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2025.07.16(Wed)

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ゼロカーボン日本酒をめぐる、地域の価値循環とブランド創造

#75

2025年5月10日、山形県の飯豊町にある若乃井酒造株式会社(以下、若乃井酒造)がゼロカーボン日本酒を発表・発売しました。ゼロカーボン日本酒の商品化を実現したのは、環境負荷を抑えた米づくりを実践する農事組合法人 沖のカモメ(以下、沖のカモメ)、その米づくりの環境価値を証明し、カーボンクレジットの認証をサポートするNTTドコモビジネス、そしてプロジェクトを推進する飯豊町役場の地域活性化企業人および地域おこし協力隊です。

2020年にゼロカーボンシティ宣言を発表し、脱炭素化を進める飯豊町を舞台にくり広げられる、ひとつの商品づくりを巡るプロジェクト。それぞれの思いや目指す未来について、総務省の認定する「地域活性化起業人」として飯豊町ゼロカーボン推進プロジェクトマネージャーを担う城戸忠之氏、地域おこし協力隊として飯豊町に来て、今では脱炭素事業の会社を営む小野優太朗氏、若乃井酒造の代表取締役 大沼秀和氏、沖のカモメの米づくりを担う武田親祐氏、NTTドコモビジネスでカーボンクレジット事業を推進する藤田航平に話を伺いました。

「サステナブルなお酒」を、地域での価値循環に

――今回、飯豊町でゼロカーボン日本酒をつくるプロジェクトが発足した経緯についてお聞かせください。

城戸氏:飯豊町では人口減少が進んでいますが、年間約13億円のエネルギー代金を町外の電力会社に支払っていて、その半分ほどが電気代です。これを地産地消で賄えるようになれば、6〜7億円を地域振興などに活用できるという発想のもと、一昨年くらい前から脱炭素化を通じた循環型社会づくりへの機運が高まっています。環境省の脱炭素先行地域という事業へのチャレンジを始め、第6回の応募で採択されました。バイオマス発電など、いろいろな施策を企画書に入れる中で、「お酒もあるよね」という話になり、ゼロカーボンのお米をつくり、山形らしい日本酒によって地域のブランドを高めるというアイデアを盛り込んだところ、高い評価を得ることができました。

城戸忠之氏|地域活性化起業人 飯豊町ゼロカーボン推進プロジェクトマネージャー

小野氏:ゼロカーボンのお米というのは、地域の畜産から出てくる肥料を使って田んぼをつくり、さらにその田んぼでメタンガスの排出も削減できる手法でつくられるお米のことです。この手法については農林水産省が、夏に田んぼの水を抜いてヒビが入るまで乾かす「中干し」期間を直近2年間の平均より7日間延長することで、メタンガスの排出を抑制することを、温室効果ガスの排出削減活動として認証し、カーボンクレジットとして市場で売買もできる「J-クレジット」の制度をスタートさせました。これによって、地域でさらに価値を循環させることができるのですが、認証を受ける方法がわかりませんでした。そんな時、NTTドコモビジネスさんが、「J-クレジット」認証のサポートをしていると聞き、私の大学の後輩を通じて藤田さんを紹介いただきました。

藤田:NTTドコモビジネスではこれまで約200の生産者さんに、「J-クレジット」の認証サポートを行ってきた実績があります。カーボンクレジットの推進を通じて、一次生産者さんと地域おこしの活動を連結させ、地域の価値創出、また若者の農業への関心を高めることにも貢献したいと思っています。

飯豊町のプロジェクトでは、生産者である沖のカモメさんから田んぼの写真や位置情報などを送っていただき、それを私たちが認証機関へ通せるように整え、デジタル化して送信する認証サポートを担っています。これによって、沖のカモメさんにはクレジットの売却益という価値を還元できます。一方、このお米を使って日本酒をつくる若乃井酒造さんは、製造工程においてなるべく再生可能エネルギーを使っていきますが、ボイラーや重油も使わざるを得ず、そのままでゼロカーボンの日本酒を名乗ることはできません。そこで、沖のカモメさんの取り組みによって発行されたカーボンクレジットを購入することでオフセットし、環境に配慮したゼロカーボン日本酒という訴求力の高い新酒を発表することができるというのが、プロジェクト全体のスキームになっています。

藤田航平|NTTドコモビジネス ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部 デジタルイノベーション部門 第四グループ

地域の生産者が、ゼロカーボンに挑む理由

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