2024.11.15(Fri)
Partnership with Robots
2023.06.30(Fri)
#30
目次
まずOPEN HUB Catalystの野々上帆香から、生成AIについての説明や大手テック企業の動向について説明。生成AIの活用アイデアを議論するために、知識の共有を行いました。
生成AIは、与えられたデータを学習し、画像や音声、文章、音楽などさまざまなアウトプットを自動的に生成できる機械学習の技術です。クリエイティブで効率的なデータ生成が可能なので、ビジネスや芸術、科学など多くの分野で活用されることが期待されます。生成AIによって、手動で行ってきた作業を自動化して人間の負担を軽減したり、人間は重要な仕事に集中して生産性を向上させたりすることが可能になるのです。
ちなみに、今回のイベントの告知ページには「Made with AI」と記載していました。実は、このイベントの説明文とアイキャッチ画像は、生成AIで作成したもの。「私は生成AIに画像と文章をつくってもらうようにお願いしただけで、あとは何もしていません。もしかしたら少し不自然な表現だと感じる方もいたかもしれませんが、生成AIはすでにここまで進んでいます」(野々上)。
生成AIの中で最近特に注目を集めたのが、アメリカの企業OpenAIが開発し、2022年11月に公開されたチャットボット「ChatGPT」です。2023年3月には、最新モデルであるGPT4が発表されています。大量のテキストデータから言語学習を行い、人間に極めて近い自然な文章を生成することができます。
大手テック企業も、生成AIの導入を進めています。Microsoftは、WordやExcel、PowerPointに生成AIの機能を組み込んだCopilot(「副操縦士」)のリリースを予定しており、プレゼン資料の作成や議事録の要約など、さまざまな業務が自動化できるように。また、Microsoft Edgeが提供しているAIチャットや画像生成AIを搭載した検索エンジンも、さまざまなWebページから最適な情報を返してくれます。
Googleは、このイベントの直前にあたる2023年5月11日に、チャット型の生成AI「Bard」の日本語対応を発表。生成AIを活用したサービス開発が加熱しています。
複数のソースから最適な情報を取得し、文字や画像など多様なフォーマットの情報を抽出できる生成AI。今後はどのように発展していくのでしょうか。野々上は生成AIの「感情を持たず客観的な対応が行える」特性にも着目しながら、「生成AIを人間の仕事を奪う『労働の代替』と捉えるのではなく、私たちの『アシスタント』としてどう役立てられるのか、自社がどう恩恵を受けられるのか、慎重かつ楽観的に情報をウォッチしていくことが大切です」と話を締めくくりました。
生成AIの解説の後は、実際に生成AIを体験し、参加者同士で共有する時間です。今回は以下3種類の生成AIを体験しました。
1.ChatGPT
昨今、大きな注目を集めているChatGPT。その特徴を野々上はこう語ります。
「自然な会話ができることがChatGPTの特徴だと思います。質問を1つで終わらせずにさらに重ねることで、内容を深掘りでき、誤りを指摘すれば新たな回答を得られます。また、それまでの会話全体の流れをくみ取って回答してくれるのも特徴です」
参加者は、回答を引き出す「呪文」であるプロンプトを入力して、ChatGPTにアイデア発散を手伝ってもらったり、専門家として情報提供してもらったり、抽象的なイメージを具体化してもらったりしました。話題になっているだけあって、ChatGPTはすでに使用したことがある方も多かったよう。「こんな場面でChatGPTを使っている」「このプロンプトではうまく回答が得られなかった」「こういうプロンプトを入力したらうまくいった」など、さまざまな体験談が共有されました。
2.画像生成AI「DALL·E 2」
DALL·E 2は、ChatGPTと同じくOpenAIが開発した画像生成AIです。入力されたプロンプトに沿った画像を作成してくれます。プロンプトに詳細な指示を入力すればするほど、イメージに近い画像が生成されるため、こちらもどのようなプロンプトを入力するかが重要になります。
今回は、参加者の方々からイメージやプロンプトのアイデアを募り、OPEN HUBのスタッフが入力して、さまざまな画像を生成してみました。画像が出来上がった瞬間「おお〜」と感嘆の声が上がる場面も。参加者からは、SNSでイベント告知をする際のアイキャッチ画像を作成するときなどに活用できそう、といったアイデアが交わされていました。
3.スライド生成AI「Tome」
Tomeは、スライドのタイトルを入力するだけで、そのタイトルをテーマとしたスライドを自動で生成してくれるAIです。文章だけでなく、画像も自動で生成してくれます。また、自動生成されたスライドを編集したり、自分が使いたい画像を挿入したり、生成されるスライドのデザインをカスタマイズしたりすることも可能です。
参加者から募ったテーマをTomeに入力したところ、わずか数十秒の間に、表紙を含めて8枚のスライドを作成してくれました。ほかの生成AIでも同様ですが、現段階では、生成される情報の正確性を精査する必要がありますし、画像のテイストに一貫性がないこともあるようです。しかし、業務内でスライドを作成する機会が多い方には注目の生成AIといえます。Tomeには何ができて何ができないのか、実ビジネスではどのように活用できそうか、参加者からさまざまな質問が飛んでいました。
生成AIを体験した後は、3、4名のグループに分かれて、生成AIのビジネス活用についての意見交換を実施。異なる知識やアセットを持つ企業のメンバーと話し合うことで、アイデアをさらに膨らませます。
最初のテーマは、「仕事で生成AIを活用できそうな場面/できなさそうな場面」について。各グループからは、「資料の作成や調査時間の短縮など、業務効率化に役立つ」という意見や、「クレーマー対応や部下を叱らなければならない場面など、感情的になりやすい場面での対処法を相談できるのではないか」といった意見なども出ました。現段階で生成AIには感情がないため、冷静な提案が期待できそうですが、逆に「人の気持ちを理解した上での対応が必要な場面では活用が難しいのではないか」との指摘もありました。一方で生成AIは自然な会話が行えることから、「漫才のボケとツッコミの練習ができるのでは」といったユニークな意見も。
また、「現段階ではできなさそうなことをできるようにするために、生成AIはどのように発展すべきか/発展してほしいか」というテーマでは、「個人の定性的な情報を踏まえて、一歩先の提案をしてくれるパーソナライズされた生成AI」や、「職場の人間関係や立場、個々の人間性まで考慮した上で最適な提案をしてくれるAI」に期待する声が聞かれました。
最後に、こうした参加者の意見を踏まえて、実際のところ生成AIにはどこまでのことができるのか、ChatGPTを使って確認してみることに。まず、「人間関係を考慮した提案をAIが行うためにはどうしたらいいですか?」とChatGPTに聞いてみたところ、社会的ネットワークやコミュニケーションパターン、パフォーマンス評価など人間関係に関するデータを提供することなどが提案されました。生成AIは、基本的に「平均値」を提案してくれるものですので、前提となる条件をすべて指示に含めることで、ある程度のカスタマイズが可能になるかもしれません。
そしてもう1つ、「漫才のボケとツッコミの練習が可能なのではないか」という意見に基づいて、「生成AIに関する漫才をつくってください」とChatGPTにお願いしてみました。さて、ChatGPTに漫才は可能なのでしょうか……? 答えはぜひ、実際にChatGPTを使って確認してみてください。
今回のワークショップは、さまざまなバックグラウンドを持つメンバーと生成AIの体験を共有し、ビジネス活用の可能性について考えるものでした。参加者にとっては、自分にはない観点や発想のメンバーと意見交換することで、生成AIの新しい活用方法だけでなく、各自の持ち場で生成AIの活用を推進するきっかけやモチベーションも得られたようです。ワークショップ終了後に、参加者から感想を伺いました。
総合電機メーカーで情報システムを担当し、社内の業務効率化に生成AIの活用を考えているという方は、「社内では『機密が漏れてしまうのでは』など、さまざまな不安を感じている人がまだ多い印象を受けています。今日ワークショップに参加し、社外の方々とも交流する中で、生成AIがどれだけホットなのかを肌で感じることができました。今日の内容を踏まえて、社内でもまずは生成AIについて知ってもらいたいと考えています」と振り返りました。
また、人材派遣企業にて新規事業開発や地方創生に携わり、生成AIなどデジタルテクノロジーの活用を検討しているという方は、「生成AIに関心があるのはどのような人たちなのか、どのようなところにニーズがありそうなのか、気付きを得たい」という思いで参加したとのこと。「日ごろからITやDXなどへの関心が高い人が多かった一方、これから使っていこうと考えているビギナーの方もある程度参加している印象でした。私自身はアイデアを求められる仕事ですので、アイデアを出す際の壁打ちの相手として生成AIを活用し、多様な視点から物事を考えられるようにしたいと思っています」。
生成AIは現在も急速な発展を続けています。今以上にできることが増え、ビジネス活用の幅もさらに大きく広がっていくことは間違いないでしょう。慎重かつ楽観的に考え、落ち着いて情報をアップデートしながら、ビジネスシーンでの活用の可能性を探りたいものです。OPEN HUB Baseでは、今後も生成AIに関する体験や意見を会員間で共有する機会を提供していきます。
OPEN HUB
Issue
Partnership with Robots
ロボットと人との共生