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2025.07.09(Wed)
#78
一つ目のユースケースは高速道路を点検する現場です。首都高技術株式会社は、首都高速道路全線の構造物点検、建物点検、施工管理等を中核事業としていますが、高度成長期に建設されたインフラの約7割が更新の時期を迎え、老朽化対策は切迫した状態にあります。さらには技術者の高齢化や人材不足、気候変動など、国内のインフラを取り巻く不安要素は枚挙に暇がありません。
首都高技術株式会社はこうした課題を、点検手法の進化によってクリアしようとしています。2011年から首都高速の点検に携わる加藤穰氏が語りました。

全長327kmの首都高速道路は、約8割が高架橋でありその大半がメタル橋となっています。ゆえに構造物の管理において日々の点検が極めて重要となります。
「そもそも構造上、点検が難しい点検困難箇所というものがあり、こうした箇所の点検にドローンを活用できないものかと私たちは考えていました。そこでNTTドコモビジネスと首都高技術株式会社が2018年より共同研究を進め、2021年には本格的にドローンを点検作業に導入しました。また、地震などの災害時には早期に道路状況を把握しなければなりません。そのような場合にも、ドローンによって空からアプローチする取り組みを実施しています」
高架下が河川や線路など、橋梁点検車や台船による接近が難しい箇所が存在する高速道路の点検現場。橋桁に特殊高所技術を持った作業員が上がって目視点検等を実施していますが、道路を通行止めにすることなく点検をするには作業効率の向上が課題でした。こうした現場でドローンを効果的に活用すれば、点検作業の支援につながるだけでなく、時間やコストの削減に貢献します。
そして、加藤氏は「ドローン」を利用するにあたり、カメラ画素や機体の大きさ等、仕様の異なる2機のドローンを選定。それぞれの機体で飛行試験を実施して、スクリーニング点検に活用可能かどうかを検証してきました。
「こうした検証の中で機能的に譲れない大きなポイントは、自律飛行が可能であることでした。高架下などの通信が難しいエリアではGPSの取得ができないからです。この点をクリアした大型のドローン、小型のドローン、それぞれの機能を検証。搭載カメラの画素数や照明の有無など長所・短所はありましたが、最終的には小型ドローンのSkydio 2が、点検困難箇所での撮影ニーズに合うという結果になりました。我々が使用する現場は、地盤が安定していなかったり高所作業車が入れなかったりしますので、橋桁への進入や、大型ドローンでは死角となる場所の確認も可能なSkydio 2が大いに活躍してくれたのです。
実際にドローンで撮影した画像を見ると、ひび割れや腐食などをしっかりと写真に収めてくれているのが分かります。たとえば特殊橋梁と名付けられた荒川湾岸橋(※1)は人間一人が立てる程度の点検通路しかなく、しかも通路の下は海面です。こうした場所で活用できるのは、手のひらから離発着できるSkydio 2だけでした」

また、地震など大規模災害発生時の状況把握としての用途を想定し、2023年度は五色桜大橋、2024年度はレインボーブリッジで検証を実施した加藤氏。2024年度の検証では、とりわけ撮影難易度が上がる夜間の飛行を実施。最先端AIによって精密な飛行が可能なSkydio X10を採用し、搭載されたサーマルカメラやスポットライト、Night Sense (夜間自律飛行を可能にするためのアタッチメントオプション)が威力を発揮したといいます。
「昼間、夜間、それぞれの時間で撮影を行い画像にどの程度の差があるかを検証しました。結果として夜間であっても驚くほど綺麗な画像(※2)を撮影することができ、Skydio X10搭載のNight Sense、スポットライトの効力を実感しました。レインボーブリッジは箱桁が橋を支えています。この箱の中は真っ暗で、これまでの点検方法では足場を組んだ上で人がロープアクセスによって移動するなど、非常に手間と時間がかかっていました。このような真っ暗な空間では、夜間自律飛行が出来ないドローンは飛ばせないので撮影もできません。でもSkydio X10を使えば、昼間でも夜間でもしっかりと点検のための撮影ができたのです」

このように特殊環境下でも効果的な飛行・撮影ができるようになった背景には、NTTドコモビジネスを通じて米国Skydio社と意見交換を続けてきた実績があったと話す加藤氏。たとえばこれまでGPSが十分に取得できない場所では10mしか高度を取れなかったドローンが、この意見交換などによって高度10m以上の飛行が可能になりました。
「ドローンメーカーの方と直接お会いして意見交換できたことに、とても感謝しています。私たちは今後もこうしたドローンを活用しながら日々、技術の向上に努め、首都高速道路を守る業務に尽力していきたいと考えています」
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