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2023.11.02(Thu)

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「自転車」が観光業の切り札に?
しまなみ海道のDXに見るサイクルツーリズムのポテンシャル

#データ利活用 #地方創生

#34

その名が世界に知られるサイクルロード、「しまなみ海道」。広島県尾道市と愛媛県今治市を結ぶ9つの架橋の合間には8つの島が点在しており、道中では観光・滞在と自由な楽しみ方ができることから、サイクリストたちに人気のエリアとなっています。

そんなしまなみ海道のサイクリング文化を支えているのが、レンタサイクル事業を展開するしまなみジャパン。DMO(観光地域づくり法人)として2017年に設立された同団体は、現在、ナビタイムジャパン(以下、ナビタイム)とNTT コミュニケーションズ(以下、NTT Com)、ドコモビジネスソリューションズをパートナーに招き入れ、レンタサイクル事業のDXに乗り出そうとしています。その背景には、データを利活用したサイクルツーリズムがもたらすインパクトへの期待があるとのことです。DXのためのアプリケーション開発、および2023年10月からスタートした実証実験に関わるメンバーに、話を聞きました。

サイクルツーリズムを牽引してきた「聖地」のこれまで

ーしまなみ海道は、日本随一のサイクリングコースとしても知られています。まずは、しまなみ海道の歩みと現状について教えてください。

坂本大蔵氏(以下 坂本氏):しまなみ海道は、1999年に開通しました。レンタサイクルも開通と同時にスタートしていて、瀬戸内の景色を楽しみながら、自転車や徒歩でも全区間横断できることが当初から売りになっていました。とはいえ、しまなみ海道が「日本初の海峡横断サイクリングロード」として人気を博すのは、その少し後のことでした。

ターニングポイントになったのは2010年です。この年、広島県がしまなみ海道にブルーライン(サイクリング推奨ルートを示す道標)を整備し、中村時広愛媛県知事が自転車による地域振興、いわゆるサイクルツーリズムに積極的に乗り出しました。また、しまなみ海道の世界発信を掲げ、クロスバイクで有名な台湾の自転車メーカーGIANT社との連携がスタートしたのが2012年です。GIANTの劉金標会長が「しまなみ海道は、まさにサイクリングパラダイスだ」と激賞してくださったことで、しまなみの名は一躍世界に知られるようになったのです。

2014年には国際サイクリング大会『サイクリングしまなみ』が初開催され、高速道路を一部通行規制して行うサイクリングは、インフラを使った地域振興の先駆けとして大成功を収めました。経済効果だけでなく海外旅行客の誘致にも貢献し、2015年にはCNNが選ぶ「世界7大サイクリングコース」の1つにも選ばれました。

今治駅や尾道港、およびしまなみ海道沿いなどに点在するサイクリングターミナルでは、GIANT製のクロスバイクをはじめとする各種自転車の貸し出しを行っている
坂本大蔵|一般社団法人しまなみジャパン 専務理事
1980年に愛媛県庁に入庁し、中村愛媛県知事が進める自転車新文化の推進や普及拡大に携わる。定年退職後、2022年より現職。レンタサイクル事業を核としたサイクルツーリズムによるしまなみ海道エリアの地域振興に取り組む。自転車歴は31年。自転車利用環境向上会議全国委員会幹事を勤めるほか、大学や各地での講演もしながら愛媛大学大学院で自転車による地域活性化の可能性を学ぶ

今でこそサイクルツーリズムという言葉が一般に普及していますが、その端緒は2010年ごろだったように感じられます。それはレンタサイクルの貸出データにも表れています。1999年のしまなみ海道開通時には貸出台数は年間7万台でした。しかし、その後どんどん落ち込んでいきました。トイレもない、マップもない、飲食店も少ないといった具合で、サイクリングロードとしての充実度に欠けていたのです。それが改善され始めたのが、先にお話しした通り、サイクルツーリズムに取り組み始めた2010年のこと。2019年にはレンタサイクル貸出15万台、マイバイク利用者含むサイクリングロード利用者総数は34万人にまで増加しました。

自転車の貸し出しや乗り捨てができるサイクリングターミナルは、現在、しまなみ海道の全長である70kmの間に、広島県側に5カ所、愛媛県側に5カ所の計10カ所設置されています。およそ1,800台のレンタサイクルを用意していて、2022年の貸出台数は12万1,810台。2023年8月現在の貸出台数は対前年比112%ほどで、アメリカやフランスなど海外の利用者が多くの割合を占めています。コロナ禍でほぼゼロになったインバウンドが今年になって大きく巻き返し、パンデミックを経ても、依然しまなみブランドが世界的に認知されている実感がありますね。

また、近年ではサイクルツーリズムを超えて、しまなみ海道のブランディングが若い世代の移住・定住の促進にもつながっています。彼らが移り住んだ島々では、カフェやゲストハウス、地ビールの醸造販売など、さまざまなかたちでの起業も盛んです。サイクリストの行き交うところに活気が生まれ、そこに商機を感じてビジネスが起こり、生活基盤を整えていく人が増える。そんな好循環に広島・愛媛両県とも高い期待感を持っています。

しまなみ海道が抱えていた課題

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