Carbon Neutrality

2026.07.08(Wed)

スマートグリッドとは?仕組みとメリット・デメリット、事例を解説

私たちの社会に必要な電力は、データ活用によって従来よりも効率的に届けられるようになります。地域における電力の不足・余剰を把握することで、無駄をなくして電力の最適化を実現できるでしょう。

そこで注目されているのが、ICTを活用した次世代型エネルギーシステム「スマートグリッド(Smart Grid)」です。スマートグリッドは再生可能エネルギーの利用促進や停電リスクの低減といった観点でも注目を集めています。

この記事では、スマートグリッドに関する基礎知識や、メリット・デメリット、導入事例などを解説します。

目次


    スマートグリッドの定義と仕組み

    はじめに、「スマートグリッド」の定義や仕組みについて解説します。従来よりも効率的な電力供給を実現する注目の先端技術について、まずは基本から確認してみましょう。

    ●スマートグリッド(Smart Grid)とは?
    「スマートグリッド」とは、ICT(=情報通信技術)を活用した次世代型エネルギーシステムのことです。「Smart Grid」を訳して、日本語で「次世代送配電網」とも呼ばれています。社会にスマートグリッドが導入されると、電力の供給側・需要側が双方向で通信や制御を行い、電力を最適化することが可能です。

    従来の電力網では、大規模な発電所からオフィスや住宅へ一方向的に電気が送られていました。一方、近年はオフィスや住宅における再生可能エネルギーの導入が進み、場合によっては余剰電力が発生するケースがあります。こうした状況下でスマートグリッドを活用すると、地域の電力データを一元管理して、必要なところへ電力を効率的に届けることが可能です。

    ●スマートグリッドの仕組み
    スマートグリッドでは、オフィスや住宅へ「スマートメーター」を設置して、計測した電力使用量・発電量・売電量などのデータを「Energy Management System(EMS、エネルギーマネジメントシステム)」へ送信し、EMSで制御を行う仕組みとなっています。

    スマートメーターとは、電力使用量を自動で計測して電力会社へデータを送信する、次世代型の電力メーターのことです。一般的に地域の電力会社がオフィスや住宅へ設置を行い、既存の電力計の代わりに無償で機器の交換・設置が行われるケースが多くなっています。スマートメーターを設置すると、オフィスや住宅における電力使用量・発電量・売電量などのデータを自動的かつリアルタイムで計測することが可能です。

    EMSとは、オフィスや住宅の電力使用量を最適化する管理システムのことです。このうち、オフィスのエネルギーを管理するシステムは「Building Energy Management System(BEMS、ベムス)」、住宅のエネルギーを管理するシステムは「Home Energy Management System(HEMS、ヘムス)」と呼ばれます。EMSの役割は、スマートメーターから受信したデータを蓄積して分析や制御を行い、電力を最適化することです。

    このように、スマートグリッドでは供給側・需要側をネットワークで結ぶことで、双方向通信による電力データのやり取りが可能となり、地域内におけるエネルギーの最適化を実現する仕組みとなっています。

    スマートグリッドのメリット・デメリット

    スマートグリッドは電力供給の効率化や安定化に貢献する一方で、導入に際してコスト面やセキュリティ面の問題があります。ここでは、スマートグリッドのメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

    ●スマートグリッドのメリット
    ・電気の利用状況を可視化できる
    スマートグリッドによって電力の利用状況がリアルタイムで計測されて可視化されると、電力会社と利用者の双方にメリットがもたらされます。電力会社側は、電力データをもとに地域全体の電力需要を把握して、ピーク時に合わせて柔軟に発電・蓄電の対応ができるようになります。無駄な発電を抑制して効率的に電力を供給することが可能です。一方、利用者はオフィスや住宅における電力消費のパターンを把握して、省エネへ向けて電気の使い方を工夫できるようになります。消費電力の多い時間帯や電子機器を特定して改善することで、効果的に節電できるのがメリットです。

    ・安定した電力供給を実現できる
    スマートグリッドは、データをもとに供給側・需要側の電力量を双方向でコントロールすることで、電力供給の安定化に貢献します。近年はオフィスや住宅に再生可能エネルギーが普及し、小規模な発電設備が各地に分散して設置される「分散型電源」が広まりつつある状況です。太陽光や風力などの再生可能エネルギーはCO2の排出を抑えて発電できることから、環境負荷の少ないエネルギー源として注目されています。ただ、再生可能エネルギーは季節や時間帯によって発電出力が変動するため、安定性の面で課題があります。そこでスマートグリッドを活用すると、データにもとづいて電力の需給バランスを最適化できるようになり、安定した電力供給を実現可能です。再生可能エネルギーを有効活用しながら、社会のエネルギー効率を高められるというメリットがあります。

    ・停電リスクを軽減できる
    スマートグリッドには停電を自動監視して検知する機能が搭載されているため、停電の原因となっている箇所を迅速かつ詳細に特定し、復旧作業を迅速化できます。これにより災害時や非常時に電力供給が滞るリスクを軽減することが可能です。自然災害や火災などの事故によって停電が発生すると、インフラや設備の停止のほか、重要なデータの損失といったさまざまな被害が懸念されます。スマートグリッドが社会に普及すると、こうした停電時のリスクを軽減しやすくなるのが大きなメリットです。

    ●スマートグリッドのデメリット
    ・導入コストがかかる
    スマートグリッドを導入するためには、電力会社・利用者ともにコストがかかる点がデメリットです。一般的に、スマートメーターの費用は電力会社が負担し、BEMSやHEMSの費用は利用者が負担するケースが多くなっています。電力会社は地域全体にスマートメーターを設置する際に、多額の費用を負担することになるでしょう。また、企業や家庭に管理システムを導入する場合は、各自が費用を負担しなければなりません。

    なお、自治体によっては事業者や個人向けにEMSの導入を支援する補助金制度が用意されています。導入コストの負担を軽減するために制度を活用するとよいでしょう。たとえば、埼玉県の「スマートCO2排出削減設備導入事業」では県内中小企業が太陽光発電設備と併せてEMSを導入する経費の一部が補助されます。また、愛知県小牧市の「住宅用地球温暖化対策設備設置費補助金」では、市内の住宅にHEMSを含む設備を導入した場合に補助対象となります。

    【参考】「令和7年度 スマートCO2排出削減設備導入事業」(埼玉県)
    https://www.pref.saitama.lg.jp/a0502/hojokin/r7co2hojo.html

    【参考】「令和7年度 住宅用地球温暖化対策設備設置費補助金」(小牧市役所)
    https://www.city.komaki.aichi.jp/admin/shimin/life/hojyo/jutaku/25459.html

    ・セキュリティ対策が必要になる
    スマートグリッドを導入する際は、サイバー攻撃や情報漏えいに備えたセキュリティ対策が求められます。その理由は、スマートグリッドでは電力会社とオフィス・住宅が双方向通信を行い、ネットワーク上で電力データのやり取りを行う必要があるためです。スマートグリッドは社会を支える電力系統の制御を担うことから、万が一サイバー攻撃を受けた場合は大きな混乱が懸念されます。また、各家庭の電力データには個人のライフスタイルにかかわるプライバシー情報が含まれるため、取扱いに注意が必要です。通信ネットワークを狙った不正アクセスや盗聴を防ぐためにも、電力システムのセキュリティ強化が欠かせません。

    スマートグリッドが導入されるとどうなる?

    スマートグリッドが導入されると、私たちの社会には具体的にどのような変化が起こるのでしょうか。ここでは、未来の社会のエネルギー供給についてご紹介します。

    ●再生可能エネルギーの利用が促進される
    持続可能な社会を実現するために、脱炭素化へ向けた取組みがグローバルに推進されています。国内においても、2050年までのカーボンニュートラルの実現をめざして、「環境基本計画」や「地球温暖化対策推進法」といったロードマップや法律の整備が進んでいる状況です。脱炭素社会への移行において不可欠な施策の一つに、再生可能エネルギーの利用促進が挙げられます。スマートグリッドが導入されると、再生可能エネルギーを有効活用しながら安定した電力供給が可能となります。大規模な発電所で作られた電気と、オフィスや住宅で作られた電気を全体的にコントロールすることで、従来よりも再生可能エネルギーを効果的に利用できるようになり、さらなる普及促進が期待できるでしょう。

    ●コストを管理しやすくなる
    スマートグリッドを構成するスマートメーターやEMSには、電力の利用状況を可視化する役割もあります。企業や家庭で現状の電力使用量が見直されることで、電気代のコストを管理しやすくなるでしょう。既存の電力計では、電力使用量を確認するために検針作業が必要となるため、現在の利用状況を把握しづらいという難点がありました。それに対して、オフィスビルのBEMSや家庭内のHEMSのモニターでは、スマートメーターで測定した30分単位の電力使用量をリアルタイムで確認できます。BEMSやHEMSで利用状況を常に監視する運用によって、電力消費量の傾向を予測・分析して、エネルギーの無駄を低減することが可能です。

    ●停電の際に停電箇所を認知できる
    スマートグリッドには、米国において大規模停電の対策として開発が進められてきた背景があります。送配電網の脆弱性が問題視されていた米国では、2003年に史上最大規模といわれる北米大停電が発生し、約5,000万人が停電による影響を受けました。スマートグリッドを導入すると、電力会社は停電が発生している箇所や停電の原因を即座に把握し、早期復旧へ向けて速やかに対策を講じることが可能です。

    スマートグリッドの取組み事例

    国内において企業によるスマートグリッドの導入が進みつつあります。ここでは、各社の導入事例をご紹介します。今後の電力供給システムの在り方を考えていくために、ぜひ参考にしてみてください。

    ●東京電力パワーグリッド株式会社
    東京電力パワーグリッド株式会社は、2014年よりスマートメーターを導入する「スマートメータープロジェクト」を推進し、2021年3月末時点で全ての世帯および事務所に約2,840万台のスマートメーターを設置しました(※一部困難な箇所を除く)。同社が設置したスマートメーターは、セキュリティを確保したオペレーションセンターで監視が行われています。スマートメーターを設置することで、利用者は30分ごとの電力使用量を把握できるようになり、電気料金の抑制や節電といったメリットを受けられます。このほかにも、検針業務や電気の使用開始・終了の操作を遠隔で行ったり、災害時に停電箇所を把握したりすることが可能です。同社はスマートメーターの導入によって、利用者の負担軽減や業務効率化を実現しています。

    【出典】「スマートメータープロジェクト」(東京電力パワーグリッド株式会社)
    https://www.tepco.co.jp/pg/technology/smartmeterpj.html

    【出典】「スマートメーターの設置状況について 2021年5月7日」(東京電力パワーグリッド株式会社)
    https://www.tepco.co.jp/pg/company/press-information/information/2021/1604025_8921.html

    ●NTTアノードエナジー株式会社
    NTTアノードエナジー株式会社は、各社※と連携して「Internet of Grid(IoG)プラットフォーム」を開発し、岐阜県加茂郡八百津町における実証を開始したことを発表しました。IoGプラットフォームとは、潮流データの分析と蓄電池制御を一体的に行う次世代型の電力流通モデルです。スマートメーターで潮流データを把握し、再生可能エネルギーの発電量が増えた際に電圧上昇や電流容量を抑制し、発電量や連系可能量を増加させる仕組みとなっています。太陽光発電や風力発電をはじめとした再生可能エネルギーの利用を促すにあたり、電力供給の課題解決に貢献します。岐阜県加茂郡八百津町では、2024年9月より自治体やNTTの施設敷地内の蓄電池やスマートメーターで実証が行われている状況です。

    ※大崎電気工業株式会社、日本電気株式会社、NTTテクノクロス株式会社、三菱電機株式会社、株式会社NTT データ東北、NTTテレコン株式会社、株式会社ACCESS

    【出典】『エネルギーグリーン化のための新たな電力流通モデル「Internet of Grid プラットフォーム」を開発~岐阜県加茂郡八百津町における実証の開始~』(NTT アノードエナジー株式会社)
    https://www.ntt-ae.co.jp/site_content/wp-content/uploads/2024/09/NewsRelease_20240920_yaodu-1.pdf

    NTTグループは、再生可能エネルギーの導入拡大へ向けて2024年より早稲田大学とビジョン共有型共同研究に取組んでいます。NTTグループの再生可能エネルギー戦略について、詳しくは以下の関連記事もご覧ください。

    家庭での導入が鍵を握る、再生可能エネルギー戦略の大転換

    スマートグリッドでエネルギーの安定供給や効率化を実現!

    ここまで、スマートグリッドに関する基礎知識や、メリット・デメリット、導入事例などをお伝えしました。社会にスマートグリッドが導入されると、電力の供給側・需要側のデータにもとづいた電力の最適化が可能です。また、再生可能エネルギーの利用促進や停電リスクの軽減によって、持続可能な社会の実現につながります。企業においては電力コスト削減やESG経営の推進といった観点から注目される施策です。

    スマートグリッドは、ICTを活用してよりよい街を作る「スマートシティ」や、地域のインフラを情報ネットワークでつないで最適化する「スマートコミュニティ」に欠かせない技術の一つでもあります。社会の課題解決や価値創出へ向けて、人々の生活の質を高めるためにどのような先端技術が注目されているのか、最新情報を押さえておきましょう。

    NTTドコモビジネスは、スマートシティを実現する「街づくりDXソリューション」によって、安心安全で住みやすい都市の実現を支援しています。ICTを通じて街づくりに役立つ多様なデータを収集するとともに、データ利活用につながる各種ソリューションをご提供します。たとえば、「次世代ネットワークPOL」ではネットワークの省スペース・省エネルギー・コスト削減を実現可能です。このほかにも、屋内外の清掃・配送・警備をロボットで自動化する「マルチロボット最適化ソリューション」、空調制御を自動化する「AI空調制御クラウド」など多彩なソリューションがございます。持続可能な社会をめざすエネルギーマネジメントは、NTTドコモビジネスにお任せください。

    街づくりDXソリューション

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