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vol. 15

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循環はここまで来た。身近になりゆくサーキュラーエコノミーのトレンド

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これまでの経済活動のなかでは廃棄されていた製品や原材料などを資源と捉えて活用し循環させる「サーキュラーエコノミー(循環型経済)」。持続可能な社会の仕組みづくりの根幹となる概念、取り組みとして大きな注目を集めています。

ここでは、サーキュラーエコノミー先進国であるオランダの事例を中心に、循環の仕組みをつくり出している建築やプロダクト、イベントを紹介します。

生まれ変わりが想定された商業施設

日本の建物の平均寿命は30年と言われ、50年以上が平均とされる欧米諸国と比較して短いとされています。その理由は地震大国であるということはもちろんですが、資金を循環させるフロー型というモデルが浸透していることも大きな要因の一つです。そうしたスクラップアンドビルドの建築方式からの脱却を目指す上で、モデルとなりそうなプロジェクトを紹介します。

アムステルダムのビジネス街に位置する、CIRCLと呼ばれるその建物は、オランダの銀行ABN AMROが2017年に建設したパビリオンです。銀行の従業員だけでなく誰でも入館が可能で、イベントスペースや巨大なカンファレンス会場、レストラン、バー、ルーフトップガーデンなどが併設されています。一見よくある商業施設のようですが、実は地球環境へのインパクトを最小限に抑えるよう、持続可能性と循環の原理のもと設計されています。

例えば、建材はアムステルダムで解体されたほかの建築物から集めたものを再利用しており、断熱材は銀行の従業員が寄付した16000本のデニムが、防音材は同じく従業員の古いユニフォームが原料になっています。そのほかには、古い冷蔵庫を素材にして3Dプリンターで成形された椅子や、段ボールでつくられたカフェテーブル、動物愛護に配慮したレザーソファーなど、建物内のあらゆるインテリアも環境と循環を意識したものになっています。

さらに重要なのは、解体時の環境負荷を最低限にすることも考慮されている点です。例えば、CIRCLの建材に使われている木材は、解体後でも使いまわせるよう、加工を最小限にしています。また館内のエレベーターはリース契約のものを使用しているので、解体時に廃棄されることはなく、エレベーター会社によって回収されます。

誰にでも開かれたオープンスペースであるCIRCLは、働き、学び、食事をし、集まることのできるスペースです。 巨大投資銀行が作ったビジネス街の中心にある建物が、そこに来る人々に何を訴えるのか。 その真意は、名前にコピーライト(商標マーク)を付けず、「right to copy(コピーする権利)」を標榜するその姿勢からも読み取ることができそうです。

ユーザーが修理できるスマートフォン

私たちの生活には欠かせないスマートフォンですが、買い替えの際に不要になった機器の多くは捨てられているのが現状です。実際、日本のスマートフォンのリサイクル回収率は17%と非常に低く、このままでは機器に内蔵されているレアアースやチタンといった枯渇性資源は2050年までになくなると言われています。また別の問題として、こうした資源は紛争地帯や児童労働によって生産されることが多いのが現状です。

こうした問題を解決するため、オランダのFairphoneは、できるだけ長い期間使うことができるスマートフォンを開発しました。最大の特徴は、パーツの交換が誰でも簡単にできる点で、外装からカメラ、スピーカーまで、ほぼすべてのパーツが取り替え可能な上、公式サイトから簡単に購入できます。また、基盤などに使用される金はすべてフェアトレードで取引されており、筐体はすべてリサイクルされたマテリアルでできているという徹底ぶりです。

Fairphoneは、従来のスマートフォンは「利用」目的で作られており、「再利用」について考慮されていないことに疑問を投げかけます。手のひらから世界中の情報へのアクセスを可能にしてくれるスマートフォンですが、それができるまでの工程や使用後の行き先を振り返ると、2〜3年という寿命はあまりに短すぎるかもしれません。パーツの交換によって延命を可能にし、パーツ自体も循環型のものであることで、再利用のサイクルはより完成されたものになります。Fairphoneのスマートフォンに約束されている5年間の保証は、再利用への強い覚悟の表れです。

世界で一番「循環してる」フェス

持続可能な社会をつくる取り組みは、国や企業といった大きな取り組みから、家庭でできる小さなことまでさまざまです。もちろん音楽フェスティバルのようなエンターテインメントも例外ではありません。アムステルダムで開催されている『DGTL』は、「世界で最もサステナブルなエレクトリック・ミュージック・フェスティバル」です。資源、エネルギー、移動手段、食、下水設備まで、すべてを無駄なく循環させることで、主催者が掲げる「サーキュラーフェスティバル」を実現しています。

例えば、会場には駐車場が用意されておらず、来場者たちは電車などの公共交通機関で移動せざるを得ません。また、自宅から会場まで、どれほどのエネルギーを使ったかを示すフットプリントを計算するサービスも提供しており、移動にともなうCO2排出を実感させる取り組みも行っています。

一方、出演アーティストについても、なるべく自国のアーティストを招待するようにしています。他国からアーティストを呼び寄せるのではなく、DGTLを世界各地で開催することで、アーティストの移動によって排出されるCO2を減らしているのです。2022年にはアムステルダムのほかに、テルアビブやムンバイ、バルセロナなどでも開催を予定しているそうです。

DGTLは、フェスティバルの運営における資源の流れを分析、可視化したマテリアル・フロー・アナリシスを公開しています。資源と廃棄物を定量化しデータとして活用することによって、環境負荷の大きいポイントを特定し、対策の立案、運用が可能になります。こうした取り組みを通して、2021年にはすでに化石燃料フリーの運営を実現しています。今後、さらに高水準な取り組みを目指すDGTLは、サーキュラーフェスティバルのフロントランナーとして進化していくことでしょう。

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