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Coming Lifestyle
2024.04.03(Wed)
目次
——コロナ禍にあらゆる企業でDX(デジタルトランスフォーメーション)が推進され、それによりデータの集積が可能になりました。現在はデータをどう利活用するのか、という課題が生じています。
伊藤優(以下、伊藤):DXは大きく2つの側面があります。1つは業務効率化のため、もう1つが新規事業創造のためです。マーケティングソリューションは、顧客企業の事業戦略を起点に考えていくことが重要です。データというのは顧客理解、つまり顧客企業が気づいていない課題や顧客企業のクライアントを理解するために利用するもの。
DXやデータ利活用でボトルネックになりやすいのは、データを収集、整理、利用という3点です。データの利活用を検討していても、実は顧客データと自社のツールが連携していない、データ基盤が構築されていなくてデータが取れていないといったケースも少なくありません。
川口昌宏(以下、川口):その点でいうと、NTT Comはインフラ基盤やネットワークといった資産(レガシー)があるので、マーケティングの基盤構築から支援できることが大きな強みです。また、データ基盤を構築した場合であっても、蓄積した自社データのみで経営課題を解決し、顧客理解を深化することは難しい場合もあります。「お客さまが普段どういった消費行動をされているかわからない。誰が広告を見ているのかわからない」とおっしゃるマーケティング担当者の方も少なくないのが現状です。
そこでご提案しているのが、約9900万人のdポイントクラブ会員のデータ(以下、ドコモデータ)を利用したファンプロファイリング分析や商圏/人流分析です。特に、位置情報などのドコモならではの行動データは、大きな可能性を秘めています。従来のネット調査やアンケートでは収集できない、オンライン・オフライン横断のデータを活用することによって、ユーザーの潜在的なニーズや深いインサイト分析を行い、施策のご提案や示唆だしが可能になります。
伊藤:もう1つNTT Comさんの特徴を挙げるとすれば、ユーザーへの体験価値の還元を行っていることだと思います。従来のデジタルマーケティングの課題としては、ユーザーから見ると自分のデータがどこで収集されて、どう使われているのかが見えづらいという課題がありました。その不安から、データを預けないという選択肢をされるユーザーもいます。その点、何十年も通信技術の安全性を追求してきた企業への安心感はもちろん、データを預けたことでどういった体験に生かされているかをNTT Comさんはメディア(広告メディア)を通じて伝えておられます。
川口:昨年開催されたForbes Xtrepreneur Awardにおいても通信技術やセキュリティといったNTT Comのレガシーを活用した案件が評価を受けていますが、長年にわたる経験とノウハウにより、リスクとコストのバランスをとったセキュリティ対策と合わせて、マーケティング基盤を提供していると自負しています。ドコモデータに関しても、もちろん個人が特定できないような形で活用しています。
ユーザーへの体験価値という観点から見た、ドコモデータの最大の特徴が「予兆」です。例えば、あるユーザーが不動産サイトをよく閲覧している、もしくは住宅展示場によく行っているというデータを使うことで、「引っ越しする可能性が高い」と予兆を感知し、家具やインテリアのクーポン、特典情報をドコモから配信することで、効果的な購買促進を行うことができます。引っ越し以外でも、出産や転職などのライフスタイルやライフステージの変わり目を予知できるような、データのセグメントを持っています。
これにより、マーケターは「今から起こり得ること」に対しての施策、つまり今までにないアプローチが可能になります。ユーザーにとって欲しいタイミングで欲しい情報が届く——これが我々の強みであり、顧客体験の向上に直結するものだと思っています。
——欲しい情報がリアルタイムで届くリアルタイムマーケティングのほかに、顧客体験の向上にはどんな施策が考えられますか?
川口:NTT Comがご支援したJRM(ジャパンラグビーマーケティング)さまを例に説明します。日本のラグビーファンを増やすという目的のもと、プロモーションとロイヤルカスタマー育成を実施するため、セキュリティを担保した上で、行動情報を取得するデータ基盤を構築するという案件でした。当初は、ユーザーが使うチケット購入サイトのIDや、ファンクラブ会員IDなど各サービスサイトのIDの統合がされていない状況でした。そのため、ID統合と合わせて、統一されたIDで蓄積されたデータを分析、可視化するデータ基盤を使い、ドコモデータと連携してマーケティング施策の実施に活用していく予定です。
伊藤:会員基盤が統合されていないのは、他社でもよくあるパターンです。本来なら統合IDで囲んだすべてのユーザーをファンの母集団と考えたほうが、マーケティングの解も出しやすい。ユーザー側もID管理のストレスが付きまとうので、統合することによりさらにサイトの定着率も伸び、顧客体験も向上すると考えられます。ただし、こうした動きは日本企業ではプライオリティとして高くない部分でもありますね。
川口:基盤統合・ID統合といった大規模なチャレンジは、経営者層の意思決定が必要です。実際にデータマーケティングを取り入れるメリットは多く、顧客エンゲージメント獲得や、施策が頭打ちになっていることの分析もできます。顧客基盤に蓄積したデータから改善方法を検討でき、顧客体験の価値向上のベースができます。ここが今、当社がマーケティングDXを提供する意義であり、相乗効果を出せる部分です。
そしてもう1つ、「正解データ」を活用したケースがあります。
伊藤:正解データとは、「予兆」した人が実際に購買したというデータですね。これを持っているというのはマーケティングにおいて圧倒的な強みです。今までマーケターが予想しかできなかった部分が、確実なデータとなっています。
川口:それを活用したのが、「福島県浜通り地域での来訪者による消費促進事業」です。この目的は同県の浜通りの来訪者の呼び込みと域内における消費拡大。そのため過去に浜通りに来た人を正解データとしてプロファイリングを実施。「60歳代、東京都在住、旅行・グルメサイトをよく閲覧している人」など、ペルソナの解像度を上げて類推拡張し、dポイントクラブ会員の中から対象者を抽出。対象者には浜通り内加盟店でのdポイント還元キャンペーンの案内を配信しました。
キャンペーン期間終了後は、取得した人流データを計測。それを複数年繰り返し実施し、効果は出ていますが、来訪者数の限界も見えてきました。次のアクションでは、ターゲットを変えたり、福島県近隣まで来ている人に周遊で足を運んでもらうような施策をしたりと打ち手を変えた提案も継続していきたいと考えています。
伊藤:データ利活用だけでなく、継続した活用と分析が大事だとわかる事例ですね。長期的に携われば、一部のデータが一過性か否かを判断できますし、データのポイントを押さえた上で次に進むことができます。それも購買事実という今までマーケターが確証を持てなかったものを、データとして持っているから可能になったことです。
——データのセグメントが、従来に比べてより細分化していますね。
川口:そうですね。昔の「50代/男性/既婚」といったセグメントはもう古く、たとえば「50代男性/平日は大手町で勤務し、土日はゴルフに行くことが多い/もうひとつの趣味は料理」といった、より細かなペルソナを立てることが求められています。ここに対しても、ドコモデータでは約400種類ほどの会員セグメンテーションを作り、個々の課題にベストな送客パネルを作ることが可能です。
伊藤:ペルソナの解像度を高くすればするほど、顧客にとっても欲しい情報が自動的に手に入り、win-winの関係を作ることができます。今、ユーザー側にはまだ個人データの活用に抵抗がある人も多いかもしれませんが、実際に購買がスムーズかつお得になるような実感が得られれば、新しいアプローチも受け入れやすくなります。NTT Comさんのようなセキュアな企業にデータが蓄積し、その蓄積したデータによってさまざまな企業が新しいアプローチをし、より顧客体験が向上する。このループを目指していきたいです。
川口:これまでは基盤構築を主としてきたNTT Comですが、グループ再編により、データを利活用したマーケティング支援業務まで可能になりました。冒頭でもお伝えしましたが、もともと主要事業として来たこともあり、データ収集のための基盤統合など、課題を解決するための基盤構築からご支援できることが強みです。
また、ネットリサーチやマーケティングコンサルティングを行うインテージがグループ企業になったことで、調査・分析から基盤構築、プランニングまで、幅広い提案ができるようになりました。また、OPEN HUBでは会員向けにマーケティング分野の勉強会も開催しています。これをもって、さまざまな企業とご一緒させていただき、その先の新たな商品開発や、販売店や物流の活性化にまで繋がるような未来を目指していきたいと考えます。
NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部事業推進部、マーケティング部門 担当課長
川口 昌宏
NTTドコモにて自動車営業および自動車メーカーへの出向など、20年以上法人ソリューションに従事。現在はモバイル分野におけるビジネスプロデュース担当としてBBX案件に数多く携わる。ドコモの会員・顧客基盤データを使ったマーケティング支援や、データ利活用コンサルティングに従事し、クライアントのマーケティングDXを推進する。
サイバーエージェント リスキリング事業責任者
伊藤 優
新卒採用部門にて採用及び新卒育成を担当した後、一貫してAI・DX事業に従事。小売業に向けた新規事業の立ち上げやDX支援、広報/PRを担当。2023年に法人向けリスキリング支援を行う子会社株式会社CAリスキリングパートナーズを立ち上げ、代表取締役社長に就任。現在は別子会社の株式会社AI Shiftに事業統合を行い、リスキリング事業の責任者を務める。
Promoted by NTTコミュニケーションズ / text by Nayu Kan / photographs by Yoshinobu Bito / edited by Kaori Saeki
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