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TBSテレビのIOWN活用にみる放送・配信事業の現場改革と、
その先に見据える“リモートプロダクションの新時代”

#86

TBSテレビのIOWN活用にみる放送・配信事業の現場改革と、その先に見据える“リモートプロダクションの新時代”
放送事業での活用が期待される、大容量・低遅延通信が可能なIOWN APN(All-Photonics Network)。TBSテレビ(以下、TBS)とNTTドコモビジネスは、2025年に日本開催された陸上の大規模スポーツイベントの地上波生放送において、非圧縮伝送を活用したリモートプロダクションによる映像制作を実施しました。東京都・赤坂のオフィスビル「The Hexagon」の1フロアにIP専用のプロダクションセンターを特設し、会場の国立競技場(現・MUFGスタジアム/東京都・代々木)との間をIOWN APNで接続。現地で撮影した映像データを、この特設のリモートプロダクションセンターに送り、編集をしてリアルタイムに放送するという仕組みです。IOWN APNが放送事業の制作現場にもたらす変革、べニュー(会場・開催地)側や興行主・主催団体にもメリットのある持続可能なビジネスの可能性を、プロジェクト関係者の話から紐解きます。

この記事の要約

TBSテレビとNTTドコモビジネスは、IOWN APNを活用し、国内最大級となる非圧縮・低遅延伝送によるリモートプロダクションを実証しました。従来、大規模スポーツの放送中継では、多数の人員と機材を現地に集める必要がありましたが、IOWN APNにより映像・音声・制御信号までを遠隔で一体運用。省人化と制作技術の高度化に向けた可能性を示しました。さらに、制作設備の集約やデータ利活用を通じて、放送や顧客体験に付加価値を生み出すことができる可能性も提示。放送×ネットワーク×データによる新たなビジネスモデルの姿を描いています。


放送局の大規模中継が抱えてきた課題

――最初に、放送業界全体を取り巻く環境の変化について教えてください。

TBSテレビ 米山亨氏(以下、米山氏):どの業種にも共通しますが、TBSでも労働時間の管理など働き方改革は進んでいます。制作スタッフの労働時間を適正に管理し、限られた時間とリソースで高品質なコンテンツを制作していくことが求められています。

また、技術的な変化では、小回りの利く映像伝送へのニーズが高まっています。一般の方も含め、スマートフォン一つあれば手軽に配信ができる時代。テレビ放送でも、短い準備期間でスピーディーに中継を行いたいという要望が増えています。

米山 亨|TBSテレビ メディアテクノロジー局 未来技術革新事業部

――公文さんは、テレビ番組の技術・美術・CG業務を行うTBSアクトの所属です。制作現場の最前線では、どのような課題や変革の必要性を感じていらっしゃいますか。

TBSアクト 公文大輔氏(以下、公文氏):コンテンツ制作の現場では、よりクリエイティブなものを視聴者の皆さまに提供していくことが求められています。例えば、AIや『Unreal Engine(リアルタイム3D制作ツール)』を活用して、リアルタイムに合成した背景と実在の人物によるバーチャルプロダクション的な撮影も行うなど、今までにない表現方法や新技術を常に探しているところです。

公文 大輔|TBSアクト マネジメント本部 コンテンツプロデュース部

――今回は、大規模なスポーツイベントの中継技術として『IOWN APN』を活用した実証実験を行いました。そもそも、こうした中継番組は、どのような体制で制作されてきたのでしょうか。

米山氏:大規模スポーツイベントで使用するテレビカメラは数十台に及びます。放送中継でそのすべての信号を同期させたり、現場でCGを付加したりすることは、中継車だけではできません。そこで、現地に複数のプレハブ小屋を連結した仮設の中継拠点(コンパウンド)を設置して、テレビ局にある副調整室(映像・音声・照明などを操作・調整する部屋)と同じ機材を持ち込み、プロダクション環境を構築します。いわば、放送局そのものを現地につくるようなものです。ここで放送中継用の映像を制作してテレビ局に伝送します。

当然、人的リソースも機材リソースも膨大です。技術スタッフだけで少なくとも30〜40人を現地に派遣。それに伴う移動や宿泊の手配など、多大な労力が発生します。働き方改革などの点からすれば、大きな課題として捉えられています。

非圧縮・低遅延で“現場”をつなぐリモートプロダクションの実証

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