できるものです。もちろん1つとして同じ公園はないので各公園に沿ったまちづくりを行う必要はありますが、この実績を全国に展開していきたいですね」(鈴木氏)

「わたしはMIYASHITA PARKも担当していますが、同じ公園と言ってもプロジェクトの内容はまったく異なります。一つひとつの公園の特徴を捉えながら、全国の公園がもつ課題を解決するためのノウハウを溜めていくつもりです」(関原氏)

「個々のシチュエーションに合わせながら、わたしたちも新しいまちづくりに向けたDXパートナーとして新たな価値を提供していきます。NTTグループの技術やサービスを結集させて、NTTならではのまちづくりの付加価値を創出していきたいです」(山澤)

「Hisaya-odori Park」は、これからも多様な可能性に開かれていくでしょう。それは地域の人々をつなぐ公園でもあり、これまでにない楽しさを提供する顧客体験の場でもあり、新たなICT活用を模索する実験の場でもあるはずです。豊かなコミュニティーを生み出し都市の変化を牽引する公園の未来は、久屋大通公園から始まっていくのかもしれません。

両社の本プロジェクトメンバー。

※OPEN HUBに所属する、社会課題の探究から社会実装までをリードする、さまざまな分野の専門家。
共創を成功に導くOPEN HUBの「カタリスト」とは?

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