2024.11.15(Fri)
Hyper connected Society
2024.10.25(Fri)
#50
この記事の要約
NTTコミュニケーションズの「製品IoT化パック」を活用した、オカムラの業務用掃除ロボット「STRIVER」のIoT化プロジェクトが進行中です。高齢化と人手不足に悩むビルメンテナンス業界の課題解決の一手として、オカムラは自律走行型の掃除ロボットを開発しました。
これをIoT化することで、ロボットの遠隔管理、稼働データの収集・可視化、不具合時の即時対応が可能になります。NTT Comの製品IoT化パックは、IoTプラットフォーム「Things Cloud」、ネットワークの核となる「IoT Connect Gateway」、さらにモバイルネットワーク回線を組み合わせたソリューションです。その最大の特長は、必要な機能が標準化されており、低コストでスモールスタートが可能なこと、そして要件に合わせて柔軟にカスタマイズができることです。オカムラとNTT Comは密接に連携し、約4ヶ月で基本的なIoT化を実現しました。
今後は、作業日報の自動作成など、さらなる機能拡張が計画されています。両社は、IoTを活用した継続的な製品価値向上と、業界全体の課題解決に向けてリレーションを強めていく方針です。
※この要約は生成AIをもとに作成しました。
目次
——オカムラといえば、一般的にオフィス家具のイメージが先行しているかと思いますが、なぜ掃除ロボットを開発されたのでしょうか。
浅野氏:これまでオカムラはオフィス家具を中心に、店舗用陳列棚や各種産業向け製品を製造・販売してきました。ただ、ビジネス環境や技術変化のスピードが加速するこの時代、常に新たな領域にチャレンジすることが求められます。そこで着手したのが、ビルメンテナンス業界が抱える課題の解決です。
次々と新しいビルが生まれていますが、ビルメンテナンスのなかでも特に清掃分野は従事者の高齢化が進み、人手不足が深刻化しています。こうした状況を変えるべく開発したのが、ビルの共用スペースで床掃除を行う自律走行型の掃除ロボットでした。
和田氏:私が所属するフューチャービジネス推進事業部は、従来のオフィス什器分野をはじめとする売り切り型のビジネスとは異なる新しいサービスを扱う部署です。ロボット事業も継続的なメンテナンスや付加サービスが求められる新しい領域の一環として、掃除ロボットの普及に努めています。
事業全体としてもお客さまとの継続的なタッチポイントを築くビジネスモデルにシフトしている状況です。使い勝手や日々の運用に関する部分をブラッシュアップしていくことが課題の1つでもあったなかで、今回のIoT化で「STRIVER」のサービス価値を向上させていきたいという思いがありました。
——現在、STRIVERにおいてNTT Comが提供する「製品IoT化パック」をトライアル利用しているそうですが、そのきっかけを教えてください。
浅野氏:いま話に出たように、弊社にとって掃除ロボット事業はスタートしたばかりのビジネスです。だからこそ、ビルメンテナンス事業者の方と手を取り合って運用実証を進めてきたのですが、いろいろな課題が見えてきました。
一例を挙げると、掃除中のロボットが停止した際の問題です。STRIVERは設定したルートに沿って自律走行しますが、緊急停止の知らせや清掃のスタート・終了を把握するようなシステムは別で構築する必要がありました。現場から「手元でロボットを管理できるシステムが欲しい」という声があがったことがIoT化のきっかけです。
弊社も、サービスとして提供しているからには運用上の安全性・利便性をより高めていかなくてはなりません。製品機能の向上はもちろん、例えばメンテナンスをどのタイミングで行うべきかについても、開発元としてSTRIVERをしっかり管理する必要があったのです。
若山:今回オカムラのみなさまからご相談をいただいたとき、「まさにそうしたニーズに応えるのがIoTです」とご提案しました。ロボットを遠隔監視できれば、不具合時にすぐ対処できたり、緊急時に人が駆け付けたりして安全性を確保できます。掃除の開始・終了状況が把握できれば清掃作業終了とともにロボットを停止させて稼働を削減できますし、業界課題である人手不足の解消にもつながると考えました。
——STRIVERのIoT化を推進するに当たり、どのような技術課題があったかを教えてください。
浅野氏:IoT化に関する専門の部署がなく、STRIVERの開発当初は別のIoTプラットフォームを利用していました。しかし現場で運用を続けるなかで追加機能を実装したいとなったときに、拡張性が十分でないことが分かってきたのです。
例えば機体のメンテナンス履歴をPCで確認したり、不具合や掃除完了通知をメールだけでなくスマートフォンにも対応させたりといった、軽微な仕様変更だけでも多大な工数がかかるということで着手できていませんでした。
もう1つセキュリティ面で実現したかったのは、データアクセス権限の振り分け設定です。ビルの清掃と一口に言っても、ビルメンテナンス担当、デベロッパー、機器の販売店やオカムラの担当者など関わる人が多く、各階層に応じた権限設定が必要でした。
——こうした課題に対してNTT Comはどのように応えたのでしょうか。
上野:NTT Comでは、製品にSIMを挿し込むだけで簡単にIoT化できる製品IoT化パックを提供しています。オカムラの皆さまにも同サービスを導入いただいています。
これはデータ収集・可視化・分析やデバイス管理などの機能をパッケージ化したIoTプラットフォーム「Things Cloud」と、リモートアクセスやクラウド認証機能などを備えた中間層の「IoT Connect Gateway」、それにNTT Comのモバイルネットワークを組み合わせたソリューションです。
もともとは単体で提供していましたが、実際の活用事例を見ると「安全なネットワークでクラウドに接続したい」「ネットワークを通じて収集データを分析したい」などニーズが複合的なケースが多かったことから、これらの機能を1つにまとめて導入しやすくしたのが製品IoT化パックです。
浅野氏:まさに「現場の求める機能が凝縮されているな」と感じました。必要十分な機能がパッケージ化されているので開発費用をかけずにスモールスタートできることや、要件に合わせてカスタマイズができる点が決め手となり導入に至りました。
長山:いまお話しいただいたように、IoTプラットフォームのThings Cloudの最大の特長は、製品価値を高める機能が標準化されていて、開発管理が楽に行えるという点にあります。
たとえば、管理画面をGUI(ユーザーが視覚的に操作できるインターフェイス)上で簡単に操作できるため、プログラミングの知識がなくてもカスタマイズが可能です。そのため、要件に途中で変更があった場合はお客さま側で機能を追加していただけます。
栗原:回線はMVMOならではの低価格の定額プランもありますので、コスト意識の高いお客さまでもスモールスタートしやすいです。ネットワークの核となるIoT Connect Gatewayは、クラウドごとに異なる認証方式に対応しています。今回のように他のプラットフォームから乗り換えをされる場合でも、スムーズかつ安全にクラウドと接続できますし、SIMを挿すだけで機体を遠隔ログイン・管理できる仕組みが備わっている点も今回の要件に適合していました。
和田氏:営業面でいえば、今回の運用で浮上した課題はいずれも、お客さまに掃除ロボットをご満足いただける形で安定稼働させる上で必要最低限な要件です。その機能が1つのパッケージになっているのは安心感がありました。
——製品IoT化パックの導入・適用の流れについて教えてください。どのようなプロセスで進めたのでしょうか。
上野: 2023年の9月から年末まで6回ほどオカムラの皆さまとミーティングを行うなかで、課題と要件を整理しながら段階的に実装していきました。まずは、「障害物にぶつかったときの対応」としてSIMによるリモートアクセスを導入いただき、ログデータを収集・可視化するプラットフォームの開発、さらに細かな画面のカスタマイズや権限管理の設定を行ったというのが大まかな流れです。
都度出てきた宿題事項を持ち帰り、弊社の技術チームと相談して検証を重ねながら進めました。特に留意したのは、実装までのスピードです。「できるだけ早くIoTを実装したい」とのご要望をいただいていましたよね。
和田氏:そうですね。夜間の掃除中に障害物にぶつかって機体が停止しても、アラートがなければ誰も対応できないので、朝までそのままの状態になってしまうのです。掃除の開始・完了を手元で確認できない点など、最低限実現しないといけない要件を早急に解決する必要がありました。
長山:そうしたお声に対して、具体的にThings Cloudを使えばどのように実現できるのかをお見せすることが大切だと考えました。ご要望をいただいてから1日以内にデモ画面を構築し、実際に通知が飛ぶところまでお見せできたことが、今回の取り組みのポイントになったと思います。
浅野氏:弊社のロゴが入ったデモ画面を見せていただいたときには、その早さに驚くと同時に、NTT Comの皆さんとご一緒することで、お客さまのニーズに合わせたIoT化を実現できると確信しましたね。
——製品のIoT化を進めるなかで得られた知見を教えてください。
浅野氏:今回の製品IoT化パックを使えば簡単にIoT化できるといっても、やはりその領域の知識や経験がないとすぐには実現できません。そうした意味で、NTT Comの方々にご相談するとすぐに実装いただけたのはとても助かりましたが、社内で実装を進めたり、ユーザー企業へご説明したりする場合は、詳細なマニュアルがあると非常に助かると感じました。
長山:ご指摘のとおり、そうしたサポート面も強化していく方針です。カスタマイズや開発に関してはやはり経験値が左右するのは事実です。ただ、そうした知見をお客さまご自身で積み上げていけるのが製品IoT化パック、特にThings Cloudのメリットだと思います。今後は、事例を集めた“レシピ集”のようなものもご提示できればと考えています。
栗原:IoTは実装すれば終わりではありません。運用しているなかで「こういう機能が必要だ」「これができたらより便利になる」といったように、フィードバックが欠かせません。トライ・アンド・エラーを前提に、プラットフォーム自体を進化させていく――というプロセスがIoTなのです。こうした特性に応えられるプラットフォームを選ぶことも、IoT化の実現に向けて大切なポイントだと思います。
――現在、進化版のSTRIVERを運用中とのことですが、お客さまからの評価はいかがですか。また新たに浮上した課題などがあればお聞かせください。
和田氏:実際の評価や課題については、いま、まさに収集しているところです。そのためブラッシュアップはこれからですが、1つご要望として上がっているのは、稼動ログにもとづく作業日報の作成です。
また製品IoT化パックの機能も本当にさまざまなものがあり、現在実装している機能もまだほんの一部でしかありません。作業日報の件も含め、さらなる付加価値向上に向けて引き続きディスカッションできればと思います。
長山:Things Cloud内に蓄積したデータをExcelにダウンロードできる機能が標準装備されているので、それを利用すれば作業日報にも応用できるかもしれませんね。ぜひ、そうしたお声をどんどんいただければと思います。
栗原:IoT Connect Gatewayも私のチームで内製化しているので、ご要望に応じてアジャイルに開発・対応できます。開発チームのやりがいにもなるので、運用しているなかで気付いたことがあれば、いつでもご相談ください。
浅野氏:個人的には、本取り組みにより「販売した後の継続的なタッチポイントを構築する」という基盤づくりも進んだと感じています。もちろんまだ強化したいところや付加価値向上に課題はありますが、IoTを活用してさらなる改善につなげていければと思います。
和田氏:冒頭でもお話ししたように、弊社の掃除ロボット事業はまだスタートしたばかりですが、これからの社会課題を考えると、STRIVERに限らず、省人化・効率化のためのIoT推進は今後も加速すると感じています。そうした未来になったとき、弊社1社だけの知見では当然足りないことも出てくると思いますので、NTT Comの方々をはじめ他社との協業体制を構築していくことも重要になると考えています。
――今回のオカムラでの事例を踏まえ、これから製品IoT化パックの価値を高めていく上で、NTT Comではどのように取り組んでいきたいとお考えでしょうか。
若山:今回、エッセンシャルワーカーの高齢化や人手不足などの社会課題の解消に取り組める機会をいただけた点にまず感謝したいと思います。今後のIoT事業の改善や提案に向けては、実際にさまざまな現場を拝見させていただき、ニーズに合わせてIoTやそれ以外のソリューションも交えた提案ができるよう、ご協力したいと考えています。
長山:私は技術担当として、「Things Cloudを活用することで、どんな価値が実現できるか」をより分かりやすく伝え、お客さまの困り事やニーズに対して柔軟にアイデアを出していきたいと思っています。IoTは「作ったら終わり」ではなく、次々に来るフィードバックを受けていかに改善していくかが重要ですので、弊社の腕の見せどころだと捉えています。
栗原:IoTを支えるゲートウェイ分野はもともとのNTTグループの強みですので、だからこそ「お客さまのやりたいことにスピーディーに対応する」ことを大切にしています。今回見えてきた要件は、おそらく他のIoT化の取り組みでも求められていくことだと思いますので、今後もフィードバックをいただきながらゲートウェイを進化させ、IoT化の要件に迅速に対応したいと考えています。
上野:今回のようなパートナー企業との取り組みを強化する基盤として、「IoT Partner Program」を2024年10月8日にリリースしました。これは、パートナー企業とドコモビジネスのIoTプロダクトの組み合わせによって、新しい商材の創出を支援するためのプログラムです。オカムラの皆さまのように、自社サービスにIoTを活用し、付加価値をつけてお客さまへ提供したいというニーズが高まっていますが、その実装にあたっては、企画・検証・実装・販売のハードルが高いと聞きます。ですので、そこを「IoT Partner Program」でサポートし、今回のIoT 化のような事例を、より多くのパートナー企業の皆さまと共に作っていきたいと思っています。
■「製品IoT化パック」についてはこちら
製品IoT化パック|ドコモビジネス|NTTコミュニケーションズ 法人のお客さま
https://www.ntt.com/business/services/connectiot.html
■NTT Comの「IoT Partner Program」についてはこちら
https://www.ntt.com/business/lp/biz_iot-partner.html?msockid=2905d96b0688692b3056cc7907ec68a6
OPEN HUB
Issue
Hyper connected Society
IoTがつくる ”超接続社会”