2024.11.15(Fri)
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2024.05.17(Fri)
#45
この記事の要約
2024年3月16日、北陸新幹線の金沢-敦賀間開業を記念し、NTTコミュニケーションズとNTTドコモ北陸支社は、金沢市と共に、金沢-東京間約1,000kmをオールフォトニクスネットワーク(APN)で結んだ遠隔音楽ライブの実証実験を行いました。
金沢側では金沢ジュニア・ジャズ・オーケストラJAZZ-21が、東京側ではヴァイオリニストの木嶋真優氏が参加。APNの超低遅延性により、遠隔地間でも違和感なく高品質な合奏が実現しました。実験では、両会場にカメラ、マイク、ディスプレイ、スピーカーを設置し、エンコーダとデコーダでデータ信号に変換。
金沢の演奏を東京に伝送し、木嶋氏の演奏と合わせて金沢に返すことで、まるでその場にいるかのような臨場感あるライブが可能になりました。
今回の実験成功により、APNやIOWNによって距離の制約が取り払われる可能性が示されました。
今後は音楽以外のエンタメ分野への応用や、拠点数の増加、海外との接続などにもチャレンジしていきます。
※この要約はChatGPTで作成しました。
目次
金沢駅の兼六園口を出てすぐに見える「鼓門」。駅東口からこの荘厳なオブジェまでをつなげた広場「もてなしドーム」が、今回の実証実験における金沢側の会場です。
特設ステージには、地域の中学生・高校生で結成され、県内だけではなく東京やニューヨークなど国内外のジャズフェスティバルにも出演しているビッグバンド「金沢ジュニア・ジャズ・オーケストラJAZZ-21」(JAZZ-21)がスタンバイ。
東京側では、大手町のNTT Com本社29階のOPEN HUB Parkスタジオから、「第1回上海アイザック・スターン国際ヴァイオリン・コンクール」で優勝するなど輝かしい経歴を持つ世界的ヴァイオリニスト・木嶋真優氏が参加しました。
実証実験では、約1,000kmもの距離を隔てた両者をAPNで結び、JAZZ-21が演奏するジャズナンバーに合わせて、木嶋氏がソリストとして参加。グルーヴ を出すためには息のあった合奏が必要なスイングジャズを、遠隔で成功させるという非常に難易度の高いセッションに挑みます。
遠隔音楽ライブにおける遅延の発生は、演奏そのものを壊してしまう致命的な影響を与えます。イベント挨拶に登壇した金沢市長 村山卓氏からの「今日きていただいた皆様には歴史の証人として、この技術を語っていただきたい」という言葉の通り、金沢側の会場には前代未聞のライブを見届けようと100人以上の聴衆が期待とともに集まりました。
次に登壇したNTT ドコモ北陸支社支社長 出井京子氏は、低消費電力と無線給電技術によるメリットについて強調。「電力を10分の1ぐらいに下げられることも期待されています。生活を便利に豊かにして、地域を盛り上げていくべく技術を磨いていきたい」と語りました。
そして、NTT Com 北陸支社支社長 山本章博が登壇。演奏者がストレスを感じることなく遠隔ライブを行うことができる通信環境を支えたAPNについて、次のように解説しました。
「APNは電子ではなく、光ファイバーによるフォトニクス(光)ベースの技術を使うことで、圧倒的に『低消費電力』『高品質・大容量』、そして『低遅延』のデータ伝送を実現するネットワークのことです。低遅延については、エンドツーエンドで従来の200分の1にまで遅延を低減させることを目標値にしています」
金沢市とJR西日本、そしてドコモグループは2019年9月に「5G等の高度ICT技術を活用した地域資源の共創に関する連携協定」を締結。5G等の次世代技術を活用した地域の魅力づくりに取り組み、2021年度には、「金沢マラソン」を舞台とした5Gリモート応援施策、2022年度には「百万石まつり」を舞台とした5Gドローンショーおよび「百万石行列」のライブ配信などを実施してきました。そうした共創事業の一環として実ったのが、今回の実証実験なのです。
緊張感のある空気のなか、JAZZ-21の演奏がスタート。曲は「A-Trainは続くよ どこまでも」。ジャズのスタンダードナンバーである「A列車で行こう」と、日本でもよく知られているアメリカ民謡「線路は続くよ どこまでも」をミックスした、新幹線延伸を祝った一曲です。一曲目が終了すると、村山市長をはじめとする登壇者3名が車掌帽をかぶって再登場。一緒に笛の音を鳴らすと、それを合図にJAZZ-21の面々の前に置いてあったサイネージに、ヴァイオリンを持った木嶋氏の姿が現れました。
「みなさん、こんにちは! 遠隔だけど近い感じ。みなさん聴こえていますか?」(木嶋)
APNを介してリアルタイムの映像と音声によって、まるでその場にいるかのように、木嶋氏と会場との間でやりとりが行われます。そして、いよいよ両者によるセッションがスタート。『WORK SONG』『WHAT A WONDERFUL WORLD』『FLY ME TO THE MOON』といった名曲が演奏されました。
「ワン、トゥー、ワン、トゥー、スリー、フォー」という金沢からのカウントで、OPEN HUB Parkのある東京・大手町の高層ビルをバックに演奏する木嶋氏と、金沢のJAZZ-21がユニゾンでイントロを奏でます。続いて木嶋氏の流れるようなヴァイオリンの主旋律に、ビッグバンドが見事に伴奏。複雑なリズムが展開される場面でも、問題なく両者の掛け合いが続きました。
遠隔地を結んでいることを忘れてしまうほどにスムーズでグルーヴのある演奏に、演奏終了後は、金沢側の会場では自然と拍手が沸き起こりました。そして、多くのスタッフが固唾をのんで見守っていたOPEN HUB側でも、スタッフ・関係者から感嘆の声と拍手が溢れました。
演奏を終えた木嶋氏は、「本当に違和感なく合奏ができた。遅延がほぼないというだけではなく、こうやって演奏するときの音質、音のクオリティもとても高かった。こういった調整が可能なシステムがあるならば、どんどん(遠隔でのセッション)コンサートをやっていきたい。非常に新しい可能性を感じている」と、演奏者側からの実感を語ってくれました。
聴覚上は遅延がまったく無く、迫力のある遠隔ライブを実現した今回の実証実験。プロジェクトを担当したNTT Com イノベーションセンター IOWN推進室・池上謙一は、両会場で組まれていたシステムと高音質の理由について、次のように解説しました。
「OPEN HUB Parkのスタジオと金沢駅前にカメラとマイク、ディスプレイとスピーカーを設置、それぞれエンコーダとデコーダでデータ信号に変換させます。そのうえで、まずは金沢駅前での指揮とJAZZ-21の演奏を含めた会場の様子をカメラで撮影、映像と音を東京にAPN経由で伝送します。東京側はその映像と音をディスプレイ・スピーカーで流し、木嶋氏はそれにあわせて演奏。こちらの映像と音を金沢駅前にAPNで伝送し、金沢側は送られてきた映像と音声を現地の生演奏と一緒に流すことで、集まった観衆の方々に届けられます。単に遅れがないだけではなく、本当に眼の前で演奏しあっているような質の高い音が送信できることは、音楽ライブの質を高めてくれます」(池上)
大盛況で幕を閉じた実証実験。金沢側の会場に参加していた観客の方々からは「こんなに離れた距離にいても、違和感なく合奏できるなんて、とても未来を感じた」「被災し、気分も落ち込んでいるなかではあったが、技術の進歩や音楽の力強さを肌で感じることができた。世界的な実験ができることに大変勇気をもらい、元気になった」といった声もいただきました。
今回のイベント実施に尽力いただいた金沢市産業政策課・平野喜音氏は、以下のように語りました。
「北陸新幹線延伸によって、金沢は新たな都市とのつながりが生まれます。そんな『つながる金沢』において、IOWNのような最先端の技術を市民や観光客の方々に知っていただくことは、世界の交流拠点としてあらゆるものとつながる“未来の金沢”を体験していただけることになります。今後も、未来を拓く世界の共創文化都市を目指し、未来の金沢をより発展させていく取り組みを実施していきます」
今回のイベントの企画立案を担当したNTT Com 北陸支社第一グループ(当時)・渡邉裕大は、イベントを振り返りつつ、今後のビジョンを掲げます。
「音楽以外のコンテンツ、たとえば漫才の掛け合いなどのエンタメ分野でも面白い試みができるのでは、と夢が膨らみました。また今回は東京―金沢の2拠点に閉じていましたが、さらに拠点数を増やした同時接続や、海外との接続にもチャレンジしてみたいです」(渡邉)
APNによって距離という制約が取り払われた世界では、どのようなことが可能になるのか。その一例をリアリティのあるかたちで示してくれた今回の実証実験。APNおよびIOWNの今後の活用に期待が集まります。
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