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vol. 03

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自動運転から歯ブラシまで。共創が生んだ日本企業のイノベーション7つ 前編

企業同士が協業し、技術やノウハウ、人材、顧客情報などの経営資源を持ち寄り業務提携を行うことは、スピード感ある新規事業の創出につながります。さらに、ビジネス環境が急激に変化する社会で求められるのは、ビジョンを共有しながら互いの強みを発揮する「共創」の姿勢です。そこで、共創によって生み出されたソリューションやサービスから7事例を紹介。前編では、生活に身近なプロダクトやサービスを集めました。

誰にも身近な「おかし」を使った販促コミュニケーション
森永製菓×アンジー「おかしプリント」

森永製菓株式会社が提供する「おかしプリント」は、ユーザーがお菓子のオリジナルパッケージを作ることができるWeb注文限定のサービス。写真加工アプリを手掛けるスタートアップ、株式会社アンジーと協業することにより実現した事業です。現在は法人向けのノベルティサービスとして展開しており、「ビジネスコミュニケーションに、美味しい一手を」をコンセプトに、「ハイチュウ」や「カレ・ド・ショコラ」など森永製菓のお菓子はもちろん、他社の有名ブランドのお菓子や食品をオリジナルパッケージでデザインすることができます。

森永製菓は、2014年から食や健康分野での革新的な新規事業の創出を目指してアクセラレータープログラム「MORINAGA ACCELERATOR」を実施しています。同プログラムでスタートアップとの共創について学んだ森永製菓の社員が、小ロットからオリジナルパッケージのお菓子を作るというアイデアを実現するために、画像加工に強いスタートアップとの協業を模索。写真加工アプリ「Pico Sweet(ピコ・スイート)」などを手掛けるアンジーに依頼することで事業化が決まり、2016年1月からサービス提供を開始しました。

立ち上げ以降、販促ツールとしてビジネスコミュニケーションで活用され、リピーター企業も多く存在します。スーパーやコンビニで手に取ることができるお菓子でありながら、オリジナルデザインで付加価値を付けることでより記憶に残りやすくなり、新たな顧客体験を生み出しています。
(※現在、「おかしプリント」の個人向けサービスは終了しています。)

無人決済や省人化でマイクロマーケットを狙う
ファミリーマート×TOUCH TO GO「無人決済店舗」

株式会社ファミリーマートと無人決済システムの開発を進める株式会社TOUCH TO GO(以下TTG)は、省人化による店舗オペレーションコストの低減や非対面決済の推進、マイクロマーケットへの事業領域拡大を目指して、資本業務提携を締結。2021年3月にTTGが開発した無人決済システムを活用した実用化店舗として、「ファミマ!! サピアタワー/S店」を東京駅に隣接するサピアタワー1階にオープンしました。

導入されたTTGの無人決済システムは、天井のカメラと棚のセンサーを組み合わせ、入店から商品のピックアップまでの人の動きを自動で認識するもの。出口付近の決済エリアに立つとディスプレーに購入商品と金額が表示され、電子マネー等でスピーディーに支払いをすることが可能です。素早く買い物を済ませたいという忙しい利用者のニーズに応えます。

その後、3店舗目となる実用化店舗を開店し、今後は無人決済店舗の本格出店に踏み切ります。大量出店で成長を続けてきたコンビニ市場ですが、出店網が広がり過ぎて1店舗あたりの売上高が頭打ち状態にあり、各社で出店計画を見直す動きがあります。従来の店舗形態では出店余地が少ないことから、注目を集めているのが病院やオフィスなどのマイクロマーケットです。無人決済システムは、入荷商品の受け取りや補充以外は従業員が不要になり、人件費など運営費を大幅に削減できます。そうした利点を生かすと、これまでは出店が難しいとされてきた場所でも出店が可能になり、新規開拓のチャンスが広がります。

毎日の歯磨きをエンターテインメントに
京セラ×ライオン×ソニー「Possi(ポッシ)」

2021年5月末、京セラ株式会社から子どもの仕上げ磨き専用歯ブラシ「Possi」が一般発売されました。京セラ、ライオン株式会社、ソニー株式会社(現・ソニーグループ株式会社)のオープンイノベーションによって生み出された、「子どもが嫌がる歯磨きを楽しい時間に変える」がコンセプトの歯ブラシです。歯ブラシのヘッド部分には京セラの小型圧電セラミック素子が搭載され、ブラシが振動すると骨伝導で音が耳に伝わり、歯磨きの間のみ、磨かれている本人は音楽を楽しめます。

スマートフォンなどをオーディオケーブルで接続することにより、好みの音楽を再生することが可能です。ブラシにはライオンの技術が生かされ、清掃力もしっかり兼ね備えています。デザインはソニーのクリエイティブセンターによって、力が入りすぎない卵のような握りやすさと、生き物のような有機的な形状を実現し、見た目にも楽しい歯ブラシに仕上がっています。

プロジェクトのきっかけは、京セラが自社の技術を生かした新事業を立ち上げたいと考え、2018年10月にソニーのスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラム「Sony Startup Acceleration Program」との連携をスタートしたこと。そこで京セラのエンジニアがビジネスについて学び、「Possi」の事業化に向けて動く中でライオンとの協業が決まり、3社合同のプロジェクトに。2019年7月にはソニーのクラウドファンディングサイト「First Flight」に挑戦し、目標金額の2000万円を達成しました。

「Possi」は、“ものを作るまでが仕事”だったエンジニアが、ビジネスについて学ぶことで開発から販売まで一貫して携わった事例です。企業の持つ技術を生かしながら、アイデアをビジネスにできる人材が増えることで、新たな事業の創出につながります。

OPEN HUB JOURNAL編集部より

ご紹介した「食べることが主目的ではないお菓子」「欲しい場所にある無人小型コンビニ」「磨いていて楽しい歯ブラシ」の3つの事例は、顧客体験を再定義し、新たな顧客価値を模索した結果として生み出されたサービスや商品であるといえるでしょう。従来、お菓子は味覚、コンビニは品ぞろえや均質化された接客、歯ブラシは口腔(こうくう)ケアといった品質や機能の向上を目指し、顧客に訴求してきましたが、そうした従来の価値提供の延長線上では、需要も市場も頭打ちです。企業にとって新たな顧客価値の創造が重要課題になっています。

そして、上記のような事例からは、新たな顧客価値の創造において、「共創」への期待が高いことが分かります。1社だけでは発想が難しかったアイデアが生まれ、多様な人や技術といったリソースを活用して事業創出を行ったりすることができるからです。共創はビジネスにとって欠かせない要素であるとともに、私たちの生活や体験を豊かにしてくれる商品やサービスの背景にもなっているのです。

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