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2025.02.19(Wed)

地域企業での「実践」による次世代リーダー育成
―越境型人材育成がもたらす人と企業の成長とは

#教育 #イノベーション #AI #地方創生 #働き方改革

#53

人材育成と企業内研修の必要性が高まる昨今、従業員が知識や理論を学習したとしても、適切に実践する場がないケースも多く、人材育成の課題の一つとされています。一方で、都市部を除いた日本の各地域の多くは、人口減少や都市への人材集中による人手不足が深刻な問題となっています。DXによる省力化・自動化は、問題解決の有力な選択肢ですが、デジタル化を推進する人手やノウハウも潤沢ではありません。

こうした企業の人材育成課題と、地方が抱える人手やノウハウの不足という課題の双方を解決するためにドコモgaccoとNTTコミュニケーションズ(以下、NTT Com)が2024年7月に共同リリースしたのが越境型の研修を軸とした「地域越境ビジネス実践プログラム」です。ドコモgaccoの山田崇氏、NTT Com ヒューマンリソース部の大原侑也、Smart Education推進室の西村拓真の登壇により配信中のOPEN HUBウェビナー【次世代リーダー育成 実践型研修で学び、成長する地域越境ビジネス実践プログラムとは】の模様をお届けします。

目次


    地域企業の課題を「実践」的に解決する経験が、次世代リーダーを育てる

    西村拓真(以下、西村): NTT ComのSmart Education推進室では「誰もが自分らしく学び、自分らしく働く社会」の実現を目指して、社会人教育の領域に注力しています。こうした中で、ドコモgaccoとNTT Comが2024年7月に「地域越境ビジネス実践プログラム」を共同でリリースしました。まずは、このプログラムを立ち上げた経緯について伺えますでしょうか。

    西村拓真│NTT Com Smart Education推進室
    2019年の入社以降、営業担当として製造・物流業界のお客様を中心に、ソリューションやDX推進の提案および共創ビジネス推進業務を経験。現在は社内ダブルワーク施策を活用して、社会人向けのリスキリングサービス「gacco」、自律型人材育成プラットフォーム「BoostPark」など、HR領域のセールス・マーケティング業務に従事している。

    山田崇(以下、山田):地域企業が抱える課題の一つが人材の確保です。特にデジタル技術などを活用して課題を解決する人材の確保は大変難しい状況です。一方で、都市部でリーダー育成に取り組む企業にも課題があります。それは、研修などで学んだ知識やノウハウを実践する機会が少ないことです。

    そこで本プログラムでは、都市部で働く次世代リーダーを目指すビジネスパーソンを対象に4ヵ月間、原則として1つの企業に対して1人の体制で、ダブルワーク型のフィールド研修(本業8割・地域2割)を実施します。リモートワークと生成AIを中心とした最新テクノロジーを駆使することで、地域企業のみなさまとともに課題を解決、ビジネス創造を実践していく内容になっています。

    山田崇│株式会社ドコモgacco Chief Learning Officer
    大学卒業後、長野県 塩尻市役所入庁。地方創生や官民連携事業に従事。地域課題の解決と企業の人材育成を組み合わせた越境プログラム「MICHIKARA(ミチカラ) 地方創生協働リーダーシッププログラム」を立ち上げる。地方創生の取り組みをまとめた書籍『日本一おかしな公務員』を日本経済新聞社から上梓。2022年、24年間勤務した塩尻市役所を退職し、NTTドコモに転職。現在はドコモgaccoで「地域越境ビジネス実践プログラム」の責任者を務める。
    信州大学 キャリア教育・サポートセンター 特任教授(教育・産学官地域連携 分野)として「地域活性化システム論」、地域企業との共同研究による「アントレプレナー実践ゼミ」、全学横断特別教育プログラム「ローカルイノベーター養成コース」を担当。2016年から内閣府 地域活性化伝道師。

    西村:本プログラムにはどのような特長があるのでしょうか。

    山田:次世代リーダーを目指すビジネスパーソンに対して「問いを立て、関連づける力」を養成することが本プログラムの目的です。そのために「当事者意識」「生成AIのビジネス実装」「ビジネス共創」という3つの機会を提供しています。

    具体的には、実際に地域企業に身を置くことで、現場と向き合いながら、当事者として課題を設定します。この課題を、生成AIなどを用いて解決に導いていくのですが、この過程のなかで、地域企業で働くさまざまな人たちとビジネス共創を実践する機会が得られるでしょう。もちろん、フィールド研修を行うための事前研修から伴走まで支援体制も充実しています。

    西村:今回、生成AIの活用を広げる手法として採用している、ドコモgacco チーフAIオフィサー石山洸氏提唱の「石山メソッド」について教えてください。

    山田:私たちは生成AIを自分事として使ってもらうために「石山メソッド」を導入しています。まず事前研修で自らがAIを使える技術を習得する。続いて課題解決に向けてカスタムAIを作る。そして、地域企業のみなさんにもカスタムAIを使ってもらうサイクルを回していきます。

    研修に参加するビジネスパーソンの越境期間中の相談窓口は私自身がサポートをしているのですが、加えて私自身の知識や経験を実際に石山メソッドでAI化したコーチングAI「山田崇AI」による伴走支援も行っています。

    西村:受け入れ先にも多様な企業がありますよね。

    山田:私は元地方公務員で、『日本一おかしな公務員』という書籍を上梓しているのですが、24年間、地方自治体の職員として47都道府県の自治体を訪れ、実際に地域に起こっていることを肌で感じてきました。こうした私の経験やつながりから、まずは石川県、富山県、長野県で、これまで外部人材を受け入れたことのない老舗の地域企業など、多様な受け入れ先と提携させていただきました。

    「地域越境ビジネス実践プログラム」参加者に生まれる成果・成長とは

    西村:2024年11月より「地域越境ビジネス実践プログラム」にNTT Comからも社員を派遣していますが、NTT Comにおける人材育成、越境プログラムの位置づけを、どのように考えられていますか。

    大原侑也(以下、大原):我々は個にフォーカスしたHRの取り組みを推進しています。入社から退職までのエンプロイージャーニーで、個のキャリア自律をどこまでサポートできるかに重きを置き、ライフスタイルやキャリアプランに合った働き方が選択できるよう、できるだけ多くの機会をつくることに取り組んでいます。育成面ではスキルアップ支援に加えて越境プログラムにも注力しています。

    我々はNTTが行う越境ということで「NEKKYO」と呼んでいるのですが(笑)、越境することで社員を熱狂させて成長を促すことを目指しています。自分の仕事の枠を超えて、新しい環境、多様な人々との交流を通じてキャリアを見つめ直し、今後のキャリアの解像度を上げる良い機会になればと思っています。

    大原侑也│NTT Com ヒューマンリソース部 人材・組織開発部門長
    2001年NTTコミュニケーションズ株式会社に入社。プロジェクトマネージャーとして公共分野のICT活用推進に従事。その後、ITコンサルタント、ソリューションサービスの企画を経て、スマートエデュケーション推進室長として、学校教育・企業教育のDX化に取り組む。2023年7月よりヒューマンリソース部 人材・組織開発部門長として、自律的なキャリア形成と対話協働する組織開発を推進中。

    西村:「地域越境ビジネス実践プログラム」に社員を参加させた理由を教えてください。

    大原:これまで利用してきた多くの越境プログラムが、1度の機会に派遣できる社員が2、3人、しかも2泊3日や1週間といった短期集中型のものでした。「地域越境ビジネス実践プログラム」は受け入れ人数が多く、4ヵ月間の長期型プログラムであることに加え、NTT Comで導入している本業8割・他社や他部署業務2割というダブルワーク制度との相性が良い点に関心を持ちました。さらに社会課題の解決を標榜するNTT Comの事業との親和性も高く、生成AIの活用で地域の課題を解決し、DX推進に寄与できることにも魅力を感じています。

    西村:実際のプログラム参加者はどのようなことを経験し、どのような成果を発揮しているのでしょうか。

    山田:プログラム開始に先立ち2024年6月から4ヵ月、ドコモgaccoの次世代リーダー候補2人が石川県での研修を経験しました。

    能登のヘルスケアブランド企業に越境した参加者は、生成AIを活用したSNSマーケティングの運用システムを構築しました。この企業のSNSを活用してこなかったという課題をもとに、検証プロセスを提案し、自らビジネスに実装。最終的には1ヵ月後までの予約投稿ができる仕組みを作りあげ、同社のマーケティング活動に寄与しました。

    もう1人は金属加工業の企業に越境し、従業員14人に計25回のインタビューを実施。熟練工の引退に伴う事業継承の課題感を引き出し、生成AIを活用して技能継承マニュアルを作成しました。参加者自らが主体的に、継続的な事業展開の提案をできたことが、大きな成果であり変化です。

    大原:私のチームメンバーが参加してからまだ2ヵ月くらい(注:ウェビナー収録当時)ですが、すでに地域の課題を身近に感じているようです。さらに地域企業から副業人材に対する期待を肌でビシバシと感じるらしく、貢献したいという意欲が増していると聞いています。私が期待していた以上の効果、変化が出ていると感じています。

    山田:プログラム参加者のみなさんが非常に前のめりで、自分が会社の看板を背負っているという強い意気込み、高いモチベーションを持っていることを高く評価いただいています。プログラムを提供する立場として非常にありがたいと感じています。

    越境エリアを拡大、オープンイノベーションの誘発で日本を元気に

    ウェビナーでは最後に、「地域越境ビジネス実践プログラム」の今後の事業の方向性や展望についても語られました。

    「テクノロジーの実装が停滞してしまっているたくさんの地域に越境エリアを拡大し、オープンイノベーションを誘発して日本全体の生産性向上に寄与したい」と言う山田氏は、地域企業側にも「採用とは違う形の人材活用法がある」という気づきが得られればと語ります。

    プログラム提供開始後の一期生であるNTT Com社員を含む20名は、まもなく研修期間を終えます。参加者たちからは「越境先に対し、自分が提供できてかつ継承できる価値は何だろう?という目線で考えるようになった」、「自分の強みや得意なことを客観的に認識できた」、「越境を通して学んだ“積極的に人と関わること”を自分の基本行動に加えていきたいと思った」「生成AIの特性を踏まえたうえで、どのように自身の業務を効率化させるかについても、考えるきっかけになった」などの声が届いています。

    【ウェビナー視聴はこちら】
    さまざまな企業のみなさまへのご活用が期待される「地域越境プログラム」。
    詳しくは、ウェビナーをぜひご視聴ください。

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