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2024.04.20(Sat)
ICT機器の小型化、高機能化が進むと同時に、多様な分野において社会へ浸透した、ウェアラブルデバイス。こうした「身につける」デバイスの延長線上で、にわかに脚光を浴びているのが体内に機器を埋め込む「インプランタブルデバイス」の領域だ。まずは、「ウェアラブルデバイス」と「インプランタブルデバイス」の進化の現状について、三井物産戦略研究所・産業社会情報部の木下美香氏が解説する。
「端的に言えば、通信機能、センサーなどを備え、身につけて利用できるICT機器がウェアラブルデバイスです。こうした機器は1980年代から開発が始まり、2009年にFitbitリストバンド型活動量計、2015年には腕時計型のアップルウォッチが登場したことによって認知が一気に広がりました。現在では、耳装着型、メガネ型、ヘッドマウントディスプレイなどの製品開発が進んでいる状況です。一方で、テクノロジーの進化によって体内に埋め込むタイプのチップや機器、いわゆるインプランタブルデバイスの研究開発も進んできました。心臓のペースメーカー、脳深部刺激装置を始めとした重篤な疾患の治療や、それなしには解決不能な症状緩和など、主に医療分野で用いられてきましたが、2017年にはICカードの代わりとなるマイクロチップを皮下に埋め込んで生体認証を行うインプランタブルデバイスの活用事例も、欧米の一部で見られるようになりました。また広義では飲み込むタイプの機器もインプランタブルデバイスの定義に含まれ、小腸や大腸用のカプセル内視鏡なども実用化されています。このようにインプランタブルデバイスの社会実装は少しずつ進んでおり、今後、医療分野を始め多様な領域で活用されることが期待されています」

こうしたインプランタブルデバイスの進化がもたらす社会へのインパクトについて、NTT Com・スマートヘルスケア推進室の久野誠史はこう指摘する。
「ポイントは『非日常から日常へ』だと感じます。自らの健康状態を知るために機器を装着するのがウェアラブルデバイスですが、どれだけ機器が小型化し、装着後の快適性が高まっても、『装着する』という行為が厳密には日常であるとは思えません。一方、体内に埋め込んだり、カプセルを飲み込んだ後は基本的に何もしなくていい、その存在さえ忘れられるというインプランタブルデバイスは、まさに日常へ落とし込まれた機器であると言えるでしょう。こうした『非日常』と『日常』の差が実は大きいと私は感じています。たとえば、日常の中で血圧や脈拍など多様なバイタル情報を自然に取得できると、自身の健康状態をつねに理解しているという状態になります。その結果、たとえば睡眠が足りないという事実が可視化され、今日は少し早く寝ようという行動変容につながりやすい。つまりインプランタブルデバイスによって人々は健康な状態へと向かっていき、ひいては国全体の医療費削減につながっていくということにもなるんです。こうした効果に私自身、とても注目しています。それほど『日常』に落とし込まれたインプランタブルデバイスのパワーは絶大だと感じていますね」
予防医療の観点から見て、インプランタブルデバイスにはよりポジティブな可能性が秘められていると木下氏は言葉を加える。
「心不全の重症化に至る前段階では、肺動脈の圧力上昇という兆候が現れます。この兆候に着目したインプランタブルデバイスが2024年の6月に米国でFDAの市販前承認を取得し、年内には治療可能となる予定です。コインほどの大きさの機器を右肺動脈内に留置し、日常的に肺動脈の圧力をモニタリングすることで、心不全が重篤化する前に予防的な介入を行うことを目的としています。このように、インプランタブルデバイスは、通常の診断やウェアラブルデバイスでは検知できないような異変を察知したり、日常的にモニタリングすることで、深刻な状態に陥る前に処置が可能となったり、不安を抱える方のQOLを向上させたりといった効果が期待できます。また、機器やデータ解析技術が進化すれば、体内のほんの少しの異変を正確に検知し、どの病気と関係しているかが分かるようにもなっていくかもしれません。日常的に体内の多様な情報をモニタリングすることの意義はそれほど大きく、様々な可能性を秘めていると思います」

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