Carbon Neutrality

2025.01.31(Fri)

カーボン・オフセットとは?必要な理由や取り組みの種類、メリットは?

#サステナブル #事例 #環境・エネルギー
近年のビジネスシーンでは、企業の信用力やブランドイメージの向上を視野に入れて、「カーボン・オフセット」に取り組む企業が多くなっています。地球温暖化にともなう気候変動が国際的な課題となっている今、各企業が積極的に貢献する意識を持たなければなりません。

本記事では、脱炭素社会の実現へ向けて重視されるカーボン・オフセットの基礎知識を解説します。企業が取り組むメリットや注意点にも触れるため、ぜひ参考にご覧ください。

目次


    カーボン・オフセットとは?

    「カーボン・オフセット」とは、経済活動や生活の中で排出される温室効果ガス排出量の削減が難しい場合に、その他の方法によって排出量を埋め合わせることです。温室効果ガスの中でも、主に二酸化炭素(CO2)が対象とされています。埋め合わせる方法には、主に「省エネ設備の導入」「再生可能エネルギーの導入」「適切な森林管理」といった方法があります。また、温室効果ガスの排出削減・吸収に取り組む事業者からクレジットを購入して活動を支援するのも一つの方法です。

    たとえば国内では、温室効果ガス排出量の削減や、森林管理によるCO2の吸収量を国が認証する「J-クレジット制度」があります。埋め合わせのために購入できるJ-クレジットの種類は、「再生可能エネルギー(電力)由来クレジット」「再生可能エネルギー(熱)由来クレジット」「省エネルギー由来クレジット」「森林吸収由来クレジット」「工業プロセス、農業、廃棄物由来クレジット」が挙げられます。

    関連記事:「環境と地域、企業をつなぐ。J-クレジットを導入した3社の思いとは?」

    カーボン・オフセットが必要な理由

    2015年に国際的に合意されたパリ協定では、「世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つ」とともに、「1.5℃に抑える努力をする」という世界共通の長期目標が掲げられました。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」によると、この目標を達成するには、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする必要があると指摘されています。

    その一方で、企業の事業活動や一般家庭の日常生活では、温室効果ガスの排出削減へ向けた取り組みが難しいケースも少なくありません。たとえば製造業や運輸業などのビジネスでは、事業内容の性質上、たとえ削減努力を行っても、製品やサービスの提供で一定の温室効果ガスが排出される場合があるでしょう。また、一般家庭では太陽光発電システムや電気自動車の導入が進みつつあるものの、環境に配慮した社会的なインフラの整備はまだ十分に進んでいません。このように、削減努力だけでは目標達成できない部分は、カーボン・オフセット制度の取引によって賄うことが可能です。

    カーボン・オフセットの主な取り組み

    ここでは、カーボン・オフセットの主な取り組みをご紹介します。自社に適した取り組みで、脱炭素社会への貢献をめざしましょう。

    ●オフセット商品・サービス

    商品・サービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスをクレジットで埋め合わせする方法です。具体的には「製造」「輸送」「販売」「使用」「廃棄」といったあらゆるプロセスで発生する温室効果ガスがオフセットの対象となります。

    ●会議・イベントのオフセット

    会議・イベントの主催者などが、開催にともない排出される温室効果ガスをクレジットで埋め合わせする方法です。対象の大規模イベントの具体例として、スポーツ大会・コンサートやライヴ・国際会議などが挙げられます。

    ●自己活動オフセット

    企業の事業活動や、消費者個人の活動で排出される温室効果ガスをクレジットで埋め合わせする方法です。企業の場合、製品の製造やサービス提供にともなう排出が対象となります。個人の場合、通勤・通学で発生する移動など、日常生活での排出が対象です。

    ●クレジット付き商品・サービス

    消費者がクレジット付き商品・サービスを購入することで、日常生活で排出される温室効果ガスを埋め合わせする方法です。企業が提供する商品・サービスにクレジットを付与すると、購入した消費者はオフセットが可能となります。

    ●寄付型オフセット

    製品・サービスを提供する企業や、会議・イベントの主催者などが、キャンペーンを開催して消費者から寄付を募り、集まった寄付金でクレジットを購入する方法です。事業者と消費者は、寄付によって温室効果ガス削減へ貢献できます。

    ●地域版J-クレジット

    国による「J-クレジット」の制度と同様に、地方自治体が主体となり制度の運営に取り組みます。発行されたクレジットは、国が発行するクレジットと同等に扱うことが可能です。地域で創出したクレジットが地域で購入され、クレジットの地産地消が期待できます。

    ●民間認証制度

    民間の認証機関が提供するカーボン・オフセットの認証制度を利用する方法です。信用力向上やブランドイメージ向上などを目的に、企業や団体が利用します。

    企業がカーボン・オフセットに取り組むメリットと注意点

    企業がカーボン・オフセットに取り組むと、具体的にどんなメリットが期待できるのでしょうか。ここでは、注意点と併せて解説します。

    ●カーボン・オフセットに取り組むメリット

    ・ブランディングの強化

    カーボン・オフセットの取り組みはブランディングを強化する効果をもたらします。国内では、カーボン・オフセットに積極的に取り組む企業が少ないのが現状です。そのため、業界を先駆けた取り組みは注目につながりやすく、競合他社との差別化に有効だといえます。その際、環境省の「カーボン・オフセット認証ラベル」を取得すれば、企業の信頼性向上も期待できるでしょう。

    ・投資家からの評価の向上

    カーボン・オフセットを実施すると、投資家からの評価向上が期待できます。近年はESG投資(=環境・社会・ガバナンスを配慮した経営)がビジネスシーンのトレンドとなっています。投資家から社会課題への貢献意識が高い企業と評価されることで、資金調達がしやすくなるほか、株価の上昇が期待できるでしょう。

    ●カーボン・オフセットに取り組む際の注意点

    カーボン・オフセットは、あくまでも削減努力を行った上で利用する制度です。そのため、企業側は「カーボン・オフセットに取り組んでいれば、削減努力は不要」といった認識にならないよう注意しましょう。カーボン・オフセットに取り組む場合も、社内の関係者全員に温室効果ガス排出量を削減する重要性を理解させる必要があります。

    カーボン・オフセットの主な取り組み事例

    最後に、カーボン・オフセットの主な取り組み事例をご紹介します。国内外の企業・団体の事例を参考にしてみてください。

    ●Aerial.is

    シリコンバレーのスタートアップ企業「Aerial.is」は、カーボン・オフセットに参加する個人向けのアプリを提供しています。主にビジネスパーソンの出張を対象に、移動によるCO2排出量を自動で計算する仕組みです。分析結果はブロックチェーン技術で管理され、改ざんが防止されています。参加者はアプリを通じてカーボンフットプリントを削減する行動の提案を受けたり、仲間とともにカーボン・オフセット活動を競い合ったりできます。

    関連記事:「シリコンバレーから見る、カーボンオフセットビジネス最前線 後編」

    ●NPO法人 環境共棲住宅地球の会

    NPO法人 環境共棲住宅地球の会では、地域工務店や建材会社などを対象に、カーボン・オフセットのクレジット制度を実施しています。会員である事業者は、カーボン・オフセットを行った住宅構造材や建材を使用した住宅の建築・販売に取り組みます。一方、住宅を購入した消費者には、間伐材グッズなどによる還元が行われる仕組みです。

    ●横手市・森林組合森林吸収共同プロジェクト推進協議会

    横手市・森林組合森林吸収共同プロジェクト推進協議会は、横手市および横手市森林組合が共同で立ち上げた団体です。同団体は、カーボン・オフセットを利用した市内の森林整備の活動を実施しています。森林管理で創出したクレジットを販売して、市内のイベントや産業活動でオフセットを実施し、クレジットの地産地消をめざします。

    ●にちなん日野川の郷

    道の駅「にちなん日野川の郷」では、施設運営にともなうCO2排出量の全量を対象に、カーボン・オフセットに取り組んでいます。道の駅の商品に対して、1商品あたり1円のクレジットを付与して販売することで、森林支援を実施。日南町の森林管理で創出したクレジットを利用して、消費者の環境貢献意識の向上や森林保全を推進しています。

    企業も積極的にカーボン・オフセットへの取り組みを始めましょう!

    ここまで、カーボン・オフセットの基礎知識や、メリット・注意点などを解説しました。事業活動で温室効果ガスの排出を避けられず、削減努力をしても目標達成が難しい場合は、カーボン・オフセットを活用するとよいでしょう。今回ご紹介した事例を参考に、自社のビジネスに適したカーボン・オフセットの取り組みをご検討ください。

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