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vol. 04

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“おつとめ品”がなくなる? 6つの先進事例から学ぶフードテック最前線 後編

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人々が食を通じたウェルビーイング実現を求める一方で、世界では食糧危機の到来と膨大なフードロス改善が同時に叫ばれています。私たちの生きる糧であり、楽しみでもある食は、今後どのような進化をたどっていくのでしょうか。来るべき新しい食生活の未来像を描く、最新のフードテックプロダクトを紹介します。

鮮度を値段で可視化し、食品ロスを削減

夕方のスーパーに並ぶ「見切り品」や「おつとめ品」。なるべく廃棄を減らすために価格を下げて販売しているものですが、鮮度に不安を感じたり、パッケージに貼られた「おつとめ品」のシールに恥ずかしさを感じて購入を避けたりする人もいるでしょう。

イスラエルの企業が開発した「Wasteless」は、賞味期限ごとに価格を変動させることができるシステム。棚に新鮮な商品と賞味期限が近い商品がある場合、価格表示カードに定価と割引の2つを表示させる、というシンプルな仕組みです。客は価格と賞味期限の両方を比較し、もし消費可能だと判断した場合は定価より安い方を選択できます。もちろん「おつとめ品シール」は貼ってありません。

このシステムは、バックヤードでも活躍します。レジのPOSシステムを連携させることで、棚の商品補充が必要な場合は補充のアラートもしてくれます。

このシステムを導入することで、客はお金の節約ができ、店舗側は廃棄の削減と販売利益の確保、そしておつとめ品シールを貼る作業がなくなります。なるべく新鮮なものを買いたい人がいる一方で、食品ロスをなくしたいと考える人もいる。Wastelessは、さまざまな考えの人に対してストレスなくサステナブルな購買体験を提供してくれるソリューションです。

乾燥地で野菜を栽培するソーラーシステム

山奥や砂漠などの水道インフラが整っていない土地では、必要最低限の水や食料が十分確保できずに苦しんでいる人々が少なからず存在しています。そうした状況に対して、空気に含まれる水分を凝縮して野菜を栽培する研究がサウジアラビアで行われています。

『Cell Reports Physical Science』誌で発表されたレポートでは、キング・アブドラ科学技術大学の研究チームが空芯菜の栽培に成功。サウジアラビア特有の灼熱の6月に栽培されたにもかかわらず、57粒の種から2週間でおよそ18センチの苗が育ちました。

砂漠地帯の湿度は夜間に80%程度まで上昇し、日中に40%まで下がります。研究チームはこの自然のサイクルを利用して、まずは夕方から夜にかけて、ヒドロゲル(水分をゼリー状に固めるゲル)を使って空気中の水分を収集。集めた水分はソーラーパネルを通して入ってきた日中の熱によって蒸気となり、金属製の容器の中で再び水に変化し保存されます。今回の研究では、少ない水量でかつ短期間で栽培できる作物として空芯菜が採用されました。研究チームによると、この技術は水を大量消費する米やサトウキビなどの作物には向いておらず、また、飲料水として利用する場合は定期的にミネラルを追加する必要があるのだとか。それでも、この研究によって水の供給が乏しい乾燥地帯で作物を栽培できる可能性がひらけてきたことは間違いありません。

未来都市のバーテンダー

Cecilia.aiのウェブサイトより

コロナ禍以降、外食産業では非接触式の接客システムの導入が進んでいます。料理やドリンクをサーブし会計をするだけであれば、配膳ロボットやセルフレジで対応できます。では、スタッフとのコミュニケーション自体が楽しみのひとつであるバーのような場所ではどうでしょうか。

イスラエルの企業が開発した「Cecilia.ai」は、気の利いた会話も心得たバーテンダーロボット。マシンの前に立つと、バーチャルバーテンダーのセシリアが注文を聞いてくるので希望のドリンクを告げましょう。注文が決まっていないときは、おすすめを尋ねればジョークを交えて気さくに応じてくれます。注文は音声認識で、決済はもちろんキャッシュレス。接客からカクテルの提供、支払い、そして年齢確認までが非接触で実現できます。

CEOのエラド・コビは「今後はスタジアムや空港、ホテルといった施設に設置して普及を進めていきたい」と語っています。まるで映画『ブレードランナー』のような体験が、当たり前になる日も近いのかもしれません。

技術が切り開く、食生活の未来

フードロス、気候変動、パンデミック。不確実性が高まる未来の世代が安定した食生活を送るため、各地で新しい取り組みが始まっています。必要なのは、新しいアイデアと、それを実現するための技術。加えて、消費者である私たち一人一人が、ソリューションを利用して課題に取り組もうとする意識の変革なのかもしれません。

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