2024.10.09(Wed)
Co-Create the Future
2023.03.08(Wed)
#22
目次
昨今、女性の社会進出が進む中で、女性特有の健康課題をテクノロジーによって解決する「フェムテック(Femtech)」が注目されています 。
NTTコミュニケーションズでは、フェムテック領域に携わる企業をつなげ、連携を生み出すコミュニティー「Value Add Femtech Community」を2023年1月23日に立ち上げました。今回のワークショップでは、コミュニティーの立ち上げに先駆けるかたちで、参加企業が保有するデータを使って女性が抱える課題をどのように解決し事業展開できるかについて話し合われました。
この日集まったのは、婦人科領域のオンライン診察プラットフォーム「スマルナ」サービスを提供するネクイノと、医療ヘルスケア分野の事業戦略などのコンサルティングを行うアーク・イノベーション、生理管理アプリLa luneを提供するエイチームウェルネス、女性の不妊予防に関する研修やカウンセリング提供などの支援事業を展開するポピンズファミリーケア、女性のバイオリズムに寄り添うプロダクトを開発するWRAYの5社。それぞれが異なる立場で女性の健康課題に取り組んでいます。
ワークショップではAとB、2つのグループに分かれて、4つの機会領域(※)を各グループが2つずつ受け持つことになりました。
※機会領域:ビジネス機会となりうる領域のこと。アイデア発散・検討のため、領域を特定してディスカッションを実施。
Aグループに与えられた機会領域の1つ目は、「おりものに煩わらしさや不快を感じてうまく付き合えない」という悩み。周期が分からない、正常な状態が分からないという不安、下着が汚れる不快感といった課題を抱えている領域です。
2つ目は、多くの女性が不安を抱えている妊孕力(妊娠する能力)。この領域が抱えている問題の背景には、診察や検査を受けることへの消極性、検査に関する情報不足、女性の社会進出に伴う婚期や妊娠の高齢化や、育児のサポート不足により妊活に踏み切れない環境などが挙げられます。
一方、Bグループの機会領域の1つ目はメンタル不調です。生理に関わる不調が理解されないことへの不安と悩み。症状が重い女性にとっては、男性や症状が軽い女性から理解が得られないことや、生理中であることは知られたくないがつらい状況は理解してほしいという心理的葛藤、さらには原因が分からず自分でコントロールできない悩みなど、背景にある課題は多岐にわたります。
2つ目は、生理の不順や揺らぎ。生理が始まるタイミングが読めないために、常に気にしなくてはならない心理的負担や、仕事のパフォーマンスへの影響、自分の経血量が正常なのか分からないことから生じる病気への不安など、ここにも多くの課題が広がっています。
これら4つの機会領域は、NTT Comの女性社員を中心に事前にワークショップを行い、生理周期に関わるものとライフステージに関わる長期的なものとに分けて女性の悩みを洗い出し、その中でも共感度が高かったもの、また事業の機会として興味深かったものを選別することでまとめたものでした。
参加者は2つのグループに分かれてテーブルに着席。それぞれ9人中4人が男性です。これまで女性同士でも話しづらかった課題について、男性も積極的に参加し議論することも、このワークショップの大きな意義の1つと言えるでしょう。
個人ワーク中から、意見交換を始める参加者たち。初対面の緊張もすぐに薄れ、互いの意見からさらにアイデアを得て付箋に書き記していきます。同じ目的に向かう共通意識が、活気あるコミュニケーションを生むのでしょう。付箋が次々とテンポ良く貼られていく様子からは、参加者たちが常日頃女性の健康課題について思考を巡らせていることがうかがえます。
個人ワークの時間を終えてみると、データ活用とサービスアイデアの枠にそれぞれ30枚以上の付箋が並びました。ワークはそのままディスカッションへ。センシティブな内容にも臆することなく、オープンかつ活気溢れる雰囲気の中で議論が交わされました。
おりものや生理などに関する女性たちのリアルな発言に、全員が真剣に耳を傾け、女性たちが感じる不快や不安を理解しようと努めます。フェムテックのビジネスに取り組む上で、男性ならではの客観的な視点で女性の問題を分析してきた人もいます。彼らからの説明があることで、理解はさらに深まります。これまでオープンに議論されてこなかった女性の健康課題は、こうした率直な意見交換があってこそ解決の糸口が見えるのであり、必要なデータとサービスが明らかになっていくのです。
各機会領域についてグループ内で30分ずつ話し合った後は、各グループからの発表が行われました。
Aグループからは、おりものに関するサービスのアイデアが示されました。そのなかで、おりものから自分の健康具合が判別できるサービスがあれば消費者は有料コンテンツであっても利用してくれるのではないか、との考察が述べられました。また、妊孕力については次のような見解が示され関心を集めました。
「女性が妊娠しやすい時期には限りがあり、35歳になるとぐっと可能性が減ることがあまり知られていないという実情があります。そうした知識を誰しもが共有できていたら、女性もライフプランが立てやすく、妊活もよりコントロールできるのではないかと話し合いました」
当初、妊孕力はテーマとして扱いにくいという懸念がありましたが、予想に反して「深掘りすると面白いサービスの可能性が見えてくる」と盛り上がり、妊活機能を装備する生理予測アプリなど、データの活用方法についても積極的に話し合われました。
Bグループからは、担当した2つの機会領域はともに天候などの環境変化に関連づけられるとした上で、環境については気圧や気温に関するデータを、気分や体調についてはウェアラブルデバイスによって得られる心拍数やバイオリズムなどのデータを活用したサービスの実現性が提示されました。
短時間ながら、具体的なアイデアが多数出たことは大きな成果です。その具体性から、今後のビジネスにもダイレクトにつながっていくことが予感されました。
合計2時間にわたって行われた今回のワークショップ。参加した各企業の担当者の表情は明るく、新たな発見をできて大きな刺激を受けたようでした。そして、フェムテック領域においてコミュニティーが果たす機能への期待の声が上がりました。
「自社で不妊予防や不妊治療に関して企業研修など行っていますが、ここから先は義務教育にまで踏み込まないと社会は変わりません。自社だけでは実現が難しく、必要なのは企業の垣根を超えたコミュニティーです。企業を裏で支援するファイナンシャルサービスの必要性にまで話が及ぶなど、壮大で重要なキーワードが短時間で出てきたことに驚きました」
「価値の高いものを提供し、なおかつビジネスとしていかに経済性も成り立たせるかが今日のテーマの1つだったと思います。データの利活用がこのコミュニティーの肝ですが、“どのようなデータが集まるか”から、“どのようにデータを使っていくか”に移行できたことで、一歩前進したと感じています」
さらに、この日のワークショップを締めくくったネクイノ代表の石井健一氏による次の言葉は、コミュニティーの今後の指針となるものでした。
「フェムテックは言葉が先行している印象で、データの利活用については、多くの人がその必要性を頭では理解しつつも実感が持てていない現状があると思います。フェムテックを社会実装していくためには一度テック的な視点から離れて、このデータを何に使うのか、誰の何をどのように解決したいのかなど、スタートアップの立ち上げ時のような発想を持つ必要があると思っています。今日のような場はまさにそのための良い機会でした」
本プロジェクトを率いるNTT Comの久野誠史と鵜飼耕一郎、秋山瑛子も「手応えを感じた」という今回のワークショップを次のように振り返ります。
「今日のワークショップは女性の健康課題がテーマでしたので、男性もいるなかで会話が弾むのか気がかりでしたが、非常に活発な意見交換がなされていたと思います。次のビジネスの種が見つかったように思いますので、それらを具現化していきたいですし、Value Add Femtech Communityにもここで得た成果を反映させていきたいですね」(鵜飼)
「現在、フェムテックの領域には多くのスタートアップ企業が参入し始めています。それぞれの企業がカバーしているのは数ある女性の健康課題のなかの一部ですが、そうした企業が持っている技術や情報をつなぎ合わせることでソリューションの価値が高まり、可能性も広がるのではないか。そして、そこにフェムテックの企業だけではなく、そうした情報や技術を使って女性のための商品やサービスを開発していきたいと考えている企業にも集まってもらう。その橋渡しをNTT Comが担えるのではないかということで構想されたのがValue Add Femtech Communityです。まずは今回のワークショップを通じてデータの利活用による協業の可能性を探り、楽しみながら親交を深めていければと思います」(久野)
「現在、多くの企業が“女性が活躍できる企業”を目指しています。しかしながら、それを標榜するだけでは女性のサポートにはなりません。“こういう風にしたい”、“こういうサポートをします”という議論が両輪でなされていないとうまくいかないのです。福利厚生を含め、女性を支援するサービスをまず企業自ら考えることが大事ではないでしょうか」(秋山)
各社が保有するデータやサービス、そして参加者たちの知見を組み合わせて、フェムテックにおける新たな付加価値を生み出すことを目指したこの日のワークショップ。オープン思考による共創がテーマのOPEN HUBで、その大きな可能性を確認することができました。生み出した種を企業横断で育て上げる今後の活動にも期待です。
Value Add Femtech Communityでは、女性の各ライフステージにおける課題を、データの利活用により解決し、女性のQOLを向上させることを目的としています。女性の健康やライフステージに関するデータを活用して課題を解決するサービスや製品を提供していきたい、とお考えの企業さまがいらっしゃいましたら、お気軽にお声かけください。女性がより活躍しやすい社会を一緒に作っていきましょう!
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Issue
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