2025年7月より、NTTコミュニケーションズはNTTドコモビジネスに社名を変更しました

Coming Lifestyle

2026.04.01(Wed)

データは“自社完結”から“共創資産”へ
TOKYO FM、インテージ、NTTドコモビジネスが語る、
データ共創で切り拓く未来

企業のデータ活用は「CDP(Customer Data Platform)などの集める仕組みを整える段階」から、「価値を生み出す、活用モデルの構築段階」へと移りつつあります。しかし、自社データだけでは分析できない領域や見出せない価値もあり、集めたデータを有効なビジネス活用へ結びつけることに難しさを感じることも多いのではないでしょうか。こうした状況を打開する鍵となるのが、自社データだけに依存せず、他社が保有するデータと組み合わせ、共創型で新たな価値を生み出す形でのデータ活用です。

他局に先駆けてラジオ局におけるデータ活用に取り組んでいる株式会社エフエム東京(以下、TOKYO FM)の常盤一赳氏、ドコモデータ活用によるマーケティング支援を行う株式会社インテージ(以下、インテージ)の伊藤里彩子氏、NTTドコモビジネス株式会社(以下、NTTドコモビジネス)でデータを軸としたビジネスの仕組みづくりを支援する川口昌宏による鼎談の様子をお伝えします。

目次


    各社が抱えてきたデータ活用への課題感

    ――まずは、みなさまとデータ活用ビジネスとの関わりについてお話しください。

    常盤一赳氏(以下、常盤氏):TOKYO FMは、全国38局で組織するJFN(JAPAN FM NETWORK)のキー局であり、首都圏エリアを放送対象とするFMラジオ放送局です。昨今ではラジオデジタル領域を強化し、新たに株式会社ラジオDXアライアンス(以下、RDA)というマーケティング会社を立ち上げ、ラジオ放送のDX事業も開始しました。ここでは、インターネット聴取サービスのradikoやポッドキャストから取得できるデータをどう活用するか、新たな展開を探っています。

    常盤 一赳 氏│株式会社エフエム東京 執行役員 ビジネスソリューション局長 兼 アースコンシャス事務局長 兼 Hellosmile事務局長
    株式会社ラジオDXアライアンス 代表取締役社長

    伊藤里彩子氏(以下、伊藤氏):インテージは、業界のデファクトスタンダードとなっている小売店データや消費者購買データなどを保有し、また高度な分析力とデータ活用能力を強みとして、企業のマーケティング活動を支援しています。最近ではドコモデータも活用し、データから顧客課題を見出し、マーケティングによる課題解決を行うための戦略企画、プランニング、検証までをワンストップで支援する取り組みを強化しています。

    伊藤 里彩子 氏│株式会社インテージ マーケティングソリューション本部 プロデュース部

    川口昌宏(以下、川口):NTTドコモビジネスはIT・ネットワークインフラで多くの企業を支えてきましたが、企業にとってより重要なのは、データとテクノロジーをどう価値に変換するかです。私は、データドリブン経営を目指す企業を支援する、データ利活用コンサルティングを担当しています。当社は、生成AIを軸とした業務高度化や、顧客接点(コールセンター/アプリ開発など)の強化に多くの実績があります。自社のSFA(営業支援)/CRM(顧客管理)などの実践知を踏まえながらデータ利活用を支援できる点は、ドコモビジネスならではの強みだと考えています。

    川口 昌宏│NTTドコモビジネス株式会社 ビジネスソリューション部 事業推進部 グロースマーケティング推進室 担当部長

    ラジオリスナー分析や観光人流分析における、ドコモデータの活用

    ――TOKYO FMでは昨年、インテージと連携してドコモデータを活用し、ラジオ告知プロモーション効果検証の可視化を実証されています。同事例について、課題や背景も含めてお聞かせください。

    常盤氏:ラジオ放送は正確なリスナーデータを取得しにくいことが長年の課題でした。広告主であるスポンサー企業がデジタル広告へのシフトを強めるなか、ラジオのリスナーデータを詳細に提示できないことで、広告効果についての説得力に課題感があったのです。

    そこで、radikoの聴取データによる可視化を検討し始めたのですが、radikoリスナーのデータだけでなく、さまざまな人々の広く客観的で妥当性のあるデータとの掛け合わせが必要だという結論に至りました。その際、インテージの方々との接点をいただいたことが、今回の事業共創の始まりです。

    伊藤氏:当社は、性別・年代や趣味嗜好、位置情報やアプリ利用ログなどを含む、約1億IDの「ドコモデータ」を活用しています。今回、常盤様からお話を伺い、radikoのIDデータとの連携に大きな可能性を感じ、ご支援させていただくに至りました。

    具体的な仕組みとしては、まずradikoのリスナーデータを、個人を特定しない形でご提供いただきます。それをドコモデータと突合することで、リスナー像(年代や趣味嗜好、ライフイベントや経済状況、購買傾向など)を可視化します。そして、「広告主の訴求商品のターゲット層は、TOKYO FMのどの時間帯の番組を聴いているのか」をヒートマップ化することで、効果的なプロモーション提案を支援します。さらに、放送後には実際にどのような層に届いたかを検証し、効果測定までを実施します。

    広告主の商品のターゲット層が、どの時間帯に多く聴く傾向があるのかを、ドコモデータとradikoデータを掛け合わせることでヒートマップ化。それにより、どの曜日・時間帯の番組で広告展開すれば効果的か、客観的データを基にした立証が可能に。

    常盤氏:このサイクルを確立するため、TOKYO FMに広告出稿いただいている日清オイリオグループ株式会社にご協力いただき、実証実験を実施しました。従来も同様のデータは存在していましたが、今回、当社の聴取データとドコモデータを掛け合わせたことで、リスナー分析の解像度やクライアント・代理店への説得度をあげることができると感じています。これにより、「この時間帯にはこうした層が集中しているため、ここにCMを出稿すべきである」という、データに裏打ちされた具体的な「べき論」を提示できることが実証できました。クライアント企業や広告代理店も、客観的な妥当性のあるデータに基づき、納得感を持って出稿を判断いただけます。

    現在はサービスのブラッシュアップを並行して進めている段階ですが、インテージの皆さまとも連携しつつ、RDAとTOKYO FMで本格的なセールス活動を開始していきたいと考えています。

    ――NTTドコモビジネスもインテージと連携したデータ活用支援を進めていると伺っています。

    川口:当社では、「広島県の観光データを活用した誘客および消費促進の実証実験」を、インテージと共同で進めてきました。この実証の起点は、「より確からしいデータで観光客の属性、流入経路、周遊ルートなどを把握して、施策の実現と効果検証をしたい」という課題感でした。既存のオープンデータに加えて、NTTドコモのデータ、モバイル空間統計、SNS分析による定性データを収集して、属性分析および来訪経路などの動態を可視化しました。

    これにより、これまで気づけなかった事実が次々と見えてきました。たとえば、想定していなかった国からの訪日客が多いこと、その一方で、日帰り利用が多い(=宿泊客が少ない)ことなどの、観光誘致における“伸びしろ”が見えてきたのは大きな成果の一つです。さまざまなデータを組み合わせると、地域や産業の“未来の可能性”まで見えるようになる。この感覚は、多くの自治体・企業に共有したい価値です。

    広島に来訪する外国人観光客の人流データ×SNS投稿を国籍別で解析。「どの国の人向けにどんな施策を打つと効果的か」の伸びしろ分析を可視化した。

    この実証のように、NTTドコモビジネスが持つお客さま企業や組織のデータに対して新たな付加価値をつけるコンサルティング力とインテージ社の持つ分析力の、双方の強みを融合させたデータ活用支援は、深化し続けているところです。

    「顧客理解」だけではない―データ活用で可能となった事業DX

    ――TOKYO FMのデータ利活用の事例は、自社の営業スタイルを変える効果も期待できそうですね。

    常盤氏:これまでの広告営業スタイルは、「平日朝の時間帯は通勤中のビジネスマンのリスナーが多いはず」といった、経験に基づく感覚ベースの提案が主流でした。しかし、radikoの聴取データとドコモデータを掛け合わせたことで、実際にビジネスマン層が聴いていることの揺るぎない「確からしさ」を検証することができました。

    さらにデータを深掘りすることで、具体的なリスナー像まで浮き彫りになってきています。まだ道半ばではありますが、今後はこうしたエビデンスを軸とした「データドリブンな営業スタイル」へ移行していきたいと考えています。

    経営層も現場も、このような変革なしには、次なる時代にラジオメディアが生き残ることは難しいという危機感を共通認識として持っています。まさに今、RDAの活動や今回の取り組みを通じて、データを活用した「営業DX」を推進する土壌を整えている最中です。

    自社で収集したデータをいかに管理し、価値あるアウトプットへと昇華させていくか。皆さまの知見を仰ぎながら、この変革のスピードをさらに加速させていきたいと考えています。

    伊藤氏:TOKYO FMの皆さまが抱えている課題や実現したいビジョンは非常に明確で、深く理解できました。何より常盤様の迅速な意思決定があったからこそ、わずか半年という短期間で実証を実現できました。プレスリリース後、社内外から予想を上回る大きな反響をいただき、その注目度の高さをあらためて実感しています。

    我々も、現在はTOKYO FMの方々と広告クライアントへの営業活動にご一緒する機会もいただき、さまざまな企業と向き合う中で「データ活用によって何が可視化され、何がまだ見えていないのか」といった新たな気づきを多く得られています。この取り組みの先に、さらなるビジネスの可能性を強く感じています。

    川口:TOKYO FMの実証がスムーズに進んだのも、「何を解決するのか」「そのためにどんなデータが必要か」が、最初から関係者全員で明確に共有できていたからだと感じます。一般的にトップダウン等でデータ活用が推進されると、「まずはたくさんデータを集めよう」という方向に走りがちです。ですが、集めることを目的にしてしまうと、その後の施策や変革に必要なデータが足りなかったり、逆に使い道のないデータだけが溜まったりしてしまいます。データは“集める”だけでは価値を生みません。目的から逆算して、必要なデータを組み合わせていく—そのプロセスが業務DXにも繋がる新たな可能性を拓く。これを常盤さんのお話しから改めて実感しました。

    各社は、「目的の明確化」から逆算して「必要なデータ」を見出し、時には外部データとの掛け合わせを〝共創〟することで、自社データだけでは見いだせなかった価値や可能性が可視化され得る。

    生成AI時代に高まるデータの価値―自社データを他社にも拓く資産へ

    ――今後はどのような形でデータ活用が進んでいくと思われますか?

    川口:これまで購買・接触データや回遊データ、アンケートデータは自社の「顧客理解」や「広告の最適化」といった、一方向のコミュニケーションに使われることが中心でした。しかしこれからは、企業と生活者が互いにつながり、関係性を育てていくための“双方向のコミュニケーション”にも不可欠な存在になっていきます。

    そして生成AIの活用が当たり前となる社会では、“正しく整理され、意味づけされたデータ”を持つことそのものが、企業の競争力になります。データを整えただけでは価値は生まれず、“顧客接点でどう行動変容につなげるか”が極めて重要になると思います。当社はデータ利活用支援のみならず、生成AI導入・業務改善やプロジェクト創出まで伴走支援していますので、皆さまの新たな事業創出に貢献できるのではと考えています。

    ――TOKYO FMではどのような展開をお考えでしょうか。

    常盤氏:ラジオの最大の強みは、リスナーの「熱量の高さ」です。この熱量をデータとして可視化できれば、ラジオ広告の新たな可能性が切り拓けるはずです。たとえば、「イベントで数万人規模のリスナーを動員」したとしても、広告市場ではデジタル広告の「100万インプレッション」の方が高い価値として評価されがちです。しかし、双方の数字が持つ「意味」や「価値」は、本来全く異なるはずです。単純なインプレッションとは一線を画す、ラジオリスナー特有の熱心なエンゲージメントをいかに可視化し、証明していくか。これが今、私たちが向き合っている挑戦です。

    川口:“0から1”を生み出すような新しいムーブメントの火種になるのは、まさにそうした熱狂的なファンの存在です。スポーツビジネスの世界でも同様ですが、コアなファン層を抱えていることは、それ自体が計り知れない強みになりますね。

    常盤氏:私たちは広告ビジネスを主軸としていますが、リスナーの熱量を可視化できれば、既存のマス広告の枠組みを超えた展開が可能になります。例えばですが、「地域創生」の課題に対して、「エンゲージメントが高く、このようなデータに裏打ちされたリスナー集団が特定地域に存在する」という事実を提示できれば、「ラジオと一緒にこの地域を盛り上げていこう」といった自治体や他産業との連携も生まれやすくなります。そうなれば、放送外収入を含む新たな収益モデルも自ずと見えてくるはずです。

    このように、営業DXのみならず、番組の編成制作、放送外事業、さらには他社・他団体との新たな共創事業など、ラジオリスナーのデータ分析・活用には、さまざまなビジネス創出や社会課題解決への可能性も感じます。

    事業共創で導かれる「目的ドリブン」のデータ活用

    ――インテージでは他に事業共創・協業でデータ活用に取り組んでいる例はありますか。またそれを進めていく上で感じる課題について教えてください。

    伊藤氏:現在は他のメディア会社の方々へもソリューションを提案しています。自社の顧客像をもっと把握したいという課題を抱える企業におかれましては、目の前のことはもちろん、その先にある根本的な課題解決のためにも現状をざっくばらんにご相談いただきたいですね。ドコモデータと掛け合わせることで、課題解決のみならず、自社が保有するデータの価値や活用性をさらに高めることができると考えています。

    常盤氏:私の場合は、あえて「こういう悩みを抱えている」と周囲に発信するようにしていました。すると「それなら、こういう手法がある」「インテージという会社がある」といった情報や紹介が集まり、そこから共感の輪が広がっていきます。

    企業ごとに抱える課題が異なるのはもちろん、組織内でも立場によって見えている課題は違います。だからこそ、まずは課題を言語化して「口に出す」こと。それが変革を始める第一歩として、非常に重要だと感じています。

    ――今後、企業がデータを活用するにあたり、どんな心持ちで臨むべきでしょうか。

    常盤氏:まずは「データを使って何を成し遂げたいのか」という、入口に立つための心構えを持つことが重要です。個人の感覚や経験則も貴重な財産ですが、価値観が多様化した現代において、客観的な視点でベンチマークを測れる手段はデータしかありません。

    私自身、かつては人脈や勘を頼りにする、いわばメディア業界の伝統的なスタイルで営業を行ってきました。しかし、半ば必然的にデータ活用へ挑戦したことで、それまで知らなかった“広大な世界”が目の前に広がりました。そこが今の活動の原点です。一人ひとりがこうした成功体験を積み重ねれば、ラジオ業界は必ず変わりますし、さらに多くの革新的なアイデアが生まれるはずです。

    伊藤氏:データ連携を提案する立場からは、「今、何に困っているか」を気軽にご相談いただきたいです。課題を伺ってご提案すると、「そんなことが!」と驚いていただくことがよくあります。外部データを組み合わせることで課題がより可視化される、ソリューションによってより早く課題解決できることがあると感じています。

    川口:多くの企業は自社で蓄積したデータを自社のために使う段階にいます。一方で、さらに大きな可能性が生まれるのは、「自社データを外部データと掛け合わせ、新たな価値として提供していく」という次のフェーズです。自社データだけでは見えなかった価値が、他社データとつながった瞬間に花開く。その“共創の仕組み”をつくっていくことこそ、私たちの役割だと考えています。目的から逆算し、必要なデータを見極め、他者とも組み合わせながら価値を創る——まさに「目的ドリブン」のデータ活用が広がれば、新しいビジネスはもっと生まれていくはずだと思っています。

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