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2025.07.09(Wed)
#65
この記事の要約
NTTファシリティーズは、遠隔地でもリアルのような一体感ある対話を可能にする次世代コミュニケーションツール「OPEN HUB Window」を、新オフィス「FL@T」に導入。従来のオンライン会議で失われがちな空気感や間合いを、低遅延・高精細映像・自然な音声伝送により補完し、リアルに近い臨場感を実現した。AIを活用した発話量の可視化やアイデア創出支援も進められ、働き方や組織間連携の質的変革を促す基盤として期待されている。NTTドコモビジネスとの共創により、オフィスのあり方や価値創出の可能性をさらに広げていく方針。
※この要約は生成AIをもとに作成しました。
目次
──まずは、OPEN HUB Windowを導入した経緯からお聞かせください。
木村佐知子氏(以下、木村氏):今回、自社オフィスのリニューアルに当たり、まず自分たちの業務を丁寧に棚卸しし、社員参画によるプロセスで得た声にも耳を傾けながら、今の時代にふさわしいオフィスのあり方を検討してきました。そうして誕生したのが共創スペース「FL@T」です。このエリアは「オフィスに足を運ぶ意味とは何か」を改めて問い直し、Face to Faceで対話するからこそ生まれるアイデアやイノベーションの価値を最大限に引き出す場として設計されています。また、NTTグループにおけるファシリティ事業を担う企業として、ICTを活用した新しい働き方を自ら試して検証していく役割も担っています。
そうした流れの中、これからのワークスペースを構想する上で浮かび上がった課題のひとつが、ハイブリッドワークにおける“コミュニケーションのズレ”のようなもの。オンライン会議など離れた場所にいる相手との間で生じる微妙な間とか、空気感が伝わらないもどかしさをどうにかしたいと思っていた時に出会ったのが、OPEN HUB Windowでした。
忰田毅(以下、忰田):NTTファシリティーズとは、以前、大学のキャンパスにおける遠隔授業環境の提案でご一緒したことがあり、遠く離れた場所でもリアルに近いコミュニケーションを実現したいという想いは共有できていました。そして今回、共創スペースを立ち上げられると伺った時、「距離を超えた共創のあり方を考えたい」という話を聞いて、OPEN HUB Windowはまさにぴったりのソリューションだと考え、ご提案しました。
──導入を決定づけたポイントを教えてください。
木村氏:OPEN HUB Windowの特徴のひとつとして低遅延がうたわれていますが、「同じ空間にいるかのような自然なコミュニケーション」とは何かを掘り下げる中で、遅延による影響をしっかり理解できていなかったことに気付きました。そして、この遅延の少なさこそが、これまで遠隔コミュニケーションで感じていた違和感を解消してくれるのではないかと期待したのです。
さらに、NTTグループが推進するIOWN構想のAPN(All-Photonics Network)にもすでに対応可能な状態にあると聞いて、将来のスタンダードになり得る拡張性の高さにも大きな魅力を感じました。
大道真優(以下、大道):ありがとうございます。少し細かい点になりますが、設置方法やサイズを柔軟にカスタマイズできる点も、他社のソリューションにはないこのデバイスの強みだと私たちは考えています。実際に導入された後、そのあたりはいかがでしたか?
木村氏:今回は、FL@Tと大阪オフィス、それから武蔵野市にある空調機器の実機展示も行っている検証施設に導入しましたが、武蔵野市の検証施設には箱の形をした可搬型のモデルを設置してもらいました。これはオフィス型とは異なる形をしていて、ゴロゴロと移動させながらディテールまで詳細に確認することができます。まるでショールームにいるかのような臨場感のあるやりとりができるよう、相談をしながら一緒につくり上げていきました。
──実際にFL@Tで使ってみた感想はどうでしたか? 使い勝手やコミュニケーションの変化など、印象に残っていることがあれば教えてください。
木村氏:FL@Tの正式なオープンは2025年7月でしたが、実は1年ほど前からプレオープンという形で運用を始めていました。その期間中に、大阪オフィスのメンバーを東京のメンバーと同じように表彰するために、OPEN HUB Windowを使ってバーチャル表彰式を開催したのですが、同じ場所でお祝いしているような一体感がありました。あとは懇親会をオンラインでつないだ時も、本当にモニターの向こうに部屋が続いているような感覚で、自然と会話が弾みましたね。
忰田:私たちも社内のイベントで使った時に、2人の司会者が別々の拠点にいたのですが、互いの場所に等身大で映し出されるので、本当にそこにいるようにしか見えなくて驚きました。
木村氏:そう、まさに「隣にいる」感覚です。音に関しても、通常のオンライン会議だと相手の発言を待ったり、声がかぶると聞きづらかったりしますが、OPEN HUB Windowだとそのストレスがありません。声が重なっても自然に聞こえるし、同じ空間を共有しているかのよう。このデバイスを境にしてデスクをつなげるようなレイアウトでディスカッションしたこともあるのですが、大勢で同時に話しても違和感がなく、リアルで会っているのとあまり変わらないやりとりができました。
大道:OPEN HUB Windowは、上にマイク、左右にスピーカーが1つずつ付いていて、内部のシステムでハウリングをうまく制御しています。マイクは相手に自分の声を届けて、スピーカーは相手の声をクリアに再生してくれるので、お互い同時に話してもちゃんと聞き取れるのです。
忰田:従来のオンライン会議だと、誰かが話し始めると「どうぞどうぞ」と譲り合いがちで、お見合い状態になることもありましたが、そういうことが起きない点も強みですね。
木村氏:「空気が伝わる」というのは、まさにこういうことだなと思いました。表情だけでなく、場の雰囲気とかちょっとした反応まで伝わるので、相手が遠隔地にいる感覚自体がだんだん希薄化します。特に複数の人がいる拠点同士をつないだ時は、向こうのオフィスと空気感が一体化してくるので、その違いがよりよくわかりました。
──OPEN HUB Windowの活用範囲は今後さらに広がっていくと聞きました。具体的には、どのような分野やシーンでの展開が期待されているのでしょうか?
大道:オフィス間の空間接続以外では、主に2つのユースケースを想定しています。1つは「リモート接客」。例えば百貨店のハイブランド売場では、高額商品の購入前に「実物を見ながら選びたい」というニーズが根強くあります。しかし在庫は都内のみということも多く、遠方のお客さまにとって来店は簡単ではありません。そこで先日もある百貨店で、2拠点の店舗をつないだリモート接客のPoCを実施したのですが、従来のオンライン接客で課題だった画質や遅延によるストレスが軽減されるほか、画面越しでも商品を細部まで確認できる点が好評で、納得感のある購買体験がオンラインでも可能になりそうだと喜んでもらえました。
木村氏:「実物を見ながら話ができる」という特徴は、私たちが関わる領域でも大きな価値があると思いました。例えば、社内の議論でも、遠隔での技術継承や研修などの場面で、高精細な映像はとても効果的ではないかという声が上がっています。
大道:それからもう1つのユースケースは「新体験イベント」です。こちらはアーティストのライブイベントで、OPEN HUB Windowと触覚伝送デバイスを組み合わせたオンラインハイタッチ会を行いました。手の感触も伝わることでさらに臨場感が増し、参加者からは「まるで本当に会って話しているみたいだった」という感想を多く得ることができました。
──デバイス単体としての進化だけでなく、IOWN APNや触覚伝送デバイスとの組み合わせによってさらに可能性が広がっていくということですね。
大道:そうです。現在のOPEN HUB Windowは、基本的に等身大サイズで設計されていますが、例えば、IOWN APNのような超高速・大容量ネットワークが整えば、将来的には「壁一面をWindow化する」といったことも視野に入ってきます。これが実現すれば、ライブビューイングやスポーツ観戦などの体験型コンテンツにも新たな価値をもたらせると考えています。
実は大阪・関西万博のNTTパビリオンでも、Perfumeのライブパフォーマンスを「空間ごと3Dで転送する」という試みを行っていて、そこでは映像や音声だけでなく、ダンスのステップから生じる振動もデータ化し、遠く離れた場所でリアルタイムに再現しています。視覚や聴覚に加え、触覚までも共有することで、そこにいないはずの人の存在を感じる。そんな没入体験が、すでに現実になりつつあります。
忰田:ここまでくると、もう「隣にいる」ではなく、自分がその空間に入り込んだ感覚になりそうですね。まさに、どこでもドアの世界です。業種・業界を問わずさまざまに活用可能な汎用性も特徴なので、ユースケースは今後も拡大していければと考えています。
──「窓」を介した接続を超えて「空間そのものがつながる」未来は、いつごろ実現しそうですか?
忰田:壁一面をOPEN HUB Windowとして活用することは、技術的にはすでに実現可能な段階にあります。今後、大手町にある弊社の共創ワークプレイス「OPEN HUB Park」で具体的な活用シーンをご紹介していく予定です。
ただ、こうした「空間を共有する」ソリューションについては、体験機会が少ないこともあって、ニーズが高まる段階にはまだ到達していません。社会実装を加速させるためには、私たち自身がさまざまな使い方にチャレンジして、「こんなことも実現できるんだ」と具体的に見せていくことが大切です。そういう意味でも、FL@Tのようなスペースは、実証の場としてとても意義があると感じています。
木村氏:そうですね。私たちもそこに関しては「体験に勝るものはない」と考えています。自分たちが実際に試してみることで、どんな使い方がお客さまの課題解決につながるかを考え続けていきたいと思っています。あとは、その効果や価値をきちんと可視化できるようになれば、その導入の意義を定量的にも訴求できるようになると考えています。
忰田:電力削減やCO₂排出量のようにわかりやすく測れたらいいのですけどね。ただ、OPEN HUB Windowの本質的な価値は「クリエーティブな発想が生まれやすい空間づくり」にあると考えています。空気を共有することでアウトプットの量と質が高まって、いいアイデアや新しい価値が生まれる。そうしたプロセスをどう指標化すればいいか、模索しています。
ちなみに今回、FL@Tには、OPEN HUB Windowに加えて、AIが会議のファシリテーションを支援する「AIブレストツール」も導入されています。これはAIが会議メンバーの一員となり、GXやファシリティ領域のプロとして参加することで、会議でのアイデア出しやファシリテーションなどをサポートするものとなっています。このツールの効果をどう評価するかについても意見が交わされており、現在は、AI画面の下部にその日の「発話量」をグラフで表示することで、議論の活性度を可視化する仕組みを取り入れています。
木村氏:発言の数、話している時間の長さなどに加えて、笑いが起こった数やアイデアの斬新さなど、目的によって適した指標は変わってくると思います。ゆくゆくは「コミュニケーションの量が何%増えた」「拠点の異なる人とのつながりが何人増えた」といったデータを、さらに実際の事業データを踏まえた「ビジネスの意思決定や成果にどの程度影響を与えた」といった部分までも可視化していければ、そのころには組織全体の生産性を高める欠かせないインフラになっているかも、と考えています。
──NTTドコモビジネスとNTTファシリティーズの今後の共創のあり方についても展望をお聞かせください。
大道:今回の取り組みで特に価値を感じているのは、NTTファシリティーズとご一緒することで、より現場に近い視点を持てたことです。私たちNTTドコモビジネスはICTの技術に強みを持っていますが、実際にオフィスを利用するエンドユーザーの声を直接伺う機会は限られています。そうした中で、「どんな空間が求められているのか」「どのように使われているのか」といったリアルな声を聞かせていただけたのは、非常に貴重な経験でした。
忰田:その声を起点に、ICTで何ができるのかを一緒に考え、形にしていく。そんな共創のあり方に、今後のソリューション開発のヒントがあると感じています。FL@Tのようなフィールドを活かして、より実践的で価値ある活用法をともに見つけていけたらと思います。
木村氏:私たちとしても、お客さまの経営課題にどう向き合うかを考える上で、NTTドコモビジネスと連携できる意義は大きいと感じています。OPEN HUB WindowやAIブレストツールにはオフィスのあり方、コミュニケーションのあり方を革新するポテンシャルがあり、建築やファシリティといった従来の枠組みにとらわれず、これまで踏み込めなかった領域にも横断的に挑戦できるようになったことで、より本質的な課題解決や新たな価値の提供につながるのではないかと期待しています。
「まだ誰も体験したことのない、新しい働き方」をこれからも模索しながら、その成果をもっと多くのお客さまに届けていきたいですね。目指すのは「みんなが幸せに働ける社会をつくること」。それを空間の力で支えていくことこそが、私たちが提供しているワークプレイスの大きな役割だと感じています。
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