Carbon Neutrality

2024.02.09(Fri)

世界と日本のGXの現在地
~「食」「太陽光発電」「旅」の最新事例から~

#サステナブル #事例 #環境・エネルギー
さまざまな業界や企業で加速するGX。カーボンニュートラルを実現するための技術開発、人々の環境意識に一石を投じる取り組みなど、国内外で多様な活動が報告されています。本記事では「食」「太陽光発電」「旅」という3つのテーマから、GXに関する海外・国内の事例をご紹介します。

電気を一切使わないレストラン

2022年10月、イギリスのレストラン『Next Door』は、電気もガスも使わない、“極めて原始的”なディナーを提供しました。当日は炭火を使って調理を行うほか、燻製、塩漬け、発酵などさまざまな手法を用いて料理を準備。テーブルにはキャンドルを灯し、調理から提供まであらゆるシーンで電気を使用せず、ゲストたちはコース料理を楽しみました。

このレストランは、「ミシュランガイド イギリス・アイルランド2023」にも掲載されている人気店。日頃からCO2排出量の削減に取り組み、信頼できるサプライヤーのみと契約し、肉は地元産、魚は国内で調達されたものを使用。すべての食材を残さずに使い切る工夫をしています。

同店のオーナーは、「大きな挑戦だが、問題を浮き彫りにするために行動を起こす必要がある」と思いを語っています。グリーンな時代の食の形を提案する今回の取り組みは、BBC Newsに取り上げられるなど注目を集めています。

おにぎりがウエットティッシュに生まれ変わる?

日本では、幅広い世代から愛されている「冷凍焼おにぎり」。その生産過程でこぼれてしまったごはんや、形の崩れた規格外のおにぎりがウエットティッシュに生まれ変わっています。

ニチレイフーズは、“規格外ごはん”を発酵させアップサイクルするアイデアを実現すべく、独自の発酵技術を持つスタートアップ企業のファーメンステーションと協業をスタート。規格外ごはんの発酵・蒸留により生成されたエタノールを活用し、『「焼おにぎり」除菌ウエットティッシュ』を開発・販売しています。

リユース(再利用)やリサイクル(再循環)とは異なり、「アップサイクル」とは、従来は不要とされ有効活用されることのなかった廃棄物や副産物などを、さまざまなアイデアや手法でさらに価値の高いプロダクトに転換すること。

この取り組みは、NTTコミュニケーションズの事業共創プログラム「OPEN HUB for Smart World」とForbes JAPANがともに開催したアワード『Xtrepreneur AWARD 2023』(クロストレプレナーアワード2023)のサーキュラーエコノミー部門を受賞しました。
https://forbesjapan.com/feat/xtrepreneur_award_2023/

土地分析ツールで太陽光パネル設置を効率化

続いて、太陽光発電で重要なのが「場所探し」。地理情報システムソフトウェアやマッピングの分野で世界市場をリードするカリフォルニアのEsriは、道路沿いにある未利用の土地が太陽光パネルの設置場所として適切か、どれほどの経済的価値があるかを迅速かつ正確に分析する『ソーラーマッピングツール』を開発しました。

これまで、道路沿いの土地を評価するには数週間から数カ月を要していましたが、このツールを使えば、高精度かつ短時間での評価が可能に。また、太陽光パネルの設置による、景観や近隣地域への影響の予測なども行うことができます。

アメリカ国内では、5万2000エーカー(約21,000ヘクタール)を超える未利用の土地がエネルギー生成のために活用できると推定されており、こうしたツールの活用によって太陽光発電のさらなる普及が進むことが期待されます。

ビルの外壁で発電する次世代太陽電池

一方、日本ではNTTデータと積水化学工業が、フィルム型ペロブスカイト太陽電池を建物外壁に設置した、国内初の実証実験を2023年4月より共同で実施しています。

次世代太陽電池として期待が高まる「ペロブスカイト太陽電池」は、結晶構造の一種である「ペロブスカイト」を有する化合物を用いてつくられるもの。今回使われるフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、軽量で柔軟性が高く、設置場所への制約が少ないことから、従来型と比べて既存建物への設置が容易であるという特長があります。

都心のデータセンターにおける太陽光発電は、一般的にパネルの設置が難しく導入が進んでいません。積水化学工業が開発したフィルム型の太陽電池は、都心の既存設備における再エネ活用のあり方を、大きく変える可能性を秘めていると言えるでしょう。

本実証実験では、まず積水化学工業の開発研究所およびNTT品川TWINSデータ棟の外壁への設置・検証を実施。次にNTTデータの全国16カ所のデータセンターとオフィスへの導入拡大を図り、2030年度にはNTTデータのデータセンターにおけるカーボンニュートラル化を目指しています。

グリーンラグジュアリーな旅へようこそ

「イギリスの所得上位1%が1年間に排出するCO2は、下位10%が20年以上かけて排出するのと同量である」というデータがあります。各国において高所得者の環境意識に対するプレッシャーが高まる一方で、有意義な行動を起こすための購買力と社会資本を持つ環境意識の高い人々は、「旅」においてもサステナビリティを求める傾向が強まっています。

2026年に完成予定の、サウジアラビアの山岳リゾート『トロイェナ』をご存じでしょうか。大自然に囲まれたこの地では現在大規模な開発が進められ、今後は1年を通じてスキーやスノーボード、ハイキング、音楽フェスティバルなど、さまざまなアクティビティが楽しめるようになるとされています。

コレクティブ・リトリート社がネオム社と提携して開発を進めるこのリゾートは、太陽光と風力エネルギーを活用しカーボンニュートラルを目指しています。“エコな人のためのエコなホテル”はもはや昔のものとなり、“ラグジュアリーな旅にこそエコが当たり前”。そんな時代がやってくるのは、そう遠くないかもしれません。

日本初のゼロエネルギーホテルが誕生

©Masaki Hamada(kkpo)

日本では、2023年5月、愛媛県西条市に国内初のゼロエネルギーホテル「ITOMACHI HOTEL 0(いとまちホテル ゼロ)」が誕生しました。建物は地上2階建てで、建築設計は隈研吾氏。断熱効果に優れた複層ガラスや省エネ性能の高い設備を導入するほか、西日本最大級の山である石鎚山をモチーフにした大きな屋根には太陽光パネルを設置しています。

ゼロエネルギーを実現するカギは“省エネ”と“創エネ”。従来のホテル運営に対し50%未満のエネルギーしか使わず、残りの割合を太陽光発電によって補うことで、実質的な電力エネルギー消費をゼロにし、日本のホテルで初めてZEB認証を取得しています。ゼロエネルギーの仕組みが一目で理解できるインフォグラフィックスやエネルギー循環を学べる体験ツアーなど、独自の取り組みもホテルの魅力となっています。

インフォグラフィックスのイメージ。宿泊した日のホテルの消費エネルギー量が分かる

建物用途別のエネルギー消費量において、延床面積あたりの電力使用量が飲食店に次いで2番目に高いとされるホテル。「ITOMACHI HOTEL 0」のようなホテルが今後増えていくことで、「環境に負荷をかけずに楽しむ」という旅の新たな価値観が、日本でも広がっていくことでしょう。