2025年7月より、NTTコミュニケーションズはNTTドコモビジネスに社名を変更しました

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2025.09.10(Wed)

「ドローン×通信」が変える、インフラ点検と災害対応の現場
―首都高技術・福島県昭和村の活用事例―

#64

近年ビジネス分野での普及が進み、業務効率化や新たな事業の創出など、様々な社会課題解決の可能性を広げる重要なツールとして注目を集めているドローン。NTTドコモビジネス株式会社(以下、NTTドコモビジネス)が提供する「docomo sky」は「空の道で、ミライをつなぐ」をコンセプトに、ドローンを活用したサービスを広く展開しています。

2025年7月30日、OPEN HUB Parkで開催されたイベント【ドローンが変える災害対応とインフラ点検の現場】では、ドローンを現場活用している首都高技術株式会社の加藤穰氏、福島県昭和村の小林勇介氏の両名が登壇し、その取り組みを報告しました。本記事ではイベントの様子をレポートするとともに、文末では当日のアーカイブ動画を公開します。

目次


    ドローン×通信が変える、高速道路点検の現場

    一つ目のユースケースは高速道路を点検する現場です。首都高技術株式会社は、首都高速道路全線の構造物点検、建物点検、施工管理等を中核事業としていますが、高度成長期に建設されたインフラの約7割が更新の時期を迎え、老朽化対策は切迫した状態にあります。さらには技術者の高齢化や人材不足、気候変動など、国内のインフラを取り巻く不安要素は枚挙に暇がありません。
    首都高技術株式会社はこうした課題を、点検手法の進化によってクリアしようとしています。2011年から首都高速の点検に携わる加藤穰氏が語りました。

    加藤穰 | 首都高技術株式会社 構造管理部構造管理課(兼)構造物点検技術訓練室 係長
    2011年、首都高技術株式会社に入社。首都高速道路の東京管内・神奈川管内の点検、首都高速道路株式会社への出向を経て、2019年より現職。現在は首都高速道路全体の点検を統括する業務に従事。点検手法の一つとしてドローンの導入を検討・開発。また、ドローン操縦技術の向上・継承を目的とした社員の操縦者育成の推進にも取り組んでいる。

    全長327kmの首都高速道路は、約8割が高架橋でありその大半がメタル橋となっています。ゆえに構造物の管理において日々の点検が極めて重要となります。

    「そもそも構造上、点検が難しい点検困難箇所というものがあり、こうした箇所の点検にドローンを活用できないものかと私たちは考えていました。そこでNTTドコモビジネスと首都高技術株式会社が2018年より共同研究を進め、2021年には本格的にドローンを点検作業に導入しました。また、地震などの災害時には早期に道路状況を把握しなければなりません。そのような場合にも、ドローンによって空からアプローチする取り組みを実施しています」

    高架下が河川や線路など、橋梁点検車や台船による接近が難しい箇所が存在する高速道路の点検現場。橋桁に特殊高所技術を持った作業員が上がって目視点検等を実施していますが、道路を通行止めにすることなく点検をするには作業効率の向上が課題でした。こうした現場でドローンを効果的に活用すれば、点検作業の支援につながるだけでなく、時間やコストの削減に貢献します。

    そして、加藤氏は「ドローン」を利用するにあたり、カメラ画素や機体の大きさ等、仕様の異なる2機のドローンを選定。それぞれの機体で飛行試験を実施して、スクリーニング点検に活用可能かどうかを検証してきました。

    「こうした検証の中で機能的に譲れない大きなポイントは、自律飛行が可能であることでした。高架下などの通信が難しいエリアではGPSの取得ができないからです。この点をクリアした大型のドローン、小型のドローン、それぞれの機能を検証。搭載カメラの画素数や照明の有無など長所・短所はありましたが、最終的には小型ドローンのSkydio 2が、点検困難箇所での撮影ニーズに合うという結果になりました。我々が使用する現場は、地盤が安定していなかったり高所作業車が入れなかったりしますので、橋桁への進入や、大型ドローンでは死角となる場所の確認も可能なSkydio 2が大いに活躍してくれたのです。

    実際にドローンで撮影した画像を見ると、ひび割れや腐食などをしっかりと写真に収めてくれているのが分かります。たとえば特殊橋梁と名付けられた荒川湾岸橋(※1)は人間一人が立てる程度の点検通路しかなく、しかも通路の下は海面です。こうした場所で活用できるのは、手のひらから離発着できるSkydio 2だけでした」

    ※1)Skydio 2の実機(左)と、ハンドキャッチ・リリース式での離着陸がテストされた、東京都荒川湾岸橋の点検通路(右)。AIによる自律飛行技術、障害物回避技術を搭載し、従来飛行が難しかった場所においても安全な飛行が可能。コンパクトな筐体で4K動画、1200万画素の画像撮影を行え、最大27分飛行できる。

    また、地震など大規模災害発生時の状況把握としての用途を想定し、2023年度は五色桜大橋、2024年度はレインボーブリッジで検証を実施した加藤氏。2024年度の検証では、とりわけ撮影難易度が上がる夜間の飛行を実施。最先端AIによって精密な飛行が可能なSkydio X10を採用し、搭載されたサーマルカメラやスポットライト、Night Sense (夜間自律飛行を可能にするためのアタッチメントオプション)が威力を発揮したといいます。

    「昼間、夜間、それぞれの時間で撮影を行い画像にどの程度の差があるかを検証しました。結果として夜間であっても驚くほど綺麗な画像(※2)を撮影することができ、Skydio X10搭載のNight Sense、スポットライトの効力を実感しました。レインボーブリッジは箱桁が橋を支えています。この箱の中は真っ暗で、これまでの点検方法では足場を組んだ上で人がロープアクセスによって移動するなど、非常に手間と時間がかかっていました。このような真っ暗な空間では、夜間自律飛行が出来ないドローンは飛ばせないので撮影もできません。でもSkydio X10を使えば、昼間でも夜間でもしっかりと点検のための撮影ができたのです」

    ※2)Skydio X10の実機(左)と、夜間に撮影された首都高速11号台場線レインボーブリッジの画像(右)。最大で6400万画素の撮影が可能で、IP55(防水・防塵)を取得しており幅広い環境や天候で利用できる。カメラは望遠重視、広角重視の2種類を選択でき、どちらもサーマルカメラを搭載。LTEを活用した飛行、暗所での自律飛行、夜間飛行などが可能なハイスペックモデル。

    このように特殊環境下でも効果的な飛行・撮影ができるようになった背景には、NTTドコモビジネスを通じて米国Skydio社と意見交換を続けてきた実績があったと話す加藤氏。たとえばこれまでGPSが十分に取得できない場所では10mしか高度を取れなかったドローンが、この意見交換などによって高度10m以上の飛行が可能になりました。

    「ドローンメーカーの方と直接お会いして意見交換できたことに、とても感謝しています。私たちは今後もこうしたドローンを活用しながら日々、技術の向上に努め、首都高速道路を守る業務に尽力していきたいと考えています」

    ドローン導入は、人命救助における画期的な一手

    二つ目のユースケースはドローンを利用した防災や山岳救助の現場です。福島県西部の昭和村(※3)は1,000m級の山々に囲まれた美しい農山村。人口は1,000人強と人手不足の課題も抱えながら、先端的なドローンを防災や山岳救助において活用しています。

    「人口減少を嘆いていても仕方ありません。私たちは100年後も昭和村が昭和村であるために、先端技術を積極的に使って村の暮らしを豊かにしていこうという方針を作りました。その流れのなか令和3年度から、除雪車の5G自動運転に向けた実証事業をNTTドコモビジネスと共同で行いました。次に試みたのが、山岳遭難におけるドローンの活用です」

    ※3)標高1234mの御前ヶ岳や、標高942.8mの大妻山など、人気の登山ルートを豊富に有する昭和村。ゆえに、村としては遭難事案や捜索事案に対して万全の対策が求められている。

    こう話すのは昭和村・総務課の小林勇介氏です。2024年には3件の山岳遭難事案、1件の捜索事案が発生した昭和村。携帯電話が繋がる場所であれば逆探知によって遭難者の位置を特定できるものの、山中は繋がらない地点がほとんど。ゆえに、同行者などからの情報をもとに地元消防団や警察が山中に入り、人力で捜索を行うケースが多くなります。また、捜索の依頼は午後になることが多く、現場付近に入れるのは夕方や翌日になってしまうことも多々あるといいます。さらに、防災ヘリコプターが昭和村上空で捜索できるのは地形的に30分程度と、大きなハードルが立ちはだかります。

    小林勇介|福島県昭和村 総務課 企画創生係長
    昭和(村)生まれ、昭和村育ち。福島大学卒業後、平成22年度に昭和村役場へ入庁。​広報、農業、観光、廃校利活用のガバメントクラウドファンディング(GCF)など、地域に根ざした多様な業務を担当。令和に入り、村の計画や地方版総合戦略の策定に携わるほか、DXやデジタル田園都市構想にも注力。「心地よく暮らせる村」を目指し、現場起点で企業との連携や実証事業に取り組む。令和7年度より総務課企画創生係長。

    「そこで初動として、夜間の捜索も可能なドローンの活用を模索し始めました。NTTドコモビジネスに相談したところ、Skydio社のドローンを紹介いただき2024年11月に初めての検証を実施。通信にはスターリンクを利用しながら、Night Senseやスポットライトを搭載したSkydio X10を飛行させました。ルートをあらかじめ設定した自動飛行によって捜索対象範囲を網羅。通常、真っ暗の状態では撮影が困難ですが、スポットライトなどを活用することで状況把握に十分な画像を撮影することができました。また、昼間においてもサーマルカメラを活用することで、肉眼では確認することが難しい人影も確かに見えてきます(※4)。

    なにより素晴らしいと感じたのは、リアルタイムのストリーミングです。これまで利用したストリーミング映像ではどうしても遅延を感じていたのですが、この実証実験ではほぼ映像の遅延を感じませんでした。また、サーマルと可視光の切り替えもできるほか、ドローンの飛行位置やカメラの方向も表示可能なため、どのような状態で飛行しているかを遠隔操作でも確認できるのも大きな利点だと感じました」

    ※4)可視光では見落としがちな状況も、サーマルカメラでは確認が容易となる。

    小林氏がドローンの有効性を感じたのは、早急に、くまなく捜索できるからでした。たとえば30歳成人男性の平均移動速度と目の届く範囲を計算するとおよそ400 m²/hとなります。一方でドローンの飛行速度(毎秒3m)での確認可能な範囲は19.44 km²/hと、人力の4万8600倍にもなります。

    「この実験でドローンの圧倒的な優位性を痛感しました。カメラの角度を変えながら同じルートを自動飛行させれば、手動飛行では見えないものが見えてきます。こうした観点でも自動飛行の優位性を感じられました。Skydio X10であれば夜間でも安全に自動飛行が行え、早急かつ網羅的な捜索が可能となるわけです」

    また、数々の実験において、より精度の高い撮影手法についても知識を得たと話す小林氏。上空から捜索対象を発見した場合、捜索対象の位置を特定するための高い精度が求められます。Skydio X10はカメラの向いている先の位置情報を取得できますが、当初はドローンで取得した座標と現地のGPS座標を比較した際、最大で10m程度の誤差が出ていました。しかし、実験の結果、撮影時のジンバルの角度が緩いほど誤差が大きくなると判明。ジンバルの角度を工夫しながら飛行させることで、誤差を最小限に留められることを確認したといいます。これは一刻を争う人命救助の現場において極めて重要な収穫だと言えるでしょう。

    さらに、昭和村ではドローンポートSkydio Dock for X10(※5)を村役場の屋上に設置し、さまざまな検証を実施。完全無人の状況下でレベル3.5(補助者なしで完全目視外の自動飛行)の飛行に成功しました。この事実に小林氏は未来を感じたと熱く語ります。

    ※5)こうしたドローンポートからドローンが自動巡回を行う。PCを介した遠隔操縦も可能で撮影時の省人化、コスト削減にも貢献する。

    「このドローンポートによって、補助者を置かずに定期的な巡回飛行が可能となるのです。AIなどを活用すれば、上空からの定期的な確認によって、下界のさまざまな変化を逐次判定することができるかもしれません。まるでSF映画のようですよね。冒頭にもお話ししましたが、私たちは人手が不足していることをマイナスと捉えるのではなく、先端的な技術を導入することでさまざまなハードルを乗り越えたいと思っています。私たちの村にとって、NTTドコモビジネスとの共創は得るものが非常に大きかったと感じています」

    空からミライを創造する「docomo sky」の可能性

    NTTドコモビジネスのドローン提供サービス「docomo sky」では、2020年より日本で初めてSkydio社のドローンを展開。同社のドローンは、上下6つのカメラで周囲360°を確認しながら障害物を認識し、自律的に回避できる上、非GPS環境下でも安定飛行が可能です。

    また2021年7月からは、日本初となるドローン向けのLTE上空利用プランをリリース。長距離飛行を支える上空通信と障害物回避機能を有した自律飛行機体によって、安全かつ精密な飛行業務のサポートを実施しています。2024年5月に提供開始した閉域ネットワークによる高セキュリティ通信「docomo MEC」、2025年夏に提供開始予定のパケット優先制御サービスなどで、通信速度向上および安定化と高セキュリティ通信を実現。機体、通信・ネットワーク、プラットフォーム、AI・アプリケーションを総合的に提供することで、多様な現場での課題をクリアするトータルソリューションを実現しています。

    イベントでは、NTTドコモビジネス 5G&IoT部 第二サービス部門担当課長 田仲秀行の登壇によるソリューション紹介のほか、デモンストレーション体験会も行われました。

    本記事では紹介しきれなかったイベント内容や「docomo sky」のサービスをご理解いただけるアーカイブ動画は、下記のオンデマンド配信からご覧ください(視聴には無料の登録が必要です)。

    《第2弾イベント開催!》
    【建設DXの最前線!デジタルツインが変える建設の現場 
     -Cupix Experience 2025 in JAPAN】
    日時:2025年9月24日(水)16:00~18:00
    会場:OPEN HUB Park(大手町プレイスウエストタワー29F)
    登壇企業:株式会社竹中工務店、日揮グローバル株式会社、株式会社丹青社、Cupix Inc.
    お申し込み:https://openhub.ntt.com/event/14079.html

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