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2024.04.20(Sat)
目次
「FinOps」(フィン・オプス)という言葉をご存じでしょうか。FinOpsとは、クラウドコストの管理に関する考え方で、IT部門や開発部門だけでなく、財務部門や事業部門も一緒になってクラウドコストを管理し、投資対効果を高めていくという考え方です。
FinOpsが生まれた背景には、クラウドにおけるコスト管理の難しさがあります。クラウドサービスは、必要なときに必要な分だけリソースを使えるため、新しいサービスの開発やシステム改善をスピーディーに進められるという利点があります。
その一方で、使った分だけ費用が発生するため、開発現場の判断でサーバーやストレージを追加した結果、利用料がいつの間にか膨らんでしまうことも起こり得ます。短期間だけ開発環境を増やした結果、そのリソースを残したままにすれば、費用は発生し続けます。利用状況を把握できていなければ、コストは見えにくくなります。
クラウド支出の増加は、米国のFlexera社の調査データ「2025 State of the Cloud Report」でも表れています。この調査はクラウドを利用する世界750名以上の技術専門家および経営幹部を対象としたものですが、回答者の84%が「クラウド支出の管理が組織にとって課題」と回答しました。さらに、クラウド支出は今後1年間で平均28%増加する見込みとも示されています。

FinOpsは、クラウドの利便性を活かしながら、コストを事業価値に結びつけて管理するために生まれた考え方です。FinOpsの普及や実践者支援を行う団体「FinOps Foundation」では、FinOpsについて「エンジニアリング、財務、ビジネスチームの協働を通じて、テクノロジーのビジネス価値を最大化し、データに基づく意思決定と財務責任を可能にする運用フレームワーク、文化的実践」と定義しています。
ビジネスシーンでは事業部門やエンジニアが、スピードや性能、可用性を優先し、クラウドを多用する時もあるでしょう。しかしそのコストは、誰が、どのサービスを、どの目的で、どれだけ使っているのかが、見えにくくなりがちです。そのクラウド利用が事業価値に見合っているのか、投資の妥当性を判断しやすくするのがFinOpsということになります。
クラウドのコストが管理しづらくなる原因としては、前述の通り、誰が何のために使っている費用なのかが見えにくくなり、必要な支出なのか、見直すべき支出なのかを判断しづらくなることにあります。
だからこそFinOpsでは、クラウド利用を一律に抑え込むのではなく、判断できる状態をつくることを重視します。必要な投資と、見直すべき支出を分け、クラウドの利用を事業価値につなげていきます。
その第一歩になるのが、「コストの見える化」です。クラウドの請求額を合計で見るだけでは、どのサービスやプロジェクトに費用がかかっているのか分かりません。部門別、システム別、サービス別に利用料を把握できれば、改善すべきポイントを見つけやすくなります。
たとえば、使われていないリソースが残っていれば、停止や削除によって無駄な費用の抑制が期待できます。開発環境が夜間や休日も稼働している場合は、利用時間に応じた制御が検討できます。想定以上にデータ転送費が発生している場合は、システム構成やデータの置き場所を見直すきっかけになります。
デジタル庁の「継続的運用経費最適化(FinOps)ガイド」でも、FinOps実践の全体像として、利用料の把握や最適化に継続的に取り組むことが示されています。つまり、FinOpsは単発のコスト削減施策ではなく、クラウドを使いながら改善し続けるための運用の考え方といえます。
FinOpsでは、IT・財務・事業部門が同じコストデータを見ながら判断することも、重要な要素のひとつです。
クラウドのコストは、財務部門だけで管理しても、開発現場だけで最適化しても十分とはいえません。費用がどのサービスや事業にひもづき、どの成果につながっているのかを、関係部門が共通の前提で確認できる状態が必要です。
この考え方は、FinOpsという言葉の成り立ちにも表れています。そもそもFinOpsは、Finance(財務)とDevOpsを組み合わせた言葉です。
DevOpsとは、開発(Development)と運用(Operations)を連携し、システム開発のスピードを高め、改善を継続しやすくする考え方です。クラウド活用が進んだ背景にも、このDevOpsの発想があります。
一方で、DevOpsによって現場の裁量が広がるほど、コスト管理は後回しになりがちです。その費用がどの事業にひもづき、どの成果につながっているのかが見えなければ、投資判断は難しくなります。
FinOpsは、DevOpsの俊敏性を損なわずに、財務や事業の視点を加える役割を担います。FinOps Foundationも、FinOpsはコスト削減そのものではなく、テクノロジーから最大の価値を引き出し、効率的な成長につなげる考え方と説明しています。
その実践には、エンジニア、財務、事業部門が同じコストデータを見ながら議論できる状態が欠かせません。エンジニアは技術的な改善余地を把握し、財務部門は予算や見通しを管理し、事業部門はクラウド利用が売上や顧客価値にどう結びついているかを判断する。それぞれの視点をつなぐことが、FinOpsの重要な役割です。
FinOpsはどのように導入すれば良いのでしょうか?
その参考になるのが、デジタル庁が2025年に公開した「継続的運用経費最適化(FinOps)ガイド」です。同ガイドでは、同ガイドでは、FinOps実践の全体像として、クラウド利用料の最適化や、運用管理補助委託料の最適化などが挙げられています。
特にクラウドの利用料については、利用料の把握、分析、対策の検討、対策実施、対策結果の確認、次回対応の検討という流れが示されています。つまり、クラウド費用を一度だけ確認するのではなく、利用状況を継続的に把握し、改善につなげていくことが重要なポイントといえます。
クラウドの利用料の内訳が把握できれば、どの部門が、どのサービスを、どの目的で利用しているのかを確認することで、必要な支出と見直すべき支出が切り分けられます。費用の所在が見えるようになった後は、改善策を検討し、実行結果を確認しながら、次の対応につなげていきます。同ガイドでも、対策結果の確認や次回対応の検討まで含めて整理されています。
クラウドは事業のスピードを高める強力な基盤ですが、利用状況が把握できなければ、知らぬ間にコストが膨らんでしまい、投資対効果が落ちる原因となります。クラウドはあくまでも、ビジネスで成果を出すための手段です。過剰にクラウドを使っていないか、FinOpsの視点で自社のクラウド利用状況を見直してみてはいかがでしょうか。
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