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2025.07.18(Fri)
目次
海外に輸出されたリサイクル品が現地で環境負荷を高めてしまっている―そんな実態を創業当初に目の当たりにし、国内8カ所の物流センターで回収品を選別する循環型インフラ事業へ進化した株式会社ECOMMIT(以下、ECOMMIT)。ECOMMIT 上席執行役員 Chief Circularity Officerの坂野晶氏に、今回の共創事業「宅配PASSTO」に至るまでに抱えてきた課題感を伺いました。
坂野氏:「創業当初は日本で使われなくなった農業機械や家電などを引き取り、海外に輸出するというビジネスを行っていました。ところが、日本で回収した不要品は、輸出先で解体されパーツを販売するケースも少なくありませんでした。たとえば電化製品を分解すれば作業者の方は汚染物質に触れてしまうこともありますし、有害物質が流出するリスクも増えていきます。こうした状況を目の当たりにして、このビジネスモデルをアップデートしなければならないと弊社は気付いたのです。つまりすべてのプロセスにおいてトレーサビリティを確立し、環境と経済を両立しながら誰かが不要になったものを次に使いたい方へしっかりと繋ぐことを一気通貫で行う、という意思が弊社の事業の核心部分となります」

そしてまず2023年にローンチされたサービスが、資源循環サービスの「PASSTO(パスト)」でした。これは商業施設やマンション、公共施設などにPASSTOのボックスを設置し、ユーザーが好きなときに不要品を投函することができるという仕組みです。サーキュラーセンターと名付けた資源循環の心臓部となるセンターでは、プロピッカーと呼ばれるスタッフたちが回収品を丁寧に選別し、価値の有無やリユースの可能性などを的確に判断。リユースが難しいものはリサイクルによって再流通させることで、廃棄を最小限におさえます。環境への配慮も担保しながら、課題であったトレーサビリティも実現しました。とはいえ、ECOMMITはさらなるサービス改良の必要性を感じ始めたといいます。

坂野氏:「PASSTOのボックスがある場所へ不要品を持参する手間は、ユーザーにとって小さくないハードルでした。循環型社会に強く貢献したいという意識の高い方はともかく、リユースやリサイクルに貢献する裾野をもっと広げるにはさらに簡易なシステムが必要だと考えるようになったのです。そこで私たちはリスペクトの意味を込め、Amazonに対抗しうるようなサービスを目指そうとしました。クリックすれば翌日商品が届くのと同様に、クリックすれば不要品の回収を依頼できる、そんなサービスを展開したいと考えたのです。では、弊社に足りないピースはどうすれば埋められるのか。これが大きなテーマとなっていきました」
一方、LINEヤフー サステナビリティ推進統括本部の長谷川琢也氏も、社内で課題と直面していました。かつてはヤフージャパンにおいて「Yahoo! JAPAN SDGs」というサービスを立ち上げ、多様な情報発信を推進。グループ再編によってLINEヤフーとなった後は、「Yahoo! JAPAN SDGs」から「サストモ」へとリブランディングを果たしました。こうした流れの中で顕在化したニーズについて長谷川氏はこう話します。
長谷川氏:「『Yahoo! JAPAN SDGs』の時代から、提携企業とともにSDGsの精神や情報を発信するということはできていました。そして国内最大級のコミュニケーションプラットフォームを提供しているLINE社と合併することになり、ではSDGs関連事業としてどんなことができるかを模索するようになったのです。
目指したのは、コミュニケーションも可能で、アクションも引き起こせるプラットフォーム。すでに皆さんの手にあるスマホの中のLINEだからこそ、そこから新たなコミュニケーションが生まれ、人と人、企業と企業の繋がりから物理的なアクションも引き起こせるだろうと。そんなメディア&プラットフォームとして『サストモ』へとリブランディングし、豊かな未来の構築につながる課題解決をともにできるソーシャルなアクションパートナーを、私たちは探し始めました」

リユース、リサイクルの経路をすでに構築していたものの、循環型社会の仕組みに参加するハードルを下げるため、圧倒的なネットの力を求めていたECOMMIT。そして、循環型社会に繋がるリアルなアクションを加速させるような仕組みを求めていたLINEヤフー。この両社が出会った後、お互いのニーズを察した上で、LINEヤフー側から共創の持ちかけをしたと長谷川氏は話します。トレーサビリティを前提としたサーキュラーエコノミーが注目を集めるようになった時代の空気も、この共創を後押ししました。
長谷川氏:「当然ですが、互いに得意な部分、苦手な部分を補完し合えるのが理想の共創だと感じます。弊社としてはネット上のことは得意ですが、リアルでの展開には弱さもありました。一方でECOMMIT側はネットを活用したインフラの確立を必要としていたということで、共創のスタートはスムーズでした。ですが、両社によって生まれた『宅配PASSTO』のローンチまではどうマネタイズして持続可能性を担保するか、誰と誰を引き合わせて共創を進めていくか、双方の社内でどう共創の話を盛り上げていくかなどの調整がもちろん重要でした」
それでは、クロストレプレナーアワードの受賞対象となった「宅配PASSTO」とはどのようなサービスなのでしょう。
坂野氏:「端的に言えば、ユーザーの方がもう使わなくなったものをダンボール箱にまとめて、LINEから集荷依頼をし、集荷の方に来ていただいたら箱を渡すという仕組みです。こうして集められた不要品をECOMMITのサーキュラーセンターで丁寧に選別し、リユース、もしくはリサイクルへと循環させていきます。LINEからのスピーディなアクセスなどによってユーザーの負担を大きく軽減しながら、循環型社会の実現に少しでも貢献したいという方々の要望にお応えするサービスだと自負しています」
「サストモ」LINE公式アカウントの2025年5月時点での友だち数は540万人。この「サストモ」が「宅配PASSTO」の利用を促すプラットフォームとなっているほか、独自取材によるサステナブル関連記事の発信なども行っています。そして、「宅配PASSTO」の一番の特徴といえるのが、“送料無料”でありながらマネタイズとの両立を図っている点です。
坂野氏:宅配PASSTOで発送できるものを、「必須アイテム」と「同梱OKアイテム」の2種に指定しています。前者は家電や玩具、キッチン用品やアクセサリー、バッグなどで、後者はスポーツ用品や衣類、インテリアやその他日用品といった幅広いアイテムです。ECOMMITでは必須アイテムのリユースによってマネタイズを担保しつつも、同時に同梱OKアイテムも許容することでユーザーが手放したい不要品を幅広くサポートする仕組みを構築しています。

2025年3月の本格提供開始に先立ち、2024年秋に行われた実証実験では、関東・中部・関西エリア限定で「宅配PASSTO」を提供し、約44t(44,074kg)の不要品を回収しました。それらの不要品は選別を経てリユースし、リユースが難しいものはリサイクルした結果、高い資源循環率を達成しました。

イノベーションを求める社会において、「共創」は重要なファクターでもあると言えます。共創を成功させる上で必要なこととは何か、あらためて長谷川氏に聞いてみると、こんな答えが返ってきました。
長谷川氏:「関係者の情熱や好奇心はとても大切です。さらに重要だと感じているのは編集思考でしょうか。自分は、人の心を動かすことが編集だと思っていて、どう説明すれば人の気持ちに訴えられるか、どんな人とどんな人を繋げればプロジェクトが動いていくのかなど、編集的な思考こそが共創の道を開く原動力になると考えています。裏を返せば、いくら素晴らしい計画でも『素晴らしいからこれをやりましょう』と宣言するだけでは物事が動いていかないと思うのです」
大きなプロジェクトを推進していく上で大切なこととして、さらに長谷川氏が挙げるのは、自社の中で盛り上がりをつくっていくこと。宅配PASSTOのユーザーを増やすべく行ったことについて、こう語ります。
長谷川氏:「LINEヤフーには現在、単体で11,000人以上が在籍しているので、社内の全員が同じ気持ちになれば大きなムーブメントになり得ると考えました。サストモのメンバーはもちろん、それ以外のセクションに対しても積極的にオンライン勉強会を開くなど啓発活動に注力しました。結果として社内での宅配PASSTOの認知は広がったので、社会を大きく変えるとか、対外的にどうプロジェクトの認知を広めていくかを考える前に、まずは社内における啓発活動や興味喚起がとても大切なのだとあらためて感じています」

社会課題に複数企業のレガシーをつなぎ合わせて取り組む事業共創プロジェクトを表彰する、Forbes JAPAN「クロストレプレナーアワード」。この舞台でサーキュラーエコノミー賞を受賞したECOMMITとLINEヤフーですが、受賞についてのインプレッションを坂野氏に聞いてみました。
坂野氏:「もちろんここまでの取り組みが評価されたこと、LINEヤフーのみなさまとの共創で取り組みが拡大したことは光栄ではあるのですが、一方でプレッシャーも感じています。実際、宅配PASSTOが立ち上がったとはいえ、私たちにはまだまだ道半ばだという気持ちが強いのです。さらに認知を広げていかなければなりませんし、現状よりさらに質の高いサービスにしていかなければならないという強い意思もあります。受賞が励みにはなりましたが、今後さらに共創を深め、循環型社会の構築により貢献しなければならないという覚悟が強固になったとも感じています」
こうした心境の背景にあるのは、サーキュラーエコノミーを事業者として加速させていく本来的な難しさがあると、坂野氏は話します。
坂野氏:「一言で言えば、サーキュラーエコノミーというステージで事業者としてマネタイズしていくのはとても難しいことです。たとえば多くの拠点を構え、各拠点で回収した不要品を一点一点きめ細かく選別し、目利きをして次に使いたい人へ繋げていく行程、さらには送料無料でこのビジネスを続けていくにはとてもコストが掛かります。そして、循環を前提としたものづくりに変化しなければ、私たちの目指す社会とはなりません。つまり利益優先で考えれば、なかなか参入しようと思えないビジネスなのです。
でも、難しいからやらないではなく、難しいけどやるべきであると私たちは考えていて、これを実現するのに必要なのは、まず気概なのだろうと感じます。社会に必要なインフラを担うことがECOMMITの存在意義であるということですね。ですから、私たちはこうしたビジネスで確実にマネタイズを続けていくべく、工夫を重ねていかなくてはならないのです」

一方、長谷川氏はこのコメントに同調しつつ、強い希望も感じていると語ってくれました。
長谷川氏:「サーキュラーエコノミーをビジネス的側面からのみ見ると、確かにたくさんのハードルがあると感じています。ただ、宅配PASSTOの価値を私たちの側から考えると、ポジティブな側面がいくつも見えてきます。弊社グループ内ではYahoo!オークションやZOZOTOWNのZOZOUSEDといったサービスで、循環型社会の構築に少なからず貢献してきたという自負がありますが、これらのサービスからまだまだこぼれ落ちている領域もあるとも感じていました。宅配PASSTOはまさにこの欠けていた領域を埋めるサービスであり、弊社グループの総合力、ブランド力の向上につながる共創だったと言えるでしょう。
また、LINEヤフーの多様なサービスから得られるビッグデータを活用した、さらなる認知向上やサービスの質向上に繋がる道筋も見えています。今後はより弊社グループのリソースを駆使することで、ビジネスとしての価値向上も実現できるのではと希望を感じているのです。ECOMMITとの共創をはじめ、数々のサステナブルな取り組みを通じ、サーキュラーエコノミーの世界で活躍したいというたくさんの若い方たちと出会うこともできました。共創によって社会に貢献するという充実感を得たと同時に、ビジネスとしてのサーキュラーエコノミーにもより大きな期待を寄せています」
ベンチャーと大企業が、互いに足らなかった部分を補い合い、誰でも行動しやすい仕組みをつくり、正しく循環する入口と出口を整えること。これを実現した宅配PASSTOは、共創の重要性をあらためて世に問いかけ、実社会で持続可能な循環型インフラのあり方をも示したとも言えるでしょう。スマホへのワンタッチで人と人が繋がり、少しずつ社会が良い方向へ変わっていく。そんな現実が今、静かに展開しているのです。
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