01
Coming Lifestyle
2024.07.10(Wed)
この記事の要約
NTT Comは「NEW SALES OF THE YEAR 2024」でカスタマートランスフォーメーション賞を受賞しました。NTT Comは、ICTインフラ、データプラットフォーム、ソリューションの3層構造で統合ソリューションを提供しています。
営業戦略の中心は、データドリブンな「セールスイネーブルメント」で、顧客データの一元化や自動レコメンドシステムを構築しています。また、事業共創プログラム「OPEN HUB」を通じて新規ビジネス創出も促進しています。
2022年のドコモグループとの統合により、固定回線と無線の両方を提供可能になり、サービス範囲が拡大しました。今後は、ドコモの顧客データ活用やサービス開発力強化に注力し、BtoBマーケティングのベストプラクティス企業を目指していきます。
※この要約は、生成AIで作成しました。
目次
――営業戦略の具体的な内容をお聞きする前に、まずはNTT Comの事業内容についてあらためて教えてください。
戸松正剛(以下、戸松):NTTグループの祖業であるネットワークを土台として、ICTインフラ、データプラットフォーム、ソリューションの3層構造で事業を展開し、「統合ソリューション」を提供しています。
統合ソリューションを提供できるようになった要因のひとつが経営統合です。NTT Comは2022年にドコモグループとなって以来、グループ全体の法人ビジネスを担っています。大きく変わった点は、もともと「固定回線」に関する事業を中心に展開していたところ、経営統合によって「無線(モバイル)」も提供できるようになったことにあります。アプリケーションや、クラウド・データセンター、現在約1億人のドコモ会員基盤データを活用して、フルスタックでのソリューション提供が可能になったのです。
ネットワーク、プラットフォームを土台にIoTソリューションを展開し、医療やインフラ、教育といったあらゆる分野の課題解決に貢献できるようになりました。さまざまな分野を横断しながら、よりよい社会の実現に資する価値の提供を目指しているのです。
――今回受賞したのは、「カスタマートランスフォーメーション賞」でした。カスタマーエクスペリエンス(CX)を最大化させるために、NTT Comが行っている営業活動のテーマや強みはどのようなものなのでしょうか。
戸松:データ利活用による組織力の底上げによって、顧客志向を実現しようとするものです。営業活動を推進・進化させるために注力している取り組みは主に5つあります。
1、中長期成長戦略の基礎となる統合マーケティングボード、リサーチ
2、事業共創を加速させるプログラム「OPEN HUB for Smart World(以下、OPEN HUB)」
3、既存ICT領域を成長させる攻めと守りのマーケティング施策
4、カスタマーエクスペリエンスを最大化するためのデータドリブンなセールスイネーブルメント
5、マーケティング活動を支える人的資本「CATALYST(カタリスト)」
1つめの「統合マーケティングボード」は、組織横断で、中期の新たな事業領域を議論するための、議論および合意形成の場です。ここでは、新たな事業領域を探索するためのマーケティングリサーチの結果や新規領域に取り組むいくつかのワーキングの活動状況が共有され、必要に応じた支援リソースの割り当てを行います。NTT Comにおいては、CMO(チーフマーケティングオフィサー)のポジションを設置していませんが、このボードはまさにその役割を組織的にもっているともいえます。
矢三由佳理(以下、矢三):マーケティングボードで策定された戦略をもとにした施策が、2つめの事業共創プログラム「OPEN HUB」と、3つめの「攻めと守りのマーケティング施策」です。
顧客志向の実現のためには、既存領域に加えて新規領域の拡大が欠かせません。その役割を担うのが事業共創プログラムのOPEN HUBであり、5つめの社内外専門家CATALYSTが触媒となって社会課題解決を入り口とした新規事業の実現をアシストしています。
とはいえ新規のお客さまに対しては、もともと私たちが強みとしてもっているICT領域での訴求がわかりやすく、取引を開いていただきやすいケースもあります。実はカスタマーサクセスもここが一番効果を発揮しやすい。契約があるところから事業の幅を広げていくというのが3つめの「攻めと守りのマーケティング施策」です。
戸松:肝要なのが4つめのデータドリブンなセールスイネーブルメントで、いま非常に力を入れている部分でもあります。
私たちはエンタープライズ向けビジネスを展開していますが、営業担当者は最大の「メディア(媒介者)」だと考えています。なぜなら、お客さまにとってNTT Comとの接点は、直接やりとりをする営業担当者がすべてだからです。顧客体験を向上させるためにも、私たちの利益を上げるためにも高いクオリティを有するフィールドセールスというメディアは不可欠なのです。
では、どうやって営業のクオリティを上げるのか。お客さまの行動データを社内の関係者が全員で共有し、営業戦略を立てていくことが非常に重要になります。その営業戦略を立てるための仕組みづくりや、データの利活用に取り組んでいるのが私たちマーケティング部門です。
――「データを活用したナレッジマネジメント」は今回のアワード評価の大きなポイントの1つだったとのことですね。
片桐麻美(以下、片桐):特に評価していただいた部分は、データからナレッジ、インサイトまで昇華させるシステムアーキテクチャを構築したことです。MA(※1)、CDP(※2)などの統合により、顧客行動データを一元化し、商談状況に合わせてアクションやナレッジを自動で営業にレコメンドする仕組みを実現させました。また、CS(※3)の登録も促進していて、お客さまのニーズからインサイトまでを営業が把握できるような体制を整えています。ここは営業のメンバーがデータを入力・活用することで精度が上がっていくため、メリットを伝えながら文化の醸成を図っています。
※1 MA(マーケティングオートメーション)
リード獲得、リード育成、リード選別を一部自動化し、顧客に対する効率的なアプローチを実現するツール
※2 CDP(カスタマーデータプラットフォーム)
組織ごとに保有するあらゆる顧客情報を統合して一元管理するデータ基盤。さまざまなシステムと連携することで、CXの向上が可能になる
※3 CS(顧客満足度)
提供したソリューションやサービスに、顧客がどの程度満足したかを調査・数値化した指標。継続取引や長期的な利益創出に向けた改善などに用いられる
戸松:ポイントは、お客さまの窓口となるフィールドセールス、営業戦略を立てるマーケティング、それからバックオフィスのメンバーが同じ情報にアクセスできる状態にしたことです。たとえばクラウドベースの営業支援ツール「セールスフォース」の運用についても、独自の仕組みをつくりました。一般的には、営業担当者がデータを入力し経営ダッシュボードの情報をマネージャーが閲覧する使い方が多いかと思います。
私たちは、顧客別の売り上げのみならず、それぞれの顧客をどれだけフォローできているかをスコア化し、営業戦略を立てます。たとえば、新規領域に着手したいと考えているお客さまを、NTT Comの共創プラットフォームであるOPEN HUBにお招きしているか、どんなイベントに何回来ていただけているか、といった状況を可視化しています。
さらにいうと、顧客の事業が現状どのような課題を抱えていて、新規で何をしようとしているのか、といった状況もデータ化して共有することで、あらゆる役職のメンバーがすぐに確認できるようにします。すると、データを見ながら顧客ベースの営業戦略を立てやすくなりますし、社内でミーティングをするときも属人化した情報ではなくデータを見ながら話を進められるので解像度が上がり、マネジメントの向上にもつながります。
――マーケティング部門が一貫して営業活動をバックアップしていると思いますが、具体的にはどのようなことをしているのでしょうか。
片桐:これまで営業戦術、営業システム、営業育成と領域ごとに個別に施策を立てていましたが、そういった体制を崩し約50人からなるセールスイネーブルメント組織をつくりました。私たち3人もそのなかにいます。特にアワードで評価していただいた点は、冒頭で申し上げたような5つの取り組みをマーケティング部門が一括で執り行っていた点でした。
組織としてセールスイネーブルメントに取り組み始めたのは2017年ごろからです。世の中的にもBtoBtoXモデルでお客さまの課題を解決していく必要があるといわれ始めたタイミングでした。社会の変化に応じてお客さまの課題も変わっていくなかで、ソリューションを拡充する必要が出てきたときに、自社内組織の年齢層が比較的高かったり、商材を売るための知識をもつ人が少なかったりと、いくつかの課題が浮き彫りになりました。一方で、高いパフォーマンスを出す人材も組織内にはいたので、グループ内でナレッジを水平展開することから始めたのが、営業変革の初期の動きでした。
戸松:折しも、2019年からグループ内での経営再編が進み、2022年にはNTT ドコモ、NTT Com、NTT コムウェアが法人事業を統合し、新しいドコモグループが誕生しました。金融、ヘルスケア、マーケティングソリューションなどを柱としたスマートライフ事業と従来からのモバイル通信事業を手掛けるドコモ、ソフトウェア開発のコムウェアとNTT Comが一体となり、ドコモビジネスとして提供できるサービス、ソリューションが一気に拡大したのです。
これが追い風となり、各社でバラバラだったスキルやノウハウを一本化できた。一枚岩にならざるを得なかったという方がしっくりくるかもしれません。営業においても、それぞれに課題意識をもっていたり、新規事業開拓チームが発足したりとバリューチェーンがつながっていなかった。それなら、セールス、マーケティングに関するITインフラを一新し、情報連携しながら組織的に営業にあたっていこう、つまり、「チームセリング」という動きができてきたのです。
――もう1つの評価の決め手として「顧客志向の施策推進」がありますが、事業共創を加速させるプログラムOPEN HUBは5つの営業テーマにおいてどのような位置付けなのでしょうか。
戸松:データを使ったセールスイネーブルメントが営業における「サイエンス」の要素であるならば、OPEN HUBは新しい事業をつくり出す「アート」的な役割を担っています。
事業共創にあたっては、常に同じプロセスやクロージングまでの明確なタイムラインがあるわけではありません。事業の目的からお客さまと一緒につくることもありますし、セールスの観点からすると収益性だけで測れない部分もあります。それでもやはり、中期で新規事業計画をつくっていくうえでは時間をかける価値があると思っているので、サイエンスとしてのセールスイネーブルメントと、アートとしてのOPEN HUBの2軸で展開しています。
矢三:お客さまによって課題が異なることを踏まえ、OPEN HUBではさまざまな接点を用意しています。本記事が掲載されているメディア「JOURNAL」は、OPEN HUBの4つのコンテンツのうちの1つです。そのほかにビジネス共創コミュニティーの「BASE」、その会員が集うリアルな場としての「PARK」があり、700名の社内外の専門家「CATALYST」と取り組むプログラム「PLAY」があります。それぞれ異なる機能がありますが、OPEN HUBは新しい技術や知識を一緒に見たり触れたりしながら、アイデアを出し合い、一緒に新規のビジネスを始めていくための、さまざまなきっかけを提供するプログラムです。
実際に、ヤンマーマルシェとの共創では、水田のメタンガスを抑制し、オフセット分をJ-クレジットに換える農業モデルを構築しました。また、フェムテック領域での共創コミュニティー「Value Add Femtech Community」は、2023年1月に12社で発足し、現在は33社に参加企業が拡大しました。社会にインパクトをもたらす共創が少しずつ生まれてきています。
――最後に、カスタマートランスフォーメーション受賞を受けての気持ちと、それぞれの展望を教えてください。
片桐:お客さまのニーズや課題をデータにもとづきながら把握し、お客さまにとっての最大のパートナーとなる営業に気づかせる仕組みを築いてきました。それを活用しているハイパフォーマーのナレッジを水平展開し、全社の組織力を強化してきたことが今回の成果につながったことをうれしく思います。お客さまにとって価値ある提案活動の活性化に向けて、今後もさまざまなチャレンジをしていきます。
矢三:CXはかねてから注力してきた分野だったので、今回カスタマートランスフォーメーション賞というかたちで社外の方からも評価していただき、「われわれがやってきたことは正しいことだった。社会のモデルになりうる仕組みだった」と今後の取り組みに対する励みになりました。このまま邁進していきたいと思います。
戸松:今回のアワードでは、マーケティング組織として評価いただきました。先述の通り、営業組織としての成果はセールスがすべてです。マーケティングの役割はその舞台装置を構築すること。「お客さまの体験価値の変革に貢献できるいい舞台をつくっていますね。フィールドセールスもしっかりと踊ってらっしゃいますね」と評価いただけたことをうれしく思います。
今後はマーケティングの観点から約1億人のドコモのお客さまデータの活用をはじめ、サービス開発力の強化に注力し、セールスのクオリティも上げていきたい。これこそが競争力の源泉になるはずです。そしてOPEN HUB事業共創プラットフォームとしての実績をさらに生み出し、将来的にはBtoBマーケティング領域でジャパンベストプラクティスに選ばれることを目指していきます。
OPEN HUB
ISSUE
Coming Lifestyle
最適化の先へ、未来のライフスタイル