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vol. 04

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これからのビジネス共創に「コンセプト・イノベーション」が必要な理由

OPEN HUBでは共創において、革新的な事業コンセプトを生み出す「コンセプト・イノベーション」を行うことを掲げています。なぜ今、コンセプト・イノベーションなのか? そして、実現のために導入した社会実装(事業化)の道筋について、NTTコミュニケーションズの野呂田 学、金 智之、OPEN HUBの設立に携わったデザインファームKESIKIの井上 裕太 氏にOPEN HUB Journal編集部が聞きました。

社会や産業が抱える課題を解決するために

――OPEN HUBが「コンセプト・イノベーション」を掲げた背景には、NTT Comが持っている共通意識があると聞きます。

井上氏:OPEN HUBを起点に新しいビジネスを生み出していくため、何に重きを置くべきかと考えていた時に実施したのが、NTT Comの社員の皆さんへのヒアリングでした。話を聞いたのは担当領域で局所的にイノベーションを起こしている方々でしたが、共通して抱いている意識があることが分かったんです。

それは「魅力的なビジョンを示すこと」。お客さまが求めているものをつくるだけではなく、ビジョンと具体的なコンセプトの提示が必要である、と。

井上 裕太|KESIKI Inc. Partner、OPEN HUB Catalyst/Advisor
マッキンゼーで日米欧における経営コンサルティングに従事後、独立。企業の経営改革や『WIRED』誌特派員として北米取材などを手掛けた。その後、スタートアップスタジオのquantum設立に参画。事業開発および投資を主導したほか、九州大学では客員准教授として産学官連携を担当。2020年、カルチャーデザインファームのKESIKIを創業。事業開発や組織変革案件を担う。グッドデザイン賞など国内外で審査委員も務める。

野呂田:私は日頃、ビジネスプロデューサーという立場でクライアントと向き合っていますが、お客さまやパートナー企業と接していると、ビジネスを「点から面に広げる」ためにも、1社だけでなく業界全体のコンセプトを描くことが求められるようになっていると感じています。

NTT Comが注力すべき課題には、ICTの活用やDXによって社会課題が解決された世界「Smart World」全体や、Smart Worldを構成する各分野共通で抱える大きな課題と、現場の営業が握っているお客さまごとの課題がある。両者の間を取り持ちながらすべきことを可視化し、提示する力が備われば、業界全体、ひいては業界を超えて社会課題を解決できるのではないかと考えています。

そこでOPEN HUBで掲げたのが、「コンセプト・イノベーション」です。社会を見つめて理解し、その上でどんなコンセプトが意味を持つのか探求的に考えることを目指しています。

野呂田 学|NTTコミュニケーションズ OPEN HUB Chief Catalyst/Program
2018年より前身のビジネス共創チーム(C4BASE DX Lander)の立ち上げから従事。食品物流業界において、ブロックチェーン活用によるサプライチェーントレーサビリティーで食品ロス検討やメーカーとの新規サブスクビジネスの検討などを手掛けた。OPEN HUBでは、自らお客さまとのビジネス共創活動をリードしていくとともに、社内外の各カタリスト間をつなぎ合わせていき、カタリストチームをけん引していく。

「コンセプト・イノベーション」を行うための方法とは

――OPEN HUBでは、事業コンセプトをつくるためのプログラムとして、「INVOLVE(巻き込む)→INSPIRE(探求する)→IMAGINE(試行する)→INVOLVE(巻き込む)」というステップを設け、「オンボーディング」から始めて「プロジェクトデザイン」までの一連の流れ(図参照)を描いています。

金:コンセプト・イノベーションを行うためには、まず大きなコンセプトを描くことが必要です。これは前半の大きなブロックである「INVOLVE(巻き込む)」「INSPIRE(探求する)」の部分で実現します。

最初の「オンボーディング」では、多様なお客さまとわれわれが向かう方向をそろえるために、チームの「WILL」を共有して1つの文章に仕立てます。次の「インスピレーション」では、社会全体のトレンドをもとに、つくりたい世界観を考えます。NTT Comのデザインスタジオ「KOEL」のデザインリサーチャーや、そのほかOPEN HUBのリサーチ機能から得られた情報を活用し、高い視点でコンセプトを考えていくフェーズです。

次に、NTT Comやパートナー、お客さまが持っているアセットと世の中の状況を組み合わせ、解くべき「問いの設定」をします。どんな問いを設定し、それを解くことによって何が解決するのかを考えていく段階です。その後の「初期仮説コンセプト」では、設定した問いに対して、自分たちが打ち出したいコンセプトを考えていきます。ここまでがコンセプト・イノベーションのコアな部分であり、共創のプロセスの一部でもあります。

金 智之|NTTコミュニケーションズ OPEN HUB Chief Catalyst/Program
NTTコミュニケーションズのインハウスデザインスタジオであるKOELに所属。九州芸術工科大学卒業後、2005年に入社し、音楽配信サービス、映像配信サービスなど数多くの新規事業開発に携わる。2011年、KOELの前身となるデザインチームを立ち上げ、UIからUX、経営理念まで幅広く手掛ける。OPEN HUBではプログラム開発中心に参画。HCD-Net認定 人間中心設計専門家。

金:コンセプトが決まったら「IMAGINE(試行する)」のフェーズで仮説検証のスピードを上げていきます。「ニーズ検証」は、対象となるユーザーにインタビューをしながら、考えたコンセプトが本当に有効なのかを確かめていくフェーズ。売り込むことを想定し、コンセプトの要点を伝えるプロトタイプとして仮想のチラシや動画などを作成して検証を行い、ユーザーからフィードバックを得ます。ニーズが低い場合は、「オンボーディング」「インスピレーション」「問いの設定」に素早く立ち戻り、精度を上げていきます。

仮説検証によってニーズがあることが分かったら、次はサービスの解像度を高める「ソリューション検証」。ユーザーとのタッチポイントをつくったり、サービスを支える技術やビジネスモデルとして成立するかを検証したりして、実現可能性を高めます。

そして、社会実装(事業化)という大きな壁が出てくるのが「プロジェクトデザイン」のフェーズです。ここでは事業組織やパートナー企業、技術を提供してくれるコラボレーターとどのように手を組み、プロジェクトを進められるかを設計します。このループを適宜繰り返しながら、プロジェクトの解像度を高めていくのがOPEN HUBのプログラムの特徴です。

OPEN HUBだからこそできること

――OPEN HUBでは、NTT Comがこれまで築いてきた安定した開発力や実装力と、「コンセプト・イノベーション」とを掛け合わせることになります。ほかにはない、OPEN HUBならではの特徴をどのように考えますか。

野呂田:1つめの特徴は、コミュニティーを起点にお客さまとご一緒できる点です。OPEN HUBでは、C4BASEで築いたコミュニティーを「OPEN HUB Base」としてアップデートし、会員の方々と一緒にプロジェクトをつくっていきます。

2つめは、プログラムの「IMAGINE(試行する)」の段階で、NTT Com社内にモノをつくれるメンバーがいることです。通常、プロトタイプの作成は他社に発注する企業も多いと思いますが、NTT Comにはアジャイルにアイデアを実現させるエンジニアがいます。

井上氏:NTT Comという企業の共創へのコミットメントも特徴の1つではないでしょうか。「いったん、互いに手弁当で一緒に走ってみましょう。いいものが描けたらNTT Comからの事業への投資も見据えて組織を動かします」というスタンスが取れる企業は、限られるのではないかと思います。何をつくったらいいか明確化されていない実験段階であっても、OPEN HUBに来れば仲間が見つかって、向き合ってくれる。これはOPEN HUBならではだと感じます。

インタビューは東京と京都をつないで行われました。

――OPEN HUBを通して、どんなビジネスをつくり、その先にどんな未来を描きたいと考えますか。

金:OPEN HUBを起点に、お客さまやパートナーと共に社会課題を考え、世の中の人が変化を実感できるようなインフラをつくっていきたいですね。また、「コンセプト・イノベーション」はNTT Comとしても新しい取り組みですが、社内の各組織と連携しながら、みんなで業界や社会の課題を解決できるビジネスを生み出すことに楽しみを感じられる瞬間を増やしていけたらいいなと思います。

井上氏:OPEN HUBから「こういう社会をつくりたい」という思いを生み出し、そこから小さくてもいいから社会実装していきたいですね。OPEN HUBに集う一人ひとりに「5年後、10年後にこういう社会にしたい」というコンセプトがあり、100人それぞれの旗を立てられる。そういう状況を目指すことができれば、広く世の中にいい変化を起こせるのではないでしょうか。

野呂田:ゆくゆくは、OPEN HUBに所属するカタリストだけではなく、全社員がオープン・イノベーションにトライできるような環境にしていきたいですよね。今までのNTT Comのビジネスは、失敗しないようにシステムを構築することが多くありましたが、これに対してOPEN HUBはより多くの失敗を許容できる場にしていきたい。ここで多くの失敗をしながら、新しい変化、新しい価値を生み出していきたいですね。

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