2024.10.25(Fri)
Smart City
2024.01.31(Wed)
OPEN HUB Base 会員限定
#41
――まずは「スマート道路灯」とはどんなものなのか、教えていただけますか?
廣瀬和則氏(スタンレー電気 以下 廣瀬氏):弊社が企画・開発した、5Gネットワークでつながった新しい道路灯です。国道や高速道路といった道路には、一定間隔で道路灯が立っていますが、「道を照らす」という単機能しかなかった従来型の道路灯に加えて、人や車両を検知するAIカメラ、温度や照度を測れる環境センサー、また光で文字や絵を照射する路面描画機なども組み込まれています。
つまり、スマート道路灯を介して、道路周辺の交通状況に加えて、人流や天候といった多様なデータを収集・分析したうえで多彩なアウトプットができるのです。そして地域一帯の「デジタルハブ」として、さまざまな社会課題を解決するために有効なデータを提供できるようになると考えているのです。
――具体的には、どんな社会課題を解決できるのでしょう?
廣瀬氏:まず、常時ネットワークに接続しているため、道路照明灯の故障、不点灯などの常時監視の「省力化」に貢献できると考えます。続いては「省エネ化」です。人流や車両の流れをセンシングすることで、人やクルマが近づいたときだけ光量を増やす、というようなコントロールができるようになります。コスト削減のみならず、環境にも優しい、インテリジェンスな道路灯の運用ができます。
さらに、今後はリアルタイムの交通量データを解析したうえで「この先で交通渋滞が起きているので、迂回したほうがいい」「路面凍結注意」「この先に倒木あり」というような情報を文字で道路に照射する路面描画機能も備えていけたらと考えています。より効果的で臨機応変なトラフィックコントロールや、安全性の確保が可能になり、交通事故防止・削減に貢献できると考えています。
道路灯はすでに日本中に配されているインフラなので、置き換えではなく既存の道路灯にデバイスを後付けし、スマート化してくことで得られるメリットは大きいと考えています。
――なるほど。このプロジェクトをNTT Comをはじめとした他企業との共創で進めることにした背景についても教えていただけますか。
廣瀬氏:弊社は道路照明や景観照明といった照明製品の開発は専門分野であり強みです。しかし、スマート道路灯に必要なセンサーやカメラの開発や接続するネットワークの検討などは自社だけではできません。
そこで、以前から取引があり、ドライブレコーダーの組み込み系システムなどを手掛ける加賀FEIさまにお声がけして、スマート道路灯に使うセンサーデバイスやエッジAIカメラなどのシステム開発をお願いしました。
――エッジAIとはどういったものでしょうか?
廣瀬氏:AIをデバイスに直接搭載し、そのデバイスで処理を行うようにするものです。動画をAIで解析する場合、ネットワーク経由でクラウドコンピューター上で行うのがスタンダードです。しかし、その方法だとどうしても処理に時間を要します。しかし、エッジAIカメラは、デバイス側で簡単なAI処理をする機能があるのです。そのため、よりスピーディーにAI解析したデータを活用できるようになるわけです。今回のプロジェクトでは、加賀FEIさんに開発いただいた新しい組み込みAIシステムを搭載しています。
――NTT Comが共創パートナーになった経緯と本プロジェクトにおける役割を教えてください。
坂田光一郎(NTT Com 以下 坂田): 先ほど廣瀬さんがパートナーとして挙げられた加賀FEIさまと弊社は、2019年ごろから共創案件を手掛ける「BBXパートナー」というパートナーシップを結んでいます。それもあって、スマート道路灯のプロジェクトについて加賀FEIさんからお声がけいただいたのです。
私どもに求められた役割は、まずネットワークやデータ流通領域の開発・運用です。具体的にはローカル5G回線による大容量データの流通、そしてスマート道路灯をはじめとするセンサーデバイス接続からのデータ収集、可視化、分析、管理を可能にする「Things Cloud®」というIoTプラットフォームサービスの提供運用です。
また、テクノロジー面だけではなく、スマート道路灯をどう事業化していくか、社会実装していくかを考えるビジネスプランニングと事業化もわれわれNTT Comの大事なミッションです。
――もう1社、ダッソー・システムズも共創に参加されています。
坂田:はい。ダッソー・システムズさんはわれわれから、お声がけしました。ダッソー・システムズさんは弊社のスマートシティ推進室が提供するSDPF for Cityのデジタルツインプラットフォーム機能提供にご協力いただいているパートナー企業です。スマート道路灯の具体的な用途を探るうえで、デジタルツイン上の都市モデルで多角的にその利活用のシミュレーションを行うことが必要と考え、参画をお願いしました。
廣瀬氏:この4社によるスマート道路灯プロジェクトは2020年に始まり、2023年2月~3月には静岡県裾野市内でスマート道路灯を活用したLED照明による路面描画でドライバーへ路面凍結の注意喚起を行う実証実験を実施しました。この実証実験を通じて路面描画機能により一定の車両の減速につながる行動変容が確認できたことから、地域の交通安全に向けたスマート道路灯のさらなる活用のため、総務省地域デジタル基盤活用推進事業に応募。「新しいソリューションアイデアの実用化に向けた実証事業」として採択され、2024年1月から新たな実証実験が行われることになりました。
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