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2024.09.18(Wed)

物流施設の無人化はここまできた―「2024年問題」の最適解を探る大和ハウスの共創プロジェクト

#スマートシティ #ロボティクス
物流・運送業界が直面している「2024年問題」とは、働き方改革関連法案によってドライバーの労働時間に上限が課されることで生じるさまざまな課題を指します。慢性的な人手不足やEC拡大に伴う物流量の増加に加え、ドライバーの労働時間削減により、物流停滞、人件費高騰など、消費者や事業者におよぶさまざまな影響が懸念されています。

物流施設を運営する大和ハウス工業とNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)はドローンやAIを活用し、2024年問題の解決に向け共創を進めています。先端技術の活用により、物流の今はどう変わっていくのか。大和ハウス工業 建築事業本部 営業統括部 Dプロジェクト推進室 物流DXグループ グループ長の菅野寿威氏を迎え、NTT Com 関西支社 第二ビジネスソリューション営業部門の村川幸則とスマートシティ推進室の秋山貴紀によるクロストーク形式のウェビナー「物流DX共創事例:新しい建物点検の姿」の模様をお届けします。

この記事の要約

大和ハウス工業とNTT Comは2024年問題に対応するため、物流施設の運営にドローンやAIを活用する共創プロジェクトを進めています。人手不足や労働時間規制により、物流業界は厳しい状況に直面しています。

このプロジェクトでは、ドローンを使用して広大な物流施設の点検業務を自動化し、効率化を図っています。ドローンが撮影したデータからAI画像解析技術により異常を検知し、管理者に通知する仕組みを構築中です。

2025年度には実運用導入を目指し、将来的には物流施設の無人化や複数拠点の一括管理を視野に入れています。課題としては、ドローン飛行中のトラック走行制限や正確な位置情報の取得などがありますが、両社は継続的な議論と検証を通じて解決を図っています。

このプロジェクトを通じて、物流の効率化と安全性向上を実現し、スマートシティの実現に貢献することを目指しています。

※この要約は生成AIをもとに作成しました。

目次


    コロナ禍を機に進んだ物流施設の改革

    村川幸則(以下、村川):働き方改革関連法案により、2024年4月1日以降ドライバーの時間外労働について年間960時間の上限制限が適用されました。また、物流施設の管理者や警備員の人手不足、賃金上昇などの問題もあり、近い将来に「荷物が家に届かない時代が来るのではないか?」といわれるほど厳しい状況ですが、現在の物流業界をどう見ていますか。

    菅野寿威氏(以下、菅野氏):すでに人手不足が深刻ななか、残業制限により「稼げない職種」とみなされることで、ドライバーの数がますます少なくなってしまうことを危惧しています。ドライバーをはじめ物流現場は多くの人の力によって成り立っていますが、業務の進め方や働き方をアップデートしなければさらに厳しい状況になるのは目に見えています。そこで先端技術を活用し、少しでも負荷を減らすことは最重要課題であると考えています。

    弊社は、マルチテナント型物流施設の「DPL(ディープロジェクト・ロジスティクス)」という施設を開発しており、施設内の各区画をテナントに貸し出し、施設全体の維持管理を行っています。現状、その多くの業務を人手に頼っていますが、先端技術によって省人化・自動化を図り、安定した施設運営を行うことを目指し、NTT Comさんとの共創のもと新たなソリューションの導入や実証実験を行っています。

    菅野寿威|大和ハウス工業 建築事業本部 営業統括部 Dプロジェクト推進室 物流DXグループ グループ長

    村川:「DPL」の共創プロジェクトでは、コロナ禍によってソーシャルディスタンスが叫ばれていた2020年にスタッフの方々が安心して働ける環境を目指し、建物の入り口にマスク検知のシステムを導入したほか、休憩スペースの混雑状況の可視化に取り組みました。2021年にはさらに安心・安全な物流施設を目指し、IoTセンサーを活用して熱中症や感染症発生の可視化を行う「倉庫環境監視IoTソリューション」の運用を開始するなど、着々と取り組みが進んでいます。

    村川幸則|NTT Com 関西支社 第二ビジネスソリューション営業部門 Chief Catalyst /Business Producer

    大型化が進む物流施設。広大なフロアが点検業務の負担に

    村川:2023年からはドローンを活用した「点検業務の無人化」の実証実験をスタートしていますが、そもそもなぜこのテーマに着目されたのでしょうか。

    菅野氏:背景には人財確保が困難であることと、物流施設の大型化があります。今では1フロア2万坪を超える施設は珍しくなく、端から端まで200~300m以上あるような施設も多い。それを数フロアにわたって歩き回りながら「設備に傷はついていないか」「不審物が置かれていないか」と一つひとつ点検していく業務は負担が非常に大きいのです。ドローンを活用することで、より効率的かつ高度でスピーディーな点検を実現したいと考えています。

    村川:点検の「目」として固定カメラを使うことも考えられると思いますが、ドローンを選んだ理由をお聞かせいただけますか。

    菅野氏:私たちの物流施設は非常に規模が大きいので、点検業務に固定カメラを使うとなるとかなりの台数が必要になります。それを踏まえると、ドローンを使う方がコストを低減できるメリットがあると考えました。

    ドローンによる物流施設の点検の様子

    目指すは物流施設の無人化と自動制御、そして複数拠点の一括管理

    秋山貴紀(以下、秋山):「DPL」の共創プロジェクトでは、ドローンをはじめとするビル内のさまざまな設備を連携させるために、NTT Comが提供するプラットフォーム「Smart Data Platform for City(SDPF for City)」を使用しています。

    仕組みとしては、まず設定されたルートをドローンが自動飛行し、対象物を撮影します。その後、データはSDPF for Cityにアップロードされ、AI画像解析技術によって新たな傷や破損がないかを判別し、異常を検知したら管理者に通知するというものです。

    秋山貴紀|NTT Com スマートワールドビジネス部 スマートシティ推進室

    菅野氏:この実証実験は現在進行形で進めているものですが、この2年間の成果として、「安全に飛行できるか」「撮影した映像から画像解析が可能か」などの基本動作はすべてクリアできています。今年度も実証実験を継続していますが、2025年度には実運用導入を行う予定で、最終的には「DPL」の標準設備に採用したいと考えています。

    村川:ドローンによる自動点検・管理が標準化されたその先に、どのような未来像を描いていますか。

    菅野氏:今回はドローンが倉庫内や車路の安全確保を担うことになりますが、このプロジェクトのゴールとして見据えているのは、物流施設の無人化、自動制御、さらには複数拠点の一括管理です。東京のオフィス街から全国に点在する物流施設をまとめて管理する、そんなことが当たり前になっている未来をイメージしています。

    きたる実運用フェーズ、2025年に向けての取り組み

    村川:ドローンやロボット、あらゆるIoT機器が物流施設の維持管理を担う、そんな未来が訪れるのはそう遠くないのかもしれませんね。

    菅野氏:その未来を実現するためには、自動点検のほかにも、有事の際の早期現場確認や避難誘導などの機能の追加、遠隔監視の実現など、やるべきことは多くあると感じています。

    一方で、実証実験に取り組んでいる間にも次々と新たな技術やサービスが生まれており、今の取り組みが将来において本当に必要とされるのか、定着していくのか予測しきれないのが難しいところです。時代は変わり続けているからこそ、想像力を高め、スピード感を持って進めていくことが大切ですね。NTT Comさんは心強いパートナーであり、互いの視点や知見を組み合わせながら、今後もプロジェクトを前に進めていければと思っています。

    秋山:菅野さんはいつお会いしても前向きで、チャレンジ精神がとても強いですよね。ご一緒していてたくさんの刺激をいただいています。実証実験を始めて2年がたち、成果とともに新たな課題も見え始めていますが、ぜひ力を合わせて乗り越えていきましょう。

    村川:そうですね。今回は障害物検知機能のないドローンを使っているため、ドローンが飛んでいる間はトラックの走行ができません。しかし、実運用でトラックを止めてしまったら物流作業がストップしてしまうので、どのような技術で解決できるのか、目下模索中です。

    秋山:先ほど菅野さんがおっしゃった、複数拠点の一括管理を実現するためには、どの施設のどの場所で異常を検知したのか、ドローンの撮影データから正確な位置情報を取得する必要があります。もし正確な位置が分からずに人が歩いて探しに行くようなことになれば本末転倒なので、詳細な位置データをインプットするための地図データを組み合わせるシステムを検討しています。

    村川:2025年度に予定している実運用まであまり時間がありませんが、引き続き議論と検証を続けていきたいですね。

    菅野氏:そうですね。細かな課題の解決に取り組みながら、車両待機の解消につながるトラックの予約システムとSDPF for Cityの連携や、自動運転車両制御、さらには豪雨や台風の通過情報などの気象データと連携してドローンによる建物の損傷確認を実施したりなど、物流の未来に必要なソリューションを着実にかたちにしていけたらと思います。

    秋山:気象データや車両データ、地図データなどさまざまなデータとSDPF for Cityを連携させることで、物流現場全体の最適化を実現できると考えます。データの収集・分析・活用のサイクルを回しつつ、細かいところではAI画像解析による異常検知のアラートの出し方などについても、より良い方法を模索していきたいです。

    物流は日々の暮らしと切っても切り離せない重要な社会インフラです。平常時から災害時の対応まで、物流のさまざまなシーンを支援するソリューションをかたちにし、より快適で安全・安心なスマートシティの実現をともに目指していきましょう。

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