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2024.02.28(Wed)

“自席に縛られない”働き方改革を目指して。
日本生命が挑んだ、2万人の電話環境大改革

#金融 #働き方改革 #事例

#43

「03」「06」といった市外局番から始まる固定電話番号「0AB~J番号」。地域情報に紐づく信頼性など事業面でのメリットがある一方、これらの固定電話基盤により社員が自席に縛られ、時代に応じた「場所に縛られないフレキシブルな働き方」の障壁となってしまうケースは珍しくありません。さらに、こうした固定電話基盤の刷新においては、企業規模が大きくなるにつれてコストやリスクが高まり、検討・導入が難しくなる傾向にあります。

今回は、保険業界のリーディング企業である日本生命の内務職員約2万人を対象とした、「固定電話のメリットを生かしながらモバイルの機動性を両立するモバイル内線化ソリューション」の導入事例をご紹介。テレワークとオフィスワークを効率的に併用する「ハイブリッドワーク」へのニーズが高まる一方で、固定電話番号によるコミュニケーションも必要とする日本生命において、“自席でしか働けない”ワークスタイルからの脱却はどのように実現されたのでしょうか。

旧来の「オンプレミスPBX(企業内に設置した電話交換機)」から「セントレックス型の集約PBX」への転換、そして固定電話とモバイルを併用可能な内線システム「FMC内線基盤」の導入という大規模プロジェクトで見えてきたEX向上の効果とフレキシブルな働き方がもたらす未来像を、本プロジェクトに関わった日本生命グループとNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)のメンバーに対するクロスインタビューを通して探っていきます。

目次


    「自席に縛られる」ことで失われているもの

    ——日本生命がFMC内線基盤の導入へと舵をきった背景には、どのような事情があったのでしょうか?

    ホルヘ裕子氏(以下、ホルヘ氏):弊社では、「人財育成」と「闊達(かったつ)な風土醸成」を目指して2015年に開始した「人財価値向上プロジェクト」以降、ダイバーシティ&インクルージョン推進や働き方の変革を進めてきました。その取り組みにおける課題のひとつだったのが、内線電話環境の刷新です。これまでは、オンプレミスPBXを使った固定電話による内線システムを採用する拠点が大多数であり、それがテレワークを本格的に導入できない一因にもなっていました。

    外回りがある営業職員は、営業効率やお客さま満足度を高める目的で独自に開発した「N-Phone(エヌフォン)」という携帯電話を使っていたのですが、支社・支部の内務職員は固定電話を、本店・本部の内務職員は社内でしか使えないPHSを使っている状況でした。また、内線をかけるために必要な電話帳もPCからしか見られず、内務職員はいわば「自席でしか通話ができない」環境にあったのです。

    そうした背景を踏まえて、ちょうどPBXの保守期間が切れるタイミングが近づいていた2018年12月ごろ、日本生命側からNTTグループに相談して、社外や自席以外の場所でも内線電話が使えるモバイル内線化システムを導入することになりました。

    ホルヘ裕子|日本生命保険相互会社 IT統括部

    なお、プロジェクトが始動するころにちょうどコロナ禍が重なってしまったので、リプランなどを経て拠点展開を開始したのは2021年の7月、全拠点でのリニューアルが完了したのが2023年の8月でした。

    山田法子氏(以下、山田氏):もしこのままオンプレミスPBXを使い続ける場合は、動作をチェックしたり部品調達を手配したりすることで、その都度、工数やコストが発生してしまいます。そこで、今回のリニューアルでは、当時設置されていたオンプレミスPBXをすべて廃止し、セントレックス型の集約PBXに移行することを選びました。

    山田法子|ニッセイ情報テクノロジー株式会社

    ——NTTグループとしては、課題を踏まえてどういった提案をしたのでしょうか?

    森中孝洋(以下、森中):我々からは、FMC内線基盤を導入することで、場所に縛られないフレキシブルな働き方が実現できるような提案をしました。山田さんが述べられたように、オンプレミスPBXを集約PBXに替えることで、拠点となる施設の維持費や機材の交換などの工数・コストをなくせることも大きなメリットになります。

    森中孝洋|NTT Com 第一ビジネスソリューション部

    また、FMC内線基盤は、「0AB~J番号」を維持した上でハイブリッドワークを実現できるキー技術ですが、保険業界をリードする大企業の内務職員2万人という導入対象規模は、我々にとっても新しいチャレンジでした。

    今村真帆(以下、今村):さらに、これまで各職員それぞれがPCで閲覧していた電話帳についても、クラウドで全社的に管理できる状態に変えました。これも社内でのコミュニケーションの活性化を促進できたと思います。

    今村真帆|NTT Com 第一ビジネスソリューション部(所属は本プロジェクト導入当時)

    これまでの「かかってきた電話が誰からのものなのか、すぐにわからない状況」を改善することで、社内のコミュニケーションもよりスムーズに行えますよね。

    また、NTTグループにおける大きな動きとして、2022年7月にNTTドコモグループの組織再編が実施され、NTTドコモ、NTT Com、NTTコムウェアの法人事業がNTT Comに統合されました。今回のプロジェクトと重なるタイミングでの再編でしたが、モバイル、固定電話、アプリ開発など各社のアセットを連携・融合することで、「次世代の働き方」に求められる要素を総合的に整理しながら、ソリューション全体をコーディネートさせてもらいました。

    拠点展開に費やされた期間は2年以上。大規模プロジェクトならではの難しさとは

    ——内線基盤を移行するプロジェクトは、実際にどのように進められたのですか?

    山田氏:2021年7月のスタートから、全国各地の支社・支部で約1年、本店・本部で約1年をかけました。全国のおよそ2000拠点の電話設備をすべて集約化して、さらに内線電話としてのモバイル端末(iPhone)を何万台と提供することになるので、中長期的な計画を立てながら進める必要があります。例えば、繁忙期を避けたり、冬の時期は雪が多いので北国での作業は避けたり——といった展開スケジュールを組むのに苦心しました。

    また、現場で作業をするチームは、比較的小さな拠点から経験を積んでいき、東京や大阪などの大きな拠点は最後になるように調整しました。淀屋橋の大阪本店と丸の内の東京本部は、お客さま回線や、社内における重要回線を数多く保有していますので、我々としても「絶対に失敗できない」というプレッシャーがありました。

    ホルヘ氏:ちなみに、コロナ禍に入ってすぐに電話会議やWeb会議ソリューションを用意してもらえたので、ミーティングにおけるコミュニケーションの停滞をあまり生じさせることなく進めることができました。ただ、その後に半導体不足が起こり、機器調達に困難が生じたため、想定していたモバイル端末とは異なる機種を一時的に混ぜて作業を進めていく、といった対応にも迫られました。調達については、相当苦労して集めてもらったので助かりました。

    山田氏:コロナ禍での現地の立会いでは、罹患の事前チェックがあり、そこで罹患が発覚したらまたスケジュールを立て直して——と本当に地道な調整が必要になったことは、双方ともにやはり大変でしたね。

    ——NTTグループ側では、何か意識していたことはありますか?

    森中:大規模拠点を切り替える前には特に綿密に打ち合わせをして、切り替えに向けての準備を抜かりなく行いました。実際の当日の切り替えから、アフターフォローまで支えられる体制づくりが重要だったと認識しています。

    今村:NTTグループと日本生命グループ、両社の役員も含めた報告の場を定期的に設けて、プロジェクトの進捗確認をしていたことも特徴だったかと思います。何かトラブルや課題が見つかったときに、スピード感をもって対応策を検討・判断できる体制を構築できていたのが有益でした。その甲斐もあってか、実際の切り替えではトラブルが起きることなく、スムーズに進めることができたと思います。

    導入効果はテレワークだけでなく社内でも? FMC内線基盤がもたらす“次世代の働き方”

    ——FMC内線基盤を導入してみて、社内の反響はどうでしたか?

    ホルヘ氏:フレキシブルな働き方の実現という部分では、テレワーク実施が進んでいることはもちろんですが、「社内でもデスク以外の場所で柔軟に通話できるようになった」「有線がなくなりオフィスを自由にレイアウトできるようになったことで、コロナ禍も乗り切れた」といった声も上がってきていて、メリットを実感してもらえています。さらに、これまでは拠点間での一部の電話では取り次ぎが発生していましたが、FMC内線基盤を構築したことで、ビルの垣根なく内線をかけられるようになったのも大きいですね。

    また、これまでは拠点を移転する度に内線設備を移設するコストが発生していました。PBXを集約化してからは、拠点移転の際にも交換機を移動させる手間がなくなり、端末を持って移動するだけでよくなったので、移設によるコスト・手間が大きく減り、ビジネスの機動性が高まりました。

    山田氏:内線のモバイル化によって、留守番電話のメッセージや、長期休暇時・営業時間終了後の音声ガイダンスにも変化がありました。従来は、拠点ごとで録音装置をそれぞれ設ける必要がありましたが、現在はそれが集約PBXで管理されているので、全国で共通のガイダンスを使いやすくなりましたね。

    ホルヘ氏:今後の課題としては、配布したモバイル端末に対して、社内のルール上、まだアプリを限定的にしかインストールできていないことですね。電話機能を中心に使っているので当然といえば当然なのですが、今後はもう少し使えるアプリを拡充して従業員満足度を高めていければ、と思っています。

    ——ちなみに、FMC内線基盤の導入にはどのようなセキュリティリスクがあり、どのようにその対策を練っているのでしょうか?

    山田氏:内線のモバイル化によって、社内外のどこでもデスクにいるのと同じように会社の電話が使えるようになった一方で、モバイル端末の紛失・盗難などのリスクが生じます。そこで、端末を初期設定する際にMDM(モバイルデバイス管理)ツールに登録・管理し、万が一、端末を紛失した場合でも、端末をロックしたり、機能を制限したりして対応できるようになっています。電話帳もクラウド化されているので、端末に連絡先情報は登録されておらず、その点も同様に遠隔管理できるため安心です。

    シナジーは深いコミットメントから生まれる。大規模プロジェクトを経て見えてきた展望

    ——今回のプロジェクトは、進行する最中でNTTドコモ、NTT Com、NTTコムウェアの法人事業がNTT Comに統合されたこともあり、各社のアセットを連携・融合して取り組んだプロジェクトとなりましたが、その効果はどんな場面で実感されましたか?

    ホルヘ氏:プロジェクト以前は、モバイルについてはNTTドコモ、固定電話についてはNTT Com、システム関係はNTTコムウェア、と窓口が異なり混乱しがちだったのですが、プロジェクト開始以降は、各アセットを横断した形で連携してプロジェクトの状況を把握してもらっており、非常に心強かったですね。グループ会社としてカバーしている領域の広さを実感しましたし、今まで以上に総合的なバリューを提供してもらえていると感じました。

    山田氏:私の所属するニッセイ情報テクノロジーは、日生グループのITシステムを担当する会社であることもあり、「電話の基盤」については今回のプロジェクトを通じて理解を深めていくタイミングでした。そのため、プロジェクトの設計段階から小さいトライアンドエラーを繰り返し、時にノウハウを提供してもらいながら、人材育成の領域までNTT Comさんにサポートしてもらうことができました。

    森中:モバイルと固定電話の基盤は、統合前のNTTドコモとNTT Comがそれぞれ独自に開発したもので、今回導入したFMC基盤は、これらの基盤を組み合わせて提供しています。つまり、何か問題が生じたときに、そもそもお客さまからは、その問題がモバイル/固定電話のどちらの基盤で発生しているものなのかわからないことも多いのです。

    今回のプロジェクトは、2022年7月のNTTドコモグループ再編前から進めていましたが、プロジェクト開始当時から各社が連携して横断的に進めていたため、窓口の一本化は初期段階からできていました。NTT Comにドコモグループの法人事業体制が一元化して以降は、モバイル/固定電話それぞれの担当が同じオフィス内で素早く解決策を検討・展開できるようになり、さらにワンチームで対応力をより向上させることができたのではと思います。

    ——プロジェクトを経て得られた、今後の新しい展望があれば教えてください。

    ホルヘ氏:今回のFMC内線基盤の導入によって、ハイブリッドワークが行いやすくなったほか、取り次ぎがスムーズになり、拠点移設の際の手間・コストが減るなど柔軟性も高まって、従業員が本来の業務に集中しやすい環境が整ったように感じます。今後は、こうした施策によって向上した生産性や、削減したコストの部分を、サービスを向上する方向へとつなげていき、さらなる顧客満足を実現していければと考えています。

    森中:先ほどホルヘさんも述べられていましたが、今回はFMC内線基盤とともに、スマートフォンを導入してもらいました。今後スマートフォンをより快適に活用してもらうことができれば、業務効率化やワークライフバランスの向上といったお客さまの体験価値ももっと向上するはずで、生産性のさらなる向上にもつながるかもしれません。今後はスマートフォンの活用可能性についても、お客さまとご相談しながら進めることができればと思っています。

    今村:今まではDXやネットワークでのソリューションを提供させてもらっていましたが、今後はそのさらに先を見据えて、次世代ネットワーク「IOWN」の活用なども視野に入れた提案もしていきたいですね。また今回、日本生命さんという大規模な企業に導入してもらって、FMC内線基盤に関してさらなる技術的なノウハウや実績が培われたと感じています。今後は、これらを活かし、より多くのお客さまに貢献していければと考えています。

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