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vol. 07

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メタバースで変わる働き方と顧客接点としてのコンタクトセンター

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コンタクトセンターなどのアウトソーシングサービスを提供するトランスコスモスでは、ワークスタイル変革サービスやソリューションを提供するNTTコミュニケーションズとともに、「バーチャルコンタクトセンター」「バーチャルコミュニケーションサービス」の実証実験を開始しました。これは顧客とのタッチポイントであるコンタクトセンターや店舗をメタバース上に構築するもので、働き手の多様化する働き方をサポートするとともに、顧客との新たなコミュニケーションチャネルを創出する取り組みです。メタバースによって、これからの働き方やビジネスは、どのように変わっていくのでしょうか。両社から話を聞きました。

コンタクトセンターが直面する2つの課題をバーチャル化で解決

—トランスコスモスにおいて、メタバースを活用することに至った背景を教えてください。

光田刃氏(以下、光田氏):トランスコスモスでは、大きく2つの取り組みを必要としていました。1つは人材確保です。日本では労働人口が減ってきていることもあり、東京や大阪など1拠点で集中して採用をするのが困難になりつつあります。そこで私たちは、拠点を地方にも分散し、できるだけ離職率を抑えて退職者が少なくなるように、働きやすい環境を整えてきました。コロナ禍に入ってからは、いち早く在宅勤務も推進したことで、人材確保が容易になり、お客さま企業への業務品質を担保することができています。

一方で、拠点分散や在宅環境ではコミュニケーションの問題が生じます。拠点分散により、スキル格差が生じたり、在宅によりオペレーターが孤独を感じてしまったり、リアルなコンタクトセンターであれば自然に伝わるべき情報が伝わりにくくなったりと、これらの状況を解決する手段を必要としていました。

光田刃氏 | トランスコスモス株式会社 デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括

—もう1つの必要な取り組みは何でしょうか。

光田氏:オンラインコミュニケーションの課題解決です。コロナ禍で対面での接客を避けるようになったことから、当社が提供しているチャットやチャットボットを組み合わせたオンライン接客をお客さま企業に採用いただく機会が増えたのですが、どうしても「リアルでできていたこと」と、「オンラインだからこそできること」の間がうまくつながっていないことに課題感がありました。

宮澤朋成氏(以下、宮澤氏):光田たちと課題解決を探る中で出てきたのが、メタバースです。2022年の1月ごろ、タイミングよくNTT ComからXR(※)領域に取り組んでいると聞き、両社のサービスを掛け合わせてみようという話になりました。メタバース空間でどんなことができるのか、実際に体験してみないと分からないことも多いので、まずはNTTグループが持つ製品を体験させていただきました。

宮澤朋成氏 | トランスコスモス株式会社 デジタルマーケティング・EC・コンタクトセンター統括

—バーチャルコミュニケーションサービスは、これまでの企業と顧客のコミュニケーションを置き換えてしまうのでしょうか。

光田氏:私たちはメタバースをコミュニケーションチャネルの1つだと考えています。メタバースでコミュニケーションを取りたいと考える顧客はこれから徐々に増え、企業も準備していく必要がでてくることが予想されますが、そのときに「点」だけで捉えてしまうと失敗するのではないでしょうか。従来のコンタクトセンター、リアルの店舗、ウェブなどと掛け合わせて「面」にすることでどんなことができるのか。すべて統合して考えていくことで、新たな価値が生まれると考えています。

また、タッチポイントを考えるとき、顧客が希望するチャネルが抜けていると機会損失が生じてしまう可能性があります。メタバースでのコミュニケーションが一般的になったときに備える意味でも、バーチャルコミュニケーションサービスの構築は重要な取り組みだと認識しています。

※XR…VR(仮想現実)、AR(拡張現実)、MR(複合現実)などの先端技術の総称で、今後さまざまな領域での活用が期待されている技術。
参考:https://group.ntt/jp/nttxr/about/index.html

ビジネスに使えるメタバースプラットフォームはまだ少ない

—トランスコスモスからの話を聞いて、NTT Comの皆さんはどのように感じましたか。

南郷史朗(以下、南郷):トランスコスモスのようなBtoBのアウトソーシングサービスの業態で、しかも業界をリードする会社がメタバースを本格的に取り入れるのは、まだ先の話かと思っていたので少し驚きました。コロナ禍で消費者とのコミュニケーション手段としてオンラインのソリューションを取り入れた企業は多くありますが、単にツールを手にしただけでは人材配置やオペレーションの問題が生じてしまい、業務がうまく回らない様子が散見されます。それだけにオペレーションと一体となるバーチャルコンタクトセンター、バーチャルコミュニケーションサービスが果たす役割は大きく、ぜひ一緒にプロジェクトを進めたいと思いました。

南郷史朗 | NTT Com ビジネスソリューション本部 スマートワールドビジネス部 スマートCX推進室(取材当時)

—今回、NTTグループのメタバースサービス NTT XR Coworkingを採用したわけですが、他社のサービスと比較検討されたのですか。

宮澤氏:当然、他社のプラットフォームも見せていただきました。しかし、現在提供されているメタバース空間のほとんどはコンシューマ向けです。私たちは「B to B」と「B to B to C」で事業を展開していますので、セキュリティなどの観点からエンタープライズ向けのプラットフォームが必要です。適しているプラットフォームとしてNTT XR Coworkingを紹介していただき、テストを始めました。

—PoC(概念実証)に向けて、どのような準備を進めていったのでしょうか。

宮澤氏:テストではコンタクトセンターとして利用するために足りない機能について意見を出しつつ、PoCに最低限必要な機能を用意してもらいました。例えば、管理者がオペレーターのログやステータスなどを把握し分析できる管理機能です。

光田氏:オペレーターが使いにくいと使われないものになってしまいますので、UIなどについてもオペレーターの視点で要件をお伝えしました。

—どのくらいの期間でPoCの実施が可能になったのですか。

大石優子(以下、大石):デモを初めて見ていただいたのは5月ごろでしたが、6月にはPoCの契約を結ぶことになりました。

大石優子 | NTT Com ビジネスソリューション本部 第五BS部

青木なつみ(以下、青木):ご要望をすべて6月の1カ月で実装するのは現実的ではありませんでしたので、PoC提供ではスケジュールを重視しました。それでもカジュアルな格好のアバターを男女全員用意したり、リラックスできるように海の休憩室を作ったりといった機能から実現していきました。

青木なつみ | NTT Com ビジネスソリューション本部 SS部 デジタルソリューション部門

PoCを通じて見えてきた課題

—PoCでは、どのような検証を行ったのでしょうか。

宮澤氏:システム部門のメンバーを中心にバーチャル空間の中に入り、システムの不具合や粗がないかをチェックしたり、必要な追加機能について声を集めたりしました。例えば、使いやすさについては、画面や資料を共有するための導線に工夫が必要だというような意見が出ました。また、今まさに在宅プロジェクトに関与しているチームメンバーにも入ってもらい、意見出しに加わってもらっており、OnとOffの切り替えができるように休憩室では、テキストログが保存されないような要件にするなど改善を続けています。

また、コンタクトセンターの運営では、スムーズにエスカレーションができるかが肝です。リアルの場では、管理者やスーパーバイザーが現地でオペレーターの近くに寄り添い解決へと導きますが、在宅環境では管理者が近くにいないため、バーチャル環境を通して今後どのようにエスカレーション対応、オペレーターマネジメントが改善できるのか取り組んでいく必要があります。

南郷:現場が見えると安心感につながります。NTTグループにはデジタル系のウェルビーイングについても研究を行っていますし、メンタルヘルスの観点でも働きやすい環境づくりまで取り組みを広げられれば、よりよいプロジェクトになるのではないでしょうか。

両社の技術を組み合わせたサービスモデルの提供も視野に

—PoCを踏まえて、今後どのような機能が追加されていくのでしょうか。

青木:リアルのコンタクトセンターに近づけるために重要なのは、規模の拡大と共に働く周囲の人々の状況把握です。今、話しかけてもいい状況なのかといったことが分かるようにステータス情報を見えるようにしていきます。また、管理者向け機能では、誰が入っているか、どれくらいの時間使っていたのかといった履歴情報を取れるようにすることで、バーチャルコンタクトセンターの稼働状況を把握できるようにします。

—規模というのは、どの程度を予定しているのですか。

青木:PoC環境では1部屋に20人、合計60人しか入れないのですが、250人まで入れる部屋を用意しようとしています。

光田氏:コンタクトセンターは顧客との接点ですので、関連部署も様子が気になることが多いのですが、リアルの世界でも部門間の分断が起きがちです。バーチャルコンタクトセンターなら気軽に入っていって情報を集めたり、議論の輪に加わったりできるので、これまでにない取り組みが可能になるでしょう。そのような狙いもあって、実用的な規模が250人だと考えました。

—バーチャルコンタクトセンター、バーチャルコミュニケーションサービスでは、今後どのような展開を考えていますか。

宮澤氏:すでにNTT Comに相談しているのですが、NTTグループの技術だけでなく、トランスコスモスがコミュニケーション領域で培ってきた技術を組み合わせて、展開できる新たなサービスモデルを作りたいと考えています。

光田氏:機能要望で言えば、オペレーションをしやすくするために、将来的にはアバターで表情を読み取って感情解析といったことができるようになればいいとか、会話からFAQを瞬時に提示したりとか。コンタクトセンターオペレーションを通じてやれていることをバーチャルの世界で再現し、リアルとバーチャルの境目で良質な体験を埋めるようにしていきたいと思います。

—将来に向けて、NTT Comに対してどのような期待を抱いていますか。

宮澤氏:以前からNTT Comとはお付き合いがありましたが、新しい技術で新しいものを作る取り組みは初めてでした。それなのにスピード感があり、着実にプロジェクトを進められています。大変だと思いますが、業界を牽引するためにこれからも一緒に走ってもらえると助かります。

光田氏:できれば今期中にはお客さま企業に実際にご利用いただき、意見を聞いた上で、NTT Comと一緒に機能の充実を図って標準化まで到達したいですね。

南郷:バーチャル領域は、NTT XRというブランドを掲げてNTTグループを挙げて取り組んでいます。我々のR&Dも含めた力を結集して、トランスコスモスのアイデアや前に向かうスピードを止めることなく、次のステージに進んでいきたいですね。

青木:ビジネスシーンでのメタバース活用にはまだ正解がない中、こうして意見をいただきながら一緒に作らせていただけるのはありがたい機会であり、楽しいチャレンジです。オフィスでもなく、自宅でもなく、バーチャルオフィスやバーチャルコンタクトセンターで働くのが一番快適で楽しいと感じてもらえるような環境が作れればうれしいですし、そこに向けて頑張っていきたいです。

大石:もともとご利用いただいていたフリーダイヤルやナビダイヤルといった音声サービスは、今後も残るでしょう。一方で、新しいコミュニケーションの姿、今よりボーダーレスなコミュニケーションの姿を一緒に作っていけることが、とても楽しみです。
リアルでもオンラインでもできなかったことを実現しようと挑む今回のメタバースの取り組みは、まさにその1つでしょう。今後も継続的に貢献していきたいと考えています。

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