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2025.07.18(Fri)
目次
──CLOUDYはアフリカ・ガーナの社会課題の解決を目指し、現地生産のアパレルグッズや雑貨を展開されています。カカオの殻をアップサイクルした「CHOCOPEN」プロジェクトはどのようにして始まったのでしょうか。
銅冶氏:プロジェクトのきっかけとなったのは、カカオの殻が日常的に廃棄されている現実を知ったこと。ココアやチョコレート製造に欠かせない原料として、ガーナでは多くの生産者がカカオ栽培を営んでいます。
ある農園を訪れた際、園内には大量の殻が捨てられ、道にまであふれ出していました。いたるところで殻が腐敗していて、そこに発生した蚊がマラリアを媒介しているそうです。
しかし、農園の方々からは「私たちはカカオをつくっているけれど、チョコレートを食べたことがないんだ」という話を聞きます。つまり、もとを辿れば、カカオの殻はチョコレートを日常的に消費している先進国が出したゴミとも言えるのです。
カカオの殻のゴミ問題を意識したのは、このときからです。ゴミ問題にも向き合い、同時に現地の人々の暮らしが改善される仕組みをつくりたい。そうした思いから、このプロジェクトが動き始めました。

──CLOUDYと三菱鉛筆とでは、業態も事業分野も異なります。どのような縁で共創することになったのでしょうか。
銅冶氏:順を追って話すと、もともとはカカオの殻ではなくプラスチックゴミに着目していたのです。ガーナではプラスチックゴミも深刻化していて、これを鉛筆の原料にできないかと考えました。しかし、CLOUDYのアセットだけでは技術的にも設備的にも限界がありました。そこで鉛筆づくりのプロフェッショナルである三菱鉛筆さんとの共創を思いついたのです。
三菱鉛筆の鉛筆には、私も幼少時代から親しんできました。初めて使った鉛筆が三菱鉛筆だった、という人も少なくないでしょう。いわば、鉛筆は子どもの成長を支え、可能性を広げてくれるツールでもある。消費者の人生に寄り添い続けてきた三菱鉛筆さんなら、私たちの取り組みにも理解を示してくれるだろう、と期待がもてました。
数原氏:弊社も環境問題への対策を強化しているので、銅冶さんのプレゼンには共感できる部分が多くありました。技術的にも大きな壁はなく、まずはプラスチックを使った鉛筆の試作品をつくるところまでは進んだのです。
しかしながら、新たな課題が浮き彫りになりました。アップサイクル自体は可能でも、鉛筆を削るたびにマイクロプラスチックが発生してしまうのです。これではゴミ問題の根本的な解決にはつながりません。そこで、カカオの殻を使う方向に舵を切りました。
ところが、カカオの殻のアップサイクルは予想以上にハードルが高かった。粉砕した殻では十分な強度が出ず、開発に携わった研究員は試行錯誤の連続だったと思います。社会実装できるレベルに到達するまで、約3年間を要しました。

銅冶氏:研究員の皆さんには、本当に粘り強く伴走していただきました。ガーナにも20回ほど足を運んでいただき、当初想定していた以上に大きなプロジェクトとなりました。そこまで熱意をもって向き合ってくださるとは思っていなかったので、心から感動しましたね。
──「CHOCOPEN」はCLOUDYの公式サイトで購入できますね。もともと事業化を目的としていたのでしょうか?
数原氏:もちろん、最終的にはビジネスとして成立させたいと考えていました。銅冶さんのプレゼンテーションにも事業の展望が描かれていました。ただ、いきなり収益を生み出すのは現実的ではありません。まず「形にすること」を目指した、というのが正直なところです。
銅冶氏:私たちが取り組む事業は、大義名分だけでは継続できません。だからこそ、きちんとビジネスとして回していくことが必要なのです。とはいえ、すぐに結果が出るものではなく、時間をかけて環境を整えていかなくてはなりません。
もし、数原さんから「一年で結果を出してほしい」と言われていたら、おそらく事業化は難しかったでしょう。2年、3年という長いスパンで伴走してくださることを確約していただけたから、私たちも思い切ってチャレンジができました。

──短期での事業化が難しい共創プロジェクトに、三菱鉛筆として参画するメリットはどこにあったのでしょうか。
数原氏:最初に銅冶さんとお会いしたとき、必ず学びが得られるだろうという期待感がありました。三菱鉛筆は社員の9割程度がプロパーという企業です。相互理解が深まりやすい一方で、チャレンジする機会が少なく、硬直しやすい一面もあります。
しかし、人口減少やデジタル化の影響などで、これまで通りのやり方では企業は生き残っていけません。そんななか、CLOUDYから共創を持ち掛けられたわけです。
CLOUDYのチャレンジ精神を目の当たりにして、うちの研究員たちもきっと鼓舞されたことでしょう。実際、彼らは壮大な夢物語に技術をもって応えてくれました。これはお金には換算できない経験で、当社にとって大きな成果になりました。
──足並みが揃わず、失敗に終わる共創プロジェクトも少なくありません。企業とNPOという異なる性質を持つ三菱鉛筆とCLOUDYが、ワンチームを築けたのはなぜですか?
銅冶氏:三菱鉛筆さんとCLOUDY、そして現地のメンバー……この三者が「このプロジェクトは何のために存在するのか」という目的を共有できていたことが大きかったと思います。
私たちには明確なミッションがあり、ビジョンを長期的な視点で捉える姿勢を共有できていた。ここがワンチームを築くうえでの基盤になりました。
さらに、三菱鉛筆の皆さんがガーナの人々の価値観や生活習慣、規範を真摯に尊重してくださったことも非常に重要でした。現地の生の声に丁寧に耳を傾け、よりよい形を模索してくれたのです。その懐の深さが、このプロジェクトをスムーズに前進させてくれたのだと感じています。

数原氏:少し引いた立場からプロジェクトを見ていた者として「主体性のある人に任せる」ことの重要性を実感しました。誰かにやらされる形になると、良い結果は生まれません。ですから、このプロジェクトに対して研究員が難色を示すのであれば、無理に参画しなくてよいと考えていました。
しかし実際には、そうした消極的な声は一つもありませんでした。やはり、人は機械ではありません。本人の意思や熱意がそのままプロジェクトの推進力になる。だからこそ、プロジェクトの担当者には主体性を持って取り組んでもらうことが大切です。
銅冶氏:トップダウンで押し付けるのではなく、研究員一人ひとりの意思を尊重して参加を募った。数原社長のそういった姿勢がプロジェクトの推進力につながったのだと思います。やるべきか、やらざるべきか──研究員一人ひとりがこの「問い」と真剣に向き合ったことが、一体感を醸成したのだと思います。
その熱量はガーナにも確実に届いています。現地の人たちは「雇用がもっと広がるかもしれない」「もっと面白いことができるかもしれない」と目を輝かせるようになりました。少し前までは、今日を生き抜くことが目標だった彼らが、今では夢を描く段階へと意識を広げています。
──「CHOCOPEN」プロジェクトの展望を教えてください。

銅冶氏:「CHOCOPEN」は、年間およそ数万本を製造しています。1本売れると、もう1本がガーナの子どもたちに届く仕組みなので、実際に販売できるのは半数になります。この数量であれば、現在の私たちの販売チャネルでも十分に対応できます。
しかし、ここで立ち止まるつもりはありません。環境をさらに整え、現地の雇用を増やしていけば、さらに多くの鉛筆を製造も実現できるはずです。規模が大きくなれば、より社会的インパクトの強い取り組みにもつなげていきたいです。日本の教育機関と連携するのも一つの選択肢になるでしょう。子どもたちに「CHOCOPEN」を使ってもらって、ガーナのゴミ問題や先進国の消費行動について学ぶ機会をつくりたいです。
──三菱鉛筆としては今後、どのような形でプロジェクトに関わっていきたいですか?
数原氏:私たちの業界は一企業だけでは大きな変化が生まれにくい側面があります。だからこそ、今回の取り組みのなかで得られた学びは大きかったと感じています。こうした活動をさらに増やしていくことで、私たち自身がレベルアップしていけるのではないかと考えています。
今後は、CLOUDYに限らず、異なる強みを持つ方々とも新しいプロジェクトに挑戦していきたいです。共創の輪が広がっていけば、どこかで「CHOCOPEN」プロジェクトと交わり、さらなる発展につながるのではないでしょうか。
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