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2026.03.04(Wed)
#87
目次
一つ目のユースケースはドローンを利用した熊被害対策の現場です。福島県西部の昭和村では2021年頃より先端的テクノロジーを積極的に活用し、過疎化や村民の高齢化による労働力不足を補おうと努めてきました。山岳での遭難事故を契機に、2025年にはドローンの活用を決定。現在は、NTTドコモビジネスとの連携によって実装導入されたSkydio社の最新型ドローンが村内で活躍しています。
1000m級の山々に囲まれたエリアだけに、この村では以前から熊対策も重要な課題でした。そして2025年秋、村内の男性が熊に手を噛まれるという事件が発生。その時の様子を昭和村・総務課の小林勇介氏はこう話します。

「警察から連絡があり、すぐさま現場でドローンを飛行させることを決めました。その時点では熊も捕獲していませんでしたし、どこへ向かったかもわかりません。そんな状況でもできることをしようと、ドローンを投入したのです」
当初は遭難者捜索など山岳救助のために活用していたドローンでしたが、これを端緒に昨今、全国的な問題となっている熊対策へも応用。通報があれば、現地でドローンによって熊の位置を確認し、猟友会や住民へ情報を共有するという流れが構築されました。
「2025年、熊対策に初めてドローンを活用して以降、熊発見の通報があったほぼすべての現場で約100フライトを実施しました。また、紙と電話だけでは限界があるので昭和村役場のサイト上に『有害鳥獣ダッシュボード』というページを設け、出没傾向の確認やデータによる分析など様々な情報が誰でも確認できるようにしてあります。目撃情報に加えて、昭和村では捕獲情報も確認できます」
活用しているドローン「Skydio X10」の性能には大変満足していると話す小林氏。とりわけ、機体に搭載された高性能サーマルカメラは熊対策において重要な役割を果たしているといいます。
「通常の可視光映像では、見えていた熊が藪の中へ入った途端、どこへ行ったかわからなくなってしまいます。でも、熱源を感知するサーマルカメラの映像では、藪に隠れた熊の位置もしっかり確認できるのです。同時に、サーマルカメラでは熊などの動物が移動する際に利用する獣道さえはっきり確認できました。この情報を猟友会へ共有することで、罠を仕掛ける一助となっています」

サーマルカメラ、安全な夜間飛行といった機能性に加え、小林氏が強調するのは「Skydio X10」の正確な自律飛行性能です。熊がどこへ行ったかを見失った状況でも、ドローンを自律飛行させて数日間、広域を探索するといった手法も実証実験で検証しているといいます。
「ドローンポート『Skydio Dock』を村役場の屋上に設置し、無人の状況下で正確な自律飛行を2025年検証しました。いざという時はPC一つでドローンを離陸させ、現場の確認に向かうといったことも可能ですし、限られたエリア内であればこのドローンポートを利用した自動巡回が可能かもしれません」

さらに昭和村ではテクノロジーの組み合わせによって村民の安全確保に努めています。山岳エリアだけでなく民家付近でも発生するようになった熊の被害。これに対応すべく、監視カメラやAIを連携させ、熊の監視を強化しようと試みているのです。
「以前、トレイルカメラを設置したことがあったのですが樹木の揺らぎなどに反応した空撃ちが多く、本格的な導入は見送りました。そこで2026年度からはAI搭載のトレイルカメラを利用し、高い精度の撮影を前提とした実証実験を行う予定です。また、これまでドローンの映像を職員が確認していましたが業務負荷になりがちであったため、独自のドローン学習モデルを作成し、AIに熊を検出させて職員の負荷を軽減する手法を構築しようと考えています」
当然ながら予定通りには現れてくれない熊への対策。事故を未然に防ぐために、自律飛行や熱源感知が可能な高性能ドローンが今後、益々活躍するでしょう。昭和村とNTTドコモビジネスの取り組みは、これからも進化を続けていきます。
二つ目のユースケースは、送電線点検のためにドローンポートを実証活用した事例です。グリッドスカイウェイ有限責任事業組合(以下、グリッドスカイウェイ)では、電力インフラの保守を省力化・高度化することを目的とし、全国共通の安全なドローン航路と自動点検の仕組みを構築中です。人々の生活や産業を守るために送電線点検は欠かせません。一方、山間部などでは保守点検に必要なマンパワー、時間、コストが課題となっています。送電線は、平時でも定期的かつ的確な点検保守を行う必要がある上、災害時などの際にも迅速な対応で電力網を守らなくてはならないのです。
「私たちは経済産業省策定による『デジタルライフライン全国総合整備計画』の一環である、『アーリーハーベストプロジェクト』に沿った活動を展開しています。具体的には、埼玉県秩父地域の送電線、静岡県浜松市天竜川水系における、180km以上のドローン航路構築を目的とした内容です。そして全国展開に向け、今後の規範となるガイドライン、仕様・規格及び実装されたドローン航路システムを公開しました。こうした航路の仕様・規格を定めて実証実験を行ったのは日本が世界で初めての事例となります」
グリッドスカイウェイの大村優樹氏はこう話します。同組合はドローン航路構築に加えて変電所巡視の効率化や有効活用に向けてNTTドコモビジネスと連携。変電所に設置したドローンポート「Skydio Dock」を活用した実証実験を実施しました。これが実現すれば、変電所内の電力網における平時の点検や有事の緊急巡視の際、ドローンの自律飛行によって安全確保ができるほか、他産業用航路との相互乗り入れによって災害対応シナリオの拡充が期待できます。

「現在、電力設備のインフラにおける点検、保全業務は複雑化してきています。増大する設備の経年劣化、作業員の高齢化や人手不足などにより、将来に向けて新たな点検業務のフローを確立しなければなりません。そこで私たちは2025年9月にまず、関西電力送配電の管内における変電所に『Skydio Dock』を設置。変電所内での巡視の有効性確認と、送電線鉄塔におけるレベル3.5(無人エリアでの目視外飛行の際、補助者などによる立入管理措置を一部省略化できる新飛行区分)の無人巡視を実施しました」

この実証では、ドローンポートから離発着した「Skydio X10」が正確な飛行、クリアな映像撮影などに成功。電力設備の保全業務において重要な役割を担えることが証明されました。
「実証によって分かった『Skydio X10』の利点は、狭い送配電設備の間をぬって飛行できる点と、磁界の影響を受けにくい点です。こうした理由から目的の設備へ安全に近づけるため、人間の目線に合わせて設置された地面付近のメーター、機器類の精密な撮影がスムーズに行えました。点検時には不可欠な夜間飛行にも対応し、設備の健全性や地崩れなどがないかといった安全確認も大きな成果だったと言えます。また『Skydio Dock』からの発着を含むレベル3.5の無人巡視も達成。往復約3kmの安定した長距離通信や送電線、鉄塔などの明確な外観映像取得にも成功しています」
大村氏は、この実証によって課題も見えたと指摘。技術面では、太陽光反射などにより映像の視認性が変動するケースや、送電設備の細部点検におけるカメラ性能の不足などを挙げました。また、LTE不感地帯の残存という課題をクリアにすることも必要だと話す一方、総体的にはドローン航路の全国展開に光明が見えたと今後に期待を寄せています。
「全国的なドローン航路構築のプロジェクトは今後も視界良好だと感じています。たとえば『Skydio Cloud API』やUTM(ドローン運行管理システム/ドローン運航者が複数いる空域でも目視外で安全運行ができるシステム)との連携による遠隔運行管理の実現に期待しています。また、ドローンポートを活用したビジネスモデルの普及、LTE不感地帯解消に向けた取り組みなどもきっと実現するでしょう。今後も私たちはNTTドコモビジネスとともに努力を続けていきます」

本イベントでは、NTTドコモビジネスとパートナーシップを結ぶSkydio合同会社(以下、Skydio社)、エアロセンス株式会社(以下、エアロセンス社)のドローンメーカー2社も登壇し、機体性能や日米の制度比較、海外での導入事例などが紹介されました。

Skydio社は機体「Skydio X10」、ドローンの自律飛行発着の起点となるポート「Skydio Dock」の機能解説と実機を展示。また、同社は本社のあるアメリカのサンフランシスコ警察での活用事例なども紹介。ドローンポートと監視カメラ、車両番号認識システムを連携させ、事件発生時に自動でドローンを発進させる運用について解説を行いました。またドローン導入を検討する多くの事業者にとって課題である「電波断による飛行中断リスク」についても解決手法を提案。都市部や遮蔽物がある環境でも安定した制御が可能となるよう、コントローラーと機体の直接通信に加え、LTEを組み合わせることで通信を安定させる技術が話題を呼びました。

エアロセンス社は、VTOL型機体「エアロボウイング」の機能、用途を軸に解説を展開。垂直離発着やリアルタイムでの映像確認が可能なVTOL型機体は、河川、鉄道、送電線など長距離飛行を要するインフラ測量、点検などに適しているほか、沿岸における密猟監視などにも活用できる機能性が強調されました。加えて、長距離飛行と上空LTE通信の役割にも言及。直接通信の実用距離を超える長距離飛行には、上空LTE通信の活用が不可欠であることも示されました。常磐道上空での実証では往復約20kmをVTOLで飛行し、NTTドコモビジネスの上空LTE通信サービス「LTE上空利用プラン」の活用によってルート全域での安全、安定した通信を確保したことが紹介されました。

当日は、イベント会場となった大手町の「OPEN HUB Park」と横須賀の研究開発拠点を結んで実機のデモ飛行も実施。東京の会場に据えたPCからリアルタイムで遠隔操縦し、横須賀で離発着するドローンの自動飛行ミッションや手動介入の様子を紹介しました。通信にはLTE上空利用プランと地上アンテナを組み合わせたフュージョン方式を採用。遠隔操縦でもほぼ遅延なく、可視光、サーマル双方の同時撮影画像が送られてくる状況を東京のイベント会場で共有しました。


※本記事では紹介しきれなかったイベント内容や、「docomo sky」のサービス詳細をご理解いただけるアーカイブ動画は、下記のオンデマンド配信からご覧ください(視聴には無料の登録が必要です)。
https://openhub.ntt.com/event/16196.html
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