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2025.07.09(Wed)
Hyper connected Society
2025.11.28(Fri)
#83
目次
イベントの冒頭では、NTTドコモビジネス5G&IoTサービス部 担当課長の高田啓介が登壇。現在の建設現場が抱える課題を捉え、それらの解決策として、360°カメラやドローンを活用したデジタルツインプラットフォーム「CupixWorks」の概要を紹介しました。
建設業界ではAIやドローン、BIM/CIM※などのデジタル技術を導入する取り組みが進められているものの、課題解決の道のりはまだ半ばです。例えばプラント(大量生産・加工のための大規模施設)では、現場からの報告と実態が乖離しており、あらためて確認が必要となるケースが散見されます。建設現場で3Dスキャナなどを利用する際も、撮影に時間を要してしまう問題が浮上しています。また施設の維持・メンテナンスでも、図面が古すぎて事前の現場の導線確認が困難、といった問題が発生していると言います。
※BIM/CIM:建設において、計画や調査などの段階から3Dモデルを活用し、その後の施工や維持管理のフェーズにおいても3Dモデルを用いることで、情報共有の効率化や生産性の向上を図る取り組みのこと。
「そこでより効率的な現場管理を実現するために求められるのが、遠隔から誰でも簡単に現場のあらゆる情報を収集し、確認できる仕組みです。これを実現する手段として、『デジタルツイン』が注目されています」と高田は語ります。

デジタルツインとは、リアル空間から収集したデータをもとに、バーチャル空間上で詳細に分析していく技術です。NTTドコモビジネスは、グローバルな視点でさまざまなソリューションを調査・検討した結果として韓国に本社を持つCupix社と提携。2024年3月より日本総代理店となり、「CupixWorks」の提供を開始しています。
「Cupix社は、独自の優れた技術力に加え、日本の建設事情を理解したスタッフが多く在籍しており、日本市場に合わせた機能改善が柔軟に行われる体制面も高く評価しています」
と語られたとおり、Cupixは米国のコンサルティング会社が選定した建設業界の『トッププロダクツ2022』を受賞するなど、業界でも注目が高まっています。パノラマビューのようにバーチャル空間を移動しながら施工現場を確認できる3Dウォークスルー機能、360度カメラで撮影した動画からの点群データ※生成、設計段階のBIMデータと現場から取得した実態データの比較・重ね合わせ、AIを活用した自動進捗管理、オルソ画像生成などは、CupixWorksを代表する機能です。
※点群データ:空間の形状などを無数の点で表現した3次元データのこと。


「CupixWorksは建設現場のDXを推進し、現場管理や進捗把握、維持管理の効率化に大きく貢献します。NTTドコモビジネスはこのCupixWorksを中心として、通信、セキュリティ、ドローンまで、日本市場に最適化したソリューションをワンストップで提供し、建設業界の課題解決を支援中です」
次にCupixWorksの活用企業の一つ、竹中工務店の錦古里洋介氏が登壇。建築現場における生産性向上を目指した取り組みを紹介しました。同社の建設現場では、かねてより写真が視覚情報として非常に重要な役割を果たしています。
「2000年頃からデジタルカメラが普及し、写真を用いて指示伝達する場面が急速に広がりました。さらに2015年前後からはiPadなどのタブレット端末が施工管理へ本格的に導入され始め、現場担当者が写真に直接指示を書き込み、その情報を関係者間で共有するといった運用が一般化していきました。弊社の施工管理では年間約1億枚もの写真が撮影・活用されているという報告もあります」

しかし、せっかく多くの写真が撮影されているにも関わらず、利用が刹那的で個人に留まるという課題があります。写真を撮った位置や状況は撮影者本人しか把握しておらず、他のメンバーが過去の写真を再利用するのが難しいのです。その意味で写真を用いた建設現場の管理手法は、まだ過渡期にあります。この課題を解決するため、同社はCupixWorksに着目しました。
「近年、360度カメラを活用した建築現場の施工管理が急速に進展しています。CupixWorksを用いれば、全方位動画から写真を自動で切り出せます。撮影時刻や場所も登録されるため、従来のような手作業での仕分けが不要です。また、写真から抽出した空間/寸法情報とBIMとの連携によって実現するデジタルツインは、サイバー空間で現実空間を管理する建設DXへの足掛かりになると考えています」
例えば同社の東日本管轄で行われた大規模工場の建設現場では、約20カ月にわたり関係者全員でCupixWorksを活用し、巡回と同時に撮影した写真を毎日共有しました。
「若手を中心とした施工管理者が交代で撮影を担当したのですが、最終的には自発的にカメラを持ち歩くようになりました。CupixWorksによって、同じ視点からの写真を時系列で大量に取得することができ、進捗管理や状況把握の精度を高められました。工夫したのは、会議室に大画面とPCを設置し、誰でもすぐにCupixWorksを活用できる環境を整えた点です。現在はプロジェクト終了後もその財産を後世に残すべく、撮影情報を恒久利用できる仕組みを考えていただけるようお願いしているところです。」

また、西日本管轄で行われた事務所ビル建設プロジェクトでは、CupixWorksのSiteInsight機能とBIMモデルの連携を行いました。
「天井裏に設置された複雑な設備機器/配管の“有る無し確認”を実施しました。BIMモデルと現場を歩きながら撮影した写真を元に空間情報を照合して、施工/未施工箇所を自動判別するSiteInsight機能を活用し、設備担当者が建設現場の進捗管理を行うものです。この結果、複雑に重なり合った部材についても、思った以上に精度の高い数値が得られることを確認できました。また、BIMモデルと写真を横並びにすれば教育・研修目的でも活用できます」

さらに同社はCupixWorksのオムニノートやアノテーション機能を用いたコミュニケーション/タスク管理も行っており、指示やスケジュール管理の精度を向上しています。
こうした成果から同社はCupixWorksについて、建設工事におけるDX化/デジタルツインを実現する有効なアプリケーションと評価しており、今後もユーザーとしてさらなる活用をしていきたいと考えています。
続いて、CupixWorksの施工管理における活用事例として、丹青社の松山新吾氏と藤﨑亮氏の二人が登壇し、同社におけるBIM活用の取り組みとともに、CupixWorksを活用した現場調査および管理の具体的な手法を紹介しました。
「空間から未来を描き、人と社会に丹青(いろどり)を」という理念のもと、内装ディスプレイ大手の丹青社はグループ会社と一体となり空間づくりのプロセスを一貫してサポート。商業空間、パブリック、イベント、ビジネス、文化空間など、幅広い分野でビジネスを展開しています。
この事業において現場の現状を把握することは、業務をスムーズに進める上で何よりも重要な取り組みであり、調査の質が現場の善し悪しを左右します。そうした中で注力しているのがBIM活用です。
「弊社は独自の『丹青BIMプラットフォーム』を構築し、設計から施工、運営までのすべてのフェーズでBIMデータを活用しています。3Dモデルとデータベースを基盤に、設計段階では点群データによる測量やジェネレーティブデザイン※を活用。データマネジメントによる干渉チェックや、クラウド共有による情報の齟齬防止、設備更新時の資料活用、データ分析による運用方法の検討など、多角的な活用を進めています」(松山氏)
※ ジェネレーティブデザイン:AIやアルゴリズムによって自動生成されたデザインのこと。

まず紹介されたのが、現場調査における活用です。同社は独自に導入した3Dスキャナを活用し、点群撮影を行っています。
「現場の現状を把握するため、図面の有無やBIMモデルの有無を踏まえつつ、点群データを活用しています。点群データとBIMモデルを統合し、既存図面と現場の不一致を事前に把握し、適切なモデル修正。照明や空調設備なども点群に合わせてモデル化し、精度の高いデータ取得を実現しています」(藤﨑氏)
加えて360度アクションカメラを用いた現場撮影も行い、点群データと併用することで現場調査の回数や人数を削減。さらにCupixWorksのオムニノートによる撮影時にはスマートフォンカメラも活用し、分電盤やPS内部など細部の記録を容易に行っています。「これらの撮影履歴はすべてCupixWorks内に残り、その後の表示や管理も簡単に行えて便利です」(藤﨑氏)

次に、現場管理での活用が紹介されました。こちらでも360度アクションカメラを活用し、着工前後のデータを比較しています。
「自撮り棒を使って現場巡回しながら撮影したデータを、CupixWorksでデジタルツイン化して管理しています。フォトグラメトリ※による点群化から寸法や面積を抽出することも可能で、現場管理を効率化できています。また、これらのモデルデータはCupixWorks上で設備・構造・建築ごとに分けた表示・非表示が可能なため、設計内容との比較も容易です。空調設備の干渉などの問題も事前に解決すべく、BIMデータからリアルデータへの移行も進めています」(藤﨑氏)
※フォトグラメトリ:2次元の写真データから3Dモデルを生成する技術のこと。
そうした取り組みの末、同社は現場空間を撮影した点群データをオフショアでモデル化ならびに図面化し、さらには協力会社が作成した意匠・構造・設備モデルも統合する「総合モデル」を構築するに至りました。

「CupixWorksと連携した360度ビューで現場管理・設計管理を同時に行い、VRやViewerコンテンツなどを活用した多様な展開を検討中です。この総合モデルから外形寸法データを抽出し、3D CADを介して工場と連携する取り組みも進めています」(松山氏)
このようにCupixWorksは現場の進捗管理だけでなく、現場調査をはじめ、設計計画時の空間把握にも有効であり、幅広い関係者との“共通言語”となります。同社はこのメリットを今後も最大限に活用し、さらなる業務効率向上を目指していく方針です。
クロストークのセッションでは、CupixWorksの活用事例を発表した竹中工務店の錦古里洋介氏と、丹青社の松山新吾氏がふたたび登壇。NTTドコモビジネス 高田のファシリテートのもと、さまざまなテーマについて意見を交わしました。
「競合ツールと比較しての所感」のテーマでは、丹青社の藤崎氏は次のように語ります。
「他社のツールと比べて、現場の負担が非常に少ないと感じています。ツールの操作や準備に手間がかかると、どうしても現場の方々には使ってもらいにくくなりますが、Cupix社のツールはその点の心配がほとんどありません。また、360度アクションカメラでのデータ取得においても、一般的にカメラの向きを意識する必要がありますが、このツールは、向きを気にせず撮影できるため、非常に使いやすいと感じています」
これを受けてNTTドコモビジネスの高田は、以下のように語りました。
「Cupix社のツールは、UIを含め日本の利用者を意識した設計になっており、その工夫が現場の方々にもしっかりと伝わっているのだと思います。一方で、建設現場向けソリューションの分野は開発スピードが非常に速く、機能のアップデートも継続的に求められます。だからこそ、導入後の“使いこなし”の段階で、NTTドコモビジネスとして丁寧にサポートしていくことが重要だと考えています」
こうしたツールの活用が進む一方で、建設業界全体としてのデジタル化は、いまだ発展の途上にあります。その現状と今後の見通しについて、竹中工務店の錦古里氏は次のように指摘します。
「デジタル化の必要性については以前から指摘されており、業界の誰もが同じ方向を向いて将来性を感じていると思います。ただ、その浸透には時間がかかるのが現実です。新しいツールが定着するまでには5年、10年という年月を要するもの。だからこそ、一つひとつの成果を積み重ねながら、有用性を示していくことが大切だと考えています。」

そして最後のセッションでは、Cupix Inc. 東アジアセールスチームのイ・ジョンウォン(Alan Lee)氏が登壇。「Cupixが考える建設現場のこれからとは?」と題する講演を行いました。
イ氏はCupixWorksの主要機能を紹介するともに、計画・設計段階から施工段階、引き渡し・試運転段階、運用段階に至る建築物のライフサイクル全体を包括した、オールインワンのソリューションで新たな価値を提供していくビジョンを語り、「Cupixと一緒に建設現場の未来を描いていきましょう」と呼びかけました。

本記事では紹介しきれなかった講演内容については、記事下のバナーからオンデマンド配信をご視聴ください。また、CupixWorksの詳細やお問い合わせは、下記のNTTドコモビジネス「CupixWorks」サイトをご参照ください。
■NTTドコモビジネス「CupixWorks紹介サイト」
https://www.docomosky.jp/cupix/
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