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2025.07.18(Fri)
目次
「NTTドコモビジネスは新たなステージへ」と題し行った基調講演では、NTTドコモビジネスの代表取締役副社長 工藤晶子が登壇。2025年7月1日にNTTグループが社名を変更し、日本電信電話は『NTT』、NTTコミュニケーションズは『NTTドコモビジネス』へと改称したことに触れ、NTTグループの事業構造の変化について説明しました。
「NTTグループの事業構造は大きく転換しています。1985年は音声収入が全体の83%を占めていましたが、2024年には12%まで減少。現在は、文化・芸術、自動運転、半導体、陸上養殖などさまざまな分野で新事業を立ち上げており、今後はさらに大きな事業に成長させて、地域の皆さまのお役に立ちたいと考えています」(工藤)

工藤は、具体的な取り組みとして、新潟県内での2つの事例を紹介しました。1つ目は新潟県関川村での防災DXです。専用受信機をタブレットに置き換え、防災情報だけでなく、平時には住民向けの情報発信にも活用し行政サービスの強化にも役立てています。
2つ目は、米栽培における田んぼの中干し期間を延長することで、温室効果ガスのメタン発生を30%抑制する取り組みです。創出したカーボンクレジットの流通をNTTドコモビジネスが担い、売上の一部を生産者に還元することで、カーボンニュートラルの推進と農業従事者の収益向上に貢献しています。
続いて工藤は、AIの加速度的な普及により未来社会の実現が前倒しされている一方で、ネットワーク、データセンター、電力などのあり方が大きく変わっていると指摘しました。AIの活用には、大量のデータを学習させ、推論を高速で処理するためのサーバーと電力が必要です。特に、推論はリアルタイム性が求められることから、AIの導入を進める大手企業が集まる都市部にデータセンターの立地が偏ってしまっており、電力逼迫も大きな課題となっています。
つまり、地域企業が生成AIを活用するうえで鍵となるのは、“コストを抑えつつ、安全で高速なネットワーク環境をどう確保するか”なのです。

そこで、NTTドコモビジネスが2025年10月に大きく打ち出したのが、自律・分散・協調型社会を支えるためのAI時代に最適化された『AI-Centric ICTプラットフォーム』です。都市部に集中するデータセンターをグリーン電力の供給が可能な地方(発電・消費エリア)に分散させて学習させるとともに、AIを利用する場所(消費エリア)の近くに設置したデータセンターとIOWN APNで結んで、データセンター間での高速なデータ転送を実現。消費エリアのデータセンターで、リアルタイムでの推論を行います。通信基盤も、必要な時に必要な帯域を柔軟に利用できる「NaaS(Network as a Service)」と呼ばれるSaaS(Software as a Service)型ネットワークサービスへと進化させ、セキュリティなどのさまざまな機能を組み込むことで、リーズナブルかつ安全な通信環境を実現します。
工藤は、「産業・地域DXのプラットフォーマーとして、『AI-Centric ICTプラットフォーム』をベースに社会課題や産業課題を解決するDXソリューションを提供し、豊かな未来社会を実現したいと考えています」と述べ、ユースケースを4つ紹介しました。
ユースケース(1)自動運転
ドライバー不足などの社会課題解決に向けて全国の9つの地域で自動運転の実証実験を進めています。自動運転では、通信が途絶えないことが必要となるため、NTTドコモだけでなく他社の通信回線も含めて管理し、回線の途絶を予測して別回線で継続する高信頼な通信の実現を目指しています。

ユースケース(2)ロボティクス
人手不足への対策として、さまざまなロボットが連携できるプラットフォームの構築に取り組んでいます。2025年10月に川崎重工との戦略的協業に関する覚書の締結を発表し、IOWNや5Gと先進テクノロジーを掛け合わせ、人とロボットの共生社会を目指しています。

ユースケース(3)陸上養殖
現場のエッジAIを活用して、魚の成長具合や餌やりのタイミング、異常の検知を行い、クラウド側のAIでデータを学習させ、養殖のオペレーションを高度化させていきます。2024年12月に陸上養殖のオペレーションシステムノウハウを提供・支援するNTTアクアを立ち上げ、事業を展開しています。

ユースケース(4)リモートプロダクション
リモートプロダクションとは、遠隔で映像を制作すること。例えば、スポーツ中継などの映像を非圧縮で遅延なく編集センターに伝送し、現地での編集稼働を不要にすることで、コスト削減と機動力向上を実現します。国内で開催された大規模スポーツイベントでも導入されました。

最後に工藤は、大阪・関西万博におけるNTTパビリオンのスペシャルパフォーマンスを振り返り、IOWNや最新テクノロジーの活用によって、これまでにない体験や価値を提供できるようになると説明し、デジタル技術の可能性を訴えました。
特別講演では、新潟日報生成AI研究所の取締役研究所所長 石山洸氏が登壇し、「生成AIで新潟の可能性を無限大に」と題した講演を行いました。

石山氏は、自身の経験を踏まえてAIのビジネスインパクトについて説明しました。
「リクルートでは、プログラムコードの33%をAIが書いており、2014年の上場時の時価総額2兆円が、現在は12兆円へと6倍に増加しています。エクサウィザーズは、介護領域におけるAI活用に取り組んできたベンチャーで、AIを活用した科学的介護により認知症の症状が20%改善、介護者の負担も28%改善という成果を上げました。現在は売上100億円規模へ成長を遂げています」(石山氏)
このAIの力を生かそうと、石山氏は石川県珠洲市の中小企業との共創にも積極的に取り組んでいます。新潟県では、地元新聞社が持つ15年分の記事データを学習させた、新潟に詳しい“御当地AI”を開発。車移動をしている間に、ラジオを聴くように新潟の情報を予習し営業トークに活用したり、地域の情報に合わせたネクストアクションを提案してもらったりするなど営業支援AIとしての活用例を紹介しました。これは営業人材不足に悩む地域企業にとって、極めて実用性の高いAI活用の形と言えます。

また石山氏は、御当地AIを活用する場合、地域に親しまれているIP(Intellectual Property、知的財産)と組み合わせることが、AI利用のハードルを下げるとし、新潟県に馴染みの深い江戸時代の僧侶・良寛の和歌集をデータ化し、その書体をAIで再現するシステムなどの例も紹介しました。石山氏は、「生成AIの可能性は無限大であり、ビジネスや社会に大きなインパクトをもたらします。使って楽しいと思えるAIの開発にぜひ取り組んでほしいです」と、AI開発の可能性を参加者に伝えました。
パネルディスカッション第一部は、五泉市長の田邊正幸氏とNTTドコモビジネス常務執行役員の本髙祥一が、「行政DX、住民DXの実現に向けた生成AIへの期待」をテーマに意見を交わしました。

五泉市は、DX推進方針として「市民の利便性向上」と「業務簡素化」を掲げており、職員向け出退勤顔認証システムと除雪車の運行管理へのAI導入を進めてきました。田邊市長は、AI導入の狙いについて次のように説明しました。
「出退勤システムで勤務時間を見える化し、職員の働きがいや適正な人員配置につなげたいと考えています」(田邊市長)
さらに、今後AI活用で力を入れたい領域として「高齢者の見守り」を挙げました。本髙は、NTTドコモビジネスと会津若松市で地域医療サービスを提供する竹田健康財団との共創事例を紹介しました。
「私たちが提供するビデオ通話サービス『ちかく』は、テレビとスマホをつなぐ見守りサービスです。離れた家族と話ができ、生活ログや起床確認により安否確認が可能となります。竹田健康財団様では、患者様の元に駆けつける必要があるかを、ビデオ通話で映る顔色を見て判断するなど、介護分野での活用を進めています」(本髙)

田邊市長は、「観光情報発信の強化」についても言及し、五泉市が2025年10月に観光案内施設へ導入した接客アバター「AIさくらさん」を紹介しました。
「新潟県は、佐渡金山が世界文化遺産になったことでインバウンド客が増えています。多言語対応が必要ですが、地方では人材確保が難しい。そこでAIを活用しました。英語、韓国語、中国語を含む4カ国語に対応します。うまく活用できれば、次は市役所の案内にも展開したいと考えています」(田邊市長)

本髙は、AIサービスを利用し続けてもらうためには「レスポンスは重要です」とし、『AI-Centric ICTプラットフォーム』を活用すれば、データセンターとネットワークをうまく協調させて、分析のレスポンスや回答の正確性を高めることができると、導入メリットを説明しました。
パネルディスカッション第二部では、地元企業2社の代表が、「地域企業におけるデータ活用の実践と競争力強化」をテーマに語り合いました。登壇したのは、ブルボン デジタル推進部部長の磯野伸幸氏と、岩塚製菓 情報システム部長兼DX推進室長の関隆志氏です。現場を巻き込みながら、定量化と撤退基準を明確にする──。地域企業がDXを成功させるうえで欠かせない視点が示されました。

磯野氏は日本たばこ産業(JT)でR&D、経営企画、ITを経験後、2021年5月にブルボンに入社。入社時に現社長から「今までのものを変えてほしい」と依頼され、変革に取り組んでいます。
「慣習にとらわれず、全社でDXに取り組んでいくことは非常に大変ですが、現在の社長の言葉があったことが大きな力となっています。社内の協力を得ていく上で大事なのは、費用対効果を具体的な数字で示すこと。また、必ず撤退条件を設定し、期間内に成果が出なければ引くということも明確にしています」(磯野氏)

関氏は、2003年に岩塚製菓に入社し、1年間の工場勤務を経て情報システム部に配属。情報システム担当として全社のデジタル化の推進に取り組み、2025年からはDX推進室長を兼任しています。現場社員との対話を増やし、社内教育を進めたことがDX推進室の立ち上げにつながったと説明しました。
「実はデジタル化するために必要なのは、アナログな付き合いも大事です。例えば、製造部の責任者と飲みに行くなどお互いの理解を深めることで、工場を挙げてDXに取り組んでもらえるようになりました」(関氏)
続いて、DX推進に若手を巻き込んでいく工夫について、磯野氏は、「仕事では『失敗』という言葉は使いません」と自身の考え方を紹介。うまくいかなかったことがあれば、その理由を明らかにし、うまくいかなかった事実を資産化することの重要性を話しました。
デジタルツール活用におけるセキュリティ対策やガバナンスについては、ブルボンが中央システムからの統制を重視する一方、岩塚製菓ではノーコード・ローコードツールを提供しながらも、情報システム部がチェックする体制をとっています。関氏は「各部署で似たような取り組みがあれば、情報システム部やDX推進室がそれぞれに声をかけて情報を連携し、DX推進の方向性を合わせていくことが重要です」と述べました。
生成AIやデータ活用は、地域ならではの価値を再発見し、新たな産業として育てていく力を持っています。NTTドコモビジネスは、AIやデータ活用を支えるネットワーク基盤やさまざまなDXソリューションを提供する強みを生かしながら、地域の中小企業や自治体とともに生成AI活用の最初の一歩を踏み出し、未来の事業とサービスをつくり続けます。
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